ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部 第6章 §4.6.6 ★★ 透過と反射から α と εr、エリプソメトリで ε1,ε2、電子エネルギー損失で −Im(1/εr) を測る。授業の α∝ℏω−Eg と Tauc のプロットは、結合状態密度と状態密度の畳み込みの言い直しである
何を測るか
吸収係数 α(ω) は、厚さの違う薄い試料の透過率の比から測る。吸収が強い所では試料を薄くする必要があり、吸収端の近くの 104cm−1 の程度の吸収には μm 以下の膜が要る。反射率 R(ω) は厚い試料で広い振動数範囲にわたって測り、Kramers–Kronig の関係で反射の位相を出して εr(ω) を組み立てる(光学と量子エレクトロニクス 第12章)。エリプソメトリ(斜めに入射させた光の偏りの変化を測る方法)は、1つの振動数で ε1 と ε2 を直接求めることができるので、臨界点の山の位置を精度よく決めるのに使われる。電子エネルギー損失分光は、薄膜を通った速い電子が失ったエネルギーの分布 ∝−Im[1/εr(ω)] を測るもので、例題 4.6.5 のようにプラズモンの振動数が分かる。励起子の線は低温の吸収・反射のほか、光を当てて出てくる光(フォトルミネッセンス)でも見え、遠赤外の反射帯は赤外分光の反射率で見える。
測った量と模型の量を結ぶのは、吸収の形(x・段・2乗・逆平方根)と、その形が切り替わる臨界点の位置である。バンド計算の εn(k) から式 (4.6.6) の ε2 を計算し、測った ε2 の山の位置と比べることが、バンド図を検証する最も直接の方法になる。
授業で習った形との対応
学部の授業では、光学定数を n~=n+iκ、吸収係数を α=4πκ/λ(λ は真空の波長)と書くことが多い。λ=2πc/ω を入れると式 (4.6.1) の α=2ωκ/c と同じである。工学の流儀で時間依存を eiωt(jω)と書く教科書では、複素屈折率が n−iκ、誘電関数が ε1−iε2 になり、虚部の符号が逆になる。吸収が正になる量を取るという点は同じである。
バンド間遷移の ε2 は、CGS 単位系(Gauss 単位)の教科書では
ε2(ω)=m2ω24π2e2⋅V2k∑∣e⋅pcv∣2δ(εc−εv−ℏω)
と書かれる。e2→e2/(4πε0) と置き換えると、4π2e2→πe2/ε0 で式 (4.6.6) になる。
吸収端の形は、授業では次のように覚えることが多い。直接遷移の許容遷移で αℏω∝(ℏω−Eg)1/2、禁制遷移で (ℏω−Eg)3/2、間接遷移で (ℏω−Eg±ℏΩ)2。これらは、式 (4.6.9) の3次元の結合状態密度、行列要素の k2、式 (4.6.11) の状態密度の畳み込みをそれぞれ言い直したものである。測った α から Eg を読むときは、(αℏω)2(直接)か (αℏω)1/2(間接)を ℏω に対して描き、直線部分を 0 まで延ばした切片を Eg とする(Tauc のプロット)。どちらの描き方で直線になるかが、直接か間接かの判定にもなる。ただし吸収端のすぐ近くは励起子と乱れで丸まるので(図 4.6.2)、直線部分は吸収端から少し上で取る。
イオン結晶の誘電関数は、授業では ε(ω)=ε(∞)+1−ω2/ωTO2ε(0)−ε(∞) と書かれ、Lyddane–Sachs–Teller の関係は ωLO2/ωTO2=ε(0)/ε(∞) と書かれる。式 (4.6.18) と式 (4.6.19) は記号を変えただけで同じ式である。
例題 4.6.8 Tauc のプロットで吸収端を読む ★★
オリジナルある薄膜の吸収係数を2つの光子エネルギーで測り、ℏω=1.60eV で α=5.30×103cm−1、ℏω=1.70eV で α=7.49×103cm−1 を得た。
- (1) 直接遷移を仮定し、(αℏω)2 を ℏω の1次式とみなして Eg を求めよ。
- (2) 同じ2点を間接遷移の形 (αℏω)1/2 で直線にすると切片はいくらになるか。2点の測定だけで直接か間接かを決められない理由を述べよ。
解答
(1) (αℏω)2 は 1.60eV で 7.19×107、1.70eV で 1.62×108(単位 (cm−1eV)2)。この2点を通る直線が 0 になる所は1.60−7.19×107×0.10/(1.62×108−7.19×107)=1.52eV である。
(2) (αℏω)1/2 は 92.1 と 112.8 で、切片は 1.16eV になる。2点は必ず1本の直線に乗るので、どちらの形でも「直線」になる。直接か間接かを決めるには、吸収端の近くで多くの点を測り、どちらの描き方で直線部分が広く続くかを見る必要がある。この表は αℏω∝ℏω−1.52eV から作ったので、多くの点を取れば (1) の描き方だけが直線になる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com