ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部 第5章 §4.5.6 ★★ Hall 効果の温度変化で n(T) と ED、赤外吸収で不純物の準位、容量と電圧の関係で ND と Vbi、電流と電圧の関係で Shockley の式を確かめる
何の実験の量で確かめるか
Hall 効果の温度変化。Hall 係数は1種類のキャリアなら −1/(ne) で、符号からキャリアの種類が、大きさから密度が分かる(第4部第4章)。これを温度を変えて測り、lnn を 1/T に対して描くと図 4.5.1 の形が得られ、凍結の領域の傾きから ED(補償なしなら傾きは ED/2)、飽和の値から ND−NA、真性の領域の傾きから Eg/2 を読み取ることができる。抵抗率と合わせれば移動度 μe=σ/(ne) も分かる(第4部第2章)。
赤外吸収。低温で中性のドナーに赤外光を当てると、包絡線の 1s から 2p・3p などの励起状態への遷移が鋭い吸収線として現れる。線の間隔は水素の系列を ED で縮めた形になり、有効質量近似の検証になる(上で引いた Faulkner と Jagannath らの比較はこの測定による)。
容量と電圧の関係。空乏層は誘電体をはさんだコンデンサとみなせ、単位面積あたりの容量は C′=ε0εr/W である。NA≫ND の片側の接合では式 (4.5.20) から
C′21=eε0εrND2(Vbi−V)(4.5.27)
で、1/C′2 を V に対して描くと直線になり、傾きから ND、V 軸の切片から Vbi を読み取ることができる。
電流と電圧の関係。lnJ を V に対して描くと、Shockley の式の範囲では傾きが e/(kBT)、すなわち室温で 1 桁あたり 59.5mV になる。実際の接合では傾きが e/(nidkBT)(1≤nid≤2)になることが多く、nid を理想因子と呼ぶ。nid が 2 に近いことは、4.5.5節で述べた空乏層の中の再結合の電流が支配的であることを示す。太陽電池では、開放電圧と光電流の関係 (4.5.25) が同じ Js で書けるかを確かめる。
例題 4.5.9 容量の測定から ND と Vbi を読む ★★
オリジナルSi(εr=11.7)の p+n 接合(NA≫ND)の単位面積あたりの容量を測ったところ、V=0 で C′=3.22×10−4Fm−2、V=−5V で 1.20×10−4Fm−2 だった。ND と Vbi を求めよ。
解答
1/C′2 は V=0 で 9.65×106、V=−5V で 6.94×107m4F−2 で、その差を 5V で割った傾きは 1.196×107m4F−2V−1 である。式 (4.5.27) の傾き 2/(eε0εrND) と比べて ND=2/(1.602×10−19×8.854×10−12×11.7×1.196×107)=1.0×1022m−3=1.0×1016cm−3 である。V=0 の値を傾きで割ると Vbi=9.65×106/1.196×107=0.81V になる(容量の有効数字3桁で ±0.01V ほど)。2点だけでは直線であることを確かめられないので、実際には多数の電圧で測り、直線から外れれば ND が深さとともに変わっていると読む(W がその深さを与える)。
授業で習った形との対応
学部の半導体の授業では、この章の式を次の形で書くことが多い。電荷を q(=e)、Fermi 準位を EF(=μ)、バンドの端を EC・EV、ドナーの準位を ED と書く。この章の ED は結合エネルギー(εc−εD)なので、授業の EC−ED がこれに当たる。
ND+=1+2exp((EF−ED)/kBT)ND,Vbi=qkBTlnni2NAND,I=I0(eqV/(nidkBT)−1)
第1式は式 (4.5.7) と同じで、授業では「縮退度 g=2」と呼ぶ因子が、この章では大分配関数 (4.5.6) のスピンの2状態として出た。第2式は式 (4.5.16) の第1の形である。授業ではこれを「接合の両側で Fermi 準位がそろう」図から読み、この章では μ が平らでなければ電流が流れ続けることと、Einstein の関係 (4.5.18) で Jn=0 になることの2通りに言い換えた。第3式は Shockley の式 (4.5.23) に理想因子を入れたもので、I0 は Js に面積を掛けたものである。授業では理想因子を測定値の補正として出すことが多いが、この章では nid=1 が低注入と拡散の電流、nid=2 が空乏層の中の再結合または高注入から出ることを4.5.5節で述べた。
授業のバンド図は、縦にエネルギー、横に位置をとり、Fermi 準位を水平な破線で描く(図 4.5.2)。この図の「バンドが曲がる」は、電子のポテンシャルエネルギー −eϕ(x) がバンドの端に足されることそのもので、電場の中で電子は εc(x) の低い向きへ、正孔は εv(x) の高い向き(正孔のエネルギーは下向きに測るので、正孔にとってエネルギーの低い向き)へ動く。
例題 4.5.10 理想因子と飽和電流を電流の測定から読む ★
オリジナル室温(kBT/q=0.02585V)のダイオードで、V=0.40V で I=1.00×10−7A、V=0.50V で I=2.51×10−6A だった。I=I0(eqV/(nidkBT)−1) の −1 を無視して、理想因子 nid と I0 を求めよ。
解答
2点の比をとると ln(2.51×10−6/1.00×10−7)=ln25.1=3.223 が 0.10/(nid×0.02585) に等しいので、nid=0.10/(0.02585×3.223)=1.20 である。I0=1.00×10−7×e−0.40/(1.20×0.02585)=1.00×10−7×e−12.9=2.5×10−13A である。nid=1.2 は、拡散の電流が主で、空乏層の中の再結合の電流が少し混ざっていることを示す。−1 を無視したのは、eqV/(nidkBT) がどちらの点でも 105 を超えるからである。
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