構成の一覧:採るものと採らないもの
AI 生成・木下が未勉強
量子力学の様々な構成方法 第1部 第1章 §1.1.2 ★★★ 知られている構成を十数種並べ、主流であること・専攻との関係・同値性の橋の太さの3つの基準で9つを採る
選び方
量子力学を組み立てる出発点として提案されたものは多い。この巻では、次の3つの基準で9つを選んだ。1つ目は、教科書や論文で実際に使われ、読めないと困る構成であること(主流であること)。2つ目は、物理工学科の3年後期で学ぶ内容(量子物理工学・固体物理・光学と量子エレクトロニクス)と、量子情報・統計力学・確率論・解析力学への関心に当たること。3つ目は、ほかの構成との間に同値性を示す道筋がはっきりあること。比べることが目的の巻なので、ほかの構成とつながらない構成は採らない。
表 1.1.1 は、知られている構成を、採るものと採らないものに分けて並べたものである。年は代表的な最初の論文の年で、詳しい経緯は第1部第4章で扱う1代表的な論文の書誌は次のとおり。W. Heisenberg (1925), Zeitschrift für Physik 33, 879–893/R. P. Feynman (1948), Reviews of Modern Physics 20, 367–387/E. Wigner (1932), Physical Review 40, 749–759/J. E. Moyal (1949), Proceedings of the Cambridge Philosophical Society 45, 99–124/E. Madelung (1927), Zeitschrift für Physik 40, 322–326/D. Bohm (1952), Physical Review 85, 166–179/E. Nelson (1966), Physical Review 150, 1079–1085/G. Birkhoff and J. von Neumann (1936), Annals of Mathematics 37, 823–843/A. M. Gleason (1957), Journal of Mathematics and Mechanics 6, 885–893。下の脚注へ。
| 構成(代表的な年) | 基本の対象と出発点の要請 | この巻での扱い |
| 状態ベクトルと演算子(Dirac 1930・von Neumann 1932) | 複素ヒルベルト空間の単位ベクトル 、物理量は自己共役演算子、確率は Born の規則 | 第1部(比べるための基準) |
| 波動関数(Schrödinger 1926) | 配位空間の複素関数 と Schrödinger 方程式 | 入門で扱ったので部を立てない。基準の位置表示 として第1部第3章で接続 |
| 行列力学・正準量子化(Heisenberg 1925・Born と Jordan 1925・Dirac 1925) | 物理量の行列(演算子)と正準交換関係 | 第2部 |
| 経路積分(Feynman 1948) | 作用 と、全経路にわたる の和 | 第3部 |
| 密度行列・量子チャネル(von Neumann 1927) | 正値でトレース1の 、完全正値でトレースを保つ写像 | 第4部 |
| 位相空間(Wigner 1932・Groenewold 1946・Moyal 1949) | 相空間の準確率分布 と積 | 第5部 |
| 第二量子化(Dirac 1927・Jordan と Wigner 1928・Fock 1932) | 生成消滅演算子 と Fock 空間 | 第6部 |
| 軌道と流体(Madelung 1927・Bohm 1952・Nelson 1966) | 密度 と速度場 、粒子の軌道、拡散過程 | 第7部 |
| 代数的量子論(Gelfand と Naimark 1943・Segal 1947・Haag と Kastler 1964) | 観測量の C*代数と、その上の状態(正値で規格化された線形汎関数) | 第8部 |
| 公理からの再構成(Birkhoff と von Neumann 1936・Gleason 1957・Hardy 2001) | 命題の束、準備と測定の確率、凸な状態空間 | 第9部 |
| 幾何学的量子化(Kostant 1970・Souriau 1970) | シンプレクティック多様体上の複素線束とその切断、偏極 | 第10部 |
| Schwinger の作用原理(Schwinger 1951) | 遷移振幅の変分 | 独立の部にするほど教科書が無いので、経路積分の微分の形として第3部第7章で1節 |
| 変形量子化(Bayen・Flato・Fronsdal・Lichnerowicz・Sternheimer 1978) | 相空間の関数の積を の冪で変形した結合的な積 | Moyal の積を一般の相空間へ広げたもの。第5部と第10部第6章で扱う |
| Parisi–Wu の確率過程量子化(1981) | 仮想的な時間についての Langevin 方程式の平衡分布を にする | 虚時間の場の理論の計算法で、Nelson の確率過程量子化とは名前が似た別物。第7部で違いを断るだけにする |
| Koopman–von Neumann(Koopman 1931) | 古典力学の確率分布をヒルベルト空間のベクトルとして書く | 量子力学の構成でなく古典力学の書き直し。比べる相手として例題 1.1.2 で使う |
| 圏論的量子力学(Abramsky と Coecke 2004) | 対称モノイダル圏の図式、ZX 計算 | 量子回路とプロトコルの推論の道具で、物理系の動力学を書く道具でない。『相対エントロピーから情報と物理を組み立てる』の量子計算の部へ送る |
| 無矛盾な歴史(Griffiths 1984) | 時刻ごとの射影の列(歴史)と、歴史の族に確率を割り当てる条件 | 基準と同じ数学の上で「どの問いに確率を割り当ててよいか」を整理するもので、新しい計算の出発点を与えない |
| 場の波動汎関数 | 場の配位の汎関数 と汎関数の Schrödinger 方程式 | 波動関数の構成を場へ広げたもの。第6部で名前だけ |
| 解釈(Copenhagen・多世界 1957・QBism など) | 同じ数学に何を読み込むか | 構成とは別の軸(同じ予言を与える)なので扱わない。Bohm の軌道だけは構成としての側面を第7部で扱う |
表の下半分は採らないものである。採らない理由は大きく2つに分かれる。1つは、量子力学の別の組み立て方でなく、組み立てたものの別の読み方(解釈)であるもの。もう1つは、物理系の動力学を書く道具としては範囲が狭いか、ほかの部の中の1節で足りるものである。
階層の違う構成:第二量子化
採る9つのうち、第二量子化だけは階層が違う。ほかの8つは「1粒子の量子力学を何から組み立てるか」の選択であるのに対し、第二量子化は、すでに組み立てた1粒子の量子力学から多粒子の量子力学を作る手続きである。 個の同種粒子の状態を、1粒子状態の(反)対称化したテンソル積で書き、粒子数の違う空間を直和でつないだ Fock 空間を使う。それでも、物性の計算でいちばん使う言語であり、行列力学(, の代数の起源)、経路積分(コヒーレント状態の経路積分)、密度行列(熱平衡の占有数)の3つと同値性の道筋がつながっているので、1つの部として採る。
古典力学もヒルベルト空間で書ける
表の中の Koopman–von Neumann の行は、比べる相手として使う。この構成では古典力学の相空間の確率分布を、2乗が分布になる複素関数 で表し、Liouville 方程式をヒルベルト空間の上の Schrödinger 型の方程式 ( から作る自己共役演算子)として書く。ここでは位置と運動量はどちらも掛け算の演算子なので交換する。したがって「ヒルベルト空間で書くこと」そのものは量子力学を特徴づけない。量子力学と古典力学の違いは、 という交換関係と、そこから出る不確定性 にある。次の例題で、この違いを③の波束の広がりで見る。
例題 1.1.2 古典の分布と量子の波束の広がりを比べる ★★
オリジナル質量 の自由粒子の古典的な確率分布 は Liouville 方程式 に従う。
- (1) が Liouville 方程式を満たすことを示せ。
- (2) 初めの分布を、 と が独立で平均 、標準偏差 , の Gauss 分布とする。 の分散 を求めよ。
- (3) (2) を式 (1.1.3) と比べ、古典と量子の違いがどこにあるかを述べよ。
1 代表的な論文の書誌は次のとおり。W. Heisenberg (1925), Zeitschrift für Physik 33, 879–893/R. P. Feynman (1948), Reviews of Modern Physics 20, 367–387/E. Wigner (1932), Physical Review 40, 749–759/J. E. Moyal (1949), Proceedings of the Cambridge Philosophical Society 45, 99–124/E. Madelung (1927), Zeitschrift für Physik 40, 322–326/D. Bohm (1952), Physical Review 85, 166–179/E. Nelson (1966), Physical Review 150, 1079–1085/G. Birkhoff and J. von Neumann (1936), Annals of Mathematics 37, 823–843/A. M. Gleason (1957), Journal of Mathematics and Mechanics 6, 885–893。
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