解答
(1) Wigner 変換は ψ と ψ∗ について双線形なので、N+2 を除くと4つの項φμ(x+y)φν∗(x−y)(μ,ν=±)の変換の和になる。対角の2項は平行移動の性質(前の章の (W4))から WG(x∓a,p)。交差の項 φ+(x+y)φ−(x−y)=φ(x+y−a)φ(x−y+a) の指数は −[(x+y−a)2+(x−y+a)2]/(4σ2)=−[x2+(y−a)2]/(2σ2) で、y を y+a にずらすと原点の波束の積分に e−2ipa/ℏ が掛かった形になり、WG(x,p)e−2ipa/ℏ を与える。もう一方の交差の項はその複素共役で、足して 2WG(x,p)cos(2pa/ℏ)。2つの波束の真ん中 x=0 に、p 方向の周期 πℏ/a の縞が現れる。これが重ね合わせの干渉の位相空間での姿である。
(2) W+(0,0)=N+2[2ϵ+2]/(πℏ)=1/(πℏ)(WG(±a,0)=ϵ/(πℏ))。ψ+ は偶関数でパリティの期待値は 1 なので一致する。ψ− では交差の項の符号が逆になり W−(0,0)=N−2[2ϵ−2]/(πℏ)=−1/(πℏ)。ψ− は奇関数でパリティ −1 と一致する。ψ− は至る所で正の波束2つの重ね合わせなのに、その W は原点で下限 −1/(πℏ) に達する。
(3) ψ+ は純粋状態なので 2πℏ∫W+2=1 である(検算では数値積分で確かめた)。混合状態は Wmix=21[WG(x−a,p)+WG(x+a,p)] で、(5.2.12) から 2πℏ∫WG(x−a,p)WG(x+a,p)=∣⟨φ+∣φ−⟩∣2=ϵ2。したがって
2πℏ∫Wmix2=41(1+1+2ϵ2)=21+e−a2/σ2.
a=2σ では (1+e−4)/2=0.5092。縞の項を消すと純粋度がほぼ半分に下がる。縞が「純粋な重ね合わせ」であるための情報を持っている。
(4) 運動量の分布は W を x で積分したもので、WG の p の周辺分布は分散 v=ℏ2/(4σ2) の正規分布である。∫p2cos(kp)N(0,v)(p)dp=(v−k2v2)e−k2v/2 に k=2a/ℏ(k2v=a2/σ2)を入れると、交差の項からの寄与は 2v(1−a2/σ2)ϵ で、
⟨p^2⟩+=v1+ϵ1+(1−a2/σ2)ϵ,⟨p^2⟩mix=v.
a=2σ では ϵ=e−2=0.1353 で ⟨p^2⟩+=v(1−3×0.1353)/1.1353=0.5232v。位置の分布は W を p で積分したもので、縞の項は ∫cos(2pa/ℏ)WGdp=ϵ∣φ(x)∣2 を与える。a=2σ ではこれは小さいが 0 でなく、原点付近の位置の分布にも差が出る。a≫σ では ϵ→0 で位置の分布の差は消え、2つを位置だけで区別することはできない。運動量の分布(縞の向きの射影)には、2つの波束の運動量表示を足して2乗した干渉の縞2N+2∣φ~(p)∣2(1+cos(2pa/ℏ)) として違いが残る(φ~ は φ の運動量表示)。これは前の章の定理(非負で双線形な分布は無い)の証明に使った干渉項である。
(5) 自由粒子では (5.2.20) から xt=x0+p0t/m の分布で、⟨x^2⟩t=⟨x2⟩0+2(t/m)⟨xp⟩0+(t/m)2⟨p2⟩0。ψ+ は実数値なので ∫pWdp=ℏIm(ψ∗ψ′)=0(前の章の確率流の式)で、⟨xp⟩0=0。位置の2次モーメントは⟨x2⟩0=2N+2[(σ2+a2)+σ2ϵ]=σ2+1+ϵa2 なので
⟨x^2⟩t=σ2+1+ϵa2+m2t24σ2ℏ21+ϵ1+(1−a2/σ2)ϵ.
ℏ=m=σ=1、a=2、t=3 では ⟨x2⟩0=1+4/1.1353=4.523、⟨p2⟩0=0.25×0.5232=0.1308 で、⟨x^2⟩t=4.523+9×0.1308=5.700。検算では、波動関数を Fourier 変換で時間発展させて直接計算した値と一致することを確かめた。