解答
(1) 式 (1.1.2) の期待値をとる。ψ0 は実数で偶関数なので ⟨x^p^+p^x^⟩=−iℏ∫(2xψ0ψ0′+ψ02)dx=−iℏ∫dxd(xψ02)dx=0。⟨x^2⟩=σ02、⟨p^2⟩=ℏ2∫(ψ0′)2dx=ℏ2⋅4σ041⟨x2⟩=4σ02ℏ2=σp2 なので、⟨x^H(t)2⟩=σ02+σp2t2/m2。
(2) ψ(x,t) の被積分関数の指数は 2ℏtim(x−xi)2−4σ02xi2 で、xi について2次である。xi2 の係数を −a、xi の係数を b とするとa=4σ021−2ℏtim、b=−ℏtimx。Gauss 積分の公式で xi を積分すると、τ=2mσ02ℏt として
ψ(x,t)=(2πσ02)−1/4(1+iτ)−1/2exp[−4σ02(1+iτ)x2]
となる(指数は 2ℏtimx2+4ab2 を通分して得る)。Re1+iτ1=1+τ21 なので∣ψ∣2∝exp(−2σ02(1+τ2)x2) で、分散は σ02(1+τ2)=σ02+(2mσ0ℏt)2。σp=ℏ/(2σ0) を代入すれば(1)と一致する。
(3) W0 は x と p の Gauss 関数の積で、∫dxe−x2/(2σ02)=2πσ0、∫dpe−p2/(2σp2)=2πσp から∫W0=πℏ2πσ0σp=ℏ2σ0σp=1。W(x,p,t)=W0(x−pt/m,p) は、u=x−pt/m と p が独立な Gauss 分布に従うことを表すので、x=u+pt/m の分散は σ02+σp2t2/m2 で、(1)と一致する。命題 1.1.2 で AW=x2 ととれば、この分散は Tr(ρ^(t)x^2) に等しい。式は例題 1.1.2 の古典の結果と同じ形で、違いは σ0σp=ℏ/2 が課されていることだけである。
(4) eip0x^/ℏ は運動量を p0 だけずらすので、ずらした波束では ⟨x^⟩=0、⟨p^⟩=p0、⟨p^2⟩=σp2+p02、⟨x^p^+p^x^⟩=2p0⟨x^⟩+0=0 である。式 (1.1.2) は演算子の恒等式なので、Tr(ρ^x^H(t)2) は各波束の値を g で平均すればよく、
Tr(ρ^x^H(t)2)=σ02+(σp2+mkBT)m2t2.
⟨x^H(t)⟩=∫g(p0)p0t/mdp0=0 なので、これが位置の分散である。時刻 0 の位置の分布は純粋状態と同じ(分散 σ02)だが、運動量の分散が mkBT だけ大きいので速く広がる。広がりを決めるのは ⟨p^2⟩ と相関だけで、それが純粋状態のゆらぎ(σp2)か熱的な混合(mkBT)かは式 (1.1.2) の中では区別されない。
(5) σp2=ℏ2/(4σ02)=(1.0546×10−34)2/(4×10−18)≈2.78×10−51kg2m2s−2、mkBT=9.109×10−31×1.3806×10−23×300≈3.77×10−51kg2m2s−2 で、比は約 1.36 である。純粋状態では例題 1.1.1 と同じく σ≈57.9nm。混合状態では σp2+mkBT/m≈8.89×104ms−1 に t=10−12s を掛けて(σ02 は無視できる)σ≈88.9nm。比は 1+1.36≈1.54 で、室温の熱的な速度のばらつき kBT/m≈6.74×104ms−1 が、閉じ込めによる運動量のゆらぎと同じ程度の大きさを持つことが分かる。