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限界:平均場の時間発展と、計算に向かないこと

2026年10月17日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第8部 第5章 物性での実例と限界:強磁性と BCS 状態
目次
  1. 平均場の時間発展は表現に依存する
  2. 分類はできるが、数は出ない
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第8部 第5章 §8.5.5 ★★★ 平均場型の相互作用では時間発展の極限が代数のノルムでは取れず、選んだ表現の中でだけ取ることができる。代数的な構成で得られるのは分類と定義で、ギャップや転移温度の数値は第二量子化と平均場の計算で出す

平均場の時間発展は表現に依存する

BCS の簡約したハミルトニアンは、擬スピンで書くと ∑kξk(1−τkz)−gV∑k,k′P^k†P^k′\sum_{\bm{k}}\xi_{\bm{k}}(1-\tau^z_{\bm{k}})-\frac gV\sum_{\bm{k},\bm{k}'}\hat P^\dagger_{\bm{k}}\hat P_{\bm{k}'} で、すべての対のモードが強さ g/Vg/V で互いに結びつく平均場型の相互作用をもつ。この形の相互作用では、時間発展そのものに問題が起きる。Curie–Weiss 模型 (8.4.15)(H^N=−J2N(∑kσz(k))2\hat H_N=-\frac J{2N}(\sum_k\sigma_z^{(k)})^2)で、これを厳密に見ておく。

S^≔∑kσz(k)\hat S\coloneqq\sum_k\sigma_z^{(k)} の固有値 ss の固有空間で、σ1+=12(σx(1)+iσy(1))\sigma^+_1=\tfrac12(\sigma_x^{(1)}+\mathrm{i}\sigma_y^{(1)}) は ss を s+2s+2 に上げる。H^N\hat H_N は S^\hat S の関数なので

αt(σ1+)=eiH^Nt/ℏσ1+e−iH^Nt/ℏ=σ1+exp⁡(−2iJtℏ(MN+1N)),MN=S^N(8.5.19)\alpha_t\bigl(\sigma^+_1\bigr)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\hat H_Nt/\hbar}\sigma^+_1\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\hat H_Nt/\hbar}=\sigma^+_1\exp\Bigl(-\frac{2\mathrm{i} Jt}{\hbar}\Bigl(M_N+\frac1N\Bigr)\Bigr),\qquad M_N=\frac{\hat S}N\tag{8.5.19}

となる。E(s)=−Js2/(2N)E(s)=-Js^2/(2N) として E(s+2)−E(s)=−2J(s+1)/NE(s+2)-E(s)=-2J(s+1)/N を使った(右側の MNM_N は σ1+\sigma^+_1 を当てる前の状態に作用する)。1つのスピンの時間発展に、全体の磁化 MNM_N が入っている。N→∞N\to\infty で MNM_N はノルムで収束しない。前半の NN 点が上、後半の NN 点が下の状態では MN=1M_N=1、M2N=0M_{2N}=0 なので、∥MN−M2N∥≥1\lVert M_N-M_{2N}\rVert \ge1 である。したがって αt(σ1+)\alpha_t(\sigma^+_1) は準局所代数の中に極限をもたず、時間発展を代数の *自己同型として定義することができない。

ところが状態を1つ選んで GNS 表現の中で見ると、極限を取ることができる。純粋な相 ω±\omega_\pm(積状態で1点の磁化が ±m∗\pm m^*)の表現では、前々章の補題により MN→±m∗⋅1M_N\to\pm m^*\cdot1 に強収束し、有界な連続関数 exp⁡(−2iJt(⋅)/ℏ)\exp(-2\mathrm{i} Jt(\cdot)/\hbar) もそれにつれて強収束するので

π±(αt(σ1+))  ⟶  π±(σ1+) e∓2iJm∗t/ℏ(8.5.20)\pi_\pm\bigl(\alpha_t(\sigma^+_1)\bigr)\;\longrightarrow\;\pi_\pm(\sigma^+_1)\,\mathrm{e}^{\mp2\mathrm{i} Jm^*t/\hbar}\tag{8.5.20}

になる。極限は、平均場 ±Jm∗\pm Jm^* の中で歳差運動する1つのスピンの時間発展で、向きが表現ごとに逆になる。混合相 12(ω++ω−)\tfrac12(\omega_++\omega_-) の表現では、極限はσ1+e−2iJtZ^/ℏ\sigma^+_1\mathrm{e}^{-2\mathrm{i} Jt\hat Z/\hbar} の形で、Z^\hat Z は値 ±m∗\pm m^* をとる中心の元(代数の外の演算子)である。時間発展が表現の外から持ち込んだ量に依存する。

BCS の簡約したハミルトニアンでも同じことが起き、位相 φ\varphi の表現の中では、時間発展が「ギャップ Δeiφ\Delta\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi} の平均場の中の Bogoliubov 準粒子の運動」に収束する。Haag と Thirring–Wehrl は、このように表現ごとに極限を取る形で BCS 模型の時間発展を扱った。到達距離が有限の相互作用なら時間発展は代数の上で定義できる(第8部第4章で結果だけ引いた)ので、この困難の原因は平均場型という理想化にある。代数的な構成は、時間発展が状態によらず代数の上に与えられていることを要請 (A4)(第8部第1章)に置いていたので、平均場の模型はその要請の外にある。

分類はできるが、数は出ない

この章で代数的な構成が示したのは、強磁性の基底状態と BCS 状態が出発点の Fock 表現とは別の表現にいること、その違いが秩序変数(磁化・対の振幅)で見分けられること、破れた対称性が表現の中で実装できないこと、粒子数を決めた状態が混合相になること、である。どれも「どの状態がどの表現にいるか」という分類の言明で、表現の中で何が起きるかの数値は、この構成からは出てこない。

ギャップ Δ=εc/sinh⁡(1/λ)\Delta=\varepsilon _{\mathrm c}/\sinh(1/\lambda)、転移温度 kBTc=1.134 εce−1/λk_{\mathrm B} T_{\mathrm c}=1.134\,\varepsilon _{\mathrm c}\mathrm{e}^{-1/\lambda}、比 2Δ/kBTc=3.532\Delta/ k_{\mathrm B} T_{\mathrm c}=3.53 は、Bogoliubov 変換と平均場の自己無撞着の式から出る(ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部第4章)。代数の側はその平均場の解を「位相 φ\varphi の KMS 状態」として受け取るだけで、Δ\Delta を決める方程式が代数の側から新しく出てくるわけではない。マグノンの分散 (8.5.7) も、表現を選んだあとは1粒子の Schrödinger 方程式を解いて出した。

さらに、短距離の現実的な模型では、秩序があること自体の証明が多く残っている。3次元以上の Heisenberg 反強磁性体(スピン 11 以上)と S=12S=\tfrac12 の XY 模型では、Dyson・Lieb・Simon が正の温度での長距離秩序を証明した1F. J. Dyson, E. H. Lieb and B. Simon (1978), J. Stat. Phys. 18, 335.下の脚注へ。一方、3次元の量子 Heisenberg 強磁性体で正の温度に自発磁化があることは、この章の第8.5.2節のスピン波の描像が強く示唆するにもかかわらず、証明されていない(B. Nachtergaele, arXiv:math-ph/0603017 の展望で未解決の問題として挙げられている)。Hubbard 模型のような短距離の電子の模型から超伝導の秩序を導く証明も知られていない(数値計算の側からも「Hubbard 模型が超伝導の基底状態を持つ決定的な証明は無い」と述べられている:C. J. Jia et al. (2011), Phys. Rev. B 84, 125113)。代数的な構成から得られるのは「秩序がある」ことの定義(KMS 状態が複数ある、秩序変数の期待値が 00 でない)で、ある模型でそれが成り立つかは、別の道具で示すしかない。

例題 8.5.5 Curie–Weiss 模型の1スピンの歳差 ★★

オリジナルCurie–Weiss 模型 (8.4.15) で βJ=54ln⁡3\beta J=\tfrac54\ln3(m∗=0.8m^*=0.8、第8部第4章)とする。

  1. (1) (8.5.19) を、N=5N=5 の行列で tt を1つ選んで確かめる手順を述べよ。
  2. (2) 純粋な相 ω+\omega_+ の表現で、σ1+\sigma^+_1 の歳差の角振動数を kBT/ℏk_{\mathrm B} T/\hbar を単位に求めよ。
  3. (3) ω+\omega_+ の表現で ∥(MN−m∗)ξ+∥2\lVert (M_N-m^*)\xi_+\rVert ^2 を NN で表し、N=100N=100 での値を求めよ。
解答

(1) 25=322^5=32 次元の行列で S^=∑kσz(k)\hat S=\sum_k\sigma_z^{(k)}、H^5=−JS^2/10\hat H_5=-J\hat S^2/10 を作り、eiH^5t/ℏσ1+e−iH^5t/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i}\hat H_5t/\hbar}\sigma^+_1\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\hat H_5t/\hbar} とσ1+exp⁡(−2iJt(S^/5+1/5)/ℏ)\sigma^+_1\exp(-2\mathrm{i} Jt(\hat S/5+1/5)/\hbar) を行列の指数関数で計算して比べる。verify_ch8-05.py で J=54ln⁡3J=\tfrac54\ln3、t=0.7t=0.7(ℏ=1\hbar=1)について成分がすべて一致した。

(2) 角振動数は 2Jm∗/ℏ=2×54ln⁡3×0.8×kBT/ℏ=2ln⁡3 kBT/ℏ=2.197 kBT/ℏ2Jm^*/\hbar=2\times\tfrac54\ln3\times0.8\times k_{\mathrm B} T/\hbar=2\ln3\, k_{\mathrm B} T/\hbar=2.197\, k_{\mathrm B} T/\hbar。これは1点の平均場 Jm∗Jm^* の中の2準位の分裂 2Jm∗2Jm^* で、β⋅2Jm∗=2ln⁡3\beta\cdot2Jm^*=2\ln3 は1点の上向きと下向きの Boltzmann 因子の比 99(0.9:0.10.9:0.1 で磁化 0.80.8)と整合する。

(3) ω+\omega_+ は1点の σz\sigma_z の期待値が 0.80.8 の積状態で、1点の分散は 1−0.82=0.361-0.8^2=0.36。前々章の (8.3.15) により ∥(MN−m∗)ξ+∥2=0.36/N\lVert (M_N-m^*)\xi_+\rVert ^2=0.36/N、N=100N=100 で 0.00360.0036。これが 00 に行くので MNM_N は強収束し、(8.5.20) の極限が表現の中で存在する。

1 F. J. Dyson, E. H. Lieb and B. Simon (1978), J. Stat. Phys. 18, 335.

木下の勉強ステータス

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