この章のまとめと試験での出方
AI 生成・木下が未勉強
統計学の復習 第8章 §8.6
この章では、標本を「母集団分布に従う独立な確率変数の組」として立て、そこから標本平均の性質を3段階で導いた。第一に、どの でも正確に 、 が成り立ち(定理 8.2)、戻さない抽出では分散に有限母集団修正 がかかる(定理 8.3)。第二に、この分散を Chebyshev の不等式に入れると、 は に確率収束する(大数の弱法則、定理 8.7)。第三に、標準化した の分布の形は、母集団分布によらず標準正規分布に近づく(中心極限定理、定理 8.8)。二項分布の正規近似はその特別な場合で、連続補正をつけて使う。
抽出方法の比較も、同じ分散の式で行った。母分散は層内と層間に分かれ(定理 8.4)、比例配分の層別抽出は層間の分を分散から除く(定理 8.5)。クラスター抽出は級内相関 の分だけ分散が 倍になる(定理 8.6)。標本誤差は を増やせば小さくなるが、無回答や抽出枠の不備による偏りは によらず残り、平均二乗誤差は分散と偏りの2乗の和になる(式 (8.5))。
2級では、抽出方法の名前を説明文から選ぶ問い(「各グループから」なら層別抽出)、標本平均の期待値と標準誤差、標本平均や二項分布の確率を正規近似で求める問いが毎回出る。二項分布の正規近似では連続補正の向きを、標本平均の確率では分散を で割り忘れないことを確かめる。
1級の統計数理では、この章の結果は大問の前半で使われる。典型的な小問の連鎖は次の形である。
- 母集団分布の平均と分散を積分や和で求める。
- 推定量(標本平均やその関数)の期待値と分散を、定理 8.2 の計算で求める。
- Chebyshev の不等式で一致性を示す。
- 中心極限定理で漸近正規性を述べ、近似の信頼区間や検定を作る。
関数 の漸近分布を求めるデルタ法と、Slutsky の定理による の推定値への置き換えは、数理統計の解説 第5章 §5.3 で扱う。統計応用(理工学)では、抜き取り検査の標本の大きさや、層別・ブロック化による誤差分散の減少が、実験計画法の乱塊法(実験計画法の解説 第1章)と同じ考え方で問われる。
次の総合問題は、第3章の全確率の公式、第5章のベルヌーイ分布、この章の層別抽出と中心極限定理をつなぐ。
総合問題 層別抽出で支持率の推定精度を上げる ★★★
オリジナルある大学の学生は、理系が40%、文系が60%で、ある制度に賛成する割合は理系で 、文系で である。学生1人の賛否を「賛成なら1、反対なら0」の確率変数で表す。学生は十分多く、有限母集団修正は無視してよい。
- (1) 大学全体の賛成の割合 と、全学生を母集団としたときの母分散 を求めよ。(使う道具:第3章 全確率の公式、第5章 ベルヌーイ分布の分散)
- (2) を、定理 8.4 にしたがって層内と層間に分けて求め、和が (1) の値に一致することを確かめよ。(使う道具:本章 §8.3)
- (3) 400人の標本について、単純無作為抽出の標本比率 と、比例配分(理系160人・文系240人)の層別抽出の推定量 の標準誤差をそれぞれ求めよ。(使う道具:本章 定理 8.2・定理 8.5)
- (4) 2つの方法のそれぞれについて、推定値が真の値から 以内に入る確率を中心極限定理で近似せよ。層別抽出の推定量が近似的に正規分布に従う理由も述べよ。(使う道具:本章 §8.5、第6章・第7章 独立な正規分布の和)
- (5) 単純無作為抽出で (3) の層別抽出と同じ標準誤差を得るには、標本の大きさがいくつ必要か。
解答
(1) 学生を1人無作為に選んだとき、全確率の公式から賛成の確率は である。賛否は0か1の値をとるので、ベルヌーイ分布の分散として である。
(2) 層 の中の賛否も0か1なので、層内の分散は で、理系・文系ともに である。層内の項は 、層間の項は から
である。和は で、(1) と一致する。
(3) 単純無作為抽出では で、標準誤差は である。比例配分では、定理 8.5 から で、標準誤差は である。式 (8.8) で直接計算しても、 で同じ値になる。
(4) 単純無作為抽出の は400個の独立なベルヌーイ変数の平均なので、中心極限定理から である。よって
層別抽出の と はそれぞれ160個・240個の独立なベルヌーイ変数の平均なので、中心極限定理からそれぞれ近似的に正規分布に従う。2つの層の抽出は独立で、独立な正規分布に従う確率変数の線形結合は正規分布に従うので、 である。よって
(5) を解くと で、 人が必要である。層別抽出の400人は、単純無作為抽出の474人分の精度に当たる。層間の分 は母分散の約15%で、その分だけ必要な標本が減る。
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