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無限系の熱平衡:温度ごとに表現が違う

2026年10月17日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第8部 第4章 熱平衡と相転移:KMS 条件
目次
  1. 量子スピン系の準局所代数と局所ハミルトニアン
  2. 相互作用の無い鎖:積状態が唯一の KMS 状態
  3. 温度が違えば表現が違う
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第8部 第4章 §8.4.4 ★★ 無限に長いスピン鎖では Gibbs の密度行列は書けないが、有限の鎖の Gibbs 状態の極限が KMS 状態になる。温度の違う熱平衡は互いに別の表現に住む

量子スピン系の準局所代数と局所ハミルトニアン

整数の格子 Zd\mathbb{Z}^d の各点 kk に量子ビット(代数 M2(C)M_2(\mathbb{C}))を置く。有限の部分集合 Λ⊂Zd\Lambda\subset\mathbb{Z}^d の上の観測量の代数は AΛ=⨂k∈ΛM2(C)≅M2∣Λ∣(C)\mathfrak A_\Lambda=\bigotimes_{k\in\Lambda}M_2(\mathbb{C})\cong M_{2^{\lvert \Lambda\rvert }}(\mathbb{C}) で、Λ⊂Λ′\Lambda\subset\Lambda' なら A↦A⊗1A\mapsto A\otimes1 で AΛ⊂AΛ′\mathfrak A_\Lambda\subset\mathfrak A_{\Lambda'} とみなす。すべての有限の Λ\Lambda の AΛ\mathfrak A_\Lambda の和集合をノルムで閉じたものが準局所代数 A\mathfrak A で、前々章で名前だけ出したものである(第8部第1章)。

ハミルトニアンは有限の Λ\Lambda ごとに H^Λ=∑X⊂ΛΦ(X)\hat H_\Lambda=\sum_{X\subset\Lambda}\Phi(X) と与える。Φ(X)∈AX\Phi(X)\in\mathfrak A_X は有限の集合 XX に働く相互作用(XX が1点なら外場、隣り合う2点なら最近接の相互作用)である。H^Λ\hat H_\Lambda は 2∣Λ∣2^{\lvert \Lambda\rvert } 次元の行列なので、Λ\Lambda の上の Gibbs 状態 ωΛ,β(A)=Tr⁡(e−βH^ΛA)/ZΛ\omega_{\Lambda,\beta}(A)=\operatorname{Tr}(\mathrm{e}^{-\beta\hat H_\Lambda}A)/Z_\Lambda は定義できる。しかし ln⁡ZΛ\ln Z_\Lambda は点の数 ∣Λ∣\lvert \Lambda\rvert に比例して大きくなり(1点あたりの自由エネルギー −ln⁡ZΛ/(β∣Λ∣)-\ln Z_\Lambda/(\beta\lvert \Lambda\rvert ) が有限の値に近づく)、Λ→Zd\Lambda\to\mathbb{Z}^d で ZΛZ_\Lambda そのものは発散する。無限系の e−βH^/Z\mathrm{e}^{-\beta\hat H}/Z は、分子と分母がどちらも意味を失う。

それでも次のことが知られている(証明は Bratteli–Robinson 第2巻にある)。相互作用 Φ\Phi の到達距離が有限で並進に対して一様なら、(a) αtΛ(A)=eiH^Λt/ℏAe−iH^Λt/ℏ\alpha^\Lambda_t(A)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\hat H_\Lambda t/\hbar}A\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\hat H_\Lambda t/\hbar} は Λ→Zd\Lambda\to\mathbb{Z}^d でノルム収束し、A\mathfrak A の時間発展 αt\alpha_t を定める。(b) 有限の Λ\Lambda の Gibbs 状態 ωΛ,β\omega_{\Lambda,\beta} の極限点(各 AA での期待値の収束で測った極限)は (α,β)(\alpha,\beta)-KMS 状態である。有限の系の熱平衡を大きくしていった先は KMS 状態であり、定義 8.4.2 が熱力学極限と矛盾しない定義になっている。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 1/∣Λ∣→01/\lvert \Lambda\rvert \to0(格子点の数の逆数。有限の系の Gibbs 状態を無限系の KMS 状態で表す熱力学極限) | 証明 条件付き(到達距離が有限で並進に一様な相互作用なら、有限系の Gibbs 状態の極限点は KMS 状態になる。Bratteli–Robinson 第2巻。長距離の相互作用では時間発展の存在から要確認) | 行き先 近似の数理 第13章

相互作用の無い鎖:積状態が唯一の KMS 状態

最も簡単な例は、各点に同じ h^=−(ℏΩ′/2) n⋅σ\hat h=-(\hbar\Omega'/2)\,\bm{n}\cdot\bm{\sigma} を置き、相互作用の無い H^Λ=∑k∈Λh^k\hat H_\Lambda=\sum_{k\in\Lambda}\hat h_k をとる場合である。e−βH^Λ=⨂ke−βh^k\mathrm{e}^{-\beta\hat H_\Lambda}=\bigotimes_k\mathrm{e}^{-\beta\hat h_k} なので、有限の Λ\Lambda の Gibbs 状態は1点の Gibbs 状態の積で、Λ→Zd\Lambda\to\mathbb{Z}^d の極限は積状態ωβ=⨂kωβ,1\omega_\beta=\bigotimes_k\omega_{\beta,1} である。この状態は KMS 状態で、しかもただ1つである。理由は次のとおり。Λ\Lambda に台をもつ観測量 A,BA,B に対して αt\alpha_t は Λ\Lambda の中だけで働くので、どの KMS 状態 ω\omega も AΛ\mathfrak A_\Lambda に制限すると H^Λ\hat H_\Lambda の KMS の関係を満たす。定理 8.4.1 により制限は Λ\Lambda の Gibbs 状態に決まり、すべての Λ\Lambda で決まれば A\mathfrak A の上の状態も決まる。

温度が違えば表現が違う

温度の違う2つの積状態 ωβ\omega_\beta と ωβ′\omega_{\beta'} を比べる。前の章の補題(大数の法則の形)により、積状態の GNS 表現では、各点の同じ観測量の平均MN=1N∑k=1Nπ(Ak)M_N=\frac1N\sum_{k=1}^N\pi(A_k) が数 ωβ,1(A)\omega_{\beta,1}(A) の倍の単位作用素に強収束する(第8部第3章)。A=n⋅σA=\bm{n}\cdot\bm{\sigma} を選ぶと、極限の数は tanh⁡(βℏΩ′/2)\tanh(\beta\hbar\Omega'/2) で、温度によって違う。前の章の定理により、tanh⁡(βℏΩ′/2)≠tanh⁡(β′ℏΩ′/2)\tanh(\beta\hbar\Omega'/2)\ne\tanh(\beta'\hbar\Omega'/2) なら2つの GNS 表現はユニタリ同値でなく、一方は他方の表現の正規状態(密度行列で書ける状態)でもない。

有限の系では、どの温度の熱平衡も同じ C2N\mathbb{C}^{2^N} の上の密度行列で、温度を変えることは密度行列を取り替えることにすぎなかった。無限系では温度を変えると表現そのものが変わる。巨視的な平均 MNM_N の極限は温度ごとに違う数になり、この数が違う状態は同じヒルベルト空間の密度行列として書くことができない。第8部第2章で見た「熱平衡の GNS は2倍の系になる」という構造(Haag・Hugenholtz・Winnink の論文が有限系・無限系の両方で示したこと)は、温度ごとに別々の2倍の系があることを意味する。

例題 8.4.4 2つの温度の常磁性の鎖を見分ける ★★

オリジナル例題 8.4.1 の量子ビットを1次元の格子に無限個並べ、相互作用は入れない。温度は βℏΩ′/2=ln⁡3\beta\hbar\Omega'/2=\ln3(状態 ωβ\omega_\beta)と ln⁡2\ln2(状態 ωβ′\omega_{\beta'})の2つとする。

  1. (1) 1点の ωβ,1(n⋅σ)\omega_{\beta,1}(\bm{n}\cdot\bm{\sigma}) と ωβ′,1(n⋅σ)\omega_{\beta',1}(\bm{n}\cdot\bm{\sigma}) を求めよ。
  2. (2) A=n⋅σA=\bm{n}\cdot\bm{\sigma} の平均 MNM_N の、それぞれの GNS 表現でのゆらぎ ∥(MN−m)ξ∥\lVert (M_N-m)\xi\rVert(mm は (1) の値)を N=100N=100 で求め、2つの表現が N=100N=100 で既に見分けられることを確かめよ。
  3. (3) 1点あたりの自由エネルギーを ωβ\omega_\beta について求めよ(ℏΩ′\hbar\Omega' を単位に)。
解答

(1) 例題 8.4.1 と同じく ωβ,1(n⋅σ)=tanh⁡(βℏΩ′/2)\omega_{\beta,1}(\bm{n}\cdot\bm{\sigma})=\tanh(\beta\hbar\Omega'/2) で、tanh⁡(ln⁡3)=(3−1/3)/(3+1/3)=0.8\tanh(\ln3)=(3-1/3)/(3+1/3)=0.8、tanh⁡(ln⁡2)=(2−1/2)/(2+1/2)=0.6\tanh(\ln2)=(2-1/2)/(2+1/2)=0.6。

(2) 前の章の式(第8部第3章)で ∥(MN−m)ξ∥2=ω1((A−m)2)/N=(1−m2)/N\lVert (M_N-m)\xi\rVert ^2=\omega_1\bigl((A-m)^2\bigr)/N=(1-m^2)/N(A2=1A^2=1 を使った)。ωβ\omega_\beta では 0.36/100=0.06\sqrt{0.36/100}=0.06、ωβ′\omega_{\beta'} では 0.64/100=0.08\sqrt{0.64/100}=0.08。2つの値の差 0.20.2 はゆらぎの和 0.140.14 より大きい。N→∞N\to\infty でゆらぎは 00 に行き、2つの表現は完全に分かれる。

(3) 1点の分配関数は z1=eβℏΩ′/2+e−βℏΩ′/2=2cosh⁡(ln⁡3)=10/3z_1=\mathrm{e}^{\beta\hbar\Omega'/2}+\mathrm{e}^{-\beta\hbar\Omega'/2}=2\cosh(\ln3)=10/3。NN 点では ZN=z1NZ_N=z_1^N で発散するが、1点あたりの自由エネルギー−ln⁡ZN/(βN)=−ln⁡(10/3)/β=−ℏΩ′ln⁡(10/3)/(2ln⁡3)=−0.548 ℏΩ′-\ln Z_N/(\beta N)=-\ln(10/3)/\beta=-\hbar\Omega'\ln(10/3)/(2\ln3)=-0.548\,\hbar\Omega' は NN によらず有限である。

木下の勉強ステータス

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