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共通例題②:2準位系の離散 Wigner 関数

2026年10月17日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第5章 共通例題と半古典近似
目次
  1. 連続の位相空間が無い系の Wigner 関数
  2. Rabi 振動を4点で見る
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第5部 第5章 §5.5.3 ★★ 4点の位相空間に Wootters の位相点の演算子を置くと、Bloch ベクトルが4つの値 Wqp=14(1+aqp⋅r)W_{qp}=\frac14(1+\bm{a}_{qp}\cdot\bm{r}) に写る。Rabi 振動の途中で負になり、∣r∣≤1/3\lvert \bm{r}\rvert \le1/\sqrt3 まで縮むと負になれない

連続の位相空間が無い系の Wigner 関数

2準位系は x^\hat x と p^\hat p を持たないので、ここまでの W(x,p)W(x,p) はそのままでは使えない。W. K. Wootters は 1987 年に、dd 準位系(dd が素数のとき)にd×dd\times d 点の離散の位相空間と Wigner 関数を作った1W. K. Wootters (1987), Ann. Phys. (N.Y.) 176, 1–21.下の脚注へ。d=2d=2 の場合を、連続の場合の性質(実数・規格化・直線に沿った和が測定の確率・状態と1対1)を手がかりに組み立てる。

位相空間は (q,p)∈{0,1}2(q,p)\in\{0,1\}^2 の4点である。各点に、2行2列のエルミート行列(位相点の演算子)

A^qp=12[1+(−1)qσz+(−1)pσx+(−1)q+pσy](5.5.10)\hat A_{qp}=\frac12\bigl[1+(-1)^q\sigma_z+(-1)^p\sigma_x+(-1)^{q+p}\sigma_y\bigr]\tag{5.5.10}

を置き、Wigner 関数を Wqp=12Tr⁡(ρ^A^qp)W_{qp}=\frac12\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat A_{qp}) で定める。連続の場合の W(x0,p0)=Tr⁡(ρ^Π^x0,p0)/(πℏ)W(x_0,p_0)=\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat\Pi_{x_0,p_0})/(\pi\hbar)(ずらしたパリティ。第5部第4章)の Π^/(πℏ)\hat\Pi/(\pi\hbar) の役を A^/2\hat A/2 が受け持つ。Bloch ベクトル r=Tr⁡(ρ^σ)\bm{r}=\operatorname{Tr}(\hat\rho\bm{\sigma}) で書くと

Wqp=14[1+(−1)qrz+(−1)prx+(−1)q+pry]=14(1+aqp⋅r),aqp=((−1)p,(−1)q+p,(−1)q)(5.5.11)W_{qp}=\frac14\bigl[1+(-1)^qr_z+(-1)^pr_x+(-1)^{q+p}r_y\bigr]=\frac14\bigl(1+\bm{a}_{qp}\cdot\bm{r}\bigr),\qquad \bm{a}_{qp}=\bigl((-1)^p,(-1)^{q+p},(-1)^q\bigr)\tag{5.5.11}

である。4つのベクトル aqp\bm{a}_{qp} は成分の積が +1+1 の (±1,±1,±1)(\pm1,\pm1,\pm1) で、Bloch 球に内接する立方体の頂点のうち1つおきの4つ、つまり正四面体の頂点をなす。異なる2点では a⋅a′=−1\bm{a}\cdot\bm{a}'=-1、同じ点では 3 なので、Tr⁡(A^qpA^q′p′)=12(1+a⋅a′)=2δqq′δpp′\operatorname{Tr}(\hat A_{qp}\hat A_{q'p'})=\frac12(1+\bm{a}\cdot\bm{a}')=2\delta_{qq'}\delta_{pp'} となり、4つの A^\hat A は2行2列のエルミート行列の空間(実4次元)の直交基底である。したがって ρ^=∑q,pWqpA^qp\hat\rho=\sum_{q,p}W_{qp}\hat A_{qp} と逆に戻せて、WW と ρ^\hat\rho は1対1に対応する(第5部第2章の連続の場合の対応と同じ形)。

連続の位相空間で「直線に沿った積分が1次結合 ax+bpax+bp の分布になる」ことに当たるのが、直線に沿った和である。4点の位相空間には平行な2本の直線の組が3つある。

∑pA^qp=1+(−1)qσz,∑qA^qp=1+(−1)pσx,∑q+p≡cA^qp=1+(−1)cσy\sum_p\hat A_{qp}=1+(-1)^q\sigma_z,\qquad \sum_q\hat A_{qp}=1+(-1)^p\sigma_x,\qquad \sum_{q+p\equiv c}\hat A_{qp}=1+(-1)^c\sigma_y

で、右辺はそれぞれ σz\sigma_z、σx\sigma_x、σy\sigma_y の固有射影の2倍である。よって qq が一定の直線(縦線)での WW の和は σz\sigma_z の測定の確率、pp が一定の直線(横線)での和は σx\sigma_x の、対角線での和は σy\sigma_y の測定の確率になる。とくに σz∣e⟩=+∣e⟩\sigma_z| e \rangle =+| e \rangle の向きでは

Pe=W00+W01=1+rz2(5.5.12)P_e=W_{00}+W_{01}=\frac{1+r_z}{2}\tag{5.5.12}

である。3つの測定は互いに偏りのない基底(どの基底の状態も他の基底で確率 12\frac12 ずつ)で、離散の位相空間の3方向の直線がそれに対応する。

WqpW_{qp} は負になりうる。(5.5.11) が負になるのは aqp⋅r<−1\bm{a}_{qp}\cdot\bm{r}<-1 のときで、∣a∣=3\lvert \bm{a}\rvert =\sqrt3 なので純粋状態(∣r∣=1\lvert \bm{r}\rvert =1)で r\bm{r} がある頂点の真反対を向くと最も負の値 14(1−3)=−0.183\frac14(1-\sqrt3)=-0.183 になる。逆に ∣r∣≤1/3=0.577\lvert \bm{r}\rvert \le1/\sqrt3=0.577 ならどの a\bm{a} との内積も −1-1 以上で、WW は4点とも非負である。連続の場合と同じく、負の値は純粋に近い状態にだけ現れ、混合が進むと消える。

Rabi 振動を4点で見る

共通例題②のハミルトニアン H^=−ℏΔ2σz−ℏΩ2σx\hat H=-\frac{\hbar\Delta}{2}\sigma_z-\frac{\hbar\Omega}{2}\sigma_x で、∣g⟩| g \rangle(r=(0,0,−1)\bm{r}=(0,0,-1))から出発する。Bloch ベクトルは r˙=h×r\dot{\bm{r}}=\bm{h}\times\bm{r}、h=(−Ω,0,−Δ)\bm{h}=(-\Omega,0,-\Delta) で回る(第2部第3章の Pauli 行列の Heisenberg 方程式の期待値)。共鳴(Δ=0\Delta=0)では r(t)=(0,−sin⁡Ωt,−cos⁡Ωt)\bm{r}(t)=(0,-\sin\Omega t,-\cos\Omega t) で、(5.5.11) から

Wqp(t)=14[1−(−1)qcos⁡Ωt−(−1)q+psin⁡Ωt]W_{qp}(t)=\frac14\bigl[1-(-1)^q\cos\Omega t-(-1)^{q+p}\sin\Omega t\bigr]

である。縦線 q=0q=0 の和は 12(1−cos⁡Ωt)=sin⁡2(Ωt/2)\frac12(1-\cos\Omega t)=\sin^2(\Omega t/2) で、共通例題②の PeP_e の共鳴での形が出る。Δ≠0\Delta\ne0 でも (5.5.12) はPe=(Ω/Ω′)2sin⁡2(Ω′t/2)P_e=(\Omega/\Omega')^2\sin^2(\Omega't/2)(Ω′=Ω2+Δ2\Omega'=\sqrt{\Omega^2+\Delta^2})を与えることを検算した。

Ωt=π/4\Omega t=\pi/4 では W00=14(1−2)=−0.104W_{00}=\frac14(1-\sqrt2)=-0.104、W01=W11=0.25W_{01}=W_{11}=0.25、W10=14(1+2)=0.604W_{10}=\frac14(1+\sqrt2)=0.604 で、1点が負である。共鳴の Rabi 振動では、r\bm{r} が yy–zz 面の大円を回り、Ωt\Omega t が π/2\pi/2 の整数倍の瞬間(r\bm{r} が座標軸に重なる瞬間)を除いて、いつもどこか1点が負になる。緩和を入れると(Lindblad 方程式。第4部第5章)r\bm{r} は球の内側へ縮み、∣r∣≤1/3\lvert \bm{r}\rvert \le1/\sqrt3 に入った後は負の値は現れない。

離散 Wigner 関数の選び方は1つではない。(5.5.10) の符号を変えた別の正四面体(成分の積が −1-1 の4頂点)を使っても、同じ3組の直線の性質を持つ Wigner 関数ができる。連続の場合の Wigner 関数が (W1)〜(W4) でほぼ一意に決まったのとは違い、2準位系では位相空間の向きの付け方の分だけ選択の自由が残る。ここでは共通例題②の答え Pe(t)P_e(t) が縦線の和として出ることを確かめるのにとどめ、一般確率論の状態空間としての Bloch 球は 第9部第4章に任せる。

例題 5.5.3 離調のある Rabi 振動の離散 Wigner 関数 ★★

オリジナルΔ=Ω\Delta=\Omega(Ω′=2 Ω\Omega'=\sqrt2\,\Omega)とし、∣g⟩| g \rangle から出発する。

  1. (1) r(t)\bm{r}(t) を求め、PeP_e の最大値を求めよ。
  2. (2) Ω′t=π/2\Omega't=\pi/2 での r\bm{r} と、4点の WqpW_{qp} の最小値を求めよ。
解答

(1) r\bm{r} は単位ベクトル n^=h/∣h∣=(−1,0,−1)/2\hat{\bm{n}}=\bm{h}/\lvert \bm{h}\rvert =(-1,0,-1)/\sqrt2 のまわりを角速度 Ω′\Omega' で回る。r0=(0,0,−1)\bm{r}_0=(0,0,-1) を n^\hat{\bm{n}} に平行な部分(n^⋅r0)n^=(−12,0,−12)(\hat{\bm{n}}\cdot\bm{r}_0)\hat{\bm{n}}=(-\frac12,0,-\frac12) と垂直な部分 (12,0,−12)(\frac12,0,-\frac12) に分け、垂直な部分を n^×r0=(0,−1,0)/2\hat{\bm{n}}\times\bm{r}_0=(0,-1,0)/\sqrt2 の向きへ回すと、θ=Ω′t\theta=\Omega't として

r(t)=(−12+12cos⁡θ, −sin⁡θ2, −12−12cos⁡θ).\bm{r}(t)=\Bigl(-\frac12+\frac12\cos\theta,\ -\frac{\sin\theta}{\sqrt2},\ -\frac12-\frac12\cos\theta\Bigr) .

Pe=1+rz2=1−cos⁡θ4=12sin⁡2θ2P_e=\frac{1+r_z}2=\frac{1-\cos\theta}{4}=\frac12\sin^2\frac\theta2 で、共通例題②の (Ω/Ω′)2=12(\Omega/\Omega')^2=\frac12 と一致し、最大値は 12\frac12。

(2) θ=π/2\theta=\pi/2 で r=(−12,−12,−12)\bm{r}=(-\frac12,-\frac1{\sqrt2},-\frac12)、∣r∣=1\lvert \bm{r}\rvert =1。a=(1,1,1)\bm{a}=(1,1,1)(q=p=0q=p=0)との内積が −12−12−12=−1.707-\frac12-\frac1{\sqrt2}-\frac12=-1.707 で最小なので、W00=14(1−1.707)=−0.177W_{00}=\frac14(1-1.707)=-0.177。ほかの3点は a⋅r=−12+12+12\bm{a}\cdot\bm{r}=-\frac12+\frac1{\sqrt2}+\frac12 などで正である。r\bm{r} が正四面体の頂点 (1,1,1)/3(1,1,1)/\sqrt3 の真反対 (−1,−1,−1)/3(-1,-1,-1)/\sqrt3 に近いほど負の値は大きく、この時刻の −0.177-0.177 は最小値 −0.183-0.183 に近い。

1 W. K. Wootters (1987), Ann. Phys. (N.Y.) 176, 1–21.

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