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出てくるもの (3):量子の断熱変化と状態の数

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第5章 断熱不変量とエントロピー
目次
  1. Ehrenfest の断熱仮説
  2. 占有確率が保たれる
  3. 断熱消磁
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第5章 §3.5.5 ★★ 量子力学の断熱定理は量子数を保つので、エネルギー以下の固有状態の数と各準位の占有確率が保たれ、エントロピーが変わらない。断熱消磁はその応用

Ehrenfest の断熱仮説

量子力学では、Φ\Phi にあたるのはエネルギー EE 以下の固有状態の数である。自由度1の Bohr–Sommerfeld の量子化条件 J=(n+12)ℏJ=(n+\frac12)\hbar(第1部第14章)を式 (3.5.6) に入れると Φ=n+12\Phi=n+\frac12 で、nn 番目の準位のエネルギーまでに n+1n+1 個の状態があることとほぼ一致する。P. Ehrenfest は、パラメータをゆっくり変えると量子数 nn が保たれる、すなわち古典の断熱不変量が量子化される量になる、という原理を前期量子論の柱に据えた1P. Ehrenfest(1916)、Annalen der Physik 51、327頁。下の脚注へ。量子力学ではこれが断熱定理の形で示される。固有値 En(λ)E_n(\lambda) がほかの固有値から離れていて、λ\lambda の変化がゆっくりなら、初めに nn 番目の固有状態にあった系は、λ\lambda が変わった後も nn 番目の固有状態にとどまる(近似の数理 第7章・第4部第9章)。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℏ∣λ˙∣ ∥∂H^/∂λ∥/g2→0\hbar\lvert \dot\lambda\rvert \,\lVert \partial\hat H/\partial\lambda\rVert /g^2\to0(gg は準位の間隔) | 証明 条件付き(固有値が孤立し、変化のあいだ間隔 gg が 00 に近づかない。Kato 1950) | 行き先 近似の数理 第7章

占有確率が保たれる

系が混合状態 ρ^=∑npn∣n(λ)⟩⟨n(λ)∣\hat\rho=\sum_np_n| n(\lambda) \rangle \langle n(\lambda) | にあるとき、断熱定理により各固有状態は自分の番号を保って動くので、占有確率 pnp_n は変わらない。したがって ρ^\hat\rho の固有値の組が変わらず、エントロピー

S=−kB∑npnln⁡pn(3.5.20)S=- k_{\mathrm B}\sum_np_n\ln p_n\tag{3.5.20}

は一定である。ここで保たれているのは、固有状態の番号と、それぞれの番号に乗っている確率である。古典の Hertz の定理が「エネルギー以下の体積」を保つのと同じく、量子の断熱変化は「何番目の状態か」を保つ。

準位がすべて同じ倍率で動く場合、すなわち En(λ)=s(λ)εnE_n(\lambda)=s(\lambda)\varepsilon _n の形のときは、初めにカノニカル分布 pn∝e−En/(kBT)p_n\propto\mathrm{e}^{-E_n/( k_{\mathrm B} T)} にあった系は、λ\lambda が変わった後もカノニカル分布で、温度だけが

T∝s(λ)(3.5.21)T\propto s(\lambda)\tag{3.5.21}

と変わる。pn∝e−sεn/(kBT)p_n\propto\mathrm{e}^{-s\varepsilon _n/( k_{\mathrm B} T)} が変わらないためには s/Ts/T が一定であればよいからである。1辺 aa の箱の中の粒子では En∝a−2E_n\propto a^{-2} なので T∝a−2=V−2/3T\propto a^{-2}=V^{-2/3} となり、古典の式 (3.5.15) の TV2/3=TV^{2/3}= 一定と一致する。

断熱消磁

磁場 BB の中のスピン 12\frac12 の常磁性体を、互いに相互作用しない NN 個の磁気モーメント(大きさ μB\mu_{\mathrm B})の集まりとして扱う。各スピンのエネルギーは ∓μBB\mp\mu_{\mathrm B}B で、準位は BB に比例して動く(s(λ)=Bs(\lambda)=B)。温度 TT のカノニカル分布では、x=μBB/(kBT)x=\mu_{\mathrm B}B/( k_{\mathrm B} T) と置いて

SNkB=ln⁡(2cosh⁡x)−xtanh⁡x(3.5.22)\frac{S}{N k_{\mathrm B}}=\ln(2\cosh x)-x\tanh x\tag{3.5.22}

で、エントロピーは B/TB/T だけの関数である。ゆっくり磁場を下げるとエントロピーが一定なので、式 (3.5.21) のとおり B/TB/T が一定に保たれ、温度が磁場に比例して下がる。これが断熱消磁で、低温を作る方法として使われる。図 3.5.3 に2つの磁場でのエントロピーを示す。数値の例は第3部第4章の3.4.7節の総合問題 (5)(1 K1\,\mathrm K・1 T1\,\mathrm T から磁場を下げる)にある。

図

図 3.5.3 スピン 12\frac12 の常磁性体のエントロピー(式 (3.5.22)、黒の点線は B=1 TB=1\,\mathrm T、青の点線は B=0.1 TB=0.1\,\mathrm T)。赤の矢印は 1 K1\,\mathrm K で B=1 TB=1\,\mathrm T から 0.1 T0.1\,\mathrm T へゆっくり下げる変化で、エントロピーが一定のまま温度が 0.1 K0.1\,\mathrm K へ下がる。

例題 3.5.5 箱の中の粒子をゆっくり広げる ★★

オリジナル1辺 LL の立方体の箱に、互いに相互作用しない質量 mm の粒子が入っている。1粒子の準位は En=h28mL2(nx2+ny2+nz2)E_{\bm{n}}=\dfrac{h^2}{8mL^2}(n_x^2+n_y^2+n_z^2)(nx,ny,nz=1,2,…n_x,n_y,n_z=1,2,\dots)である。初め温度 T0=300 KT_0=300\,\mathrm K のカノニカル分布にあり、熱の出入りを断って LL をゆっくり 22 倍にする。

  1. (1) 量子の断熱定理で占有確率が保たれるとして、変化の後もカノニカル分布で、温度が T1=T0/4T_1=T_0/4 になることを示せ。式 (3.5.21) の ss はいくらか。
  2. (2) 粒子が 1 mol1\,\mathrm{mol} の単原子理想気体として、圧力が何倍になるかを求め、古典の式 (3.5.15) の PV5/3=PV^{5/3}= 一定と比べよ。
  3. (3) 気体がされた仕事を求めよ。R=8.314 J mol−1 K−1R=8.314\,\mathrm{J\,mol^{-1}\,K^{-1}} とする。
解答

(1) すべての準位が同じ倍率 s=(L0/L)2s=(L_0/L)^2 で動き、L=2L0L=2L_0 で s=1/4s=1/4 である。粒子が相互作用しないので、多粒子の準位も1粒子の準位の和としてすべて ss 倍になる。準位の順番は入れ替わらず、断熱定理で各状態の占有確率 p∝e−E/(kBT0)p\propto\mathrm{e}^{-E/( k_{\mathrm B} T_0)} はそのまま運ばれる。変化の後の準位 sEsE で同じ確率を書くと e−sE/(kBT1)\mathrm{e}^{-sE/( k_{\mathrm B} T_1)} で、T1=sT0=75 KT_1=sT_0=75\,\mathrm K のカノニカル分布になる。この結論は準位の倍率だけから出たので、準位の間隔が kBTk_{\mathrm B} T と同じ程度の低温(古典の数え方が使えない所)でも、粒子の統計によらず成り立つ。

(2) V=L3V=L^3 は 88 倍、TT は 1/41/4 倍なので、P=NkBT/VP=N k_{\mathrm B} T/V は 14⋅18=132\frac14\cdot\frac18=\frac1{32} 倍である。PV5/3PV^{5/3} は 132⋅85/3=3232=1\frac1{32}\cdot8^{5/3}=\frac{32}{32}=1 倍で変わらず、TV2/3TV^{2/3} も 14⋅82/3=1\frac14\cdot8^{2/3}=1 倍である。量子の「準位の倍率」と古典の「Φ\Phi が一定」が、高温で同じ式を与えている。

(3) 熱の出入りが無いので、仕事はエネルギーの変化 32R(T1−T0)=32×8.314×(−225)=−2.81×103 J\frac32R(T_1-T_0)=\frac32\times8.314\times(-225)=-2.81\times10^3\,\mathrm J である。負なので、気体は外に 2.81×103 J2.81\times10^3\,\mathrm J の仕事をした。

ほかの巻では

1 P. Ehrenfest(1916)、Annalen der Physik 51、327頁。

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