解答
(1) ⟨n∣α⟩=e−∣α∣2/2αn/n! より
⟨n∣ρ^B∣n′⟩=∫d2απnˉe−∣α∣2/nˉe−∣α∣2n!n′!αnα∗n′.
α=reiφ と書くと φ の積分で n=n′ の項は消え、n=n′ では
πnˉn!2π∫0∞r2n+1e−r2(1+1/nˉ)dr=nˉn!1⋅(1+1/nˉ)n+1n!=(nˉ+1)n+1nˉn.
e−βℏω=nˉ/(nˉ+1)、1−e−βℏω=1/(nˉ+1) なので、これは (A) の重み pn に等しい。2つの混合は同じ ρ^ である。
(2) 各成分 ψne−iEnt/ℏ は位置の部分が実数なので速度場は 0、軌道は X(t)=x0(止まったまま)。x0 は ∣ψn∣2 に従い、⟨x2⟩n=σg2(2n+1) なので
⟨X(t)2⟩=n∑pnσg2(2n+1)=σg2(1+2nˉ)=σg2coth2βℏω
(∑n(1−q)qn(2n+1)=(1+q)/(1−q)、q=e−βℏω)。
(3) 成分 ∣α⟩ の軌道は (7.4.9) で、x0=Xc(0)+ξ(ξ は平均 0・分散 σg2 のガウス分布で、α と独立)と書けばX(t)=ξ+Xc(t)。Xc(t)=2σgRe(αe−iωt) で、P(α) のもとで Reα と Imα は独立で分散 nˉ/2 のガウス分布に従うので、e−iωt を掛けても分布は変わらず、Xc(t) の分散は 4σg2⋅nˉ/2=2nˉσg2。よって⟨X(t)2⟩=σg2+2nˉσg2=σg2coth(βℏω/2) で、(2) と同じく時刻によらない。どちらの混合でも位置の分布は熱平衡のガウス分布で、等変性が混合の各成分で成り立つことの帰結である。
(4) (A):軌道が止まっているので ⟨X(0)X(t)⟩A=σg2coth(βℏω/2)(定数)。(B):Xc(t)=Xc(0)cosωt+(Pc(0)/mω)sinωt で、Xc(0) と Pc(0)/(mω) は独立で分散がともに 2nˉσg2 なので
⟨X(0)X(t)⟩B=⟨ξ2⟩+⟨Xc(0)Xc(t)⟩=σg2(1+2nˉcosωt).
基準:x^H(t)=x^cosωt+(p^/mω)sinωt と、熱平衡で ⟨x^p^+p^x^⟩=0 からReTr(ρ^x^x^H(t))=σg2coth(βℏω/2)cosωt。t=0 では3つとも σg2coth(βℏω/2) で一致するが、t>0 では互いに違う(t=π/ω で coth、1−2nˉ、−coth)。同じ ρ^ でもアンサンブルの選び方で軌道の相関が変わり、どちらも基準の2時刻の相関と一致しない。アンサンブルの違いは記録なしには観測できず(第4部第3章)、測らない軌道の相関は観測量でないので(例題 7.4.6)、どちらも同値性と矛盾しない。(モンテカルロで βℏω=0.5、ωt=1 の (B) の相関を 40 万本の軌道から求め、式の値 2.666σg2 と 0.3% で一致した。)
(5) ℏ→0 で σg2=ℏ/(2mω)→0、coth(βℏω/2)≈2kBT/(ℏω) なので σg2coth(βℏω/2)→kBT/(mω2)、2nˉσg2→kBT/(mω2)。したがって(A) →kBT/(mω2)(定数)、(B) →(kBT/mω2)cosωt、基準 →(kBT/mω2)cosωt。古典の相関に近づくのは (B) と基準で、(A) は近づかない。固有状態の混合では、どれほど ℏ が小さくても粒子は止まったままで、量子ポテンシャルの力が古典の力を打ち消し続ける(第7部第2章の定在波で、Q が小さくならず局所平均だけが古典に近づく現象と同じ理由)。古典極限の軌道が出るのは、コヒーレント状態のように ρ と S が ℏ によらず滑らかな成分に分けたときに限られる。