解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第2章 §2.2.3 ★★★ p=mr˙+qA、H=(p−qA)2/(2m)+qϕ。H の値に A は入らず、速度の成分どうしの Poisson 括弧は磁場になる
正準運動量
正準運動量は式 (2.2.5) そのもので、
p=mr˙+qA(r,t)(2.2.10)
である。p は mr˙ と qA の和で、速度に質量を掛けた量(運動学的な運動量)とは一致しない。第1部第7章の例題(第1部第7章の「速度の1次の項は運動量を変えるがエネルギーを変えない」)で、速度の1次の項 b(q)q˙ が運動量を b だけずらすことを見た。ここではその b が qA である。
Hamiltonian
L の速度についての2階微分は m 倍の単位行列で正則なので、式 (2.2.10) は r˙=(p−qA)/m と解ける。これを H=p⋅r˙−L に入れる(第1部第8章)。p⋅r˙−qr˙⋅A=(p−qA)⋅r˙=(p−qA)2/m を使うと
H(r,p,t)=2m(p−qA(r,t))2+qϕ(r,t)(2.2.11)
を得る。p−qA=mr˙ を入れると、H の値は
H=21mr˙2+qϕ(2.2.12)
で、A を含まない。磁場は H の関数の形(p を p−qA にずらすこと)には入るが、エネルギーの値には入らない。自由粒子の Hamiltonian p2/(2m) の p を p−qA に置き換え、qϕ を足したものになっている。この置き換えを最小結合と呼ぶ。
Hamilton 方程式を書くと、
r˙=∂p∂H=mp−qA,p˙i=−∂xi∂H=qj∑mpj−qAj∂xi∂Aj−q∂xi∂ϕ=qj∑x˙j∂xi∂Aj−q∂xi∂ϕ.
第1式は式 (2.2.10) の書き直しである。第2式の右辺は ∂L/∂xi(式 (2.2.7))に等しく、p˙i=dtd(mx˙i+qAi) と組み合わせると式 (2.2.9) が再び出る。
エネルギーと時間による変化
第1部第8章の dH/dt=∂H/∂t を当てると、
dtdH=∂t∂H=q∂t∂ϕ−qr˙⋅∂t∂A.(2.2.13)
ϕ と A が時刻によらなければ、H=21mr˙2+qϕ が保存する。磁場がどれだけ強くても、静的な場の中の粒子のエネルギーは運動エネルギーと静電的なエネルギーの和で、磁場はそれを変えない。A が時刻とともに変わると、−qr˙⋅∂A/∂t の分だけエネルギーが変わる。これは電場のうち −∂A/∂t の部分(電磁誘導の電場)が粒子にする仕事率である(2.2.6節)。
速度の成分どうしの Poisson 括弧
相空間の関数としての運動学的な運動量 mx˙i=pi−qAi(r,t) の Poisson 括弧(第1部第11章)を計算する。{pi,Aj(r)}=−∂Aj/∂xi を使うと
{px−qAx, py−qAy}=−q{px,Ay}−q{Ax,py}=q(∂x∂Ay−∂y∂Ax)=qBz(2.2.14)
となり、ほかの組も同じ計算で {mx˙i,mx˙j}=q∑kϵijkBk になる。正準運動量の成分どうしは {px,py}=0 だが、速度の成分どうしは磁場があると Poisson 括弧が 0 にならない。一方、位置と速度の組は {xi,mx˙j}={xi,pj}=δij のまま変わらない。
式 (2.2.14) の右辺は磁場だけで書けている。A を取り替えても変わらない量どうしの括弧が、同じく変わらない量になった。量子力学では Poisson 括弧が交換子 [⋅,⋅]/(iℏ) に置き換わるので、磁場の中では速度の x 成分と y 成分を同時に確定させることができない。この事実が一様な磁場の中のエネルギー準位(Landau 準位)の出発点になる(第4部第6章)。
例題 2.2.3 円運動の中心の座標の Poisson 括弧 ★★★
オリジナル一様な磁場 B=Bez(q>0, B>0)の中の xy 平面内の運動を考える。A は ∇×A=Bez を満たす任意のものとする。円運動の中心の座標を、相空間の関数として
xg:=x+qBpy−qAy,yg:=y−qBpx−qAx
と定める。
- (1) 例題 2.2.2 の円運動で、(xg,yg) が円の中心であることを確かめよ。
- (2) {xg,px−qAx} と {xg,py−qAy} を求め、xg が保存することを示せ(H=[(px−qAx)2+(py−qAy)2]/(2m))。
- (3) {xg,yg} を求めよ。
解答
(1) py−qAy=my˙, px−qAx=mx˙ なので xg=x+y˙/ωc, yg=y−x˙/ωc。例題 2.2.2 の解 x+iy=(xg+iyg)+ωciu(u=x˙+iy˙)から、(x+iy)−ωci(x˙+iy˙)=(x+ωcy˙)+i(y−ωcx˙) が中心に等しい。
(2) {x,px−qAx}=1, {x,py−qAy}=0 と式 (2.2.14) の {py−qAy,px−qAx}=−qB を使うと
{xg,px−qAx}=1+qB−qB=0,{xg,py−qAy}=0+qB{py−qAy,py−qAy}=0.
H は2つの速度の成分だけの関数なので {xg,H}=0 で、xg は保存する。yg も同様である。
(3) {x,y}=0, {x,px−qAx}=1, {py−qAy,y}=−1 と式 (2.2.14) から
{xg,yg}=−qB1{x,px−qAx}+qB1{py−qAy,y}−(qB)21{py−qAy,px−qAx}=−qB1−qB1+qB1=−qB1.
円の中心の2つの座標は、互いに共役な正準変数の組(−1/(qB) 倍を除いて)になっている。量子力学では [x^g,y^g]=−iℏ/(qB) で、中心の位置は面積 2πℏ/(qB) より細かく決められない。面積 S の試料に入る中心の数はおよそ qBS/(2πℏ) で、これが Landau 準位1つあたりの状態の数になる(第4部第6章)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com