解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第10章 §1.10.6 ★★ 作用反作用・トルク・仕事とエネルギーの定理による3つの導出と、循環座標による書き方を、この章の定理と並べる
運動量・角運動量・エネルギーの初等的な導き方
解析力学を使わない力学の授業では、3つの保存則を Newton の運動方程式 m a r ¨ a = F a m_a\ddot{\bm{r}}_a=\bm{F}_a m a r ¨ a = F a から別々に導く。対応を表にまとめる。
保存量 初等的な導き方(仮定) この章の導き方(仮定) 全運動量 P \bm{P} P P ˙ = ∑ a F a \dot{\bm{P}}=\sum_a\bm{F}_a P ˙ = ∑ a F a で、内力が作用反作用 F a b = − F b a \bm{F}_{ab}=-\bm{F}_{ba} F ab = − F ba を満たし外力がないV V V が位置の差だけによる(並進で δ L = 0 \delta L=0 δ L = 0 )角運動量 L \bm{L} L L ˙ = ∑ a r a × F a \dot{\bm{L}}=\sum_a\bm{r}_a\times\bm{F}_a L ˙ = ∑ a r a × F a (トルク)で、力が中心力V V V が距離だけによる(回転で δ L = 0 \delta L=0 δ L = 0 )エネルギー d d t m 2 r ˙ 2 = F ⋅ r ˙ \frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\frac m2\dot{\bm{r}}^{\,2}=\bm{F}\cdot\dot{\bm{r}} d t d 2 m r ˙ 2 = F ⋅ r ˙ (仕事)で、F = − ∇ V \bm{F}=-\nabla V F = − ∇ V かつ V V V が時刻によらないL L L が時刻を陽に含まない(時刻の並進)
全運動量の行を比べる。初等的な導き方では、作用反作用の法則を力についての独立の法則として仮定する。この章の導き方では、仮定は V V V が位置の差だけによることで、作用反作用は結果として出る。2粒子で V = U ( r 1 − r 2 ) V=U(\bm{r}_1-\bm{r}_2) V = U ( r 1 − r 2 ) なら、F 1 = − ∇ 1 V = − ∇ U \bm{F}_1=-\nabla_1V=-\nabla U F 1 = − ∇ 1 V = − ∇ U , F 2 = − ∇ 2 V = + ∇ U \bm{F}_2=-\nabla_2V=+\nabla U F 2 = − ∇ 2 V = + ∇ U で、F 1 = − F 2 \bm{F}_1=-\bm{F}_2 F 1 = − F 2 が自動的に成り立つ。仮定の向きが逆になっていて、空間のどこでも物理法則が同じ(並進対称性)ことが先にあり、作用反作用はその帰結の1つになる。運動する電荷どうしの磁気的な力のように作用反作用が成り立たない例では、電磁場も運動量を持ち、場を含めた全体の並進対称性から全運動量が保存する(場の Noether の定理は第2部第7章 )。
角運動量の行でも同じで、「中心力」という力の性質の代わりに「V V V が回転で変わらない」という L L L の性質を仮定する。エネルギーの行では、初等的な導き方は「力がポテンシャルの勾配で、ポテンシャルが時刻によらない」と仮定し、この章の導き方は「L L L が時刻によらない」と仮定する。1.10.4 節の回る輪のように、二つの仮定がずれる系では保存する量も変わり、この章の導き方では E E E でなく H H H が保存すると分かる。
循環座標
解析力学の教科書の多くは、Noether の定理を次の形で述べる。L L L がある一般化座標 q k q_k q k を含まない(∂ L / ∂ q k = 0 \partial L/\partial q_k=0 ∂ L / ∂ q k = 0 )とき q k q_k q k を循環座標 と呼び、Euler–Lagrange 方程式 d d t ∂ L ∂ q ˙ k = ∂ L ∂ q k = 0 \frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\frac{\partial L}{\partial \dot q_k}=\frac{\partial L}{\partial q_k}=0 d t d ∂ q ˙ k ∂ L = ∂ q k ∂ L = 0 から、共役な運動量 p k p_k p k が保存する。
これは定理 1.10.2 で q k q_k q k だけを ϵ \epsilon ϵ ずらす変換(K i = δ i k K_i=\delta_{ik} K i = δ ik )を取った場合で、Q = ∑ i p i K i = p k Q=\sum_ip_iK_i=p_k Q = ∑ i p i K i = p k である。逆に、点変換の対称性が1つあれば、その変換の向きに沿って測る座標を一般化座標の1つに選ぶことで、その座標を循環座標にできる(回転なら極座標の角度 φ \varphi φ 、並進なら重心の座標)。2つの書き方は同じ内容で、座標の選び方が違う。循環座標の書き方は計算が短いが、対称性ごとに座標を選び直す必要がある。この章の書き方は座標を選び直さずに ∑ i p i K i \sum_ip_iK_i ∑ i p i K i を計算するだけで、回転の3つの軸のように互いに両立しない循環座標の組(3つの角度を同時に循環座標にする座標系はない)も同時に扱える。Galilei 変換や時刻の並進は、座標を選び直しても循環座標の形にならない準対称性・時刻の変換なので、この章の書き方が必要になる。
「変換の向きに沿って測る座標」は、次のように作る。変換の向き K i ( q ) K_i(q) K i ( q ) を配置の空間の各点に置いたベクトル場とみなし、その向きの微分を X = ∑ i K i ∂ / ∂ q i X=\sum_iK_i\,\partial/\partial q_i X = ∑ i K i ∂ / ∂ q i と書く。新しい座標 ( s , u 1 , … , u f − 1 ) (s,u_1,\dots,u_{f-1}) ( s , u 1 , … , u f − 1 ) を、条件
X s = 1 , X u j = 0 ( j = 1 , … , f − 1 ) Xs=1,\qquad Xu_j=0\quad(j=1,\dots,f-1) X s = 1 , X u j = 0 ( j = 1 , … , f − 1 )
を満たすように選ぶ。s s s は変換の流れに沿って測った径数で、u j u_j u j は流れの線の上で一定の量である。
この座標では、変換は「s s s を ϵ \epsilon ϵ だけ増やし、残りの座標は止める」という並進になる。対称性の条件(すべての経路で δ L = 0 \delta L=0 δ L = 0 )は、新しい座標で書いた Lagrangian が s s s を含まないことと同じになる。したがって s s s は循環座標で、保存量 (1.10.10) はそれに共役な運動量 p s p_s p s そのものである。K K K が 0 0 0 にならない点の近くでは、このような座標がいつも作れる(流れの箱の定理 )。
回転から極座標が出る
平面の回転は K = ( − y , x ) K=(-y,x) K = ( − y , x ) で、X = − y ∂ x + x ∂ y X=-y\,\partial_x+x\,\partial_y X = − y ∂ x + x ∂ y である。流れの線の上で一定の量を探すと、X ( x 2 + y 2 ) = − 2 x y + 2 x y = 0 X(x^2+y^2)=-2xy+2xy=0 X ( x 2 + y 2 ) = − 2 x y + 2 x y = 0 になる。そこで u u u として半径 r = x 2 + y 2 r=\sqrt{x^2+y^2} r = x 2 + y 2 をとる。流れに沿った径数には方位角 φ \varphi φ がとれて、X φ = ( y 2 + x 2 ) / r 2 = 1 X\varphi=(y^2+x^2)/r^2=1 X φ = ( y 2 + x 2 ) / r 2 = 1 が成り立つ。
こうして極座標が条件 X s = 1 Xs=1 X s = 1 , X u = 0 Xu=0 X u = 0 から出てくる。方位角が循環座標になり、保存量が p φ = L z p_\varphi=L_z p φ = L z になることは例題 1.10.7 で確かめる。原点では K = 0 K=0 K = 0 なので流れの箱の定理は使えず、極座標もそこで使えなくなる(第1部第2章 の球面振り子の極と同じ事情)。
流れの箱の定理と、対称性から循環座標を作る手順は、詳しくは基礎理論『物理のための微分幾何入門』第13章 §13.5 で扱う。
例題 1.10.7 極座標の循環座標と面積速度 ★★
オリジナル 平面上で中心力 V ( r ) V(r) V ( r ) を受ける質量 m m m の質点を考える。
(1) 極座標 ( r , φ ) (r,\varphi) ( r , φ ) で L L L を書き、循環座標を見つけて保存量 p φ p_\varphi p φ を求めよ。
(2) p φ p_\varphi p φ が直交座標の L z = x p y − y p x L_z=xp_y-yp_x L z = x p y − y p x と等しいことを示せ。
(3) 原点と質点を結ぶ線分が単位時間に掃く面積(面積速度)d A d t = 1 2 r 2 φ ˙ \frac{\mathrm{d} A}{\mathrm{d} t}=\frac12r^2\dot\varphi d t d A = 2 1 r 2 φ ˙ が一定であることを示し、m = 2 k g m=2\,\mathrm{kg} m = 2 kg で r = 3 m r=3\,\mathrm m r = 3 m のとき φ ˙ = 0.5 s − 1 \dot\varphi=0.5\,\mathrm{s^{-1}} φ ˙ = 0.5 s − 1 だった質点の面積速度と、r = 1 m r=1\,\mathrm m r = 1 m に来たときの φ ˙ \dot\varphi φ ˙ を求めよ。
解答 (1) x ˙ 2 + y ˙ 2 = r ˙ 2 + r 2 φ ˙ 2 \dot x^2+\dot y^2=\dot r^2+r^2\dot\varphi^2 x ˙ 2 + y ˙ 2 = r ˙ 2 + r 2 φ ˙ 2 なので L = m 2 ( r ˙ 2 + r 2 φ ˙ 2 ) − V ( r ) L=\frac m2(\dot r^2+r^2\dot\varphi^2)-V(r) L = 2 m ( r ˙ 2 + r 2 φ ˙ 2 ) − V ( r ) 。L L L は φ \varphi φ を含まないので φ \varphi φ が循環座標で、p φ = ∂ L / ∂ φ ˙ = m r 2 φ ˙ p_\varphi=\partial L/\partial\dot\varphi=mr^2\dot\varphi p φ = ∂ L / ∂ φ ˙ = m r 2 φ ˙ が保存する。これは回転 δ φ = ϵ \delta\varphi=\epsilon δ φ = ϵ に定理を当てた Q = p φ ⋅ 1 Q=p_\varphi\cdot1 Q = p φ ⋅ 1 と同じである。
(2) x = r cos φ x=r\cos\varphi x = r cos φ , y = r sin φ y=r\sin\varphi y = r sin φ から x y ˙ − y x ˙ = r cos φ ( r ˙ sin φ + r φ ˙ cos φ ) − r sin φ ( r ˙ cos φ − r φ ˙ sin φ ) = r 2 φ ˙ x\dot y-y\dot x=r\cos\varphi(\dot r\sin\varphi+r\dot\varphi\cos\varphi)-r\sin\varphi(\dot r\cos\varphi-r\dot\varphi\sin\varphi)=r^2\dot\varphi x y ˙ − y x ˙ = r cos φ ( r ˙ sin φ + r φ ˙ cos φ ) − r sin φ ( r ˙ cos φ − r φ ˙ sin φ ) = r 2 φ ˙ 。よって L z = m ( x y ˙ − y x ˙ ) = m r 2 φ ˙ = p φ L_z=m(x\dot y-y\dot x)=mr^2\dot\varphi=p_\varphi L z = m ( x y ˙ − y x ˙ ) = m r 2 φ ˙ = p φ で、直交座標の回転の向き ( − y , x ) (-y,x) ( − y , x ) で計算した Noether の保存量(例題 1.10.2 )と一致する。
(3) d A d t = 1 2 r 2 φ ˙ = p φ 2 m \frac{\mathrm{d} A}{\mathrm{d} t}=\frac12r^2\dot\varphi=\frac{p_\varphi}{2m} d t d A = 2 1 r 2 φ ˙ = 2 m p φ で、p φ p_\varphi p φ が保存するので一定である(Kepler の第2法則は、中心力の回転対称性の Noether の保存量である)。数値では p φ = 2 ⋅ 9 ⋅ 0.5 = 9 k g m 2 s − 1 p_\varphi=2\cdot9\cdot0.5=9\,\mathrm{kg\,m^2\,s^{-1}} p φ = 2 ⋅ 9 ⋅ 0.5 = 9 kg m 2 s − 1 、面積速度は 9 / ( 2 ⋅ 2 ) = 2.25 m 2 s − 1 9/(2\cdot2)=2.25\,\mathrm{m^2\,s^{-1}} 9/ ( 2 ⋅ 2 ) = 2.25 m 2 s − 1 。r = 1 m r=1\,\mathrm m r = 1 m では φ ˙ = p φ / ( m r 2 ) = 4.5 s − 1 \dot\varphi=p_\varphi/(mr^2)=4.5\,\mathrm{s^{-1}} φ ˙ = p φ / ( m r 2 ) = 4.5 s − 1 で、距離が 1 / 3 1/3 1/3 になると角速度は9倍になる。
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