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出てくるもの (3):吸収・誘導放出・自然放出

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第12章 光と物質
目次
  1. 幅のある光による吸収と誘導放出
  2. 自然放出:熱平衡からの議論
  3. 古典の放射との対応
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第12章 §4.12.5 ★★★ 幅のある光で黄金律のデルタ関数を消すと吸収の係数 BB が出る。熱平衡の釣り合いから、半古典論に出てこない自然放出の係数 AA も決まる

幅のある光による吸収と誘導放出

双極子近似の黄金律に、式 (4.12.22) の共鳴の値 ∣⟨f∣H^ω∣i⟩∣2=∣e⋅dfi∣2∣E0∣2/4\lvert \langle f | \hat H_\omega | i \rangle \rvert ^2=\lvert \bm{e}\cdot\bm{d}_{fi}\rvert ^2\lvert E_0\rvert ^2/4 を入れると

wf←i=2πℏ∣e⋅dfi∣2∣E0∣24δ(ω−ωfi)ℏ=π2ℏ2∣e⋅dfi∣2∣E0∣2 δ(ω−ωfi)w_{f\leftarrow i}=\frac{2\pi}{\hbar}\frac{\lvert \bm{e}\cdot\bm{d}_{fi}\rvert ^2\lvert E_0\rvert ^2}{4}\frac{\delta(\omega-\omega_{fi})}{\hbar}=\frac{\pi}{2\hbar^2}\lvert \bm{e}\cdot\bm{d}_{fi}\rvert ^2\lvert E_0\rvert ^2\,\delta(\omega-\omega_{fi})

となる。平面波では、電場のエネルギー密度の時間平均 12ε0⟨∣E∣2⟩=14ε0∣E0∣2\frac12\varepsilon_0\langle\lvert \bm{E}\rvert ^2\rangle=\frac14\varepsilon_0\lvert E_0\rvert ^2 と同じだけを磁場が持つので、全体は u=12ε0∣E0∣2u=\frac12\varepsilon_0\lvert E_0\rvert ^2 である。したがって、∣E0∣2=2u/ε0\lvert E_0\rvert ^2=2u/\varepsilon_0 と書き換えてw=πε0ℏ2∣e⋅dfi∣2u δ(ω−ωfi)w=\frac{\pi}{\varepsilon_0\hbar^2}\lvert \bm{e}\cdot\bm{d}_{fi}\rvert ^2u\,\delta(\omega-\omega_{fi}) である。熱放射のように、角振動数について幅広く分布し、向きも偏光もそろっていない光では、エネルギー密度を角振動数あたり u(ω)u(\omega) で表し、u δ(ω−ωfi)u\,\delta(\omega-\omega_{fi}) を ∫u(ω)δ(ω−ωfi)dω=u(ωfi)\int u(\omega)\delta(\omega-\omega_{fi})\mathrm{d}\omega=u(\omega_{fi}) に替え、偏光の向きについて平均して ⟨∣e⋅dfi∣2⟩=∣dfi∣2/3\langle\lvert \bm{e}\cdot\bm{d}_{fi}\rvert ^2\rangle=\lvert \bm{d}_{fi}\rvert ^2/3 とする(⟨cos⁡2θ⟩=1/3\langle\cos^2\theta\rangle=1/3)。異なる角振動数の成分は位相がそろっていないので、確率を足してよい。結果は

wf←i=B u(ωfi),B=π∣dfi∣23ε0ℏ2,∣dfi∣2=∑j=x,y,z∣⟨f∣d^j∣i⟩∣2(4.12.25)w_{f\leftarrow i}=B\,u(\omega_{fi}),\qquad B=\frac{\pi\lvert \bm{d}_{fi}\rvert ^2}{3\varepsilon_0\hbar^2},\qquad \lvert \bm{d}_{fi}\rvert ^2=\sum_{j=x,y,z}\lvert \langle f | \hat d_j | i \rangle \rvert ^2\tag{4.12.25}

である。BB を Einstein の BB 係数と呼ぶ(記法の正本の流儀で、角振動数あたりのエネルギー密度 u(ω)u(\omega) に対する係数)。

上の準位 ∣2⟩| 2 \rangle から下の準位 ∣1⟩| 1 \rangle への誘導放出は、式 (4.12.12) の eiωt\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega t} の項による遷移で、行列要素は ⟨1∣H^ω†∣2⟩=⟨2∣H^ω∣1⟩∗\langle 1 | \hat H_\omega^\dagger | 2 \rangle =\langle 2 | \hat H_\omega | 1 \rangle ^* である。絶対値が吸収と同じなので B21=B12B_{21}=B_{12}(準位が縮退していなければ)になる。吸収と誘導放出の確率が等しいのは、摂動がエルミートであることの直接の帰結である。

自然放出:熱平衡からの議論

半古典論では、光の場が 00 なら H^1=0\hat H_1=0 で、上の準位は永遠に上にとどまる。実際の原子は光の無い所でも光を出して下に落ちる。この自然放出を正しく扱うには光の場を量子化する必要がある(第5部第2章・第3章で光子を導入する。第5部第2章・第5部第3章)。しかし自然放出の確率 AA は、Einstein の熱平衡の議論1A. Einstein (1917), Phys. Z. 18, 121.下の脚注へで、BB から決められる。

温度 TT の熱放射の中に2準位の原子の集団があり、下と上の準位に N1N_1, N2N_2 個いるとする。上向きの遷移は N1Bu(ω)N_1Bu(\omega)、下向きは誘導放出と自然放出の和 N2(A+Bu(ω))N_2(A+Bu(\omega)) で、熱平衡ではこれが釣り合い、しかも原子の分布は N2/N1=e−βℏωN_2/N_1=\mathrm{e}^{-\beta\hbar\omega}(β=1/(kBT)\beta=1/( k_{\mathrm B} T))である。放射の分布は Planck の式

u(ω)=ℏω3π2c3 nB(ω),nB(ω)=1eβℏω−1(4.12.26)u(\omega)=\frac{\hbar\omega^3}{\pi^2c^3}\,n_{\mathrm B}(\omega),\qquad n_{\mathrm B}(\omega)=\frac{1}{\mathrm{e}^{\beta\hbar\omega}-1}\tag{4.12.26}

に従う(第5部第3章で導く)。釣り合いの式 e−βℏω(A+Bu)=Bu\mathrm{e}^{-\beta\hbar\omega}(A+Bu)=Bu を AA について解くと A=Bu(eβℏω−1)=Bℏω3/(π2c3)A=Bu(\mathrm{e}^{\beta\hbar\omega}-1)=B\hbar\omega^3/(\pi^2c^3) で、温度によらない。

命題 4.12.2(Einstein の関係 ★★★)

縮退の無い2準位の間で

A=ℏω3π2c3B=ω3∣d21∣23πε0ℏc3(4.12.27)A=\frac{\hbar\omega^3}{\pi^2c^3}B=\frac{\omega^3\lvert \bm{d}_{21}\rvert ^2}{3\pi\varepsilon_0\hbar c^3}\tag{4.12.27}

が成り立つ。誘導放出と自然放出の比は Bu(ω)/A=nB(ω)Bu(\omega)/A=n_{\mathrm B}(\omega) で、1つのモードあたりの熱的な光子の数に等しい。

最後の主張は、「誘導放出の確率は、すでにあるモードの光子の数 nn に比例し、自然放出は nn に 11 を足した分にあたる」という量子化した場の結果(放出の確率 ∝n+1\propto n+1)を先取りしている。AA は光の場の量子化を経ずに、熱平衡の整合性と黄金律だけから決まった。

古典の放射との対応

第2部第9章(第2部第9章)で、振動する双極子が出す放射の仕事率(Larmor の公式)を、時間平均で ⟨P⟩=μ0⟨d¨2⟩/(6πc)\langle P\rangle=\mu_0\langle\ddot d^2\rangle/(6\pi c) と求めた。双極子が d(t)=d0cos⁡ωtd(t)=d_0\cos\omega t で振動していれば ⟨d¨2⟩=ω4d02/2\langle\ddot d^2\rangle=\omega^4d_0^2/2 で、μ0=1/(ε0c2)\mu_0=1/(\varepsilon_0c^2) から

⟨P⟩=ω4d0212πε0c3(4.12.28)\langle P\rangle=\frac{\omega^4d_0^2}{12\pi\varepsilon_0c^3}\tag{4.12.28}

である。調和振動子(電荷 qq、質量 mm、角振動数 ω\omega)が作用変数 J=nℏJ=n\hbar の軌道を回っているなら、振幅は q02=2J/(mω)q_0^2=2J/(m\omega)、双極子の振幅は d0=qq0d_0=qq_0 で、⟨P⟩=ω4q212πε0c3⋅2nℏmω=q2ℏω3n6πε0mc3\langle P\rangle=\frac{\omega^4q^2}{12\pi\varepsilon_0c^3}\cdot\frac{2n\hbar}{m\omega}=\frac{q^2\hbar\omega^3n}{6\pi\varepsilon_0mc^3}。量子では、nn から n−1n-1 への自然放出の確率が、式 (4.12.27) に第4部第4章の ∣⟨n−1∣q^∣n⟩∣2=ℏn/(2mω)\lvert \langle n-1 | \hat q | n \rangle \rvert ^2=\hbar n/(2m\omega) を入れてAn→n−1=ω3q23πε0ℏc3⋅ℏn2mω=q2ω2n6πε0mc3A_{n\to n-1}=\frac{\omega^3q^2}{3\pi\varepsilon_0\hbar c^3}\cdot\frac{\hbar n}{2m\omega}=\frac{q^2\omega^2n}{6\pi\varepsilon_0mc^3} で、1回に ℏω\hbar\omega を出すので

ℏωAn→n−1=q2ℏω3n6πε0mc3=⟨P⟩J=nℏ(4.12.29)\hbar\omega A_{n\to n-1}=\frac{q^2\hbar\omega^3n}{6\pi\varepsilon_0mc^3}=\langle P\rangle_{J=n\hbar}\tag{4.12.29}

となる。nn によらず、量子の放出の仕事率は古典の Larmor の放射と厳密に一致する。n=1n=1 では A1→0=q2ω2/(6πε0mc3)A_{1\to0}=q^2\omega^2/(6\pi\varepsilon_0mc^3) で、これは古典の振動子が放射でエネルギーを失う割合(放射減衰率)γcl\gamma_{\mathrm{cl}} そのものである。第4部第4章で、調和振動子の行列要素 ⟨n−1∣q^∣n⟩\langle n-1 | \hat q | n \rangle が作用変数 J=nℏJ=n\hbar の古典の軌道の Fourier 成分と一致することを示した。式 (4.12.29) はその結果を放射に当てたものである。

例題 4.12.5 水素の 2p2p の寿命と、誘導放出と自然放出の比 ★★★

オリジナル

  1. (1) 例題 4.12.4 の zfi=0.745 a0z_{fi}=0.745\,a_0 を使い、水素の 2p (m=0)→1s2p\,(m=0)\to1s の自然放出の確率 AA と寿命 1/A1/A を求めよ。
  2. (2) 温度 300 K300\,\mathrm K の熱放射の中で、この遷移の誘導放出と自然放出の比 nBn_{\mathrm B} を求めよ。
  3. (3) 同じ温度で、周波数 1 GHz1\,\mathrm{GHz} のマイクロ波の遷移ではこの比はいくらか。
解答

(1) 2p,m=02p,m=0 から 1s1s への d21\bm{d}_{21} は zz 成分だけで、∣d21∣2=e2zfi2=(1.602×10−19×0.745×5.29×10−11)2 C2m2\lvert \bm{d}_{21}\rvert ^2=e^2z_{fi}^2=(1.602\times10^{-19}\times0.745\times5.29\times10^{-11})^2\,\mathrm{C^2m^2}。ω=10.20 eV/ℏ=1.550×1016 s−1\omega=10.20\,\mathrm{eV}/\hbar=1.550\times10^{16}\,\mathrm{s^{-1}} を式 (4.12.27) に入れて

A=(1.550×1016)3×(6.31×10−30)23π×8.854×10−12×1.055×10−34×(2.998×108)3=6.27×108 s−1,1A=1.60 ns.A=\frac{(1.550\times10^{16})^3\times(6.31\times10^{-30})^2}{3\pi\times8.854\times10^{-12}\times1.055\times10^{-34}\times(2.998\times10^8)^3}=6.27\times10^{8}\,\mathrm{s^{-1}},\qquad \frac1A=1.60\,\mathrm{ns}.

m=±1m=\pm1 の 2p2p も同じ AA を持つ(1s1s は球対称なので向きによらない)。図 4.12.3 の 2s2s は双極子遷移で落ちられず、寿命はこの値よりはるかに長い。

(2) ℏω/(kBT)=10.20 eV/0.02585 eV=395\hbar\omega/( k_{\mathrm B} T)=10.20\,\mathrm{eV}/0.02585\,\mathrm{eV}=395 で、nB=1/(e395−1)≈e−395=10−171n_{\mathrm B}=1/(\mathrm{e}^{395}-1)\approx\mathrm{e}^{-395}=10^{-171}。室温の熱放射の中では、可視・紫外の遷移で誘導放出は全く起こらない。レーザーで誘導放出を使うには、熱平衡とかけ離れた強い光をモードに溜める必要がある。

(3) ℏω/(kBT)=2π×1.055×10−34×109/(1.381×10−23×300)=1.60×10−4\hbar\omega/( k_{\mathrm B} T)=2\pi\times1.055\times10^{-34}\times10^9/(1.381\times10^{-23}\times300)=1.60\times10^{-4} で、nB≈kBT/(ℏω)=6.25×103n_{\mathrm B}\approx k_{\mathrm B} T/(\hbar\omega)=6.25\times10^3。マイクロ波の遷移では誘導放出が自然放出の6千倍あり、しかも A∝ω3A\propto\omega^3 が小さいので、自然放出はほとんど見えない。

ほかの巻では

1 A. Einstein (1917), Phys. Z. 18, 121.

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