tecktom.com

当てる道具:自由エネルギーの最小性を積の分布に制限する

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第7章 平均場
目次
  1. Gibbs–Bogoliubov の不等式
  2. 積の分布の中で最小にする
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第7章 §3.7.2 ★★★ 第3部第3章の F[ρ]≥FF[\rho]\ge F から Gibbs–Bogoliubov の不等式が出る。積の分布の中で最小にすると、各粒子の分布は「ほかの粒子で平均した HH」のカノニカル分布になる

Gibbs–Bogoliubov の不等式

第3部第3章で、任意の分布 ρ\rho について

F[ρ]≔⟨H⟩ρ−TS[ρ] ≥ F=−kBTln⁡Z,F[ρ]−F=kBT D(ρ ∥ ρβ)(3.7.5)F[\rho]\coloneqq\langle H \rangle _\rho-TS[\rho]\ \ge\ F=- k_{\mathrm B} T\ln Z,\qquad F[\rho]-F= k_{\mathrm B} T\,D(\rho\,\|\,\rho_\beta)\tag{3.7.5}

が成り立つことを示した(ρβ=e−βH/Z\rho_\beta=\mathrm{e}^{-\beta H}/Z はカノニカル分布、S[ρ]=−kB∫ρln⁡ρ dΓS[\rho]=- k_{\mathrm B}\int\rho\ln\rho\,\mathrm{d}\Gamma は Gibbs のエントロピー、DD は相対エントロピー)。試す分布として、別の Hamiltonian H0H_0 のカノニカル分布 ρ0=e−βH0/Z0\rho_0=\mathrm{e}^{-\beta H_0}/Z_0 をとる。ln⁡ρ0=−βH0−ln⁡Z0\ln\rho_0=-\beta H_0-\ln Z_0 なのでS[ρ0]=kBβ⟨H0⟩0+kBln⁡Z0S[\rho_0]= k_{\mathrm B}\beta\langle H_0 \rangle _0+ k_{\mathrm B}\ln Z_0、よって

F[ρ0]=⟨H⟩0−⟨H0⟩0−kBTln⁡Z0=F0+⟨H−H0⟩0F[\rho_0]=\langle H \rangle _0-\langle H_0 \rangle _0- k_{\mathrm B} T\ln Z_0=F_0+\langle H-H_0 \rangle _0

となる(⟨⋅⟩0\langle \cdot \rangle _0 は ρ0\rho_0 での平均、F0=−kBTln⁡Z0F_0=- k_{\mathrm B} T\ln Z_0)。これを式 (3.7.5) に入れると次を得る。

定理 3.7.1(Gibbs–Bogoliubov の不等式 ★★★)

任意の Hamiltonian H0H_0 について

F ≤ F0+⟨H−H0⟩0,(3.7.6)F\ \le\ F_0+\langle H-H_0 \rangle _0 ,\tag{3.7.6}

等号は H−H0H-H_0 が定数のときに限る。

右辺は H0H_0 のカノニカル分布だけで計算できる量である。H0H_0 を「分配関数が計算できる Hamiltonian」の族から選び、その族の中で右辺を最小にすれば、計算できる範囲で最良の上界が得られる。これは、真の基底状態のエネルギーを試行関数の期待値で上から押さえる Rayleigh–Ritz の変分原理(近似の数理 第4章)の、有限温度版にあたる。基底状態の変分原理では ⟨H⟩\langle H \rangle を最小にしたが、有限温度ではエネルギーとエントロピーの兼ね合い ⟨H⟩−TS\langle H \rangle -TS を最小にする。

積の分布の中で最小にする

計算できる族としてもっとも広く使われるのは、分布が粒子(または格子点)ごとの積に分かれる族

ρ(Γ)=∏i=1Nρi(Γi)(3.7.7)\rho(\Gamma)=\prod_{i=1}^N\rho_i(\Gamma_i)\tag{3.7.7}

である。Γi\Gamma_i は粒子 ii の座標と運動量(Ising 模型なら sis_i)、各 ρi\rho_i は規格化 ∫ρi dΓi=1\int\rho_i\,\mathrm{d}\Gamma_i=1 を満たす。1体の Hamiltonian の和 H0=∑ihi(Γi)H_0=\sum_ih_i(\Gamma_i) のカノニカル分布はこの形をしているので、この族の中で F[ρ]F[\rho] を最小にすることは、定理 3.7.1 の右辺を1体の H0H_0 について最小にすることと同じになる。

積の分布ではエントロピーが足し算 S[ρ]=∑iS[ρi]S[\rho]=\sum_iS[\rho_i] になる。HH が1体の項と2体の項の和H=∑iv1(Γi)+∑i<jv2(Γi,Γj)H=\sum_iv_1(\Gamma_i)+\sum_{i<j}v_2(\Gamma_i,\Gamma_j) なら、エネルギーの平均は

⟨H⟩ρ=∑i∫v1ρi dΓi+∑i<j∫ ⁣ ⁣∫v2(Γi,Γj)ρi(Γi)ρj(Γj) dΓi dΓj\langle H \rangle _\rho=\sum_i\int v_1\rho_i\,\mathrm{d}\Gamma_i+\sum_{i<j}\int\!\!\int v_2(\Gamma_i,\Gamma_j)\rho_i(\Gamma_i)\rho_j(\Gamma_j)\,\mathrm{d}\Gamma_i\,\mathrm{d}\Gamma_j

で、2体の項は2つの1体の分布で平均される。規格化の乗数 λi\lambda_i をつけて F[ρ]F[\rho] を ρi\rho_i について汎関数微分すると(汎関数微分と未定乗数は 第1部第3章・第1部第6章)

δδρi(Γi)(F[ρ]+∑kλk∫ρk dΓk)=v1(Γi)+∑j≠i∫v2(Γi,Γj)ρj(Γj) dΓj+kBT(ln⁡ρi(Γi)+1)+λi=0.\frac{\delta}{\delta\rho_i(\Gamma_i)}\Bigl(F[\rho]+\sum_k\lambda_k\int\rho_k\,\mathrm{d}\Gamma_k\Bigr) =v_1(\Gamma_i)+\sum_{j\neq i}\int v_2(\Gamma_i,\Gamma_j)\rho_j(\Gamma_j)\,\mathrm{d}\Gamma_j+ k_{\mathrm B} T\bigl(\ln\rho_i(\Gamma_i)+1\bigr)+\lambda_i=0 .

最初の2項をまとめて

hieff(Γi)≔v1(Γi)+∑j≠i∫v2(Γi,Γj) ρj(Γj) dΓj(3.7.8)h_i^{\mathrm{eff}}(\Gamma_i)\coloneqq v_1(\Gamma_i)+\sum_{j\neq i}\int v_2(\Gamma_i,\Gamma_j)\,\rho_j(\Gamma_j)\,\mathrm{d}\Gamma_j\tag{3.7.8}

とおけば、停留点の分布は

ρi(Γi)=e−βhieff(Γi)∫e−βhieff dΓi(3.7.9)\rho_i(\Gamma_i)=\frac{\mathrm{e}^{-\beta h_i^{\mathrm{eff}}(\Gamma_i)}}{\int\mathrm{e}^{-\beta h_i^{\mathrm{eff}}}\,\mathrm{d}\Gamma_i}\tag{3.7.9}

である。hieffh_i^{\mathrm{eff}} は、粒子 ii の座標を止めて、ほかの粒子の座標について HH を平均したもの(から ii によらない定数を除いたもの)になっている。これが平均場の正体である。粒子 ii はほかの粒子の瞬間の位置でなく、その平均が作る場の中にいて、自分の1体の Hamiltonian hieffh_i^{\mathrm{eff}} のカノニカル分布に従う。

式 (3.7.8) の右辺には ρj\rho_j が入っているので、式 (3.7.9) は ρi\rho_i を与える公式ではなく、{ρi}\{\rho_i\} についての連立の方程式である。この種類の方程式を自己無撞着方程式と呼ぶ。解は1つとは限らず、複数あるときは F[ρ]F[\rho] の値がいちばん小さいものを選ぶ。その解で F[ρ]F[\rho] が積の族の中の最小になり、定理 3.7.1 によって真の FF の上界になる。

最小にする族は、線形な部分空間でなく「積」という非線形な集合であるが、手続きは「解を探す範囲を扱える集合に狭め、その中で汎関数を最小にする」というA 型(射影)の近似と同じ形をしている。量子力学で同じことを行うと、多体の波動関数を1体の軌道の積に限る Hartree の近似になる(近似の数理 第6章)。

例題 3.7.2 4次のポテンシャルを調和振動子で近似する ★★

オリジナル質量 mm の粒子1個が4次のポテンシャルの中にある:H=p22m+λq4H=\dfrac{p^2}{2m}+\lambda q^4(λ>0\lambda>0)。試しの Hamiltonian を調和振動子H0=p22m+12mΩ2q2H_0=\dfrac{p^2}{2m}+\dfrac12m\Omega^2q^2 にとり、Ω\Omega を変分の自由度とする。測度は dΓ=dq dp/h\mathrm{d}\Gamma=\mathrm{d} q\,\mathrm{d} p/h。

  1. 式 (3.7.6) の右辺 Fvar(Ω)=F0+⟨H−H0⟩0F_{\mathrm{var}}(\Omega)=F_0+\langle H-H_0 \rangle _0 を Ω\Omega の関数として書け。
  2. FvarF_{\mathrm{var}} を最小にする Ω\Omega を求めよ。
  3. 厳密な FF を計算し、Fvar−FF_{\mathrm{var}}-F が温度によらず kBTk_{\mathrm B} T の定数倍になることを示して、その係数を求めよ。
解答

(1) 調和振動子のカノニカル分布では Z0=kBT/(ℏΩ)Z_0= k_{\mathrm B} T/(\hbar\Omega)、⟨q2⟩0=kBT/(mΩ2)\langle q^2 \rangle _0= k_{\mathrm B} T/(m\Omega^2)、Gauss 分布の4次のモーメントは ⟨q4⟩0=3⟨q2⟩02\langle q^4 \rangle _0=3\langle q^2 \rangle _0^2(第3部第3章の例題)。運動エネルギーは HH と H0H_0 で共通なので打ち消し、

Fvar(Ω)=−kBTln⁡kBTℏΩ−12mΩ2kBTmΩ2+3λ(kBTmΩ2)2=−kBTln⁡kBTℏΩ−kBT2+3λ(kBT)2m2Ω4.F_{\mathrm{var}}(\Omega)=- k_{\mathrm B} T\ln\frac{ k_{\mathrm B} T}{\hbar\Omega}-\frac12m\Omega^2\frac{ k_{\mathrm B} T}{m\Omega^2}+3\lambda\Bigl(\frac{ k_{\mathrm B} T}{m\Omega^2}\Bigr)^2 =- k_{\mathrm B} T\ln\frac{ k_{\mathrm B} T}{\hbar\Omega}-\frac{ k_{\mathrm B} T}{2}+\frac{3\lambda( k_{\mathrm B} T)^2}{m^2\Omega^4}.

(2) Ω\Omega で微分して 00 とおくと kBT/Ω−12λ(kBT)2/(m2Ω5)=0k_{\mathrm B} T/\Omega-12\lambda( k_{\mathrm B} T)^2/(m^2\Omega^5)=0、よって

Ω∗4=12λkBTm2.\Omega_*^4=\frac{12\lambda k_{\mathrm B} T}{m^2}.

このとき最後の項は kBT/4k_{\mathrm B} T/4 になり、Fvar(Ω∗)=−kBTln⁡kBTℏΩ∗−kBT4F_{\mathrm{var}}(\Omega_*)=- k_{\mathrm B} T\ln\frac{ k_{\mathrm B} T}{\hbar\Omega_*}-\frac{ k_{\mathrm B} T}{4}。最適な振動数は温度とともに T1/4T^{1/4} で上がる。温度が高いほど粒子は4次のポテンシャルの急な壁まで出ていくので、それに合わせて硬いばねが選ばれる。

(3) 運動量の積分は 2πmkBT\sqrt{2\pi m k_{\mathrm B} T}、位置の積分は ∫e−βλq4dq=2Γ(5/4)(kBT/λ)1/4\int\mathrm{e}^{-\beta\lambda q^4}\mathrm{d} q=2\Gamma(5/4)( k_{\mathrm B} T/\lambda)^{1/4} なのでZ=1h2πmkBT⋅2Γ(5/4)(kBT/λ)1/4Z=\frac1h\sqrt{2\pi m k_{\mathrm B} T}\cdot2\Gamma(5/4)( k_{\mathrm B} T/\lambda)^{1/4}。これと kBT/(ℏΩ∗)=2πkBTm/(h(12λkBT)1/4)k_{\mathrm B} T/(\hbar\Omega_*)=2\pi k_{\mathrm B} T\sqrt m/\bigl(h(12\lambda k_{\mathrm B} T)^{1/4}\bigr) の比をとると、mm・λ\lambda・TT・hh がすべて消えて

ZkBT/(ℏΩ∗)=2Γ(5/4) 121/42π=1.346.\frac{Z}{ k_{\mathrm B} T/(\hbar\Omega_*)}=\frac{2\Gamma(5/4)\,12^{1/4}}{\sqrt{2\pi}}=1.346 .

よって

Fvar−FkBT=ln⁡Z−ln⁡kBTℏΩ∗−14=ln⁡1.346−0.25=0.0472>0.\frac{F_{\mathrm{var}}-F}{ k_{\mathrm B} T}=\ln Z-\ln\frac{ k_{\mathrm B} T}{\hbar\Omega_*}-\frac14=\ln1.346-0.25=0.0472>0 .

上界は真の値より 0.047 kBT0.047\, k_{\mathrm B} T だけ高い。4次のポテンシャルの ZZ は TT のべきでしか尺度を持たないので、差の係数は温度によらない純粋な数になる。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ