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当てる道具:作用変数を相空間の体積へ広げる

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第5章 断熱不変量とエントロピー
目次
  1. エネルギー以下の状態の数
  2. を で微分する
  3. Hertz の定理
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第5章 §3.5.2 ★★★ エネルギー EE 以下の状態が占める相空間の体積 Φ(E,λ)\Phi(E,\lambda) は、運動がエルゴード的なら、パラメータをゆっくり変えても保たれる(Hertz の定理)

エネルギー以下の状態の数

自由度 ff の系で、エネルギーが EE 以下の領域の相空間の体積を、前の章までの数え方(第3部第2章)で無次元にして

Φ(E,λ)=1hfN!∫θ(E−H(q,p;λ)) dfq dfp(3.5.4)\Phi(E,\lambda)=\frac{1}{h^fN!}\int\theta\bigl(E-H(q,p;\lambda)\bigr)\,\mathrm{d}^fq\,\mathrm{d}^fp\tag{3.5.4}

と書く。θ\theta は階段関数(正で 11、負で 00)、hh は Planck 定数で、N!N! は同種粒子の入れ替えを数え直さないための因子である(区別できる振動子の集まりでは N!N! を付けない)。Φ\Phi は「エネルギー EE 以下の状態の数」と読むことができる。EE で微分したもの

g(E,λ)=∂Φ∂E=1hfN!∫δ(E−H(q,p;λ)) dfq dfp(3.5.5)g(E,\lambda)=\frac{\partial \Phi}{\partial E}=\frac{1}{h^fN!}\int\delta\bigl(E-H(q,p;\lambda)\bigr)\,\mathrm{d}^fq\,\mathrm{d}^fp\tag{3.5.5}

は状態密度で(第3部第2章の g(E)g(E) と同じもの)、エネルギー面 H=EH=E の「厚み 11 あたりの体積」である。前の章の状態数 W(E)W(E) は、幅 ΔE\Delta E の殻の中の状態の数 g(E,λ)ΔEg(E,\lambda)\Delta E にあたる。

自由度 11 では、H≤EH\le E は等エネルギー線が囲む領域で、その面積は 2πJ2\pi J なので

Φ(E,λ)=2πJh=Jℏ(f=1)(3.5.6)\Phi(E,\lambda)=\frac{2\pi J}{h}=\frac{J}{\hbar}\qquad(f=1)\tag{3.5.6}

になる。Φ\Phi は作用変数の多自由度への広げ方の1つで、自由度1では J/ℏJ/\hbar そのものである。一方、ff が大きいときに作用変数を自由度ごとに J1,…,JfJ_1,\dots,J_f と定義することは、運動が自由度ごとに分離できる場合にしかできない。粒子どうしが衝突する気体ではこの分離が成り立たないが、Φ\Phi はどんな HH にも定義することができる。

Φ\Phi を λ\lambda で微分する

エネルギー面の上での平均(ミクロカノニカル平均)を

⟨A⟩E=1g(E,λ)⋅1hfN!∫A(q,p) δ(E−H(q,p;λ)) dfq dfp(3.5.7)\langle A \rangle _E=\frac{1}{g(E,\lambda)}\cdot\frac{1}{h^fN!}\int A(q,p)\,\delta\bigl(E-H(q,p;\lambda)\bigr)\,\mathrm{d}^fq\,\mathrm{d}^fp\tag{3.5.7}

と書く。Φ\Phi を λ\lambda で微分すると、階段関数の微分がデルタ関数になり、∂θ(E−H)/∂λ=−δ(E−H) ∂H/∂λ\partial\theta(E-H)/\partial\lambda=-\delta(E-H)\,\partial H/\partial\lambda なので

∂Φ∂λ=−g(E,λ)⟨∂H∂λ⟩E(3.5.8)\frac{\partial \Phi}{\partial \lambda}=-g(E,\lambda)\Bigl\langle\frac{\partial H}{\partial \lambda}\Bigr\rangle_E\tag{3.5.8}

を得る。EE を止めて λ\lambda を動かしたときの体積の減り方は、エネルギー面の上での ∂H/∂λ\partial H/\partial\lambda の平均と状態密度の積である。∂H/∂λ>0\partial H/\partial\lambda>0 の所では、λ\lambda を増やすとその点のエネルギーが上がり、EE 以下の領域から押し出されるからである。

Hertz の定理

定理 3.5.1(相空間の体積の断熱不変性 ★★★)

各 λ\lambda について、エネルギー面 H(q,p;λ)=EH(q,p;\lambda)=E の上の運動がエルゴード的(長い時間の平均がミクロカノニカル平均 (3.5.7) に等しい)であるとする。λ\lambda を、系がエネルギー面の上を一巡りする時間に比べてゆっくり変えると、Φ(E(t),λ(t))\Phi(E(t),\lambda(t)) は一定に保たれる。

理由

時間の長さ Δt\Delta t を、エネルギー面の上で時間平均がミクロカノニカル平均に近づくのに十分長く、しかもそのあいだの λ\lambda の変化 Δλ=λ˙Δt\Delta\lambda=\dot\lambda\Delta t が小さい程度に短くとる。式 (3.5.2) をこの時間で積分すると、エネルギーの変化は ΔE=λ˙∫∂H/∂λ dt\Delta E=\dot\lambda\int\partial H/\partial\lambda\,\mathrm{d} t で、積分の中身を時間平均で置き換え、さらにエルゴード性でミクロカノニカル平均に置き換えると

ΔE=⟨∂H∂λ⟩EΔλ\Delta E=\Bigl\langle\frac{\partial H}{\partial \lambda}\Bigr\rangle_E\Delta\lambda

になる。このあいだの Φ\Phi の変化は、式 (3.5.5) と (3.5.8) から

ΔΦ=∂Φ∂EΔE+∂Φ∂λΔλ=g(E,λ)⟨∂H∂λ⟩EΔλ−g(E,λ)⟨∂H∂λ⟩EΔλ=0\Delta\Phi=\frac{\partial \Phi}{\partial E}\Delta E+\frac{\partial \Phi}{\partial \lambda}\Delta\lambda=g(E,\lambda)\Bigl\langle\frac{\partial H}{\partial \lambda}\Bigr\rangle_E\Delta\lambda-g(E,\lambda)\Bigl\langle\frac{\partial H}{\partial \lambda}\Bigr\rangle_E\Delta\lambda=0

である。区間をつなげば、λ\lambda が有限だけ変わるあいだも Φ\Phi は一定である。

この議論は P. Hertz が与えた1P. Hertz(1910)、Annalen der Physik 33、225頁および537頁。下の脚注へ。証明の中で使ったのは「軌道に沿った ∂H/∂λ\partial H/\partial\lambda の時間平均が、エネルギー面の上の平均に等しい」ことだけである。自由度1ではエネルギー面は1本の閉曲線で、運動は自動的にその上を一巡りするので、この仮定は周期運動であることそのものになり、定理は第1部第14章の JJ の断熱不変性に戻る。自由度が大きいときは、エネルギー面の上を一様に巡るという仮定(エルゴード性)を別に置く必要がある(第3部第2章)。粒子どうしが衝突してエネルギーを配り直す気体は、この仮定を使う典型である。個々の粒子の作用変数は衝突のたびに変わるが、全体の Φ\Phi は保たれる。

Liouville の定理から見る

エネルギー E0E_0 以下の領域 Σ0={H(⋅;λ0)≤E0}\Sigma_0=\{H(\cdot;\lambda_0)\le E_0\} の点をすべて Hamilton 方程式で動かす。第3部第1章の Liouville の定理により、λ\lambda をどう動かしても、Σ0\Sigma_0 の像の体積は Σ0\Sigma_0 の体積のままである(第3部第1章)。変化がゆっくりなら、境界のエネルギー面の上の点はどれも同じだけエネルギーを受け取り、像は新しい H(⋅;λ1)H(\cdot;\lambda_1) のエネルギー面で囲まれた領域にほぼ一致する。そのエネルギーを E1E_1 とすれば、体積が同じなので Φ(E1,λ1)=Φ(E0,λ0)\Phi(E_1,\lambda_1)=\Phi(E_0,\lambda_0) である。変化が速いと、境界の点が受け取るエネルギーがばらばらになり、像はエネルギー面で囲まれた領域にならない。この場合は3.5.4節で扱う。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ϵ=τmix∣λ˙∣/λ→0\epsilon=\tau_{\mathrm{mix}}\lvert \dot\lambda\rvert /\lambda\to0(エネルギー面を巡る時間 τmix\tau_{\mathrm{mix}} のあいだの λ\lambda の相対変化が小さい) | 証明 要確認(自由度1では作用変数の断熱不変性として条件付きで成り立つ。多自由度では運動のエルゴード性を仮定した議論で、ずれの大きさの評価は原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 3.5.2 振動子の集まりの Φ\Phi ★★

オリジナル同じ角振動数 ω\omega の区別できる調和振動子 NN 個の集まり H=∑i=1N(pi22m+12mω2qi2)H=\sum_{i=1}^N\bigl(\frac{p_i^2}{2m}+\frac12m\omega^2q_i^2\bigr) を考える。EE 以下の体積は、第3部第2章の3.2.7節の総合問題 (1) で求めた Φ(E,ω)=1N!(Eℏω)N\Phi(E,\omega)=\dfrac{1}{N!}\Bigl(\dfrac{E}{\hbar\omega}\Bigr)^N である。

  1. (1) 式 (3.5.8) を使って ⟨∂H/∂ω⟩E=E/ω\langle \partial H/\partial\omega \rangle _E=E/\omega を示し、Hertz の定理から、ω\omega をゆっくり変えると E/ωE/\omega が一定になることを導け。
  2. (2) N=3N=3, E=10ℏωE=10\hbar\omega のとき Φ\Phi を求めよ。ω\omega をゆっくり 22 倍にした後の EE と Φ\Phi はいくらか。
解答

(1) ∂Φ/∂ω=−NΦ/ω\partial\Phi/\partial\omega=-N\Phi/\omega、g=∂Φ/∂E=NΦ/Eg=\partial\Phi/\partial E=N\Phi/E なので、式 (3.5.8) から ⟨∂H/∂ω⟩E=−∂Φ/∂ωg=NΦ/ωNΦ/E=Eω\langle \partial H/\partial\omega \rangle _E=-\frac{\partial\Phi/\partial\omega}{g}=\frac{N\Phi/\omega}{N\Phi/E}=\frac{E}{\omega}。直接計算しても、∂H/∂ω=∑imωqi2=2ω∑i12mω2qi2\partial H/\partial\omega=\sum_im\omega q_i^2=\frac{2}{\omega}\sum_i\frac12m\omega^2q_i^2 で、エネルギー面の上では位置エネルギーの合計の平均が E/2E/2 なので(qq と pp の役割が対称なため)、同じ E/ωE/\omega になる。Hertz の定理で Φ\Phi が一定なら、Φ\Phi の式から E/ωE/\omega が一定である。これは各振動子の Ji=Ei/ωJ_i=E_i/\omega が一定であることと同じ結論だが、振動子どうしが弱くエネルギーを交換していても E/ωE/\omega は保たれる。

(2) Φ=103/3!=166.7\Phi=10^3/3!=166.7。ω\omega を 22 倍にすると E=20ℏω0E=20\hbar\omega_0(ω0\omega_0 は初めの角振動数)で、Φ=(20ℏω0/2ℏω0)3/3!=166.7\Phi=(20\hbar\omega_0/2\hbar\omega_0)^3/3!=166.7 のまま変わらない。

1 P. Hertz(1910)、Annalen der Physik 33、225頁および537頁。

木下の勉強ステータス

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