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出てくるもの (3):磁場の中の閉軌道と Onsager の量子化

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第10章 バンドの中の電子の半古典運動
目次
  1. 空間の軌道
  2. 共役な組と作用変数
  3. サイクロトロン質量
  4. Onsager の量子化
  5. de Haas–van Alphen 効果
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第10章 §4.10.5 ★★★ 磁場の中では ℏkx\hbar k_x, ℏky\hbar k_y が共役な組になり、k\bm{k} 空間の閉軌道の面積 A\mathcal A が作用変数になる。Bohr–Sommerfeld から Aν=2πeB(ν+12)/ℏ\mathcal A_\nu=2\pi eB(\nu+\frac12)/\hbar

k\bm{k} 空間の軌道

一様な磁場 B=Bez\bm{B}=B\bm{e}_z だけをかける。式 (4.10.6) は ℏk˙=−e v×B\hbar\dot{\bm{k}}=-e\,\bm{v}\times\bm{B} で、k˙\dot{\bm{k}} は v=1ℏ∇kε\bm{v}=\frac1\hbar\nabla_{\bm{k}}\varepsilon にも B\bm{B} にも垂直である。∇kε\nabla_{\bm{k}}\varepsilon に垂直だから ε\varepsilon は一定(式 (4.10.7) の磁場の場合)、B\bm{B} に垂直だから kzk_z も一定である。したがって k\bm{k} は、等エネルギー面 ε(k)=ε\varepsilon (\bm{k})=\varepsilon を kz=k_z= 一定の平面で切った曲線の上を動く。この曲線をサイクロトロン軌道と呼ぶ。

実空間の軌道も、k\bm{k} 空間の軌道から直接決まる。ℏk˙=−e r˙×B\hbar\dot{\bm{k}}=-e\,\dot{\bm{r}}\times\bm{B} を時間で積分すると ℏ(k−k0)=−e(r−r0)×B\hbar(\bm{k}-\bm{k}_0)=-e(\bm{r}-\bm{r}_0)\times\bm{B} で、成分では

x−x0=ℏeB(ky−ky0),y−y0=−ℏeB(kx−kx0)(4.10.17)x-x_0=\frac{\hbar}{eB}(k_y-k_{y0}),\qquad y-y_0=-\frac{\hbar}{eB}(k_x-k_{x0})\tag{4.10.17}

である。実空間の軌道(を B\bm{B} に垂直な面に射影したもの)は、k\bm{k} 空間の軌道を 90∘90^\circ 回して ℏ/(eB)\hbar/(eB) 倍したものになる。回転は向きを保つので、2つの軌道は同じ向きに回る。底の近くの電子では、k=(k,0)\bm{k}=(k,0)、v=(v,0)\bm{v}=(v,0)(v>0v>0)のとき ℏk˙y=−e(v×B)y=+evB>0\hbar\dot k_y=-e(\bm{v}\times\bm{B})_y=+evB>0 だから、+z+z 側から見て反時計回りに回る。

共役な組と作用変数

4.10.2節の式 (4.10.8) で、B=Bez\bm{B}=B\bm{e}_z なら {ℏkx,ℏky}=−eB\{\hbar k_x,\hbar k_y\}=-eB である。そこで

Q≔ℏkyeB,P≔ℏkx,{Q,P}=1eB{ℏky,ℏkx}=1(4.10.18)Q\coloneqq\frac{\hbar k_y}{eB},\qquad P\coloneqq\hbar k_x,\qquad \{Q,P\}=\frac{1}{eB}\{\hbar k_y,\hbar k_x\}=1\tag{4.10.18}

とおくと、(Q,P)(Q,P) は正準な組になる。Landau ゲージ A=(0,Bx,0)\bm{A}=(0,Bx,0) で書けば P=pxP=p_x、Q=x+py/(eB)Q=x+p_y/(eB) で、確かに {Q,P}={x,px}=1\{Q,P\}=\{x,p_x\}=1 である。もう1つの組 (py, ⋅ )(p_y,\,\cdot\,) は軌道の中心の位置を表し、H=ε(k)H=\varepsilon (\bm{k}) に現れない。したがって kzk_z を止めた運動は、(Q,P)(Q,P) についての自由度1の系H=ε(P/ℏ, eBQ/ℏ)H=\varepsilon \bigl(P/\hbar,\,eBQ/\hbar\bigr) になる。

自由度1の閉じた軌道には、第1部第14章の作用変数 J=12π∮P dQJ=\frac{1}{2\pi}\oint P\,\mathrm{d} Q を当てることができる。dQ=ℏeBdky\mathrm{d} Q=\frac{\hbar}{eB}\mathrm{d} k_y なので

J=12π∮ℏkx ℏeBdky=ℏ22πeB A(ε,kz)(4.10.19)J=\frac{1}{2\pi}\oint\hbar k_x\,\frac{\hbar}{eB}\mathrm{d} k_y=\frac{\hbar^2}{2\pi eB}\,\mathcal A(\varepsilon ,k_z)\tag{4.10.19}

となる。ここで A(ε,kz)\mathcal A(\varepsilon ,k_z) は k\bm{k} 空間の軌道が囲む面積である。作用変数は、k\bm{k} 空間の面積を ℏ2/(2πeB)\hbar^2/(2\pi eB) 倍したものにほかならない。

サイクロトロン質量

第1部第14章の結果 ω=dHdJ\omega=\frac{\mathrm{d} H}{\mathrm{d} J} を使うと、軌道を1周する時間は

Tc=2πω=2π∂J∂ε=ℏ2eB∂A∂ε(4.10.20)T_{\mathrm c}=\frac{2\pi}{\omega}=2\pi\frac{\partial J}{\partial \varepsilon }=\frac{\hbar^2}{eB}\frac{\partial \mathcal A}{\partial \varepsilon }\tag{4.10.20}

である。自由な電子の Tc=2πme/(eB)T_{\mathrm c}=2\pi m_{\mathrm e}/(eB) と比べて

mc≔eB Tc2π=ℏ22π∂A∂ε(4.10.21)m_{\mathrm c}\coloneqq\frac{eB\,T_{\mathrm c}}{2\pi}=\frac{\hbar^2}{2\pi}\frac{\partial \mathcal A}{\partial \varepsilon }\tag{4.10.21}

をサイクロトロン質量と呼ぶ。自由な電子では A=πk2=2πmeε/ℏ2\mathcal A=\pi k^2=2\pi m_{\mathrm e}\varepsilon /\hbar^2 で、mc=mem_{\mathrm c}=m_{\mathrm e} に戻る。mcm_{\mathrm c} は1点の k\bm{k} の有効質量テンソルでなく、軌道全体で決まる量で、等エネルギー線の面積がエネルギーとともにどれだけ速く広がるかを表す。

Onsager の量子化

量子力学では、作用変数に Bohr–Sommerfeld の条件 J=(ν+γ)ℏJ=(\nu+\gamma)\hbar(ν=0,1,2,…\nu=0,1,2,\dots)を課す(第1部第14章・第4部第7章)。式 (4.10.19) に入れると

A(εν,kz)=2πeBℏ(ν+γ)(4.10.22)\mathcal A(\varepsilon _\nu,k_z)=\frac{2\pi eB}{\hbar}(\nu+\gamma)\tag{4.10.22}

となる。許される軌道は、k\bm{k} 空間の面積が 2πeB/ℏ2\pi eB/\hbar の整数倍(に γ\gamma を足したもの)のものだけである。これを Onsager の関係と呼ぶ1L. Onsager (1952), Phil. Mag. 43, 1006–1008.下の脚注へ。滑らかな軌道で γ=12\gamma=\frac12 で、自由な電子に当てるとπk2=2πmeε/ℏ2=2πeB(ν+12)/ℏ\pi k^2=2\pi m_{\mathrm e}\varepsilon /\hbar^2=2\pi eB(\nu+\frac12)/\hbar から εν=ℏωc(ν+12)\varepsilon _\nu=\hbar\omega_{\mathrm c}(\nu+\frac12)、ωc=eB/me\omega_{\mathrm c}=eB/m_{\mathrm e} となり、Landau 準位に一致する(第4部第4章の総合問題 第4部第4章で、2次元振動子の閉じ込めを弱くする極限として出したもの)。バンドに Berry 位相があると γ\gamma がずれる。これは第4部第11章で扱う。

隣り合う軌道の面積の差は ΔA=2πeB/ℏ\Delta\mathcal A=2\pi eB/\hbar で、これは k\bm{k} 空間の状態の密度 LxLy/(2π)2L_xL_y/(2\pi)^2 を掛けると LxLy eB/hL_xL_y\,eB/h 個の状態に当たる。1つの Landau 準位に、面積あたり eB/heB/h 個の状態が集まる。これも第4部第4章の総合問題の結果と一致する。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℏ/J→0\hbar/J\to0(軌道の内側にある Landau 準位の数 ν\nu が大きい) | 証明 要確認(滑らかな閉軌道での Bohr–Sommerfeld の型の議論。ほかのバンドの軌道と近づいて乗り移る〔磁気的破壊〕ことが無く、半古典運動の札の前提も満たすことが要る。γ\gamma の値の前提と厳密な誤差の評価は原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第7章

de Haas–van Alphen 効果

金属では、Fermi エネルギー εF\varepsilon _{\mathrm F} より下の状態が占められている。磁場 BB を変えると、軌道の面積 (4.10.22) は BB に比例して動き、ν\nu 番目の準位が εF\varepsilon _{\mathrm F} を横切るたびに、占められた状態の数と全エネルギーの BB 依存性に折れ目ができる。準位が εF\varepsilon _{\mathrm F} を横切るのはA(εF)=2πeB(ν+γ)/ℏ\mathcal A(\varepsilon _{\mathrm F})=2\pi eB(\nu+\gamma)/\hbar、つまり 1/B=2πeℏA(εF)(ν+γ)1/B=\frac{2\pi e}{\hbar\mathcal A(\varepsilon _{\mathrm F})}(\nu+\gamma) のときで、磁化などの量は 1/B1/B について周期

Δ(1B)=2πeℏ Aext,BdH≔1Δ(1/B)=ℏ Aext2πe(4.10.23)\Delta\Bigl(\frac1B\Bigr)=\frac{2\pi e}{\hbar\,\mathcal A_{\mathrm{ext}}},\qquad B_{\mathrm{dH}}\coloneqq\frac{1}{\Delta(1/B)}=\frac{\hbar\,\mathcal A_{\mathrm{ext}}}{2\pi e}\tag{4.10.23}

で振動する。3次元の Fermi 面では kzk_z の違う多くの軌道の寄与が打ち消し合い、面積が kzk_z について極値をとる軌道(Aext\mathcal A_{\mathrm{ext}})の寄与だけが残る。周期を測ることで、Fermi 面の断面積を測ることができる。実在の金属の Fermi 面の測定は固体の巻(ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部第4章)で扱う。

図 4.10.3 は、2次元の正方格子の tight-binding のバンド ε=−2th(cos⁡kxa+cos⁡kya)\varepsilon =-2t_{\mathrm h}(\cos k_xa+\cos k_ya) の等エネルギー線である。底に近いエネルギーでは軌道は円に近く、自由な電子と同じ向きに回る。ε=0\varepsilon =0 では軌道は BZ の半分を囲む正方形になり、ε>0\varepsilon >0 では軌道は BZ の角 M を囲み、逆向きに回る。後者は正孔の軌道で、4.10.3節の正孔の電荷 +e+e が、回る向きの反転として現れている。

図

図 4.10.3 2次元の正方格子の tight-binding のバンドの等エネルギー線(BZ の中、+z+z 向きの磁場)。Γ\Gamma を囲む軌道(青)は反時計回りに回る電子的な軌道で、M を囲む軌道(橙。BZ の4隅は周期性で1つにつながる)は時計回りに回る正孔的な軌道である。ε=0\varepsilon =0 の正方形(緑)はちょうど BZ の半分を囲む。ε=−3th\varepsilon =-3t_{\mathrm h} では、底の放物近似の円(実線)の面積 π/a2\pi/a^2 は厳密な面積 3.36/a23.36/a^2 より 7% 小さい

例題 4.10.5 Onsager の関係から Landau 準位と量子振動の周期 ★★

オリジナル自由な電子 ε=ℏ2(kx2+ky2+kz2)/(2me)\varepsilon =\hbar^2(k_x^2+k_y^2+k_z^2)/(2m_{\mathrm e}) に B=Bez\bm{B}=B\bm{e}_z をかける。

  1. (1) kz=0k_z=0 の軌道について、作用変数 (4.10.19) を (Q,P)(Q,P) の積分で直接計算し、J=ℏ2πk2/(2πeB)J=\hbar^2\pi k^2/(2\pi eB) となることを確かめよ(kk は軌道の半径)。
  2. (2) Onsager の関係 (4.10.22)(γ=12\gamma=\frac12)から準位を求めよ。
  3. (3) Fermi 波数を kF=1.0×1010 m−1k_{\mathrm F}=1.0\times10^{10}\,\mathrm{m^{-1}} とする。εF\varepsilon _{\mathrm F}、BdHB_{\mathrm{dH}}、B=10 TB=10\,\mathrm T での ℏωc\hbar\omega_{\mathrm c} と、εF\varepsilon _{\mathrm F} より下にある準位の数(kz=0k_z=0 の断面で)、実空間の軌道の半径を求めよ。
解答

(1) 軌道を ℏkx=ℏkcos⁡φ\hbar k_x=\hbar k\cos\varphi、ℏky=ℏksin⁡φ\hbar k_y=\hbar k\sin\varphi と書くと P=ℏkcos⁡φP=\hbar k\cos\varphi、Q=ℏksin⁡φ/(eB)Q=\hbar k\sin\varphi/(eB) で、

J=12π∫02πP∂Q∂φdφ=12π∫02πℏ2k2eBcos⁡2φ dφ=ℏ2k22eB=ℏ2 πk22πeB.J=\frac1{2\pi}\int_0^{2\pi}P\frac{\partial Q}{\partial \varphi}\mathrm{d}\varphi=\frac1{2\pi}\int_0^{2\pi}\frac{\hbar^2k^2}{eB}\cos^2\varphi\,\mathrm{d}\varphi=\frac{\hbar^2k^2}{2eB}=\frac{\hbar^2\,\pi k^2}{2\pi eB}.

(2) πk2=2πeB(ν+12)/ℏ\pi k^2=2\pi eB(\nu+\frac12)/\hbar で、ε=ℏ2k2/(2me)\varepsilon =\hbar^2k^2/(2m_{\mathrm e}) を使うと εν=ℏeBme(ν+12)=ℏωc(ν+12)\varepsilon _\nu=\frac{\hbar eB}{m_{\mathrm e}}(\nu+\frac12)=\hbar\omega_{\mathrm c}(\nu+\frac12)。自由な電子では Bohr–Sommerfeld の結果が厳密な Landau 準位と一致する(第4部第4章で見た、調和振動子では Bohr–Sommerfeld が厳密になることの再現である)。

(3) εF=ℏ2kF2/(2me)=6.10×10−19 J=3.81 eV\varepsilon _{\mathrm F}=\hbar^2k_{\mathrm F}^2/(2m_{\mathrm e})=6.10\times10^{-19}\,\mathrm J=3.81\,\mathrm{eV}。極値の断面は kz=0k_z=0 の円 Aext=πkF2\mathcal A_{\mathrm{ext}}=\pi k_{\mathrm F}^2 で、

BdH=ℏπkF22πe=ℏkF22e=1.0546×10−34×10202×1.602×10−19=3.29×104 T.B_{\mathrm{dH}}=\frac{\hbar\pi k_{\mathrm F}^2}{2\pi e}=\frac{\hbar k_{\mathrm F}^2}{2e}=\frac{1.0546\times10^{-34}\times10^{20}}{2\times1.602\times10^{-19}}=3.29\times10^4\,\mathrm T.

B=10 TB=10\,\mathrm T では ℏωc=ℏeB/me=1.16 meV\hbar\omega_{\mathrm c}=\hbar eB/m_{\mathrm e}=1.16\,\mathrm{meV}、準位の数は εF/(ℏωc)=BdH/B=3.29×103\varepsilon _{\mathrm F}/(\hbar\omega_{\mathrm c})=B_{\mathrm{dH}}/B=3.29\times10^3 である。実空間の軌道の半径は式 (4.10.17) から ℏkF/(eB)=0.658 μm\hbar k_{\mathrm F}/(eB)=0.658\,\mu\mathrm m で、格子間隔の 10310^3 倍以上ある。準位の数が 10310^3 を超えるので、札の「ν\nu が大きい」は十分に満たされ、半古典の扱いが正当化される領域にある。

1 L. Onsager (1952), Phil. Mag. 43, 1006–1008.

木下の勉強ステータス

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