解答
(1) e−βH^ はエルミート行列 H^ の実数値関数なので正定値で、ρ^β:=e−βH^/Z は ρ^β≥0、Trρ^β=1 を満たす。定理 8.1.7 の逆向きにより ωβ(A)=Tr(ρ^βA) は状態である。H^=−2ℏΩ′n⋅σ と (n⋅σ)2=1 から、x:=βℏΩ′/2 として
e−βH^=exn⋅σ=coshx⋅1+sinhxn⋅σ,Z=2coshx.
Trσi=0、Tr(σiσj)=2δij より ωβ(σi)=2sinhxni/Z=tanhxni、つまり r=tanhxn。x=ln3 では tanhx=(9−1)/(9+1)=0.8、coshx=(3+31)/2=35 なので、r=0.8(0.6,0,0.8)=(0.48,0,0.64)、Z=310。∣r∣=0.8<1 なので混合状態である。
(2) e−βH^ は e±iH^t/ℏ と交換するので、トレースの巡回性からωβ(αt(A))=Tr(e−βH^eiH^t/ℏAe−iH^t/ℏ)/Z=Tr(e−βH^A)/Z=ωβ(A)。一方 ωe の Bloch ベクトルは (0,0,1) で、n=(0.6,0,0.8) と平行でない。(8.1.8) の回転で n のまわりを回るので、ωe(αt(σz)) は Δ2/Ω′2+(Ω2/Ω′2)cosΩ′t=0.64+0.36cosΩ′t となり、t によって変わる。
(3) C∗(σz) は 1 と σz の線形結合の全体で、射影 P±=21(1±σz) が σ(σz)={±1} の2点の上の関数(1点で 1、他方で 0)にあたる。確率は ωβ(P+)=(1+rz)/2=(1+0.64)/2=0.82、ωβ(P−)=0.18 である。
(4) トレースの巡回性を使うと
ωβ(Ae−βH^BeβH^)=Z1Tr(e−βH^Ae−βH^BeβH^)=Z1Tr(Ae−βH^B)=Z1Tr(e−βH^BA)=ωβ(BA).
2つ目の等号で eβH^ を先頭へ回して e−βH^ と打ち消し、3つ目の等号で A を末尾へ回した。この関係は e−βH^ という密度行列を使わず、ωβ と αt だけで書かれている。H^ や Tr が使えない無限系でも意味をもつので、第8部第4章ではこれを熱平衡状態の定義に使う。
(5) ρ^β の固有値は 21(1±∣r∣)=0.9, 0.1 で、固有ベクトルは n⋅σ の固有値 ±1 のもの ∣+n⟩、∣−n⟩ である。例題 8.1.6 と同じく
∣Ψβ⟩:=0.9∣+n⟩⊗∣0⟩+0.1∣−n⟩⊗∣1⟩
(2つ目の因子は正規直交基底でありさえすればよいので、∣0⟩,∣1⟩ をとった)とおくと、⟨Ψβ∣A⊗1∣Ψβ⟩=0.9⟨+n∣A∣+n⟩+0.1⟨−n∣A∣−n⟩=Tr(ρ^βA)=ωβ(A)。2つ目の系に制限した状態の固有値も {0.9,0.1} で、浄化の2つの側は同じスペクトルをもつ。熱平衡状態を「2倍の系の純粋状態の片側」として書くこの形は、熱場二重状態と呼ばれ、第8部第4章で KMS 状態の GNS 表現として再び現れる。