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粒子数の変わる過程:局在した準位とフォノン

2026年10月17日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第7章 得意な問題と限界:粒子数が変わる現象
目次
  1. 独立ボソン模型
  2. 光で励起したときに放出されるフォノンの数
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第6部 第7章 §6.7.1 ★★★ フォノンの数を保たないハミルトニアンでも、生成消滅演算子の1次の項は真空をずらすだけで厳密に解け、放出されるフォノンの数は Poisson 分布になる

第6部の型(出発点の要請 → 基本の対象 → 基準との同値 → 共通例題 → 得意な問題 → 限界)のうち、この章は最後の2つ、「得意な問題」と「限界」を受け持つ。新しい公理は足さない。第1章で振動子の代数をモードごとに並べて Fock 空間を作り、第2章でそれが基準(第1部)の NN 粒子の量子力学と同値であることを示した。その同値は、粒子数 N^\hat N を保つハミルトニアンについての話だった。第2章の命題は、[H^, N^]=0\left[\hat H,\,\hat N\right]=0 のとき Fock 空間の時間発展が粒子数ごとの部分空間 HN±\mathcal{H}_N^\pm に分かれ、各部分空間の中では対称化した波動関数の Schrödinger 方程式と同じになることを述べていた。

この章で扱うのは、その前提を外した問題である。光子やフォノンは原子や電子に吸収されたり放出されたりして、個数が変わる。このとき状態は H0⊕H1⊕H2⊕⋯\mathcal{H}_0\oplus\mathcal{H}_1\oplus\mathcal{H}_2\oplus\cdots の成分を同時に持ち、ハミルトニアンは成分どうしをつなぐ。基準の言葉で書こうとすると「粒子が1個の波動関数」「粒子が2個の波動関数」……を並べた連立方程式になり、第二量子化の言葉では生成消滅演算子の多項式1つで済む。もう1つの種類は、ハミルトニアン自身は粒子数を保つのに、近似の段階で粒子数を保たない形が現れる問題で、ボース気体の Bogoliubov 理論と超伝導の BCS 理論がその代表である。どちらも、粒子数の決まっていない状態を基底状態に選ぶことで計算が閉じる。

章の前半では、得意な問題を4つ解く。局在した準位がフォノンを放出・吸収する独立ボソン模型(6.7.1 節。厳密に解けて、放出されるフォノンの数が Poisson 分布になる)、励起した原子が連続体へ光子を1個放出する自然放出(6.7.2 節。共通例題②の緩和の出どころ)、弱く相互作用するボース気体の Bogoliubov 理論(6.7.3 節。第3章の2モードの模型をすべての波数の対に当てる)、そして BCS 状態(6.7.4 節。計画どおり名前と式だけを置き、詳しい理論は固体の巻と第8部第5章へ送る)である。後半では限界を3つの方向に分けて示し(6.7.5 節)、6.7.6 節の橋の節で、この章の結果を基準・密度行列・流体・代数の言葉に並べ直す。

記号は第2・3章に合わせる。ボースの生成消滅演算子は a^†,a^\hat a^\dagger,\hat a、フェルミのものは c^†,c^\hat c^\dagger,\hat c である。6.7.1 節の局在した準位の演算子を d^\hat d と書く(第4章の正孔の d^\hat d とは別物で、この章の中だけの記号)。6.7.3 節の gg はボース粒子どうしの接触相互作用の強さ、6.7.4 節の gg は電子対の引力の強さで、節ごとに意味が違う。この章の Δ\Delta は超伝導ギャップで、共通例題②の離調は出てこない。

独立ボソン模型

結晶の中に、電子が1個入るか入らないかの局在した準位(不純物の準位や欠陥の準位)が1つあり、そのまわりの格子の振動と結合している場合を考える。電子が入ると格子がわずかにひずみ、そのひずみはフォノンの座標の1次で書くことができる。最も簡単なハミルトニアンは、振動のモードを1つ(角振動数 ω0\omega_0)に限って

H^=εd n^d+ℏω0 a^†a^+ℏω0 η n^d(a^+a^†),n^d=d^†d^(6.7.1)\hat H=\varepsilon _{\mathrm d}\,\hat n_{\mathrm d}+\hbar\omega_0\,\hat a^\dagger\hat a+\hbar\omega_0\,\eta\,\hat n_{\mathrm d}\bigl(\hat a+\hat a^\dagger\bigr),\qquad\hat n_{\mathrm d}=\hat d^\dagger\hat d\tag{6.7.1}

である。d^\hat d はフェルミ粒子の消滅演算子で n^d∈{0,1}\hat n_{\mathrm d}\in\{0,1\}、η\eta は結合の強さを表す無次元の実数である。この模型は独立ボソン模型と呼ばれる。モードが多数ある場合は ℏω0η(a^+a^†)\hbar\omega_0\eta(\hat a+\hat a^\dagger) を ∑kℏωkηk(a^k+a^k†)\sum_k\hbar\omega_k\eta_k(\hat a_k+\hat a_k^\dagger) に置き換えればよく、以下の計算はモードごとに同じである。

この H^\hat H は n^d\hat n_{\mathrm d} と可換で、電子の数は保存する。ところがフォノンの数 a^†a^\hat a^\dagger\hat a とは可換でない。[a^†a^, a^+a^†]=a^†−a^\left[\hat a^\dagger\hat a,\,\hat a+\hat a^\dagger\right]=\hat a^\dagger-\hat a だからである。第3項は電子が入っているときにフォノンを1個作るか1個消す過程を表し、時間発展の間にフォノンの数が変わる。状態空間は電子の2状態とフォノンの Fock 空間のテンソル積 C2⊗F\mathbb{C}^2\otimes\mathcal F で、n^d\hat n_{\mathrm d} の固有値で2つの部分 n^d=0\hat n_{\mathrm d}=0 と n^d=1\hat n_{\mathrm d}=1 に分かれる。

n^d=0\hat n_{\mathrm d}=0 の部分ではハミルトニアンは ℏω0a^†a^\hbar\omega_0\hat a^\dagger\hat a で、基底状態はフォノンの真空 ∣0⟩| 0 \rangle である。n^d=1\hat n_{\mathrm d}=1 の部分では

H^1=εd+ℏω0[a^†a^+η(a^+a^†)]=εd+ℏω0[(a^+η)†(a^+η)−η2]\hat H_1=\varepsilon _{\mathrm d}+\hbar\omega_0\bigl[\hat a^\dagger\hat a+\eta(\hat a+\hat a^\dagger)\bigr] =\varepsilon _{\mathrm d}+\hbar\omega_0\bigl[(\hat a+\eta)^\dagger(\hat a+\eta)-\eta^2\bigr]

と平方完成できる。b^≔a^+η\hat b\coloneqq\hat a+\eta は [b^, b^†]=1\left[\hat b,\,\hat b^\dagger\right]=1 を満たすので、b^†b^\hat b^\dagger\hat b の固有値は 0,1,2,…0,1,2,\dots である。変位演算子 D^(α)=exp⁡(αa^†−α∗a^)\hat D(\alpha)=\exp(\alpha\hat a^\dagger-\alpha^*\hat a) を使うと D^(η)†a^D^(η)=a^+η\hat D(\eta)^\dagger\hat a\hat D(\eta)=\hat a+\eta だから、b^†b^\hat b^\dagger\hat b の固有状態は D^(−η)∣n⟩\hat D(-\eta)| n \rangle で、

H^1 D^(−η)∣n⟩=(εd−Ep+nℏω0)D^(−η)∣n⟩,Ep≔η2ℏω0(6.7.2)\hat H_1\,\hat D(-\eta)| n \rangle =\bigl(\varepsilon _{\mathrm d}-E_{\mathrm p}+n\hbar\omega_0\bigr)\hat D(-\eta)| n \rangle ,\qquad E_{\mathrm p}\coloneqq\eta^2\hbar\omega_0\tag{6.7.2}

が厳密に成り立つ。n^d=1\hat n_{\mathrm d}=1 の基底状態はコヒーレント状態 ∣−η⟩=D^(−η)∣0⟩| -\eta \rangle =\hat D(-\eta)| 0 \rangle で、格子がひずんだ分だけエネルギーが EpE_{\mathrm p} 下がる。EpE_{\mathrm p} をポーラロンのずれと呼ぶ。モードが多数あれば Ep=∑kηk2ℏωkE_{\mathrm p}=\sum_k\eta_k^2\hbar\omega_k である。固体の巻ではこの変位を電子の飛び移りのある場合に広げた Lang–Firsov 変換を扱っている(ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部第8章)。

光で励起したときに放出されるフォノンの数

最初に電子が無く格子が真空 ∣0⟩| 0 \rangle にいる状態に、光を当てて電子を局在準位へ入れる。光の吸収は格子の振動より十分速いので、直後の状態は d^†\hat d^\dagger を当てただけの ∣1d⟩⊗∣0⟩| 1_{\mathrm d} \rangle \otimes| 0 \rangle である(Franck–Condon の原理)。この状態を n^d=1\hat n_{\mathrm d}=1 の固有状態で展開すると、終状態 nn に入る確率は

Pn=∣⟨n∣D^(−η)†∣0⟩∣2=∣⟨n∣η⟩∣2,∣η⟩=e−η2/2∑nηnn!∣n⟩P_n=\lvert \langle n |\hat D(-\eta)^\dagger| 0 \rangle \rvert ^2=\lvert \langle n | \eta \rangle \rvert ^2,\qquad | \eta \rangle =\mathrm{e}^{-\eta^2/2}\sum_n\frac{\eta^n}{\sqrt{n!}}| n \rangle

から

Pn=e−SHRSHR nn!,SHR≔η2=Epℏω0(6.7.3)P_n=\mathrm{e}^{-S_{\mathrm{HR}}}\frac{S_{\mathrm{HR}}^{\,n}}{n!},\qquad S_{\mathrm{HR}}\coloneqq\eta^2=\frac{E_{\mathrm p}}{\hbar\omega_0}\tag{6.7.3}

になる。吸収のスペクトルは、エネルギー εd−Ep+nℏω0\varepsilon _{\mathrm d}-E_{\mathrm p}+n\hbar\omega_0 の線が Poisson 分布の重みで並んだものである(図 6.7.1)。n=0n=0 の線を零フォノン線、SHRS_{\mathrm{HR}} を Huang–Rhys 因子と呼ぶ(K. Huang and A. Rhys (1950), Proc. R. Soc. Lond. A 204, 406)。モードが多数あるときは各モードの Poisson 分布の積になり、零フォノン線の重みは e−∑kηk2\mathrm{e}^{-\sum_k\eta_k^2} である。

Poisson 分布の平均は SHRS_{\mathrm{HR}} なので、平均の吸収エネルギーは εd−Ep+SHRℏω0=εd\varepsilon _{\mathrm d}-E_{\mathrm p}+S_{\mathrm{HR}}\hbar\omega_0=\varepsilon _{\mathrm d} になる。格子がひずむ前の準位のエネルギーが、スペクトルの重心として残るということである。これは (6.7.1) の結合の項の期待値が真空 ∣0⟩| 0 \rangle で 0 になることの言い換えで、⟨1d,0∣H^∣1d,0⟩=εd\langle 1_{\mathrm d},0 |\hat H| 1_{\mathrm d},0 \rangle =\varepsilon _{\mathrm d} と同じ式である。

励起したあとの時間発展も厳密に書くことができる。n^d=1\hat n_{\mathrm d}=1 の部分の Heisenberg 方程式は db^dt=−iω0b^\frac{\mathrm{d} \hat b}{\mathrm{d} t}=-\mathrm{i}\omega_0\hat b なのでa^H(t)=(a^+η)e−iω0t−η\hat a_{\mathrm H}(t)=(\hat a+\eta)\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_0t}-\eta で、真空から始めると

⟨a^†a^⟩(t)=∣η(e−iω0t−1)∣2=2SHR(1−cos⁡ω0t)(6.7.4)\langle \hat a^\dagger\hat a \rangle (t)=\lvert \eta(\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_0t}-1)\rvert ^2=2S_{\mathrm{HR}}(1-\cos\omega_0t)\tag{6.7.4}

になる。状態は各時刻でコヒーレント状態 ∣η(e−iω0t−1)⟩| \eta(\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_0t}-1) \rangle で、フォノンの数は平均 2SHR(1−cos⁡ω0t)2S_{\mathrm{HR}}(1-\cos\omega_0t) の Poisson 分布に従う。真空から出発したフォノンの数は ω0t=π\omega_0t=\pi で最大 4SHR4S_{\mathrm{HR}} になり、周期 2π/ω02\pi/\omega_0 で0に戻る。この ⟨a^⟩(t)=η(e−iω0t−1)\langle \hat a \rangle (t)=\eta(\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_0t}-1) は、第6部第6章の総合問題で一定の外力で揺すった振動子の振幅と同じ式で(外力を角振動数で割った量が η\eta に当たる)、その章ではコヒーレント状態の経路積分の停留点として同じ振幅を出している(第6部第6章)。1次の項で駆動された振動子では停留点が厳密な答えを与える、という同じ事実の2つの書き方である。実際の結晶ではモードの振動数が分布しているので、各モードの戻る時刻がそろわず、放出されたフォノンは格子へ散っていく。

図

図 6.7.1 独立ボソン模型の吸収の重み Pn=e−SHRSHR n/n!P_n=\mathrm{e}^{-S_{\mathrm{HR}}}S_{\mathrm{HR}}^{\,n}/n!(SHR=2S_{\mathrm{HR}}=2)。nn 番目の線はエネルギー εd−Ep+nℏω0\varepsilon _{\mathrm d}-E_{\mathrm p}+n\hbar\omega_0 にあり、重心は εd\varepsilon _{\mathrm d}。数値は打ち切った Fock 空間で (6.7.1) を対角化した重なりと一致する(verify_ch6-07.py)。

例題 6.7.1 零フォノン線の重みとフォノンの数 ★★

オリジナル(6.7.1) で η=2\eta=\sqrt2 とする。

  1. (1) n^d=1\hat n_{\mathrm d}=1 の部分の下から3つの準位を εd\varepsilon _{\mathrm d} と ℏω0\hbar\omega_0 で書け。
  2. (2) 光で励起した直後の状態から、零フォノン線と n=1,2,3n=1,2,3 の線の重みを求めよ。
  3. (3) 励起してから時間 t=π/ω0t=\pi/\omega_0 後のフォノンの数の平均と分散を求めよ。
解答

(1) SHR=η2=2S_{\mathrm{HR}}=\eta^2=2、Ep=2ℏω0E_{\mathrm p}=2\hbar\omega_0 なので、(6.7.2) から εd−2ℏω0\varepsilon _{\mathrm d}-2\hbar\omega_0、εd−ℏω0\varepsilon _{\mathrm d}-\hbar\omega_0、εd\varepsilon _{\mathrm d} である。

(2) (6.7.3) から P0=e−2=0.1353P_0=\mathrm{e}^{-2}=0.1353、P1=2e−2=0.2707P_1=2\mathrm{e}^{-2}=0.2707、P2=2e−2=0.2707P_2=2\mathrm{e}^{-2}=0.2707、P3=43e−2=0.1804P_3=\frac43\mathrm{e}^{-2}=0.1804 になる。SHR=2S_{\mathrm{HR}}=2 では零フォノン線より1個・2個放出する線の方が強い。結合が強いほど、電子を入れたときに格子がひずむ量(η\eta)が大きく、変位前の真空と変位後の真空の重なり e−SHR/2\mathrm{e}^{-S_{\mathrm{HR}}/2} が小さいためである。

(3) (6.7.4) で cos⁡π=−1\cos\pi=-1 から平均は 4SHR=84S_{\mathrm{HR}}=8 で、状態はコヒーレント状態 ∣−2η⟩| -2\eta \rangle なので分散も 8 である。打ち切った Fock 空間で (6.7.1) を対角化し、時間発展も行列の指数関数で計算して、この3つが一致することを verify_ch6-07.py で確かめた。

木下の勉強ステータス

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