出てくるもの2:Fermi 面の形
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第7章 §2.7.3 ★★ Fermi 面は自由電子では球、BZ の境界に近づくと境界に直角に交わるように曲がり、tight-binding の半分詰まりでは正方形になる
自由電子の Fermi 球と BZ
周期ポテンシャルが弱い極限(第2部第5章のほぼ自由な電子)から始める。ポテンシャルを にすると で、Fermi 面は半径 の球になる。単位体積あたりの電子の数を とすると、球の中の波数の数 にスピンの2を掛けたものが に等しく
である。周期ポテンシャルを入れると、BZ の境界(ゾーン境界)でギャップが開く。Fermi 球が BZ の内側に収まっていれば、Fermi 面はほとんど球のまま残る。Fermi 球が境界に届くと、そこでバンドが割れるので、球は境界で切られた形になる。
1価の金属では、1本のバンドの容量の半分しか電子が無いので、Fermi 球の体積は BZ の体積のちょうど半分である。球が BZ の内側に収まるかどうかは BZ の形で決まり、次の例題で bcc と fcc を比べる。
Fermi 面はゾーン境界に直角に交わる
Fermi 面がゾーン境界に届くときの交わり方には、対称性から決まる規則がある。逆格子ベクトル の垂直二等分面の上の点を ()とし、 の向きの単位ベクトルを とする。時間反転の対称性による と周期性 を順に使うと、 を実数として
である。面が鏡映の対称性 も持つ場合(立方格子の面など)には、最後の式は に等しい。すると は の偶関数なので、 での 微分、つまり群速度の 方向の成分は である( がそこで微分可能、すなわちバンドが縮退していない場合)。Fermi 面の法線は群速度の向きなので、Fermi 面はゾーン境界の面に直角に交わる。ほぼ自由な電子の Fermi 球は、ゾーン境界の近くで境界に向かって引き伸ばされるように曲がって、境界に直角に入る。
tight-binding の Fermi 面
ポテンシャルが強い逆の極限、tight-binding の側からも Fermi 面を描いてみる。格子定数 の2次元の正方格子で、最近接だけのホッピング を残すと、バンドは
の1本である(第2部第3章の輪を2方向にしたもの)。 を変えると、Fermi 面(この場合は曲線)は図 2.7.2 のように形を変える。
図 2.7.2 正方格子の tight-binding (2.7.6) の Fermi 面(第1 BZ)。曲線の脇の数は の値で、1サイトあたりの電子の数は内側から ()、()、(、半分詰まり)、()。 では原点を囲む閉じた曲線(電子の Fermi 面)、 では頂点が ・ の正方形、 では BZ の角 を囲む曲線(空いた領域を囲む正孔の Fermi 面)になる。 の4本の弧は、BZ を周期的に並べると角を中心とする1つの閉曲線につながる。
電子の数が少ないとき()、Fermi 面はほとんど円である。BZ の底 の近くで と放物線になり、自由電子と同じ形になるからである。 を上げると円は角ばり、 でちょうど正方形 になる。 は と同じだからである。この正方形の内側の面積は で、BZ の面積 のちょうど半分なので、1サイトあたり1個(半分詰まり)に当たる。正方形の頂点 はバンドの鞍点で、ここで状態密度が対数的に発散する(2次元の van Hove 特異点。第2部第6章)。 では、Fermi 面は BZ の角を囲む曲線になる。占められた領域は Fermi 面の外側で、Fermi 面の囲む内側が空いている。空いた状態の集まりを1つの粒子のように扱うのが正孔の描像で、Hall 効果の符号として測られる(第4部第4章)。
半分詰まりの正方形の Fermi 面には、もう1つ特徴がある。向かい合う辺どうしが、1つのベクトル だけずらすと重なる。これを Fermi 面のネスティングと呼ぶ。ネスティングがあると、波数 の小さな周期的な摂動が Fermi 面の上の多くの状態を同時に混ぜ、その摂動のエネルギーを大きく下げられる。1次元の鎖の Fermi 面は2点 で、 だけずらすと完全に重なる。これが次の章で Peierls 転移が1次元で必ず起きる理由になる(第2部第8章)。
例題 2.7.4 1価の金属の Fermi 球は BZ に収まるか ★★
オリジナル立方体の慣用単位胞の1辺を とする。
- (1) bcc の1価金属(慣用単位胞に原子2個)の を求めよ。bcc の BZ(逆格子は fcc)の中心から最も近い面までの距離は である。両者の比を求めよ。
- (2) fcc の1価金属(慣用単位胞に原子4個)の を求めよ。fcc の BZ(逆格子は bcc)の中心から最も近い面(六角形の面の中心 L 点)までの距離は である。両者の比を求めよ。
- (3) (1)(2) の結果から、どちらの金属の Fermi 面が自由電子の球からずれやすいと考えられるか。
解答
(1) なので、式 (2.7.5) から である。面までの距離 との比は で、球は BZ の中に収まり、面まで 余裕がある。最も近い面の中心は、逆格子ベクトル の半分の位置にある(第1部第2章)。
(2) なので である。L 点は逆格子ベクトル の半分の位置にあり、距離は で、比は である。
(3) fcc の方が球は面に近い(余裕が )。L 点の近くではギャップが開いてバンドが平らになり、前の小節で見たように Fermi 面は境界に向かって引き伸ばされるので、自由電子の球から大きくずれやすいのは fcc の1価金属である。実際 Cu の Fermi 面は L 点の六角形の面に届き、そこで「首」を作る(2.7.6節)。
例題 2.7.5 2価の正方格子:Fermi 円は BZ からはみ出す ★
オリジナル格子定数 の2次元の正方格子で、単位胞あたり2個の電子を自由電子として(ポテンシャルを として)詰める。
- (1) Fermi 円の半径 を求め、BZ の辺の中点までの距離 、角までの距離 と比べよ。
- (2) 第1 BZ の中で Fermi 円の外になる部分(角の4つの空き)の面積と、Fermi 円のうち第1 BZ の外へ出た部分の面積が等しいことを説明せよ。
- (3) 弱い周期ポテンシャルを入れると、この結晶は金属・絶縁体のどちらになりうるか。
解答
(1) 2次元では Fermi 円の中の波数の数は で、スピンの2を掛けて単位面積あたり に等しいとおくと 、 である。 なので、円は辺からははみ出し、角までは届かない。
(2) 円の面積は で、BZ の面積 にちょうど等しい。円の面積は「BZ の中の円の部分」と「BZ の外の円の部分」の和、BZ の面積は「BZ の中の円の部分」と「角の空き」の和なので、両者は等しい。数値で求めると、どちらも (BZ の )である。
(3) 第1バンド(第1 BZ)の角に空き(正孔)、第2バンド(第1 BZ の外の部分を逆格子ベクトルで戻したもの)に電子が残る。弱いポテンシャルでは、ゾーン境界に開くギャップが小さいため、第1バンドの角(最も高い所)が第2バンドの辺の中点の近く(最も低い所)より上にあり、2本のバンドは重なったまま金属(または半金属)になる。ポテンシャルを強くしてギャップを大きくすると、第1バンドが満ちて第2バンドが空になる絶縁体へ移る。単位胞あたり2個の電子は偶数なので、どちらも起こりうる。前の節の数え方の言う「偶数なら重なり次第」の具体例である。
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