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出発点:準備と測定の確率の表

2026年10月17日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第9部 第4章 一般確率論:状態空間の形で古典ビット・量子ビット・PR 箱を比べる
目次
  1. 確率の表と状態
  2. 基準の測定と、状態を表すベクトル
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第9部 第4章 §9.4.1 ★★★ この章の出発点の要請。準備の手順と測定の結果の組に確率を割り当てる表から、状態を凸集合の点として、測定の結果を affine な関数として定める

第9部のここまでの3章は、命題(射影)の側から量子力学を組み立て直した。第9部第1章 は命題の束が分配律を満たさないことを、第9部第2章 はその束の上の確率が3次元以上では必ず Tr⁡(ρ^P^)\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat P) の形になること(Gleason の定理)を、第9部第3章 は測る前から値が決まっているという非文脈的な模型が3次元以上で作れないこと(Kochen–Specker の定理)を示した。どの章も、ヒルベルト空間の射影の束を最初から与えたうえで、その上に何が載るかを調べている。

この章では、ヒルベルト空間も射影も仮定しない。実験室で実際に記録できるもの、すなわち「この手順で系を準備し、この装置で測ったら、この結果がこの頻度で出た」という確率の表だけを出発点に置く。この表から、状態の全体は凸集合になり、測定の結果は状態の上の affine な関数になることが出てくる。この枠を一般確率論(generalized probabilistic theory、GPT)と呼ぶ。古典論も量子論も一般確率論の1つの例で、状態の全体(状態空間)の形が違うだけである。古典ビットの状態空間は線分(一般には単体)、量子ビットの状態空間は Bloch 球、PR 箱を局所的に見た系(gbit)の状態空間は正方形になる。

第9部の型(出発点の要請 → 基本の対象 → 基準との同値 → 共通例題 → 得意な問題 → 限界)のうち、この章は「出発点の要請」を操作的な形に置き直し、共通例題②(量子ビット)を状態空間の言葉で解く。9.4.1節で確率の表から状態空間を作り、9.4.2節で古典の状態空間が単体であることと分解の一意性の同値を証明する。9.4.3節で量子ビットの状態空間と効果を求め、共通例題②の Rabi 振動を球の回転として、緩和を球の内側への縮小として解く。緩和の写像が球を球の中へ写すという条件だけから T2≤2T1T_2\le2T_1 が出る。9.4.4節で PR 箱を無信号の箱の多面体の頂点として扱い、9.4.5節で3つの状態空間を区別できる状態の数・可逆な変換・複製・相関の強さで比べる。9.4.6節が橋の節で、Bloch 球の一般確率論が量子ビットの密度行列と同じものであることを両向きに証明し、第4部・第8部・第9部の前の章と並べる。

確率の表と状態

実験は3つの段階に分けて記述することができる。系を用意する準備、系に何かを施す変換、結果を読む測定である。準備の手順を PP、測定を MM、その結果を kk と書く。同じ PP と MM を何度も繰り返すと結果 kk の相対頻度が定まり、それを Pr⁡(k ∣ P,M)\Pr(k\,|\,P,M) と書く。一般確率論は、この確率の表 Pr⁡(k∣P,M)\Pr(k|P,M) のほかに何も仮定しないところから始める。

2つの準備 PP と P′P' が、どの測定のどの結果についても同じ確率を与えるなら、両者は実験で区別できない。そこで、表の上で区別できない準備をひとまとめにしたもの(同値類)を状態と呼び、ss と書く。同じように、どの状態についても同じ確率を与える「測定 MM の結果 kk」をひとまとめにしたものを効果と呼び、ee と書く。効果 ee は状態 ss に確率 e(s)∈[0,1]e(s)\in[0,1] を割り当てる関数である。

準備の手順を混ぜることができる。確率 pp で P1P_1 を、確率 1−p1-p で P2P_2 を行う手順(硬貨を投げて決め、どちらを行ったかは忘れる)を pP1+(1−p)P2pP_1+(1-p)P_2 と書く。この混ぜた準備で結果 kk が出る確率は、全確率の公式から

Pr⁡(k ∣ pP1+(1−p)P2,M)=pPr⁡(k∣P1,M)+(1−p)Pr⁡(k∣P2,M)(9.4.1)\Pr\bigl(k\,\big|\,pP_1+(1-p)P_2,M\bigr)=p\Pr(k|P_1,M)+(1-p)\Pr(k|P_2,M)\tag{9.4.1}

である。左辺は混ぜた準備の状態、右辺は2つの状態の確率の重みつき平均なので、状態の全体には「混ぜる」という演算 ps1+(1−p)s2ps_1+(1-p)s_2 が入り、どの効果もこの演算と両立する(affine である)。

定義 9.4.1(一般確率論の系)

次の (G1)〜(G4) を満たす組を一般確率論の系と呼ぶ。

  1. (G1) 状態空間:状態の全体 S\mathcal S は、有限次元の実ベクトル空間 RK\mathbb{R}^{K} の中のコンパクトな凸集合として表される。混合は凸結合 ps1+(1−p)s2ps_1+(1-p)s_2 である。
  2. (G2) 効果:効果は S\mathcal S の上の affine な関数 e:S→[0,1]e:\mathcal S\to[0,1] である。どの状態にも 11 を与える効果を単位効果 uu と書く。
  3. (G3) 測定:結果が nn 通りの測定は、効果の組 {e1,…,en}\{e_1,\dots,e_n\} で ∑kek=u\sum_ke_k=u を満たすものである。
  4. (G4) 変換:変換は S\mathcal S を S\mathcal S の中へ写す affine な写像である。逆の変換もそうであるものを可逆な変換と呼ぶ。

(G1) の「コンパクト」は、状態の極限も状態に含めるという約束で、有限次元では有界で閉じていることと同じである。(G4) の affine 性は、変換を施してから混ぜても、混ぜてから変換を施しても同じ準備になることから出る。定義 9.4.1 は効果として許すものを決めていない。この章では、S\mathcal S の上の affine な関数で値が [0,1][0,1] に入るものはすべて効果として実現できると仮定する(制限なしの仮定)。古典ビット・量子ビット・gbit はどれもこの仮定を満たす。

基準の測定と、状態を表すベクトル

状態は「すべての効果の確率」の一覧で決まるが、効果が affine なので、実際には有限個の確率で足りる。

命題 9.4.2(基準の効果 ★★★)

状態空間 S\mathcal S の affine 包の次元を K−1K-1 とする。このとき K−1K-1 個の効果 e1,…,eK−1e_1,\dots,e_{K-1} を選んで、どの状態 ss も確率の組 (e1(s),…,eK−1(s))\bigl(e_1(s),\dots,e_{K-1}(s)\bigr) で決まるようにできる。さらにどの効果 ee も、定数と e1,…,eK−1e_1,\dots,e_{K-1} の1次結合 e(s)=c0+∑jcjej(s)e(s)=c_0+\sum_jc_je_j(s) で書ける。

証明

S\mathcal S の affine 包を A\mathbb A とし、その中に affine 独立な KK 個の状態 s0,…,sK−1s_0,\dots,s_{K-1} をとる。A\mathbb A の点は重心座標 (θ0,…,θK−1)(\theta_0,\dots,\theta_{K-1})(∑θi=1\sum\theta_i=1)で一意に書ける。affine な関数は重心座標の1次式なので、sis_i での値が決まれば A\mathbb A 全体で決まる。affine な関数 ee を S\mathcal S に制限したものの全体は、定数 11 を含む KK 次元の実ベクトル空間 A\mathcal A をなす。S\mathcal S はコンパクトなので、affine な関数は S\mathcal S の上で有界である。A\mathcal A の基底 1,g1,…,gK−11,g_1,\dots,g_{K-1} をとり、gjg_j を ej=αjgj+βje_j=\alpha_jg_j+\beta_j(αj>0\alpha_j>0 を十分小さく、βj\beta_j を適当に)と縮めて値を [0,1][0,1] に収めれば、制限なしの仮定から eje_j は効果で、1,e1,…,eK−11,e_1,\dots,e_{K-1} も A\mathcal A の基底である。効果 e∈Ae\in\mathcal A はこの基底の1次結合 c0+∑jcjejc_0+\sum_jc_je_j に書ける。2つの状態 s,s′s,s' で ej(s)=ej(s′)e_j(s)=e_j(s') がすべての jj について成り立てば、どの効果も ss と s′s' に同じ確率を与えるので、両者は同じ状態である。

命題 9.4.2 の e1,…,eK−1e_1,\dots,e_{K-1} を基準の効果と呼ぶ。状態は K−1K-1 個の確率で決まり、規格化の 11 を加えたベクトル (1,e1(s),…,eK−1(s))∈RK\bigl(1,e_1(s),\dots,e_{K-1}(s)\bigr)\in\mathbb{R}^K で表される。この KK が (G1) の KK である。もう1つの数として、1回の測定で誤りなく区別できる状態の最大の個数を NN と書く。正確には、状態 s1,…,sns_1,\dots,s_n と測定 {e1,…,en}\{e_1,\dots,e_n\} で ek(sl)=δkle_k(s_l)=\delta_{kl} となるものがある最大の nn である。KK は状態を指定するのに要る確率の数、NN はその系が運べる古典の情報の量に当たる。古典の dd 準位系では K=N=dK=N=d、量子の dd 準位系では K=d2K=d^2、N=dN=d である。2つの数の関係は 第9部第5章 で Hardy の公理を扱うときの出発点になる。

例題 9.4.1 量子ビットの基準の測定と、表からの予言 ★★

オリジナルスピン½の系で、σx,σy,σz\sigma_x,\sigma_y,\sigma_z の3つの測定の「+1+1 が出る」効果を基準の効果に選ぶ。ある準備は、硬貨を投げて表なら ∣↑⟩| \uparrow \rangle(σz=+1\sigma_z=+1 の状態)を、裏なら σx=+1\sigma_x=+1 の状態を用意する手順である。

  1. (1) この準備の基準の確率 (px,py,pz)\bigl(p_x,p_y,p_z\bigr) を求めよ。
  2. (2) pk=12(1+rk)p_k=\frac12(1+r_k) で決まるベクトル r\bm{r} を使って、向き n=(1,0,1)/2\bm{n}=(1,0,1)/\sqrt2 のスピンの測定で +1+1 が出る確率を予言せよ。
  3. (3) KK の値を答え、予言に4つの確率(規格化を含む)で足りる理由を述べよ。
解答

(1) ∣↑⟩| \uparrow \rangle の Bloch ベクトルは (0,0,1)(0,0,1)、σx=+1\sigma_x=+1 の状態は (1,0,0)(1,0,0) である。n⋅σ\bm{n}\cdot\bm{\sigma} で +1+1 が出る確率は 12(1+r⋅n)\frac12(1+\bm{r}\cdot\bm{n}) なので、∣↑⟩| \uparrow \rangle では (px,py,pz)=(12,12,1)(p_x,p_y,p_z)=(\frac12,\frac12,1)、σx=+1\sigma_x=+1 の状態では (1,12,12)(1,\frac12,\frac12) である。混ぜた準備の確率は (9.4.1) から平均をとって (px,py,pz)=(34,12,34)(p_x,p_y,p_z)=(\frac34,\frac12,\frac34)。

(2) rk=2pk−1r_k=2p_k-1 から r=(12,0,12)\bm{r}=(\frac12,0,\frac12)。n⋅σ\bm{n}\cdot\bm{\sigma} の +1+1 の効果は 12(1+n⋅r)\frac12(1+\bm{n}\cdot\bm{r}) という r\bm{r} の affine な関数なので、確率は 12(1+12)≈0.854\frac12\bigl(1+\frac{1}{\sqrt2}\bigr)\approx0.854 である。これは混ぜた密度行列 ρ^=12(∣↑⟩⟨↑∣+∣+x⟩⟨+x∣)\hat\rho=\frac12\bigl(| \uparrow \rangle \langle \uparrow |+| +_x \rangle \langle +_x |\bigr) で Born の規則を計算した値と一致する。

(3) 状態は r\bm{r} の3成分で決まり、規格化の 11 を加えて K=4K=4 である。どの効果も r\bm{r} の affine な関数(a+b⋅ra+\bm{b}\cdot\bm{r}。9.4.3節)なので、r\bm{r} を知れば、まだ測っていない向きの測定の確率まで計算できる。

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