出てくるもの (2):速く変えるとエントロピーは増える
AI 生成・木下が未勉強
解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第5章 §3.5.4 ★★★ パラメータを速く変えると、相空間の点が受け取るエネルギーがばらばらになり、行き着いた先の は初めより大きい。ゆっくりした変化より多くの仕事が要る
急に変える
もっとも速い変化は、パラメータを一瞬で から に変えることである。一瞬のあいだに点 は動かないので、各点のエネルギーは から に跳び、その跳び方は点ごとに違う。
同じ角振動数 の振動子 個がエネルギー のエネルギー面にあるとし、角振動数を一瞬で にする。新しいエネルギーは
で、エネルギー面の上で運動エネルギーの合計と位置エネルギーの合計の平均はどちらも なので(例題 3.5.2)、急に変えた後のエネルギーの平均は
になる。ゆっくり変えた場合は が一定で である。2つの比は
で、等号は のときに限る(相加平均と相乗平均の不等式)。 を上げる場合()も下げる場合()も、急に変えた方が終わりのエネルギーが大きい。 を上げる場合には外が系にする仕事が大きく、下げる場合には系から取り出せる仕事が小さい。比 (3.5.17) は と で同じ値をとる。第1部第14章の総合問題では1つの振動子で の比 を出したが、それは式 (3.5.17) の の場合である。
急に変えた後、系はもはや新しい のエネルギー面の上に乗っておらず、点ごとに違うエネルギーを持つ。振動子どうしの弱い相互作用でエネルギーが配り直され、平均のエネルギー のエネルギー面に広がったとすると、例題 3.5.2 の から、エントロピーの変化は
である。
図 3.5.1 1つの振動子(, )の角振動数を にする。黒の実線の円は初めの領域 。青の点線はゆっくり変えた後の領域 で、面積は円と同じ 。急に変えると点は動かず、円の上の点の新しいエネルギーは から にばらつく。円をすべて含む新しいエネルギー面は赤の破線 で、その面積は である。
図 3.5.1 は、この違いを相空間の形で示している。Liouville の定理は点の集まりの体積を保つが、急に変えると点の集まりは新しい のエネルギー面で囲まれた形になっていない。その集まりを含む新しいエネルギー面の囲む体積は、元の体積より大きい。系がその後で新しいエネルギー面の上に広がると、 が増えたことになる。
自由膨張
気体を仕切りの片側の体積 に入れておき、仕切りを一瞬で取り除いて体積 にする。これは壁のパラメータを一瞬で変えることにあたる。壁が粒子に仕事をしないので は変わらず、 の だけが 倍になる。気体が新しい容器に広がった後のエントロピーの変化は
で、 なら である。逆に、体積を からゆっくり に戻すには、温度を保ったまま熱を外へ捨てるか、 を保ったまま仕事をして温度を上げるかのどちらかが必要である。
有限の速さで往復させる
急に変える場合とゆっくり変える場合の間を、数値計算でつなぐ。1次元の区間 に互いに衝突しない粒子を 個入れ(、初めの速度は の正規分布、)、右の壁を時間 で一定の速さで から まで押し込み、次の時間 で まで戻す。壁での跳ね返りは例題 3.5.1 の である。1往復の後の全エネルギー と初めのエネルギー の比を図 3.5.2 に示す。
図 3.5.2 壁を押し込んで戻す1往復の後のエネルギーの比。黒の実線は断熱不変性から言える極限値 、青の点線と点は 粒子の数値計算。 が大きいほど に近づき、 が小さいとエネルギーが残る( の値 は図の外)。
ゆっくり往復させると、行きで が保たれて が 倍になり、帰りで同じ量だけ仕事を返して元に戻る。速く往復させると、行きでは壁が速く粒子に当たって大きな仕事をし、帰りでは壁が速く逃げて粒子が追いつかず、仕事が返ってこない。差の は、1往復で外がした正味の仕事で、粒子にエネルギーとして残る。粒子どうしに弱い衝突があってこのエネルギーが配り直されると、 から のエントロピーが増える。同じ状態に戻すサイクルでも、速く回すと正味の仕事が熱として残り、エントロピーが増える。これは熱力学の第二法則の、力学の側から見た姿の1つである。初めの分布がカノニカル分布のときに仕事の平均が自由エネルギーの差以上になることの一般の証明は、揺らぎを扱う章(第3部第9章)と相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部第2章(Jarzynski 等式から平均で )に送る。
例題 3.5.4 振動子の集まりを急に固くする ★★
オリジナル同じ角振動数 の振動子 個が、全エネルギー のエネルギー面に一様に分布している。角振動数を にする。
- (1) ゆっくり変えた場合と急に変えた場合の、終わりのエネルギー(急に変えた場合は平均)を で表せ。
- (2) それぞれで外が系にした仕事を求め、差を求めよ。
- (3) 急に変えた後、振動子どうしの弱い相互作用でエネルギーが配り直されたとする。エントロピーの増加を を単位として求めよ。
ほかの巻では
- 相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部第2章:速く変えたときの仕事の分布から Jarzynski 等式を出し、平均で になることを示す
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