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出てくるもの:端の状態と、バルクと端の対応

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第6章 終章:トポロジカル物質への入口と、この巻で削ったもの
目次
  1. 端の状態を解く
  2. バルクの整数と端の準位の数
  3. Hall 伝導度との関係
  4. 時間反転の相手:量子スピン Hall 絶縁体
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部 第6章 §5.6.3 ★★★ C−≠0C_-\ne0 の板の端には、ギャップを一方向に横切る準位が ∣C−∣\lvert C_-\rvert 本ずつ現れる。QWZ 模型では端の状態を閉じた形で解ける

端の状態を解く

式 (5.6.4) の板で、下の端(y=0y=0)に局在した解を探す。σx\sigma_x の固有ベクトルを σx∣±x⟩=±∣±x⟩\sigma_x| \pm_x \rangle =\pm| \pm_x \rangle と書く。σz\sigma_z は ∣+x⟩| +_x \rangle と ∣−x⟩| -_x \rangle を入れ替え、iσy=σzσx\mathrm{i}\sigma_y=\sigma_z\sigma_x なので、ホッピングの行列は

Ty∣−x⟩=0,Ty†∣−x⟩=th∣+x⟩(5.6.8)T_y| -_x \rangle =0,\qquad T_y^\dagger| -_x \rangle =t_{\mathrm h}| +_x \rangle\tag{5.6.8}

と働く(Ty∣−x⟩=th2(σz−σz)∣−x⟩=0T_y| -_x \rangle =\frac{t_{\mathrm h}}2(\sigma_z-\sigma_z)| -_x \rangle =0)。そこで ψy=φy∣−x⟩\psi_y=\varphi^y| -_x \rangle という形を試す。Tyψy−1=0T_y\psi_{y-1}=0 なので、行 yy の式は

h0ψy+Ty†ψy+1=φy[−thsin⁡(kxa)∣−x⟩+th(λ+cos⁡kxa+φ)∣+x⟩]h_0\psi_y+T_y^\dagger\psi_{y+1}=\varphi^y\Bigl[-t_{\mathrm h}\sin(k_xa)| -_x \rangle +t_{\mathrm h}\bigl(\lambda+\cos k_xa+\varphi\bigr)| +_x \rangle \Bigr]

となる(h0∣−x⟩=th(λ+cos⁡kxa)∣+x⟩−thsin⁡(kxa)∣−x⟩h_0| -_x \rangle =t_{\mathrm h}(\lambda+\cos k_xa)| +_x \rangle -t_{\mathrm h}\sin(k_xa)| -_x \rangle を使った)。∣+x⟩| +_x \rangle の成分を 00 にすれば固有値の式になるので、

εedge(kx)=−thsin⁡kxa,φ(kx)=−(λ+cos⁡kxa),ψy=φy∣−x⟩(5.6.9)\varepsilon _{\mathrm{edge}}(k_x)=-t_{\mathrm h}\sin k_xa,\qquad \varphi(k_x)=-(\lambda+\cos k_xa),\qquad \psi_y=\varphi^y| -_x \rangle\tag{5.6.9}

を得る。端の行 y=0y=0 では Tyψ−1T_y\psi_{-1} の項がもともと無いが、この解では内部の行でもその項は Ty∣−x⟩=0T_y| -_x \rangle =0 で消えていたので、端の行も同じ式で満たされる。解が端に局在して規格化できる条件は ∣φ∣<1\lvert \varphi\rvert <1、すなわち

∣λ+cos⁡kxa∣<1(5.6.10)\lvert \lambda+\cos k_xa\rvert <1\tag{5.6.10}

である。上の端(y=Ny−1y=N_y-1)には、同じ計算で ∣+x⟩| +_x \rangle を向き ε=+thsin⁡kxa\varepsilon =+t_{\mathrm h}\sin k_xa を持つ解が、同じ条件で現れる。

図

図 5.6.2 λ=1\lambda=1(C−=−1C_-=-1)の板のエネルギー。灰色はバルクのバンドを kyk_y について重ねた範囲(∣g∣\lvert \bm{g}\rvert の kyk_y についての最小と最大の間)、点線は端の状態の厳密解 (5.6.9)(∣kxa∣>π/2\lvert k_xa\rvert >\pi/2 でだけある)。Ny=30N_y=30 の板を数値で対角化した固有値も、ギャップの中ではこの2本の上に乗る。下の端の線は kxa=πk_xa=\pi で右上がりにギャップを横切り、上の端の線は右下がりに横切る。

バルクの整数と端の準位の数

λ=1\lambda=1 では条件 (5.6.10) は cos⁡kxa<0\cos k_xa<0、つまり ∣kxa∣>π/2\lvert k_xa\rvert >\pi/2 で、図 5.6.2 のように端の状態の線が kxa=πk_xa=\pi でギャップの下端から上端まで横切る。下の端の線の傾きは dεedgedkx=−thacos⁡kxa\frac{\mathrm{d} \varepsilon _{\mathrm{edge}}}{\mathrm{d} k_x}=-t_{\mathrm h}a\cos k_xa で、kxa=πk_xa=\pi では +tha+t_{\mathrm h}a である。群速度 v=1ℏdεdkx=tha/ℏ>0v=\frac1\hbar\frac{\mathrm{d} \varepsilon }{\mathrm{d} k_x}=t_{\mathrm h}a/\hbar>0 なので、下の端の電子は +x+x の向きにだけ進み、上の端の電子は −x-x の向きにだけ進む。1つの端の上で、ギャップの中の電子は一方向にしか動くことができない。このような端の状態をカイラルな端の状態と呼ぶ。λ=−1\lambda=-1(C−=+1C_-=+1)では条件は cos⁡kxa>0\cos k_xa>0 で、端の線は kxa=0k_xa=0 で横切り、下の端の向きは −x-x に逆転する。λ=3\lambda=3(C−=0C_-=0)では ∣3+cos⁡kxa∣≥2\lvert 3+\cos k_xa\rvert \ge2 なので端の状態は無く、数値の対角化でもギャップ ∣ε∣<th\lvert \varepsilon \rvert <t_{\mathrm h} の中に固有値は1つも無い。

まとめると、1つの端でギャップを横切る線の本数(右向きを +1+1、左向きを −1-1 として数えた和)は、その端の内側のバルクの C−C_- で決まり、大きさは ∣C−∣\lvert C_-\rvert に等しい。これがバルクと端の対応である。端の線を消そうとして端の行のサイトのエネルギーやホッピングを変えても、線は曲がるだけで、ギャップの下端から上端へ一方向に横切る本数は変わらない。本数を変えるには、線をギャップの外へ逃がす必要があるが、一方向に横切る線の両端はバルクの上下のバンドにつながっているので、ギャップの外へ逃がすことはできない。本数を変える唯一の方法は、バルクのギャップを閉じて C−C_- を変えることである。第2部第8章の SSH 模型では、端の準位の数が無限の鎖の巻き数 ∣W∣\lvert W\rvert に等しかった(第2部第8章)。その2次元版がここでの対応で、巻き数は円 S1S^1 への写像の度数、Chern 数は球面 S2S^2 への写像の度数である。

格子模型の Hofstadter 型の模型についてこの対応を示したのは Y. Hatsugai (1993), Phys. Rev. Lett. 71, 3697 で、乱れがあってもギャップの条件のもとで端の電流の量子数とバルクの Chern 数が等しいことは J. Kellendonk, T. Richter and H. Schulz-Baldes (2002), Rev. Math. Phys. 14, 87 が証明した。

Hall 伝導度との関係

板の両端に電位差を付け、下の端の化学ポテンシャルを上の端より Δμ\Delta\mu だけ高くする。ギャップの中で増えた電子は下の端のカイラルな線だけに入り、+x+x へ進む。1次元の線1本が運ぶ電流は、速さと状態密度の積で v⋅12πℏvΔμ=Δμ/hv\cdot\frac{1}{2\pi\hbar v}\Delta\mu=\Delta\mu/h(粒子の流れ)になり、速さによらない(第4部第7章の Landauer の数え方)。電荷 −e-e を掛け、Δμ=−e ΔV\Delta\mu=-e\,\Delta V と書けば、電流は (e2/h)ΔV(e^2/h)\Delta V の大きさで、横向きの伝導度の大きさは e2/he^2/h になる。本数が ∣C−∣\lvert C_-\rvert 本なら ∣σxy∣=∣C−∣e2/h\lvert \sigma_{xy}\rvert =\lvert C_-\rvert e^2/h で、バルクの Berry 曲率から出した σxy=−C−e2/h\sigma_{xy}=-C_-e^2/h と大きさが一致する。バルクの式と端の数え方が同じ答えを出すことが、バルクと端の対応の物理的な中身である。

時間反転の相手:量子スピン Hall 絶縁体

ここまでは電子のスピンの向きを1つに固定していた。時間反転の対称性がある系では、スピン ↑ のブロックが h↑(k)h_\uparrow(\bm{k}) なら、スピン ↓ のブロックは時間反転で移った

h↓(k)=h↑(−k)∗(5.6.11)h_\downarrow(\bm{k})=h_\uparrow(-\bm{k})^*\tag{5.6.11}

になる。時間反転で Berry 曲率は Ω(−k)=−Ω(k)\Omega(-\bm{k})=-\Omega(\bm{k}) と符号を変えるので(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第11章)、↓ のブロックの Chern 数は −C−-C_- で、全体の Chern 数は 00、Hall 伝導度も 00 である。それでも端の状態は消えない。↑ の下の端の線が +x+x へ進むなら、↓ の下の端の線は −x-x へ進み(検算で ↓ の下の端の固有値が +thsin⁡kxa+t_{\mathrm h}\sin k_xa になることを確かめた)、2本の線は kxa=πk_xa=\pi で交わる。スピンの向きと進む向きが結び付いたこの対をヘリカルな端の状態と呼び、この絶縁体を量子スピン Hall 絶縁体と呼ぶ。

交点 kxa=πk_xa=\pi は時間反転で自分に移る点で、そこでは Kramers の定理により準位が2重に縮退する。したがって時間反転を保つ乱れや相互作用では、交点にギャップを開けることができない。↑ と ↓ のブロックが混ざってスピンの zz 成分が保たれなくても、時間反転とバルクのギャップがある限り、端の線の対の数の偶奇は変わらない。この偶奇が Z2\mathbb{Z}_2 の不変量で、C. L. Kane and E. J. Mele (2005), Phys. Rev. Lett. 95, 146802 が定義した。同じ著者は同年の Phys. Rev. Lett. 95, 226801 で、グラフェンにスピン軌道相互作用の質量項を入れると谷とスピンの組ごとに符号の違う質量が付き、量子スピン Hall 絶縁体になることを示した(質量項の形は 第2部第9章)。

例題 5.6.3 端の状態の範囲・局在の長さ・速さ ★★★

オリジナルQWZ 模型の板で λ=1.5\lambda=1.5 とする。

  1. (1) 下の端に局在した状態がある kxk_x の範囲を求め、その C−C_- と合っていることを確かめよ。
  2. (2) kxa=πk_xa=\pi の端の状態について、行が1つ内側に入るごとに振幅が何倍になるか、また確率 ∣ψy∣2\lvert \psi_y\rvert ^2 が 1/e1/\mathrm{e} になる長さを求めよ。λ\lambda を 22 に近づけると、この長さはどうなるか。
  3. (3) th=1 eVt_{\mathrm h}=1\,\mathrm{eV}, a=0.5 nma=0.5\,\mathrm{nm} として、kxa=πk_xa=\pi での端の状態の速さを求めよ。
解答

(1) 条件 (5.6.10) は ∣1.5+cos⁡kxa∣<1\lvert 1.5+\cos k_xa\rvert <1、つまり −2.5<cos⁡kxa<−0.5-2.5<\cos k_xa<-0.5 で、cos⁡kxa≥−1\cos k_xa\ge-1 なので cos⁡kxa<−0.5\cos k_xa<-0.5、すなわち ∣kxa∣>2π/3\lvert k_xa\rvert >2\pi/3 である。この範囲で εedge=−thsin⁡kxa\varepsilon _{\mathrm{edge}}=-t_{\mathrm h}\sin k_xa は kxa=2π/3k_xa=2\pi/3 の −0.866th-0.866t_{\mathrm h} から kxa=4π/3k_xa=4\pi/3(=−2π/3=-2\pi/3)の +0.866th+0.866t_{\mathrm h} まで、kxa=πk_xa=\pi を通って単調に増える。λ=1.5\lambda=1.5 のギャップは式 (5.6.3) から εg=2×0.5th=th\varepsilon _{\mathrm g}=2\times0.5t_{\mathrm h}=t_{\mathrm h} で、バルクのバンドの端は ±0.5th\pm0.5t_{\mathrm h} なので、端の線はギャップを下から上へ1回横切る。0<λ<20<\lambda<2 なので C−=−1C_-=-1 で、本数 11 と一致する。

(2) φ(π)=−(1.5−1)=−0.5\varphi(\pi)=-(1.5-1)=-0.5 なので、振幅は1行ごとに −0.5-0.5 倍になる(符号が交互に変わりながら減る)。∣ψy∣2∝0.25y=e−yln⁡4\lvert \psi_y\rvert ^2\propto0.25^y=\mathrm{e}^{-y\ln4} なので、1/e1/\mathrm{e} になる長さは a/ln⁡4=0.721aa/\ln4=0.721a。振幅で測れば a/ln⁡2=1.44aa/\ln2=1.44a である。Ny=30N_y=30 の板を数値で対角化しても、ギャップの中央の固有ベクトルの隣り合う行の振幅の比は 0.5000.500 だった。λ→2\lambda\to2 では φ(π)=−(λ−1)→−1\varphi(\pi)=-(\lambda-1)\to-1 で、長さ a/ln⁡(1/∣φ∣)a/\ln(1/\lvert \varphi\rvert ) は発散する。λ=2\lambda=2 で (π,π)(\pi,\pi) のギャップが閉じる所で、端の状態はバルクへ広がって消える。SSH 模型の端の準位の局在の長さがギャップに反比例したのと同じ仕組みである。

(3) v=tha/ℏ=1.602×10−19×0.5×10−91.0546×10−34=7.60×105 m s−1v=t_{\mathrm h}a/\hbar=\dfrac{1.602\times10^{-19}\times0.5\times10^{-9}}{1.0546\times10^{-34}}=7.60\times10^5\,\mathrm{m\,s^{-1}}。グラフェンの Fermi 速度(第2部第9章)と同じ桁である。

木下の勉強ステータス

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