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この章で選ぶ H^\hat H と当てる道具:バンドの端と Poisson 方程式

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第9章 MOS 構造とトランジスタの原理
目次
  1. 選ぶ
  2. 当てる道具:平衡では化学ポテンシャルが一定
  3. ゲートの電圧と表面の電位
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部 第9章 §4.9.1 ★★★ 有効質量のバンドに静電ポテンシャルを足した1電子の H^\hat H を選び、その静電ポテンシャルを電荷から Poisson 方程式で決める。平衡では化学ポテンシャルが一定なので、電子と正孔の数は局所の電位の Boltzmann 因子になる

第4部第5章では、p 型と n 型の半導体をつなぐと境目に空乏層ができ、バンドが曲がることを見た。そこでバンドを曲げたのは、2つの半導体の化学ポテンシャルの違いである。この章では、バンドを外から曲げる。半導体の表面に薄い絶縁膜(酸化膜)を付け、その上に金属の電極(ゲート)を置く。この金属(Metal)・酸化膜(Oxide)・半導体(Semiconductor)の重なりを MOS 構造と呼ぶ。ゲートに電圧をかけると、酸化膜はコンデンサーの誘電体として働き、半導体の表面に電荷が誘起される。その電荷は Poisson 方程式に従って半導体の電位を曲げ、曲がったバンドの中で電子と正孔の数は Boltzmann 因子に従って変わる。この電荷と電位の釣り合いを解くことが、この章の計算の中心である。

選ぶハミルトニアンは新しくない。伝導帯と価電子帯の端の近くを有効質量で書いた1電子のバンド(第2部第7章)に、ゆっくり変わる静電ポテンシャル −eϕ(r)-e\phi(\bm{r}) を足すだけである。新しく加わるのは、その ϕ\phi を電子と正孔と不純物のイオンの電荷そのものから Poisson 方程式で決める、という自己無撞着の条件である(4.9.1節)。

結論を先に書いておく。p 型の半導体の表面では、ゲートの電圧を上げていくと、まず正孔が押し出されて負のアクセプターのイオンだけが残る空乏層ができる。さらに上げて表面の電位が 2ϕB2\phi_{\mathrm B}(ϕB\phi_{\mathrm B} は半導体の中の化学ポテンシャルが禁制帯の中央からどれだけ下にあるかを電圧で表したもの)を越えると、表面には正孔の代わりに電子が集まる。これを反転層と呼ぶ。反転層ができるゲートの電圧がしきい値電圧 VthV_{\mathrm{th}} で、それを越えた分の電圧はほとんどそのまま反転層の電子の電荷 Cox(VG−Vth)C_{\mathrm{ox}}(V_{\mathrm G}-V_{\mathrm{th}}) になる(4.9.2節)。反転層の両端に n 型の電極(ソースとドレイン)を付けると、ゲートの電圧で電子の数を、したがって電流を変えることができる。これが MOS 型の電界効果トランジスタ(MOSFET)で、ドレインの電圧を上げると電流はやがて増えなくなる(飽和)。しきい値より下では、電流は熱で励起された電子の拡散で流れ、ゲートの電圧に対して指数関数的に変わる。その傾きには、Fermi 分布の裾で決まる下限がある(4.9.3節)。反転層の厚さは数 nm で、電子の de Broglie 波長と同じ程度である。そこで表面に垂直な運動は量子化され、電子は面内だけを自由に動く2次元電子系になる。2次元電子系に強い磁場をかけると Landau 準位ができ、ゲートの電圧で準位の詰まり方を変えることができる。量子 Hall 効果が最初に見つかったのは、この Si の MOSFET の反転層である(4.9.4節)。そのあと、削ったものを並べて近似の裏付けの札を貼り(4.9.5節)、容量と電流の測定で確かめ、授業の式と並べる(4.9.6節)。トランジスタを組み合わせた回路は扱わない。

この章では、電子の電荷を −e-e(e>0e>0)と書き、静電ポテンシャルを ϕ\phi、化学ポテンシャルを μ\mu、電子の移動度を μe\mu_{\mathrm e} と書く。Si と酸化膜(SiO2_2)の比誘電率を εrs\varepsilon_{\mathrm{rs}}・εro\varepsilon_{\mathrm{ro}} と書き、数値例ではそれぞれ 11.711.7・3.93.9 とする。電荷と容量は、断らない限り単位面積あたりの量である。しきい値電圧は温度 TT と紛れないよう VthV_{\mathrm{th}} と書く。

選ぶ H^\hat H

MOS 構造の半導体の部分を、表面を x=0x=0、半導体の中へ向かう向きを x>0x>0 とする座標で考える。ゲートは表面全体を一様に覆っているとし、すべての量は xx だけの関数とする。伝導帯の電子に対して選ぶハミルトニアンは

H^=εc+∑i=x,y,zp^i22mi−eϕ(x)(4.9.1)\hat H=\varepsilon _{\mathrm c}+\sum_{i=x,y,z}\frac{\hat p_i^2}{2m_i}-e\phi(x)\tag{4.9.1}

である。εc\varepsilon _{\mathrm c} は半導体の奥(バルク)の伝導帯の底、mim_i は伝導帯の谷の有効質量で、Si では回転楕円体の谷の長軸方向に mlm_{\mathrm l}、短軸方向に mtm_{\mathrm t} になる。正孔に対しても、価電子帯の端 εv\varepsilon _{\mathrm v} と正孔の有効質量で同じ形のものを選ぶ。式 (4.9.1) は、結晶の周期ポテンシャルの中の電子を、バンドの端の近くで有効質量を持つ自由な粒子に置き換え、そこへ格子間隔よりずっとゆっくり変わる外のポテンシャルを足したものである(有効質量近似。第2部第7章・第4部第5章)。

静電ポテンシャル ϕ(x)\phi(x) は外から与えるものでなく、電荷の分布から決まる。半導体の中の電荷密度は、正孔の数密度 p(x)p(x)・電子の数密度 n(x)n(x)・アクセプターの数密度 NAN_{\mathrm A}(すべてイオン化しているとする)でe(p(x)−n(x)−NA)e\bigl(p(x)-n(x)-N_{\mathrm A}\bigr) と書けるので、Poisson 方程式は

d2ϕdx2=−eε0εrs(p(x)−n(x)−NA)(4.9.2)\frac{\mathrm{d}^2\phi}{\mathrm{d} x^2}=-\frac{e}{\varepsilon_0\varepsilon_{\mathrm{rs}}}\bigl(p(x)-n(x)-N_{\mathrm A}\bigr)\tag{4.9.2}

になる。ここで p(x)p(x) と n(x)n(x) は、式 (4.9.1) の固有状態に電子を詰めた結果として決まる。つまり、電子が感じるポテンシャルを、その電子自身を含めた電荷の平均から決めている。これは電子どうしの Coulomb 相互作用を平均の場で置き換える Hartree の近似で、この章の計算はすべてこの自己無撞着の枠の中で行う。

当てる道具:平衡では化学ポテンシャルが一定

ゲートに電流が流れない(酸化膜は絶縁体)ので、ゲートの電圧をかけたあとの半導体は熱平衡にある。熱平衡では化学ポテンシャル μ\mu が場所によらない。一方、バンドの端は εc−eϕ(x)\varepsilon _{\mathrm c}-e\phi(x) のように場所によって曲がる。ϕ\phi が格子間隔や電子の波長に比べてゆっくり変わるなら、各点の近くでは平らなバンドがその点の高さにあると考えてよく、第2部第7章の非縮退の式の εc\varepsilon _{\mathrm c} を εc−eϕ(x)\varepsilon _{\mathrm c}-e\phi(x) に置き換えたものがその点の電子の数になる。バルクで ϕ=0\phi=0 とすると

n(x)=n0 eeϕ(x)/(kBT),p(x)=p0 e−eϕ(x)/(kBT),n0p0=ni2(4.9.3)n(x)=n_0\,\mathrm{e}^{e\phi(x)/( k_{\mathrm B} T)},\qquad p(x)=p_0\,\mathrm{e}^{-e\phi(x)/( k_{\mathrm B} T)},\qquad n_0p_0=n_{\mathrm i}^2\tag{4.9.3}

である。n0n_0 と p0p_0 はバルクの電子と正孔の数密度で、nin_{\mathrm i} は真性キャリア密度である。p 型では p0≃NAp_0\simeq N_{\mathrm A}、n0=ni2/NAn_0=n_{\mathrm i}^2/N_{\mathrm A} になる。ϕ>0\phi>0 の所ではバンドが下へ曲がり、電子が増えて正孔が減る。式 (4.9.3) を式 (4.9.2) に入れたものを Poisson–Boltzmann 方程式と呼ぶ。

バルクの化学ポテンシャルの位置を表す量として、

eϕB≔εi−μ=kBTln⁡NAni(4.9.4)e\phi_{\mathrm B}\coloneqq\varepsilon _{\mathrm i}-\mu= k_{\mathrm B} T\ln\frac{N_{\mathrm A}}{n_{\mathrm i}}\tag{4.9.4}

を定める。εi\varepsilon _{\mathrm i} は電子と正孔の数が等しくなるときの化学ポテンシャル(禁制帯のほぼ中央)で、p 型では μ\mu が εi\varepsilon _{\mathrm i} より eϕBe\phi_{\mathrm B} だけ下にある。2つ目の等号は、p0=nie(εi−μ)/(kBT)p_0=n_{\mathrm i}\mathrm{e}^{(\varepsilon _{\mathrm i}-\mu)/( k_{\mathrm B} T)}(第2部第7章)と p0=NAp_0=N_{\mathrm A} から出る。

式 (4.9.2) の右辺に現れる長さの目安が、Debye の遮蔽長(第4部第5章で pn 接合の n 側について定義したものと同じ量で、ここではアクセプターの密度で書く)

λD=ε0εrskBTe2NA(4.9.5)\lambda_{\mathrm D}=\sqrt{\frac{\varepsilon_0\varepsilon_{\mathrm{rs}} k_{\mathrm B} T}{e^2N_{\mathrm A}}}\tag{4.9.5}

である。表面の電位が kBT/ek_{\mathrm B} T/e より小さいとき、式 (4.9.3) を1次まで展開すると式 (4.9.2) は ϕ′′=ϕ/λD2\phi''=\phi/\lambda_{\mathrm D}^2 になり、表面の電位は e−x/λD\mathrm{e}^{-x/\lambda_{\mathrm D}} で減る。正孔が少し動いて、表面の電荷を λD\lambda_{\mathrm D} ほどの厚さで打ち消すからである。

ゲートの電圧と表面の電位

ゲートの金属と半導体の化学ポテンシャルの差を、ゲートの電圧 VGV_{\mathrm G} と呼ぶ(金属の化学ポテンシャルが半導体より eVGeV_{\mathrm G} だけ下にあるとき VG>0V_{\mathrm G}>0)。VGV_{\mathrm G} は、酸化膜にかかる電圧 VoxV_{\mathrm{ox}} と、半導体の表面とバルクの電位差 ϕs≔ϕ(0)\phi_{\mathrm s}\coloneqq\phi(0) に分かれる。ただし、金属と半導体の仕事関数が違ったり酸化膜に固定された電荷があったりすると、VG=0V_{\mathrm G}=0 でもバンドは曲がっている。バンドが平らになる電圧を平坦帯電圧 VFBV_{\mathrm{FB}} と呼び、その分をずらして

VG−VFB=ϕs+Vox,Vox=−QsCox,Cox=ε0εrodox(4.9.6)V_{\mathrm G}-V_{\mathrm{FB}}=\phi_{\mathrm s}+V_{\mathrm{ox}},\qquad V_{\mathrm{ox}}=-\frac{Q_{\mathrm s}}{C_{\mathrm{ox}}},\qquad C_{\mathrm{ox}}=\frac{\varepsilon_0\varepsilon_{\mathrm{ro}}}{d_{\mathrm{ox}}}\tag{4.9.6}

と書く。QsQ_{\mathrm s} は半導体の中の全電荷(単位面積あたり)、doxd_{\mathrm{ox}} は酸化膜の厚さである。2つ目の式は、ゲートの金属に −Qs-Q_{\mathrm s} の電荷が載り、酸化膜を平行板コンデンサーとみなしたものである。QsQ_{\mathrm s} は ϕs\phi_{\mathrm s} の関数として Poisson–Boltzmann 方程式から決まるので、式 (4.9.6) を ϕs\phi_{\mathrm s} について解けば、ゲートの電圧から表面の電位が決まる。

例題 4.9.1 p 型 Si の基本の長さと電圧 ★★

オリジナル室温(T=300 KT=300\,\mathrm K、kBT/e=0.02585 Vk_{\mathrm B} T/e=0.02585\,\mathrm V)の p 型 Si で、NA=1.0×1023 m−3N_{\mathrm A}=1.0\times10^{23}\,\mathrm{m^{-3}}、ni=1.0×1016 m−3n_{\mathrm i}=1.0\times10^{16}\,\mathrm{m^{-3}}、εrs=11.7\varepsilon_{\mathrm{rs}}=11.7 とする。

  1. (1) バルクの電子の数密度 n0n_0 を求めよ。
  2. (2) ϕB\phi_{\mathrm B} を求めよ。
  3. (3) Debye の遮蔽長 λD\lambda_{\mathrm D} を求めよ。
  4. (4) アクセプターの平均の間隔 NA−1/3N_{\mathrm A}^{-1/3} を λD\lambda_{\mathrm D} と比べ、式 (4.9.2) でアクセプターの電荷を一様な密度 eNAeN_{\mathrm A} に均したことがどの長さで正しいかを述べよ。
解答

(1) n0=ni2/NA=(1.0×1016)2/(1.0×1023)=1.0×109 m−3n_0=n_{\mathrm i}^2/N_{\mathrm A}=(1.0\times10^{16})^2/(1.0\times10^{23})=1.0\times10^{9}\,\mathrm{m^{-3}} である。正孔の 10−1410^{-14} 倍しかない。

(2) ln⁡(NA/ni)=ln⁡107=16.12\ln(N_{\mathrm A}/n_{\mathrm i})=\ln10^7=16.12 なので ϕB=0.02585×16.12=0.417 V\phi_{\mathrm B}=0.02585\times16.12=0.417\,\mathrm V である。

(3) ε0εrs=11.7×8.854×10−12=1.036×10−10 F m−1\varepsilon_0\varepsilon_{\mathrm{rs}}=11.7\times8.854\times10^{-12}=1.036\times10^{-10}\,\mathrm{F\,m^{-1}}、eNA=1.602×104 C m−3eN_{\mathrm A}=1.602\times10^{4}\,\mathrm{C\,m^{-3}} から

λD=1.036×10−10×0.025851.602×104=1.672×10−16 m=12.9 nm\lambda_{\mathrm D}=\sqrt{\frac{1.036\times10^{-10}\times0.02585}{1.602\times10^{4}}}=\sqrt{1.672\times10^{-16}}\,\mathrm m=12.9\,\mathrm{nm}

である。

(4) NA−1/3=(1.0×1023)−1/3 m=21.5 nmN_{\mathrm A}^{-1/3}=(1.0\times10^{23})^{-1/3}\,\mathrm m=21.5\,\mathrm{nm} で、λD\lambda_{\mathrm D} より長い。λD\lambda_{\mathrm D} の大きさの立方体に入るアクセプターは平均 NAλD3=0.22N_{\mathrm A}\lambda_{\mathrm D}^3=0.22 個しかない。したがって、λD\lambda_{\mathrm D} の長さで電位が変わる様子を一様な電荷で計算した結果は、個々のイオンの位置で揺らぐ実際の電位を平均したものにすぎない。一様に均してよいのは、4.9.2節で出てくる空乏層の厚さ(0.1 μm0.1\,\mathrm{\mu m} ほど)のように、アクセプターの間隔よりずっと長い長さで電荷を数える量である。この点は4.9.5節でもう一度取り上げる。

木下の勉強ステータス

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