解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第3章 §2.3.4 ★★★ 作用を世界線の任意の径数で書くと E/c と p が4元運動量にまとまり、H が恒等的に 0 になる代わりに拘束 pμpμ=m2c2 が残る
径数で書いた作用
式 (2.3.4) は時刻 t を径数に使っているので、時間と空間の扱いが違って見える。世界線を任意の径数 λ で xμ(λ) と書き、x˙μ=dλdxμ とすると(この節ではドットは λ 微分)
S[x]=−mc∫λ1λ2ημνx˙μx˙νdλ,Lλ=−mcημνx˙μx˙ν(2.3.12)
になる。λ=t と選べば x˙0=c, x˙i=vi で、式 (2.3.4) に戻る。λ を別の単調な径数 λ′=f(λ) に取り替えても、x˙μ は f′ 倍、dλ は 1/f′ 倍になるので S は変わらない。この作用は4つの座標 xμ を対等に扱い、Lorentz 変換 xμ→Λμνxν で ημνx˙μx˙ν が変わらないので Lλ そのものが不変である。
Lλ の x˙μ についての偏微分は
∂x˙μ∂Lλ=−ηαβx˙αx˙βmcημνx˙ν=−muμ,uμ=dτdxμ=ηαβx˙αx˙βcx˙μ(2.3.13)
である(dτ=ηαβx˙αx˙βdλ/c を使った)。uμ を4元速度、pμ=muμ を4元運動量と呼ぶ。uμ=γ(c,v) なので
pμ=muμ=(cE, p),E=γmc2,p=γmv(2.3.14)
で、2.3.3節のエネルギーと運動量が1つの4元ベクトルの成分になる。式 (2.3.13) は「xμ に共役な正準運動量は −pμ」と言っていて、空間成分では −pi=+pi(2.3.3節の p)、時間成分では −p0=−E/c である。x0=ct に共役な量がエネルギーの符号を変えたものになるのは、Hamilton–Jacobi の理論で ∂S/∂t=−H だったこと(第1部第13章)と同じ符号である。xμ は Lλ に現れないので、Euler–Lagrange 方程式は dλdpμ=0、つまり4元運動量の4成分の保存である。これは時間と空間の4方向の並進に対する Noether の保存量を一度に書いたものになっている。
H が 0 になることと質量殻の拘束
Lλ は x˙μ の1次の同次関数である(x˙μ を全部 k 倍すると Lλ も k 倍)。同次関数についての Euler の定理から
Hλ=x˙μ∂x˙μ∂Lλ−Lλ=0(2.3.15)
が径数によらず恒等的に成り立つ。さらに ∂x˙μ∂Lλ は x˙μ の0次の同次関数なので、x˙μ を同じ向きに伸ばしても変わらない。4つの x˙μ から4つの正準運動量への対応は1対1でなく、Hessian ∂2Lλ/∂x˙μ∂x˙ν は x˙ν を固有値 0 の固有ベクトルに持つ。第1部第7章の言葉では、この Lλ は退化していて Legendre 変換ができない(第1部第7章)。4つの正準運動量は独立でなく、式 (2.3.13) から
ημνpμpν=pμpμ=m2uμuμ=m2c2,すなわちc2E2−p2=m2c2(2.3.16)
という拘束を満たす(uμuμ=γ2(c2−v2)=c2)。これを質量殻の条件と呼ぶ。式 (2.3.10) の E=p2c2+m2c4 は、この拘束を E について解いたものである。
運動を決める情報は Hλ には無く、すべて拘束 (2.3.16) に入っている。径数を λ=t に固定すると x0=ct は力学変数でなくなり、残る3つの x の Hamiltonian として拘束を解いた E(p) が現れる。径数を選ぶ自由度があるとき H が 0 になり拘束が残る、という構造は、一般相対論の章で測地線の作用を扱うとき(第2部第12章)にもう一度現れ、拘束 pμpμ=m2c2 に pμ→iℏ∂μ を入れたものが Klein–Gordon 方程式である(第5部第4章)。

図 2.3.2 質量殻の双曲線。4元運動量 (E/c,p) は Lorentz 変換でこの双曲線の上を動く。黒丸は例題 2.3.4 の電子(右上が元の系、左下が 0.6c で動く系から見たもの)。p→±∞ で双曲線は光の線 E=∣p∣c に近づく。点線は厳密、実線は遅い極限の近似
例題 2.3.4 4元運動量の Lorentz 変換 ★★
オリジナル電子(mc2=0.511MeV)が x 方向に運動量 pc=1.000MeV を持つ。この電子を、x 方向に速さ 0.6c で動く慣性系から見る。
- (1) 元の系でのエネルギー E と速さ v を求めよ。
- (2) pμ=(E/c,p,0,0) が xμ=(ct,x,0,0) と同じ式 (2.3.2) で変換されるとして、動く系での E′ と p′c を求めよ。
- (3) E′2−p′2c2 が (mc2)2 に等しいことを確かめよ。
- (4) 動く系での速さ v′ を2通り(p′c2/E′ と速度の合成則)で求め、一致することを確かめよ。
解答
(1) E=1.0002+0.5112=1.1230MeV、v=pc2/E=0.8905c。
(2) γu=1/1−0.36=1.25。
E′p′c=γu(E−0.6pc)=1.25×(1.1230−0.6000)=0.6537MeV,=γu(pc−0.6E)=1.25×(1.0000−0.6738)=0.4078MeV.
(3) 0.65372−0.40782=0.4274−0.1663=0.2611=0.5112。図 2.3.2 の2つの黒丸は同じ双曲線の上にある。
(4) v′=p′c2/E′=0.4078/0.6537c=0.624c。速度の合成則では v′=(v−u)/(1−uv/c2)=(0.8905−0.6)/(1−0.6×0.8905)c=0.624c。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com