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コヒーレント状態:粒子数を重ね合わせた過完備な基底

2026年10月17日14分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第6章 コヒーレント状態の経路積分
目次
  1. 定義と固有値の式
  2. 正規順序の演算子は複素数の関数になる
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第6部 第6章 §6.6.1 ★★★ 消滅演算子の固有状態は、互いに直交しないが単位の分解を与え、正規順序の演算子の行列要素を複素数の関数に変える

第6部の型(出発点の要請 → 基本の対象 → 基準との同値 → 共通例題 → 得意な問題 → 限界)のうち、この章は「得意な問題」の後半を受け持ち、第3部(経路積分)との合流点になる。第3部第2章(第3部第2章)は、時間発展を細かく刻み、刻みの間に位置の完全系 ∫dx∣x⟩⟨x∣\int\mathrm{d} x| x \rangle \langle x | を挿んで、伝播関数を位置の経路の和に書いた。この章で出発点に置くのは、挿む完全系を位置の固有状態からコヒーレント状態(消滅演算子 a^\hat a の固有状態)に取り替えるという操作だけである。新しい公理は足さない。

取り替えると、積分の変数が位置 xkx_k から複素数 αk\alpha_k に変わる。消滅演算子 a^\hat a はコヒーレント状態に掛かると数 α\alpha になるので、第二量子化で書いたハミルトニアン H(a^†,a^)H(\hat a^\dagger,\hat a) はそのまま複素数の関数 H(αˉ,α)H(\bar\alpha,\alpha) になり、伝播関数は作用

S[αˉ,α]=∫[iℏ2(αˉα˙−αˉ˙α)−H(αˉ,α)]dtS[\bar\alpha,\alpha]=\int\Bigl[\frac{\mathrm{i}\hbar}{2}\bigl(\bar\alpha\dot\alpha-\dot{\bar\alpha}\alpha\bigr)-H(\bar\alpha,\alpha)\Bigr]\mathrm{d} t

の位相の和になる。粒子数を固定しないので、場の理論と多体系の経路積分はこの形で書くのが標準になっている。同値性の地図(第1部第1章)の橋「第二量子化 ↔ 経路積分」は、この章で両向きに証明する。

この章が回収するのは、前の章から渡された次の5つである。

  1. 第6部第2章(第6部第2章)の粒子数を重ね合わせた状態と、第3部第2章のコヒーレント状態を挿んだ経路積分(6.6.1節・6.6.2節)。
  2. 第6部第5章(第6部第5章)の大分配関数 Ξ\Xi を経路積分で書くことと、循環展開の輪が虚時間の閉じた経路を何回巻くかの数であること(6.6.5節)。
  3. 第6部第3章(第6部第3章)のフェルミ粒子には固有値が η2=0\eta^2=0 を満たす Grassmann 数が要ることと、対称な順序の零点の符号(6.6.5節)。
  4. 第10部第4・5章(第10部第4章・第10部第5章)の正則偏極の再生核 ewˉz\mathrm{e}^{\bar wz} と、球面の量子化に対応するスピンのコヒーレント状態の経路積分(Berry 項)(6.6.4節・6.6.6節)。
  5. 第7部第3章(第7部第3章)の Gross–Pitaevskii 方程式が、コヒーレント状態の経路積分の停留点の方程式であること(6.6.3節)。

共通例題は3つとも解く。①は虚時間の時間分割で ZZ を出し、零点 ℏω/2\hbar\omega/2 が演算子の順序の問題として現れることを見る。②はスピンのコヒーレント状態の経路積分の停留点(Bloch ベクトルの歳差)から Rabi 振動を出す。③は場のコヒーレント状態の振幅が伝播関数 KK で運ばれることから波束の広がりを出す。

記号は第6部の前の章に揃え、1つのモードのボースの生成消滅演算子を a^†,a^\hat a^\dagger,\hat a、フェルミのものを c^†,c^\hat c^\dagger,\hat c と書く。経路積分の変数 α\alpha と αˉ\bar\alpha は、経路の上では互いの複素共役とは限らない独立な変数として扱う(6.6.2節で理由を述べる)。複素共役を明示したいときだけ α∗\alpha^* と書く。虚時間は第3部第6章(第3部第6章)と同じく τ\tau、逆温度は β=1/(kBT)\beta=1/( k_{\mathrm B} T) である。この章には化学ポテンシャル μ\mu と2準位系の Rabi 周波数 Ω\Omega が出るが、グランドポテンシャルは出さないので Rabi 周波数を裸の Ω\Omega で書く。球面上の立体角は Ω\Omega と衝突しないように A\mathcal A と書く。

定義と固有値の式

1つのモードの Fock 空間で、複素数 α\alpha ごとに

∣α⟩=e−∣α∣2/2 eαa^†∣0⟩=e−∣α∣2/2∑n=0∞αnn!∣n⟩(6.6.1)| \alpha \rangle =\mathrm{e}^{-\lvert \alpha\rvert ^2/2}\,\mathrm{e}^{\alpha\hat a^\dagger}| 0 \rangle =\mathrm{e}^{-\lvert \alpha\rvert ^2/2}\sum_{n=0}^\infty\frac{\alpha^n}{\sqrt{n!}}| n \rangle\tag{6.6.1}

と置く。これがコヒーレント状態で、記法の正本と光の巻(光学と量子エレクトロニクス 第31章)の形と同じである。a^∣n⟩=n∣n−1⟩\hat a| n \rangle =\sqrt n| n-1 \rangle を項ごとに当てると和の番号が1つずれ、

a^∣α⟩=α∣α⟩(6.6.2)\hat a| \alpha \rangle =\alpha| \alpha \rangle\tag{6.6.2}

を得る。a^\hat a はエルミートでないので、固有値は複素数で、どの複素数も固有値になる。逆に a^†\hat a^\dagger には固有ベクトルが無い(a^†\hat a^\dagger は粒子数の最も小さい成分を必ず1つ上げるので、どのベクトルも定数倍にできない)。粒子数の分布 ∣⟨n∣α⟩∣2=e−∣α∣2∣α∣2n/n!\lvert \langle n | \alpha \rangle \rvert ^2=\mathrm{e}^{-\lvert \alpha\rvert ^2}\lvert \alpha\rvert ^{2n}/n! は平均 ∣α∣2\lvert \alpha\rvert ^2 の Poisson 分布で、コヒーレント状態は粒子数の決まっていない状態の代表である。第6部第2章(第6部第2章)で示したとおり、基準の NN 粒子の状態は Fock 空間の NN 粒子の部分にあり、コヒーレント状態はその全部の NN の重ね合わせになっている。

2つのコヒーレント状態の内積は、(6.6.1) の和を項ごとにとると

⟨β∣α⟩=exp⁡(−∣α∣22−∣β∣22+β∗α),∣⟨β∣α⟩∣2=e−∣α−β∣2(6.6.3)\langle \beta | \alpha \rangle =\exp\Bigl(-\frac{\lvert \alpha\rvert ^2}2-\frac{\lvert \beta\rvert ^2}2+\beta^*\alpha\Bigr),\qquad\lvert \langle \beta | \alpha \rangle \rvert ^2=\mathrm{e}^{-\lvert \alpha-\beta\rvert ^2}\tag{6.6.3}

で、0 にならない。コヒーレント状態は互いに直交しない。それでも基底として使えるのは、次の単位の分解が成り立つからである。

命題 6.6.1(コヒーレント状態による単位の分解 ★★★)

d2α=d(Re⁡α) d(Im⁡α)\mathrm{d}^2\alpha=\mathrm{d}(\operatorname{Re}\alpha)\,\mathrm{d}(\operatorname{Im}\alpha) として

∫Cd2απ∣α⟩⟨α∣=1^,Tr⁡A^=∫Cd2απ⟨α∣A^∣α⟩(6.6.4)\int_{\mathbb{C}}\frac{\mathrm{d}^2\alpha}{\pi}| \alpha \rangle \langle \alpha |=\hat 1,\qquad \operatorname{Tr}\hat A=\int_{\mathbb{C}}\frac{\mathrm{d}^2\alpha}{\pi}\langle \alpha | \hat A | \alpha \rangle\tag{6.6.4}

が成り立つ(トレースの式は A^\hat A がトレースクラスのとき)。

証明

左辺の ⟨m∣⋯∣n⟩\langle m |\cdots| n \rangle 成分は ∫d2απe−∣α∣2αmα∗nm! n!\int\frac{\mathrm{d}^2\alpha}\pi\mathrm{e}^{-\lvert \alpha\rvert ^2}\frac{\alpha^m\alpha^{*n}}{\sqrt{m!\,n!}} である。極座標 α=reiθ\alpha=r\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta} で θ\theta の積分は ei(m−n)θ\mathrm{e}^{\mathrm{i}(m-n)\theta} を含むので m≠nm\ne n で 0 になり、m=nm=n では 2ππ∫0∞e−r2r2nn!r dr=1n!∫0∞sne−sds=1\frac{2\pi}{\pi}\int_0^\infty\mathrm{e}^{-r^2}\frac{r^{2n}}{n!}r\,\mathrm{d} r=\frac1{n!}\int_0^\infty s^n\mathrm{e}^{-s}\mathrm{d} s=1(s=r2s=r^2)となる。よって左辺は数の基底で単位行列である。トレースの式は Tr⁡A^=∑n⟨n∣A^∣n⟩\operatorname{Tr}\hat A=\sum_n\langle n | \hat A | n \rangle の間に単位の分解を挿んで ∑n⟨n∣α⟩⟨α∣A^∣n⟩=⟨α∣A^∣α⟩\sum_n\langle n | \alpha \rangle \langle \alpha | \hat A | n \rangle =\langle \alpha | \hat A | \alpha \rangle とまとめればよい(トレースクラスなら和と積分の順序を入れ替えてよい)。

この積分は、第2部第4章(第2部第4章)の Bargmann 表示の内積 ∫f‾g e−∣z∣2d2z/π\int\overline{f}g\,\mathrm{e}^{-\lvert z\rvert ^2}\mathrm{d}^2z/\pi と同じものである。状態 ∣ψ⟩| \psi \rangle に正則関数 ψ(zˉ)=e∣z∣2/2⟨z∣ψ⟩\psi(\bar z)=\mathrm{e}^{\lvert z\rvert ^2/2}\langle z | \psi \rangle を対応させると、a^†\hat a^\dagger は zˉ\bar z を掛けること、a^\hat a は zˉ\bar z で微分することになる(6.6.6節で使う)。第10部第4章(第10部第4章)はこれを相空間の正則偏極として組み立て直し、⟨β∣α⟩\langle \beta | \alpha \rangle の本質的な部分 eβ∗α\mathrm{e}^{\beta^*\alpha} を再生核と呼んだ。

正規順序の演算子は複素数の関数になる

生成演算子を全部左、消滅演算子を全部右に並べた形を正規順序という。正規順序の単項式 (a^†)ka^l(\hat a^\dagger)^k\hat a^l のコヒーレント状態での行列要素は、右の a^l\hat a^l を ∣α⟩| \alpha \rangle に、左の (a^†)k(\hat a^\dagger)^k を ⟨β∣\langle \beta | に当てて

⟨β∣(a^†)ka^l∣α⟩=(β∗)kαl ⟨β∣α⟩,⟨β∣H(a^†,a^)∣α⟩⟨β∣α⟩=H(β∗,α)(6.6.5)\langle \beta | (\hat a^\dagger)^k\hat a^l | \alpha \rangle =(\beta^*)^k\alpha^l\,\langle \beta | \alpha \rangle ,\qquad \frac{\langle \beta | H(\hat a^\dagger,\hat a) | \alpha \rangle }{\langle \beta | \alpha \rangle }=H(\beta^*,\alpha)\tag{6.6.5}

となる。ここで H(a^†,a^)H(\hat a^\dagger,\hat a) は正規順序で書いた多項式で、H(β∗,α)H(\beta^*,\alpha) はその演算子を数に置き換えたものである。(6.6.5) が、第二量子化のハミルトニアンを経路積分の作用に移す鍵になる。正規順序でない演算子は、交換関係で正規順序に直してから置き換える。例えば a^a^†=a^†a^+1\hat a\hat a^\dagger=\hat a^\dagger\hat a+1 なので、a^a^†\hat a\hat a^\dagger の置き換えは β∗α+1\beta^*\alpha+1 で、順序を入れ替えた分の定数 11 が付く。この定数が共通例題①の零点 ℏω/2\hbar\omega/2 の出どころになる(6.6.3節)。

モードが多数あるときは、モードごとのコヒーレント状態のテンソル積 ∣{αj}⟩=⨂j∣αj⟩| \{\alpha_j\} \rangle =\bigotimes_j| \alpha_j \rangle を使う。場の演算子 ψ^(x)=∑jφj(x)a^j\hat\psi(x)=\sum_j\varphi_j(x)\hat a_j(第6部第1章 第6部第1章)に当てると

ψ^(x)∣{αj}⟩=ϕ(x)∣{αj}⟩,ϕ(x)=∑jαjφj(x)(6.6.6)\hat\psi(x)| \{\alpha_j\} \rangle =\phi(x)| \{\alpha_j\} \rangle ,\qquad\phi(x)=\sum_j\alpha_j\varphi_j(x)\tag{6.6.6}

で、場の演算子の固有状態になる。以下、この状態を ∣ϕ⟩| \phi \rangle と書き、ϕ(x)\phi(x) を場の振幅と呼ぶ。密度の期待値は ⟨ϕ∣ψ^†(x)ψ^(x)∣ϕ⟩=∣ϕ(x)∣2\langle \phi | \hat\psi^\dagger(x)\hat\psi(x) | \phi \rangle =\lvert \phi(x)\rvert ^2、全粒子数の平均は ∫∣ϕ∣2dx=∑j∣αj∣2\int\lvert \phi\rvert ^2\mathrm{d} x=\sum_j\lvert \alpha_j\rvert ^2 である。

例題 6.6.1 コヒーレント状態の重なりと粒子数 ★★

オリジナル

  1. (1) α=1\alpha=1、β=i\beta=\mathrm{i} のとき ∣⟨β∣α⟩∣2\lvert \langle \beta | \alpha \rangle \rvert ^2 を求めよ。
  2. (2) α=3\alpha=3 のコヒーレント状態で、粒子数の平均と分散、粒子数がちょうど9である確率を求めよ。
  3. (3) 正規順序の置き換え (6.6.5) を使って ⟨α∣a^a^†∣α⟩\langle \alpha | \hat a\hat a^\dagger | \alpha \rangle と ⟨α∣a^†a^∣α⟩\langle \alpha | \hat a^\dagger\hat a | \alpha \rangle を求め、差が α\alpha によらないことを確かめよ。
解答

(1) (6.6.3) より ∣⟨β∣α⟩∣2=e−∣1−i∣2=e−2=0.1353\lvert \langle \beta | \alpha \rangle \rvert ^2=\mathrm{e}^{-\lvert 1-\mathrm{i}\rvert ^2}=\mathrm{e}^{-2}=0.1353 である。重なりは2点の複素平面上の距離の2乗だけで決まり、距離がおよそ1を超えるとほぼ直交する。コヒーレント状態どうしは、複素平面の中で半径1程度の「ぼけ」を持つ点と見なせる。

(2) ⟨α∣n^∣α⟩=⟨α∣a^†a^∣α⟩=∣α∣2=9\langle \alpha | \hat n | \alpha \rangle =\langle \alpha | \hat a^\dagger\hat a | \alpha \rangle =\lvert \alpha\rvert ^2=9。n^2=a^†a^a^†a^=(a^†)2a^2+a^†a^\hat n^2=\hat a^\dagger\hat a\hat a^\dagger\hat a=(\hat a^\dagger)^2\hat a^2+\hat a^\dagger\hat a と正規順序に直すと⟨n^2⟩=∣α∣4+∣α∣2\langle \hat n^2 \rangle =\lvert \alpha\rvert ^4+\lvert \alpha\rvert ^2 なので、分散は ∣α∣2=9\lvert \alpha\rvert ^2=9 で平均に等しい(Poisson 分布の性質)。P(9)=e−999/9!=0.1318P(9)=\mathrm{e}^{-9}9^9/9!=0.1318 である。

(3) a^†a^\hat a^\dagger\hat a はすでに正規順序なので ∣α∣2\lvert \alpha\rvert ^2。a^a^†=a^†a^+1\hat a\hat a^\dagger=\hat a^\dagger\hat a+1 と直すと ∣α∣2+1\lvert \alpha\rvert ^2+1。差は 11 で、交換関係 [a^, a^†]=1\left[\hat a,\,\hat a^\dagger\right]=1 そのものである。複素数 α∗\alpha^* と α\alpha は可換なので、置き換える前に順序を決めておかないと、この 11 が消える。

木下の勉強ステータス

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