授業で習った形との対応
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第4章 §7.4.6 ★★ 古典力学の Lyapunov 指数・量子力学の交換子と Poisson 括弧の対応・Ehrenfest 時間を、OTOC とスクランブリング時間と並べる。統計力学の2点相関の緩和との違いも述べる
古典のカオスと Lyapunov 指数
力学の授業では、カオス的な系の軌道は初期条件のずれ を と指数関数的に広げ、 を Lyapunov 指数と呼ぶと習う。これを Poisson 括弧で書くと、初期の座標 と運動量 について
である( の流儀)。量子力学の授業では、交換子は と Poisson 括弧に対応すると習う。これを使うと
となる。OTOC は、古典のカオスの指標(初期条件への感度)の量子版である。式 (7.4.17) の と比べると、交換子を2乗しているので の関係にある。
この近似は、 が系の典型的な作用 に達すると成り立たなくなる。その時刻
を Ehrenfest 時間と呼ぶ。授業で習う Ehrenfest の定理(期待値が古典の運動方程式に従う)が、カオス的な系では対数の時間しか持たない理由である。式 (7.4.20) のスクランブリング時間は、 を自由度の数 に読み替えた同じ形をしている。どちらも「小さな広がり( や )が指数関数で全体の大きさに達するまでの時間」である。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの (作用が に比べて大きい) | 証明 条件付き( の間だけ。カオス的な系では誤差が の程度で増える) | 行き先 近似の数理 第7章
統計力学:2点相関の緩和との違い
統計力学の授業では、平衡への緩和を時間相関関数 の減衰で測る。これは時間順序に並んだ2点の相関で、ブラックホールや強く相互作用する系では、局所的な観測量はスクランブリング時間よりずっと早く、温度で決まる時間 の程度で平衡の値に近づく。2点相関が減衰しても、情報は失われていない。 が小さくなるのは、 が多くの自由度にまたがって のまわりでは見えなくなるからで、その広がりそのものを数えるのが OTOC である。第2部第3章の典型性(第2部第3章)の言葉では、部分系の状態が熱的に見えることと、全体が純粋であることは両立し、OTOC が最小値に落ちた後も、全体の状態は純粋なままである。
情報理論・量子情報の授業
情報理論の授業で通信路符号化定理を示すとき、符号語を乱数で選ぶ(乱数符号化)と習う。乱数で選んだ符号の平均の誤りを評価し、平均が小さければ小さい誤りの符号が少なくとも1つあると結論する議論である。定理 7.4.2 は、その量子版で、乱数で選ぶのが符号語でなくユニタリである点だけが違う。量子情報の授業の「量子状態は複製できない」は、式 (7.4.2) の和が一定であることとして、この章でも成り立っている。
例題 7.4.6 猫写像の Ehrenfest 時間 ★★
オリジナルトーラス の上の Arnold の猫写像 を考える。
- Lyapunov 指数 (1回の写像あたり)を求めよ。
- この写像を Hilbert 空間の次元 で量子化すると、実効的な は で、トーラスの面積 が に当たる。 のとき Ehrenfest 時間を求めよ。
解答
(1) 写像は線形で、行列 の固有値は 。大きい方の向きのずれが毎回この倍率で伸びるので、。
(2) だが、 は対数の中の定数で無視でき、目安として 回。Hilbert 空間が 1000 次元あっても、古典の軌道と量子の波束の対応は 7 回程度の写像で失われる。次元を2乗にしても Ehrenfest 時間は2倍にしかならない。
ほかの巻では
- 解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第11章:古典の OTOC の極限に入る Poisson 括弧の定義と、生成子で関数を動かす見方が読める
- 解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第3章:Ehrenfest の定理と、期待値が古典の軌道に従う時間の範囲(古典極限)が読める
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