解答
(1) 例題 1.3.1 の ∣ψ0∣2 は分散 σ02=ℏ/(2mω)、例題 1.3.7(2) の ∣ψ~0∣2 は分散 σp2=mωℏ/2 なので、σ0σp=ℏ2/4=ℏ/2。数値は σ0=1.055×10−34/(2×1.443×10−25×628.3)m=0.763μm。
(2) ψ0 は実の Gauss 波束(位置と運動量の相関なし)なので (1.3.16) が使えて、t∗=2mσ02/ℏ=1/ω。よって σ(t)2=σ02(1+ω2t2)。Heisenberg 描像でも x^H=x^+p^t/m から σ(t)2=σ02+σp2t2/m2=σ02(1+ω2t2) と同じになる(第1部第1章)。t=10ms では ωt=6.28 で、σ=0.763μm×1+39.5=4.85μm。t∗=1/ω=1.59ms の6倍ほど経っているので、幅はほぼ σpt/m である。
(3) 運動量表示で H^f は対角なので、完全系 (1.3.9) を挿入すると
⟨0∣e−iH^ft/ℏ∣0⟩=∫∣ψ~0(p)∣2e−ip2t/(2mℏ)dp=∫2πσpe−p2/(2σp2)e−ip2t/(2mℏ)dp=(1+mℏiσp2t)−1/2.
最後は ∫e−ap2dp=π/a を a=2σp21+2mℏit(実部は正)で使った。σp2/(mℏ)=ω/2 なので振幅は (1+iωt/2)−1/2、P0(t)=∣1+iωt/2∣−1=1/1+ω2t2/4。t=10ms では ωt/2=3.14 で P0=1/1+9.87=0.303。位置表示で同じ量を計算すると、ψ0 と ψ(x,t) の重なりの積分を、時間発展の核 (1.3.14) との二重積分として計算することになる。
(4) t>0 のハミルトニアン H^f は運動量表示で対角なので、運動量表示では各成分が位相 e−ip2t/(2mℏ) を受けるだけで、∣ψ~(p,t)∣2 は変わらない。元の調和振動子のエネルギー表示では、H^f=H^−21mω2x^2 の x^2 が ∣n⟩ と ∣n±2⟩ をつなぐ非対角要素 ∝ℏω を作り、その大きさが準位の間隔 2ℏω と同じ桁なので、状態は多数の ∣n⟩ に広がっていく(P0(t) が 1/(ωt) の速さで減ることがその表れ)。1.3.5 節の指針どおり、t>0 では一番大きい(唯一の)項 p^2/(2m) を対角にする運動量表示が良い。⟨H^f⟩=σp2/(2m)=ℏω/4 で、運動量の分布が変わらないので時間によらない。数値は ℏω/4=1.66×10−32J、温度に直して ℏω/(4kB)=1.20nK。基底状態のエネルギー ℏω/2 のうち、ポテンシャルを切ったときに残るのは運動エネルギーの半分だけである。
(5) 運動量表示 (1.3.13) を (1.3.10) で位置表示へ戻すと、例題 1.3.4(1) と同じ平方完成で
ψ(x,t)=(2πσ02)−1/4(1+iωt)−1/2exp(−4σ02(1+iωt)x2)
になる(t∗=1/ω を使った)。指数の虚部は 1+iωt1=1+ω2t21−iωt から 4σ02(1+ω2t2)x2ωt で、前の係数の位相は x に依らない。よって S(x,t)=4σ02(1+ω2t2)ℏωtx2+(x に依らない項)、σ02=ℏ/(2mω) を使って
v=m1∂x∂S=2mσ02(1+ω2t2)ℏωtx=1+ω2t2ω2tx.
これは v=xσ˙(t)/σ(t) に等しく、各点が幅に比例して外へ流れる相似な膨張を表す。t=10ms、x=4.85μm ではv=1+39.5(628.3)2×0.01×4.85×10−6ms−1=4.73×10−4ms−1。この速度場は命題 1.3.2 の位相の選び方で初めて意味を持ち、第7部では ψ=ρeiS/ℏ の S からこの v を作って流体の方程式を組み立てる。