解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第4章 §2.4.6 ★★ 弦の波動方程式・棒の音速・固体物理の格子振動の分散関係は、どれも列の L とその極限の Euler–Lagrange 方程式
弦の波動方程式
力学や波動の授業では、弦の微小な部分 [x,x+Δx] に Newton の運動方程式を当てて波動方程式を出す。部分の質量は ρΔx、両端に掛かる張力の横向きの成分は、傾きが小さいとき Ts∂xu(x+Δx) と −Ts∂xu(x) なので
ρΔx∂t2∂2u=Ts(∂x∂u(x+Δx)−∂x∂u(x)) Δx→0 ρ∂t2∂2u=Ts∂x2∂2u.
この節の形では、同じ式は L=21ρ(∂tu)2−21Ts(∂xu)2 の Euler–Lagrange 方程式 (2.4.15) で、微小部分を切り出す代わりに、原子の列の運動方程式 (2.4.3) の極限を取った。「微小部分の両端の力の差」は、列の運動方程式の右辺「右のばねの力+左のばねの力」の連続版である。弦のエネルギー密度 21ρ(∂tu)2+21Ts(∂xu)2 も、授業では仕事の計算から出すが、ここでは L の Legendre 変換(場の Hamiltonian 密度。第2部第5章)として出る。
棒の音速
弾性体の授業では、棒の中の縦波を Hooke の法則(応力=Young 率 Yb × ひずみ ∂xu)と Newton の運動方程式で扱い、
ρb∂t2∂2u=Yb∂x2∂2u,v=ρbYb
を得る(ρb は体積あたりの密度、添字 b は3次元の物質の量であることを表す)。断面積 A⊥ の棒では ρ=ρbA⊥、Y=YbA⊥ で、式 (2.4.15) と同じになる。原子1列あたりの断面積を a2 とすると Y=Ka と YbA⊥=Yba2 から K=Yba、m=ρa=ρba3 で、巨視的な弾性定数と微視的なばね定数がつながる。
固体物理の格子振動
固体物理の授業では、各原子に Newton の運動方程式 (2.4.3) を書き、uj=Aei(kja−ωt) を「試しに」代入して式 (2.4.7) を得る。この章の第2節の論法によって、なぜ平面波を試せばよいのかが分かる。番号をずらす対称性があるので、基準振動は必ず平面波になり、試す前から形が分かっている。授業で出てくる「フォノンの数え方」(N 個の原子に N 個のモード、k は第1 Brillouin 域に限る)は、第3節の自由度の数え方と同じである。フォノンをエネルギー ℏω(k) の粒子として数えることは、式 (2.4.12) の N 個の振動子をそれぞれ量子化することで、第5部第3章で光子と同じ形で扱う。原子が2種類ある列の音響モードと光学モード、実在の結晶の分散の測り方はハミルトニアンの選び方で固体を考える 第3部第1章で扱う。
例題 2.4.6 弾性定数から格子振動の最高振動数を見積もる ★★
オリジナルYoung 率 Yb=1.0×1011Pa、密度 ρb=5.0×103kgm−3 の仮の固体を、格子定数 a=2.5×10−10m の単純な原子の列の束とみなす。
- (1) 原子1個の質量 m とばね定数 K を求めよ。
- (2) 音速 v を求めよ。
- (3) 列の基準振動の最高角振動数 ωmax と、その振動数 fmax=ωmax/(2π) を求めよ。
解答
(1) m=ρba3=5.0×103×(2.5×10−10)3=7.81×10−26kg、K=Yba=1.0×1011×2.5×10−10=25Nm−1。
(2) v=Yb/ρb=2.0×107=4.47×103ms−1。aK/m で計算しても同じ値になる。
(3) 最高の角振動数は Brillouin 域の境界の ωmax=2K/m=2v/a=3.58×1013s−1、fmax=5.69×1012Hz。巨視的な音速と格子定数だけから、格子振動の振動数が THz 程度になることが分かる。音波の式 ω=vk を境界 k=π/a まで延ばすと πv/a になり、列の値 2v/a より 57% 大きい(検算 scripts/verify_ch2-04.py)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com