解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第10章 §1.10.2 ★★★ δL を「運動方程式の部分」と「全微分の部分」に分ける恒等式を作る。第4章で捨てた端の項がここで保存量になる
前の章から借りる3つの道具
1つ目は Euler–Lagrange 方程式
Ei:=∂qi∂L−dtd∂q˙i∂L=0(i=1,…,f)(1.10.6)
である(第1部第4章)。左辺の Ei は、第1部第3章の汎関数微分 δS/δqi(t) と同じ式である。この章では、運動方程式の解でない経路でも Ei を「経路を入れると決まる時刻の関数」として使う。解の上ではこれが 0 になる。
2つ目は正準運動量 pi=∂L/∂q˙i(第1部第8章)である。3つ目は無限小変換の生成子(第1部第9章)で、相空間の関数 G(q,p,t) を1つ決めると
δqi=ϵ∂pi∂G,δpi=−ϵ∂qi∂G(1.10.7)
によって相空間の点を動かす変換が決まる。並進は G=p、平面内の回転は G=Lz=xpy−ypx、時間発展は G=H で ϵ=dt である(Lz は角運動量の z 成分で、Lagrangian L とは添字で区別する)。3つ目の道具は1.10.5節で使う。
Noether の恒等式
式 (1.10.3) の第2項に積の微分 ∂q˙i∂LK˙i=dtd(∂q˙i∂LKi)−(dtd∂q˙i∂L)Ki を使うと、
δL=ϵi=1∑fEiKi+ϵdtd(i=1∑fpiKi)(1.10.8)
を得る。この式をNoether の恒等式と呼ぶ。積の微分を書き換えただけなので、運動方程式を使っておらず、すべての経路で成り立つ。右辺の第1項は運動方程式の左辺に比例する部分で、解の上では消える。第2項は時刻の全微分で、中身は運動量と変換の向きの内積 ∑ipiKi である。
時刻で積分すると
δS=ϵ∫t1t2i∑EiKidt+ϵ[i∑piKi]t1t2(1.10.9)
となる。これは第1部第4章で Euler–Lagrange 方程式を出したときの部分積分と同じ式で、第4章では許される向きが端で 0 だったので端の項 [∑ipiδqi]t1t2 を捨てた。この章では端で 0 にならない向き Ki を使うので、端の項が残る。次の節の定理は、この端の項が対称性のおかげで時刻によらない量になる、という主張である。
恒等式の読み方
式 (1.10.8) の左辺 δL は、L の形と変換の向き K だけから計算できる量である。右辺の第1項は運動方程式が成り立てば 0 になる。したがって、L の形から δL=0 と分かっていれば、運動方程式の解の上では第2項も 0 でなければならず、∑ipiKi の時間微分が 0 になる。運動方程式を1回も解かずに、L の形を見るだけで保存量が見つかる。
例題 1.10.2 回転について恒等式を両辺から確かめる ★★
オリジナル平面上の1粒子 L=2m(x˙2+y˙2)−V(x,y) と回転 (Kx,Ky)=(−y,x) を考える。
- (1) 式 (1.10.3) から δL を直接計算せよ。
- (2) 式 (1.10.8) の右辺を計算し、(1) と一致することを確かめよ。
- (3) 回転が対称性になる V の条件を極座標で述べ、そのとき保存する量を書け。
解答
(1) K˙x=−y˙, K˙y=x˙ なので
δL=ϵ[−∂x∂V(−y)−∂y∂Vx+mx˙(−y˙)+my˙x˙]=−ϵ(x∂y∂V−y∂x∂V).
運動エネルギーの部分は打ち消し合う。
(2) Ex=−∂xV−mx¨, Ey=−∂yV−my¨、∑ipiKi=mx˙(−y)+my˙x=m(xy˙−yx˙) なので
i∑EiKi=y∂xV+myx¨−x∂yV−mxy¨,dtdm(xy˙−yx˙)=m(xy¨−yx¨).
足すと加速度の項が打ち消し合い、y∂xV−x∂yV が残る。ϵ を掛けると (1) と一致する。加速度 x¨, y¨ は運動方程式を使わずに残したまま計算しているので、この一致はどんな経路でも成り立つ。
(3) x∂yV−y∂xV=∂V/∂φ(x=rcosφ, y=rsinφ)なので、回転が対称性であることは V が φ によらず V=V(r) と書けることと同じである。そのとき恒等式から、解の上で dtdm(xy˙−yx˙)=0 となり、角運動量 Lz=m(xy˙−yx˙)=xpy−ypx が保存する。
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