解答
(1) 1つのスピンの分配関数は ex+e−x=2coshx で、スピンは独立なので Z=(2coshx)N。F(T,B)=−NkBTln(2coshx)。
(2) ∂B∂x=kBTμB を使って M=−∂B∂FT=NμBtanhx、すなわち m=tanhx。∂T∂x=−Tx を使って
S=−∂T∂FB=NkBln(2coshx)+NkBTtanhx∂T∂x=NkB[ln(2coshx)−xtanhx].
ここで F は磁場 B(示強変数)を変数に持つので、3.4.2節の言葉では、全磁気モーメント M をすでに B に取り替えたポテンシャルにあたる。−MdB の負号は、取り替えた変数の傾きが −xa になる規則と同じである。
(3) supB[F+MB] の最大点の条件は ∂F/∂B+M=0、すなわち (2) から m=tanhx、B=μBkBTartanhm。そこでの値は
F~=F+MB=−NkBT[ln(2coshx)−xtanhx]=−TS.
coshx=1/1−m2、x=21ln1−m1+m を入れて整理すると
ln(2coshx)−xtanhx=ln2−21+mln(1+m)−21−mln(1−m)=hb(21+m)
で、F~=−NkBThb(21+m)。最後の等号は、p=(1+m)/2 を hb に入れて展開すると確かめることができる。F~ を M で微分すると hb の導関数 dmdhb=−artanhm から ∂M∂F~=μBkBTartanhm=B で、逆向きの変換の傾きが B に戻る。磁化を決めた系の自由エネルギーは −T×(磁化 m と両立するスピンの並べ方の数の対数)で、エネルギーの項を含まない。相互作用のないスピンでは、磁化の値を決めた時点でエネルギーは −MB に決まり、それを F~ から外して F に移したのが Legendre 変換である。
(4) (2) の S を x で微分すると dxd[ln(2coshx)−xtanhx]=tanhx−tanhx−cosh2xx=−cosh2xx。∂B∂x=Bx なので∂B∂ST=−Bcosh2xNkBx2=−Tcosh2xNμBx。一方 ∂T∂MB=NμBcosh2x1⋅(−Tx) で、2つは等しい。F(T,B) の混合偏微分の対称性で、式 (3.4.9) の2本目の (V,P) を (B,−M) に読み替えたものである。
(5) (2) の S は x=μBB/(kBT) だけの関数なので、S を一定に保つ変化では B/T が一定に保たれる。したがって
Tf=TiBiBf=1.0K×1.00.010=0.010K.
はじめの状態では xi=1.381×10−23×1.09.274×10−24×1.0=0.672 で、S/(NkB)=ln(2cosh0.672)−0.672tanh0.672=0.510。磁場のない無秩序な状態の ln2=0.693 の 0.736 倍で、磁場でスピンをそろえた分だけエントロピーが下がっている。磁場を下げてもエントロピーを保つには、スピンのそろい方 m=tanhx を保つ必要があり、そのために温度が磁場と同じ割合で下がる。(4) の Maxwell 関係式 (∂S/∂B)T<0 が、この冷却の向き(等温で磁場をかけるとエントロピーが減る)を表している。実際の物質ではスピン間の相互作用や内部の磁場があるので、温度は Bf→0 でも 0 にはならない。
(6) lnZ=100ln(2cosh0.5)=81.33。和の各項の対数 ln(n100)+0.5(2n−100) を n=0,…,100 で比べると、最大は n=73(m=0.46、tanh0.5=0.462 に最も近い)で、その値は 78.91。差は 2.41 で、lnZ の 3.0% である。この差は最大項のまわりの山の幅の対数で、二項分布の幅から 21ln(2πNp(1−p))=2.41(p=(1+tanhx)/2)と見積もることができる。N→∞ では Stirling の公式により N1ln(nN)→hb(n/N) なので、最大項の対数を N で割ったものは supm[hb(21+m)+xm] に近づく。最大点の条件 −artanhm+x=0 から m=tanhx で、その値は (3) の計算を逆にたどると hb(21+m)+xm=ln(2coshx)−xtanhx+xtanhx=ln(2coshx) である。これは (1) の厳密な N1lnZ に等しい。和を最大項で置き換えることが、m についての Legendre 変換((3) の逆向き)と同じ計算になっている。