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出てくるもの2:Ehrenfest の定理と古典極限

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第3章 Heisenberg 描像は Hamilton 方程式の量子版
目次
  1. 期待値の運動方程式
  2. 4次のポテンシャルでの数値計算
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第3章 §4.3.4 ★★★ 期待値は d⟨p^⟩dt=−⟨V′(q^)⟩\frac{\mathrm{d} \langle \hat p \rangle }{\mathrm{d} t}=-\langle V'(\hat q) \rangle に従い、⟨V′(q^)⟩≠V′(⟨q^⟩)\langle V'(\hat q) \rangle \neq V'(\langle \hat q \rangle ) の分だけ古典の軌道からずれる

期待値の運動方程式

式 (4.3.7) の期待値をとると、第4部第1章の式 (4.1.18) の Ehrenfest の定理

d⟨q^⟩dt=⟨p^⟩m,d⟨p^⟩dt=−⟨V′(q^)⟩(4.3.14)\frac{\mathrm{d} \langle \hat q \rangle }{\mathrm{d} t}=\frac{\langle \hat p \rangle }{m},\qquad \frac{\mathrm{d} \langle \hat p \rangle }{\mathrm{d} t}=-\langle V'(\hat q) \rangle\tag{4.3.14}

がそのまま出る。期待値は Heisenberg 描像の演算子を時刻 00 の状態で平均したもので、どちらの描像で計算しても同じである(式 (4.3.3))。

この2本は、古典の Hamilton 方程式と似ているが、閉じた方程式になっていない。右辺の ⟨V′(q^)⟩\langle V'(\hat q) \rangle は分布全体の平均で、⟨q^⟩\langle \hat q \rangle だけの関数ではないからである。⟨V′(q^)⟩=V′(⟨q^⟩)\langle V'(\hat q) \rangle =V'(\langle \hat q \rangle ) が成り立つのは、V′V' が1次式のとき、すなわち VV が2次式までのときに限られ、これは 4.3.3節の場合である。それ以外では、平均のまわりで展開すると、μ≔⟨q^⟩\mu\coloneqq\langle \hat q \rangle として

⟨V′(q^)⟩=V′(μ)+12V′′′(μ) (Δq)2+16V′′′′(μ)⟨(q^−μ)3⟩+⋯(4.3.15)\langle V'(\hat q) \rangle =V'(\mu)+\frac12V'''(\mu)\,(\Delta q)^2+\frac16V''''(\mu)\langle (\hat q-\mu)^3 \rangle +\cdots\tag{4.3.15}

となる(1次の項は ⟨q^−μ⟩=0\langle \hat q-\mu \rangle =0 で消える)。第2項以降が、古典の力 −V′(μ)-V'(\mu) からのずれである。ずれが小さいのは、波束の幅 Δq\Delta q が、力 V′V' の傾きが変わる長さに比べて十分小さいときである。

4次のポテンシャルでの数値計算

ずれがどう育つかを、V(q)=q4/4V(q)=q^4/4(m=1m=1、長さと時間の単位を適当に選んだ無次元の量)で確かめる。初期状態は中心 q=1q=1、幅 σ=0.1\sigma=0.1、平均運動量 00 の最小不確定の Gauss 波束とし、ℏ=0.01\hbar=0.01 とする(運動量の幅は ℏ/(2σ)=0.05\hbar/(2\sigma)=0.05)。Schrödinger 方程式を数値で解いて ⟨q^⟩\langle \hat q \rangle を求め、同じ初期値 q=1q=1, p=0p=0 の古典の軌道と比べたのが図 4.3.3 である。古典の周期は振幅 11 で 42∫01dx/1−x4=7.424\sqrt2\int_0^1\mathrm{d} x/\sqrt{1-x^4}=7.42 である。

図

図 4.3.3 V=q4/4V=q^4/4 での位置の期待値 ⟨q^⟩\langle \hat q \rangle(青の点線=Schrödinger 方程式の数値解)、同じ初期値の古典の軌道 q(t)q(t)(赤の細い実線)、同じ平均と分散を持つ古典の点の集団の平均(灰の太い実線、6000 点)。量子の期待値は1本の古典の軌道から1周期のうちに離れていくが、古典の集団の平均とは図の範囲で 0.0210.021 以内で重なる。同じ系の ⟨q^⟩\langle \hat q \rangle の時間変化は第4部第2章の図 4.2.2。ここでは古典の集団の平均と比べる

図から3つのことが読み取れる。1つ目に、最初の4分の1周期ほどは ⟨q^⟩\langle \hat q \rangle と古典の軌道はほぼ重なる。2つ目に、そのあと ⟨q^⟩\langle \hat q \rangle の振動の振幅は小さくなっていき、3周期ほどで 0.20.2 を下回る。1本の古典の軌道は振幅 11 のまま振動を続ける。3つ目に、古典の点の集団の平均(灰の線)は、量子の期待値とほとんど同じ曲線を描く。

3つ目が要点である。4次のポテンシャルでは振幅の大きい軌道ほど周期が短い(周期は振幅に反比例する)。初期の幅 σ=0.1\sigma=0.1 の中に振幅の少しずつ違う軌道が混ざっていて、周期がずれた軌道どうしの位相がばらけるので、平均の振動が消えていく。この減衰は古典の集団でも同じように起き、量子力学に固有の現象ではない。数値計算では、Ehrenfest の定理 (4.3.14) の d⟨p^⟩dt=−⟨q^3⟩\frac{\mathrm{d} \langle \hat p \rangle }{\mathrm{d} t}=-\langle \hat q^3 \rangle は差 2×10−32\times10^{-3} 以内で成り立ち、古典の力を平均の位置で評価した −⟨q^⟩3-\langle \hat q \rangle ^3 とは t=10t=10 付近で 0.290.29 違う。古典の軌道からのずれは、式 (4.3.15) の補正項で表される「分布の広がりの分だけ力の平均が変わる」効果である。

このように、Heisenberg 描像で古典の軌道に近い振る舞いが得られるのは、波束の幅が狭いあいだに限られる。幅が狭く保たれる時間は、ℏ\hbar が小さいほど長い。一方、分布の広がりを含めた比較の相手としては、1本の軌道より、同じ初期分布を持つ Liouville の集団(4.3.1節の右の列)の方がはるかに長い時間にわたって量子の期待値に近い。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℏ→0\hbar\to0(波束の幅 Δq\Delta q が、力 V′V' の傾きが変わる長さに比べて小さい) | 証明 要確認(滑らかなポテンシャルで最小不確定の波束から出発し、時刻を固定して ℏ→0\hbar\to0 とすると期待値が古典の軌道に近づくことは Hepp(1974)が示したとされる。前提と、近づく時間の範囲が ℏ\hbar にどう依存するかは原論文で未確認) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 4.3.4 3次のポテンシャルでは補正が幅だけで決まる ★★

オリジナルV(q)=aq3V(q)=aq^3(aa は実の定数)の中の、任意の状態を考える。位置の平均を μ=⟨q^⟩\mu=\langle \hat q \rangle、標準偏差を Δq\Delta q とする。

  1. (1) ⟨V′(q^)⟩=V′(μ)+3a(Δq)2\langle V'(\hat q) \rangle =V'(\mu)+3a(\Delta q)^2 が、状態の形によらず厳密に成り立つことを示せ。式 (4.3.15) と比べよ。
  2. (2) 補正が μ\mu によらず幅だけで決まることを確かめよ。古典の力が 00 になる μ=0\mu=0 に波束を静止させて置くと、⟨p^⟩\langle \hat p \rangle はどう動き始めるか。
  3. (3) a=1a=1, μ=1\mu=1, Δq=0.1\Delta q=0.1 のとき、補正は古典の力の何 % か。式 (4.3.14) が ⟨q^⟩\langle \hat q \rangle, ⟨p^⟩\langle \hat p \rangle だけで閉じないのはなぜか。
解答

(1) V′(q)=3aq2V'(q)=3aq^2 なので ⟨V′(q^)⟩=3a⟨q^2⟩=3a(μ2+(Δq)2)=V′(μ)+3a(Δq)2\langle V'(\hat q) \rangle =3a\langle \hat q^2 \rangle =3a\bigl(\mu^2+(\Delta q)^2\bigr)=V'(\mu)+3a(\Delta q)^2。分散の定義 (Δq)2=⟨q^2⟩−μ2(\Delta q)^2=\langle \hat q^2 \rangle -\mu^2 だけを使ったので、Gauss 分布でなくても成り立つ。式 (4.3.15) では V′′′=6aV'''=6a で第2項が 12⋅6a(Δq)2=3a(Δq)2\frac12\cdot6a(\Delta q)^2=3a(\Delta q)^2、V′′′′=0V''''=0 で第3項以降はすべて 00 である。展開が第2項で厳密に終わる。

(2) 3a(Δq)23a(\Delta q)^2 には μ\mu が入っていない。μ=0\mu=0 では古典の力 −V′(0)=0-V'(0)=0 で、1本の古典の粒子は静止したままだが、波束ではd⟨p^⟩dt=−3a(Δq)2\frac{\mathrm{d} \langle \hat p \rangle }{\mathrm{d} t}=-3a(\Delta q)^2 となり、a>0a>0 なら −q-q の向き(ポテンシャルが下がる向き)へ動き始める。q>0q>0 の側と q<0q<0 の側で力 −3aq2-3aq^2 が同じ向きにかかり、打ち消し合わないからである。

(3) 古典の力の大きさ V′(1)=3V'(1)=3 に対し補正は 3×0.01=0.033\times0.01=0.03 で、1 %1\,\%。補正 3a(Δq)23a(\Delta q)^2 は時刻とともに変わる (Δq)2(\Delta q)^2 を含み、(Δq)2(\Delta q)^2 の時間変化には CqpC_{qp} が、その時間変化にはさらに高次のモーメントが入る。2次のポテンシャルなら V′V' が1次式で補正が無いので、ここで初めて期待値の方程式が閉じなくなる。

木下の勉強ステータス

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