解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第2章 §2.2.4 ★★★ E,B を変えない (ϕ,A) の取り替えで L は全微分 qdΛ/dt だけ変わる。運動は同じで、p と H の値が変わる
ゲージ変換と L の変化
座標と時刻の滑らかな関数 Λ(r,t) を1つ選び、ポテンシャルを
A′=A+∇Λ,ϕ′=ϕ−∂t∂Λ(2.2.15)
に取り替える。これをゲージ変換と呼び、Λ をゲージ関数と呼ぶ。∇×∇Λ=0 なので B′=B、−∇ϕ′−∂A′/∂t=−∇ϕ+∇∂tΛ−∂tA−∂t∇Λ=E で、電場と磁場は変わらない。4元ポテンシャルで書くと Aμ→Aμ−∂μΛ である。
Lagrangian (2.2.2) は
L′=L+q(r˙⋅∇Λ+∂t∂Λ)=L+qdtdΛ(r,t)(2.2.16)
だけ変わる。足された項は軌道に沿った qΛ の全微分である。第1部第5章の命題(第1部第5章)によると、L に座標と時刻の関数の全微分を足しても Euler–Lagrange 方程式は変わらない。作用は端の値の差 qΛ(r(t2),t2)−qΛ(r(t1),t1) だけ変わり、それは端を固定した変分では定数だからである。2.2.2節で「運動方程式に E と B だけが現れる」と書いた事実を、L の側から言い直したことになる。
変わるものと変わらないもの
正準運動量と Hamiltonian は変わる。式 (2.2.10) と式 (2.2.11) から、同じ運動状態(同じ r と r˙)に対して
p′=p+q∇Λ,H′=H−q∂t∂Λ(2.2.17)
となる。一方、運動学的な運動量 mr˙=p−qA=p′−qA′ は変わらない。正準運動量の値は「どのゲージで書いたか」によって決まる量で、測定で直接決まる量ではない。
この取り替えは相空間の正準変換である(第1部第12章)。母関数を F2(r,P,t)=r⋅P−qΛ(r,t) とすると、p=∂F2/∂r=P−q∇Λ, Q=∂F2/∂P=r で、新しい Hamiltonian は K=H+∂F2/∂t=H−q∂Λ/∂t になる。新しい運動量 P を p′ と読み、K を H′ と読めば、式 (2.2.17) と一致する。K が新しいポテンシャル (ϕ′,A′) で書いた式 (2.2.11) と同じ関数になることは、P−qA′=p−qA と qϕ′=qϕ−q∂tΛ から確かめられる。
量子力学では作用が位相 eiS/ℏ に入るので、作用が端の値 qΛ だけ変わることは、波動関数の位相が
ψ′=eiqΛ/ℏψ(2.2.18)
だけ変わることに対応する。古典の運動が変わらないのと同じ理由で、確率 ∣ψ∣2 は変わらない。この位相と、B=0 の場所でも A が干渉縞をずらす Aharonov–Bohm 効果は第4部第6章で扱い、ゲージ変換に対する不変性を場の理論の原理として読むのは第2部第8章である。
同じ一様な磁場の2つのゲージ
一様な磁場 B=Bez を表すベクトルポテンシャルは1つではない。2.2.1節の
As=2B(−y,x,0)(対称ゲージ),AL=B(0,x,0)(Landau ゲージ)
はどちらも回転が Bez で、差は AL−As=2B(y,x,0)=∇(2Bxy) である。2つは Λ=2Bxy のゲージ変換で結ばれている(図 2.2.1)。

図 2.2.1 同じ一様な磁場 B=Bez を表す2つのベクトルポテンシャル(矢印の長さは同じ縮尺)。左は原点のまわりを回る向きにそろい、右は x によって大きさの変わる y 方向の矢印である。どちらも単位面積あたりの循環 ∮A⋅dr/(面積) が B に等しい。2つの差は ∇(2Bxy) で、運動は同じだが、保存する正準運動量の成分が違う
運動は同じでも、保存する正準運動量はゲージによって違って見える。Landau ゲージの L=21m(x˙2+y˙2)+qBxy˙ は y を含まないので、y に共役な py=my˙+qBx が保存する。対称ゲージの L=21m(x˙2+y˙2)+2qB(xy˙−yx˙) は極座標で 21m(r˙2+r2θ˙2)+2qBr2θ˙ となり、θ を含まないのでpθ=mr2θ˙+2qBr2 が保存する。
Landau ゲージの py を例題 2.2.3 の言葉で読むと、py=my˙+qBx=qB(x+y˙/ωc)=qBxg で、円の中心の x 座標である。対称ゲージで y 方向に平行移動すると L は変わり、δy=ϵ に対して δL=−2qBϵx˙=ϵdtd(−2qBx) だけ全微分で変わる。第1部第10章の準対称性の Noether の定理(第1部第10章)を ΛN=−2qBx として当てると、保存量はpy−ΛN=(my˙+2qBx)+2qBx=my˙+qBx で、Landau ゲージの py と同じ値になる。ゲージを取り替えても、保存する物理量(ここでは qBxg)は変わらない。ゲージの選び方によって、この量はある座標に共役な正準運動量としてそのまま現れることもあり、準対称性の Noether の保存量として現れることもある。
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