解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第10章 §5.10.7 ★★★ 係数を測る量で書き、差をカウンター項にする。有効作用の微分でくりこみの条件を課すと発散は係数の書き換えに入り、測る量どうしの関係は足場によらない
総合問題 質量の無い ϕ4 理論の有効ポテンシャル ★★★
オリジナル質量の無い ϕ4 理論 V(ϕ)=4!λϕ4 の1ループの有効ポテンシャルを、切断 ∣k∣<Λ で計算してくりこむ。ϕˉ を単に ϕ と書く。
- (1) a:=V′′(ϕ)=2λϕ2 とおき、Λ2≫a で
21∫∣k∣<Λ(2π)4d4kln(k2+a)=定数+32π2aΛ2+64π2a2(lnΛ2a−21)+O(Λ2a3)
を示せ。(使う道具:この章の5.10.2節の式 (5.10.11)、第5部第9章の切断)2. (2) カウンター項 21δmϕ2+4!δλϕ4 を足し、くりこみの条件を Veff′′(0)=0(質量が 0)と、ϕ=M での Veff′′′′(M)=λ とする(ϕ=0 では lnϕ のため4階微分が発散するので、条件を M>0 で課す)。δm を求め、それが5.10.3節の 2λI1 の m→0 の値と符号だけ違うことを確かめよ。(使う道具:この章の5.10.3節)3. (3) (2) の条件から
Veff(ϕ)=4!λϕ4+256π2λ2ϕ4(lnM2ϕ2−625)
を導き、Λ が残らないことを確かめよ。(使う道具:この章の5.10.4節)4. (4) くりこみの点を M から M′ に変えても、λ′=λ+32π23λ2lnM2M′2 と結合定数を書き換えれば、λ2 の次数まで同じ Veff になることを示せ。MdMdλ を求め、式 (5.10.22) の変化率と比べよ。(使う道具:この章の5.10.4節、第5部第11章への準備)5. (5) (3) の Veff が ϕ=0 に極小を持つ点 ϕ∗ を求め、λ=0.1 で ln(ϕ∗2/M2) を数で出せ。そこで1ループの項と木の項の大きさを比べ、この極小が摂動の範囲で信頼できるかを述べよ。(使う道具:第1部第7章の Legendre 変換で Γ が凸になること、この章の札)
解答
(1) ∫(2π)4d4k=8π21∫k3dk、u=k2 とおくと 21⋅8π21⋅21∫0Λ2uln(u+a)du。原始関数 ∫uln(u+a)du=2u2−a2ln(u+a)−4u2+2au を 0 から L=Λ2 まで評価し、ln(L+a)=lnL+La−2L2a2+⋯ を使うと
∫0Luln(u+a)du=2L2(lnL−21)+aL+2a2(lnLa−21)+O(La3).
32π21 を掛ければ、a によらない第1項を定数として示す式になる。
(2) a=2λϕ2 を入れると、1ループの項は 64π2λΛ2ϕ2+256π2λ2ϕ4(ln2Λ2λϕ2−21)。ϕ4lnϕ2 の2階微分は ϕ→0 で 0 になるので、Veff′′(0)=32π2λΛ2+δm=0 から δm=−32π2λΛ2。式 (5.10.15) で m→0 とすると 2λI1=32π2λΛ2 なので、δm=−2λI1 で式 (5.10.16) と一致する。
(3) f(ϕ)=ϕ4lnϕ2 の4階微分は 24lnϕ2+100 である。Veff=4!λ+δλϕ4+256π2λ2[f(ϕ)+ϕ4(ln2Λ2λ−21)] の4階微分を M で λ に等しいとおくと
δλ+256π224λ2(ln2Λ2λM2−21+24100)=0.
これを入れ直すと ϕ4 の係数のうち lnΛ を含む部分が消え、256π2λ2ϕ4(lnM2ϕ2−625) が残る(24100=625)。確かめとして、ϕ4(lnM2ϕ2−625) の4階微分は ϕ=M で 24⋅0+100−24⋅625=0 になり、条件を満たす。
(4) λ′ で書いた式から λ で書いた式を引くと、ϕ4 の係数の差は24λ′−λ+256π2λ2(lnM′2M2)=32π2⋅243λ2lnM2M′2−256π2λ2lnM2M′2=0(32⋅243=2561。λ′2 と λ2 の差は λ3 の次数)。したがって MdMdλ=16π23λ2 で、5.10.4節の μdμdλμ と同じ値である。くりこみの点の選び方の自由度が、結合定数の尺度依存として現れる。
(5) Veff′=ϕ3[6λ+64π2λ2(lnM2ϕ2−625)+128π2λ2]=0 から
lnM2ϕ∗2=625−21−3λ32π2=311−3λ32π2.
λ=0.1 で ln(ϕ∗2/M2)=−1049、ϕ∗/M≈e−525 である。そこでは1ループの項の係数 256π2λ2∣lnM2ϕ2∣≈0.0042 が木の項の係数 24λ=0.0042 と同じ大きさで、展開の前提(32π23λ∣ln∣≪1。ここでは左辺が約 1)が成り立たない。極小は、1ループの項が木の項を打ち消すところにできるので、この結論は λ の値によらない。極小は1ループの式を使える範囲の外にあり、信頼できない。くりこみ群で λ を ϕ の尺度まで動かしてから評価すると、この極小は消える。なお Γ は Legendre 変換なので本来は凸で、凸でない Veff は摂動の式の性質である。質量の無いスカラー場にゲージ場が結合した理論では、同じ形の極小がゲージ場の寄与で摂動の範囲に入りうることを、Coleman と Weinberg(1973、Phys. Rev. D 7、1888)が示した。