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出てくるもの3:反転層は2次元電子系

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第9章 MOS 構造とトランジスタの原理
目次
  1. 三角形の井戸
  2. 磁場の中の2次元電子系:量子 Hall 効果への入口
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部 第9章 §4.9.4 ★★★ 反転層の電子は表面の三角形の井戸に閉じ込められ、縦の運動は Airy 関数の準位に量子化される。いちばん下の準位だけに電子が入るとき、電子は面内だけを動く2次元電子系になり、磁場の中で Landau 準位の詰まり方をゲートの電圧で変えられる

三角形の井戸

4.9.1節では、電位がゆっくり変わるとして、各点の電子の数を局所の Boltzmann 因子で書いた。反転層ではこの前提を確かめる必要がある。表面の近くの電子のポテンシャルエネルギーは −eϕ(x)≃−eϕs+eEsx-e\phi(x)\simeq-e\phi_{\mathrm s}+eE_{\mathrm s}x で、xx とともに直線で上がる。x<0x<0 には酸化膜の高い壁(Si の伝導帯から数 eV 上)があるので、電子は x=0x=0 の壁と傾いたポテンシャルにはさまれた三角形の井戸にいる。Si の (100) 面を表面にとると、6つの谷のうち長軸が表面に垂直な2つの谷では縦の質量が mlm_{\mathrm l}、面内の質量が mtm_{\mathrm t} になる。式 (4.9.1) の固有状態をψ=ζj(x) ei(kyy+kzz)\psi=\zeta_j(x)\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}(k_yy+k_zz)} と書くと、縦の部分は

−ℏ22mld2ζjdx2+eEsx ζj=εjζj,ζj(0)=0,ζj(∞)=0(4.9.17)-\frac{\hbar^2}{2m_{\mathrm l}}\frac{\mathrm{d}^2\zeta_j}{\mathrm{d} x^2}+eE_{\mathrm s}x\,\zeta_j=\varepsilon _j\zeta_j,\qquad\zeta_j(0)=0,\quad\zeta_j(\infty)=0\tag{4.9.17}

を満たす(エネルギーは表面の伝導帯の底から測る)。ℓ=(ℏ2/(2mleEs))1/3\ell=\bigl(\hbar^2/(2m_{\mathrm l}eE_{\mathrm s})\bigr)^{1/3} を単位にした座標 s=x/ℓ−εj/(eEsℓ)s=x/\ell-\varepsilon _j/(eE_{\mathrm s}\ell) で、方程式は Airy 方程式 ζ′′=sζ\zeta''=s\zeta になる。s→∞s\to\infty で減る解は Airy 関数 Ai⁡(s)\operatorname{Ai}(s) で、x=0x=0 で 00 になる条件は Ai⁡(−εj/(eEsℓ))=0\operatorname{Ai}(-\varepsilon _j/(eE_{\mathrm s}\ell))=0 である。Ai⁡(−z)\operatorname{Ai}(-z) の零点を z1=2.338z_1=2.338、z2=4.088z_2=4.088、… と書くと

εj=(ℏ22ml)1/3(eEs)2/3zj,⟨x⟩j=2εj3eEs(4.9.18)\varepsilon _j=\Bigl(\frac{\hbar^2}{2m_{\mathrm l}}\Bigr)^{1/3}\bigl(eE_{\mathrm s}\bigr)^{2/3}z_j,\qquad \langle x \rangle _j=\frac{2\varepsilon _j}{3eE_{\mathrm s}}\tag{4.9.18}

を得る。2つ目の式は、直線のポテンシャルでは運動エネルギーの平均がポテンシャルエネルギーの平均の半分になる(ビリアル定理)ことから出る。残りの4つの谷では縦の質量が mtm_{\mathrm t} なので、同じ zjz_j で準位がより高くなる。

1つの準位 jj に属する状態のエネルギーは εj+ℏ2(ky2+kz2)/(2mt)\varepsilon _j+\hbar^2(k_y^2+k_z^2)/(2m_{\mathrm t}) で、εj\varepsilon _j を底にした面内の放物線になる。この1本の帯をサブバンドと呼ぶ。2次元の波数空間で状態を数えると(第2部第6章と同じ数え方を2次元で行う)、1つのサブバンドの単位面積あたりの状態密度は、スピンの2と谷の数 gv=2g_{\mathrm v}=2 を掛けて

D2(ε)=gvmtπℏ2(ε>ε1)(4.9.19)D_2(\varepsilon )=\frac{g_{\mathrm v}m_{\mathrm t}}{\pi\hbar^2}\qquad(\varepsilon >\varepsilon _1)\tag{4.9.19}

で、エネルギーによらない一定値になる。いちばん下のサブバンドだけに電子が入っているとき、反転層の電子の面密度 ns=∣Qn∣/e=Cox(VG−Vth)/en_{\mathrm s}=\lvert Q_{\mathrm n}\rvert /e=C_{\mathrm{ox}}(V_{\mathrm G}-V_{\mathrm{th}})/e はns=D2⋅(μ−ε1)n_{\mathrm s}=D_2\cdot(\mu-\varepsilon _1)(絶対零度)で決まる。ゲートの電圧で面密度を連続に変えられる2次元の電子系である。Si の反転層のサブバンドの理論と実験は T. Ando, A. B. Fowler, F. Stern (1982), Rev. Mod. Phys. 54, 437 にまとめられている。

磁場の中の2次元電子系:量子 Hall 効果への入口

表面に垂直に磁場 BB をかけると、面内の円運動が量子化され、サブバンドは Landau 準位 ε1+ℏωc(N+12)\varepsilon _1+\hbar\omega_{\mathrm c}(N+\tfrac12)(ωc=eB/mt\omega_{\mathrm c}=eB/m_{\mathrm t}、N=0,1,2,…N=0,1,2,\dots)に分かれる。1つの Landau 準位には、スピンと谷の1つの組あたり単位面積に eB/heB/h 個の状態がある(第4部第4章)。そこで

ν≔nseB/h=hCox(VG−Vth)e2B(4.9.20)\nu\coloneqq\frac{n_{\mathrm s}}{eB/h}=\frac{hC_{\mathrm{ox}}(V_{\mathrm G}-V_{\mathrm{th}})}{e^2B}\tag{4.9.20}

は、詰まっている準位(スピンと谷を別に数えたもの)の数を表し、充填率と呼ぶ。式 (4.9.20) の右辺は VGV_{\mathrm G} の1次式なので、ゲートの電圧を掃くと、磁場を固定したまま充填率を連続に変えることができる。

ν\nu が整数の近くで、Fermi 準位が Landau 準位の間の隙間にあるとき、面内の縦の抵抗は 00 に近づき、Hall 抵抗は

RH=hνe2(ν=1,2,3,… )R_{\mathrm H}=\frac{h}{\nu e^2}\qquad(\nu=1,2,3,\dots)

の値で平らになる。K. von Klitzing, G. Dorda, M. Pepper (1980), Phys. Rev. Lett. 45, 494 は、Si の MOSFET の反転層でゲートの電圧を掃き、Hall 抵抗が h/e2h/e^2 を整数で割った値に平らになることを見つけた。平らな値は試料の形や移動度によらず、h/e2h/e^2 だけで決まる。なぜ乱れのある試料で値がこれほど正確に決まるのかは、この章の近似では説明できず、Hall 伝導度を位相的な整数として書き直すことで説明される(第4部第4章・第5部第5章)。

例題 4.9.6 Si の反転層のサブバンドの間隔 ★★

オリジナル例題 4.9.2 の MOS 構造で、強い反転の始まりの表面の電場 Es=∣Qdep∣/(ε0εrs)E_{\mathrm s}=\lvert Q_{\mathrm{dep}}\rvert /(\varepsilon_0\varepsilon_{\mathrm{rs}}) を使う。ml=0.916 mm_{\mathrm l}=0.916\,m、mt=0.190 mm_{\mathrm t}=0.190\,m(mm は電子の質量)とする。

  1. (1) EsE_{\mathrm s} を求めよ。
  2. (2) ε1\varepsilon _1・ε2\varepsilon _2 と ⟨x⟩1\langle x \rangle _1 を求めよ。
  3. (3) 縦の質量が mtm_{\mathrm t} の4つの谷のいちばん下の準位 ε1′\varepsilon _1' を求めよ。室温と 4.2 K4.2\,\mathrm K で、電子はいちばん下のサブバンドだけにいると言えるか。
解答

(1) Es=1.66×10−3/1.036×10−10=1.61×107 V m−1E_{\mathrm s}=1.66\times10^{-3}/1.036\times10^{-10}=1.61\times10^{7}\,\mathrm{V\,m^{-1}} である。

(2) (ℏ2/(2ml))1/3(eEs)2/3(\hbar^2/(2m_{\mathrm l}))^{1/3}(eE_{\mathrm s})^{2/3} を計算すると、ℏ2/(2×0.916m)=6.66×10−39 J m2\hbar^2/(2\times0.916m)=6.66\times10^{-39}\,\mathrm{J\,m^2}、eEs=2.57×10−12 J m−1eE_{\mathrm s}=2.57\times10^{-12}\,\mathrm{J\,m^{-1}} から(6.66×10−39)1/3(2.57×10−12)2/3=3.53×10−21 J=22.1 meV(6.66\times10^{-39})^{1/3}(2.57\times10^{-12})^{2/3}=3.53\times10^{-21}\,\mathrm J=22.1\,\mathrm{meV} である。したがって ε1=22.1×2.338=51.6 meV\varepsilon _1=22.1\times2.338=51.6\,\mathrm{meV}、ε2=22.1×4.088=90.1 meV\varepsilon _2=22.1\times4.088=90.1\,\mathrm{meV} で、間隔は 38.6 meV38.6\,\mathrm{meV} である。⟨x⟩1=2×0.0516/(3×1.61×107) m=2.14 nm\langle x \rangle _1=2\times0.0516/(3\times1.61\times10^7)\,\mathrm m=2.14\,\mathrm{nm} で、空乏層の厚さ 104 nm104\,\mathrm{nm} の50分の1しかない。

(3) 質量が (0.916/0.190)1/3=1.690(0.916/0.190)^{1/3}=1.690 倍の ε\varepsilon の係数になるので、ε1′=1.690×51.6=87.1 meV\varepsilon _1'=1.690\times51.6=87.1\,\mathrm{meV} である。室温の kBT=25.9 meVk_{\mathrm B} T=25.9\,\mathrm{meV} は ε2−ε1\varepsilon _2-\varepsilon _1 や ε1′−ε1\varepsilon _1'-\varepsilon _1(35 meV35\,\mathrm{meV} ほど)に近いので、上のサブバンドにも電子が入る。4.2 K4.2\,\mathrm K の kBT=0.36 meVk_{\mathrm B} T=0.36\,\mathrm{meV} では上のサブバンドへの熱励起は e−100\mathrm{e}^{-100} の程度で、電子の面密度が小さいあいだは、いちばん下のサブバンドだけにいるとしてよい。

例題 4.9.7 ゲートの電圧で充填率を掃く ★★

オリジナル例題 4.9.2 の MOS 構造で VG−Vth=1.0 VV_{\mathrm G}-V_{\mathrm{th}}=1.0\,\mathrm V とする。

  1. (1) nsn_{\mathrm s} と、絶対零度で μ−ε1\mu-\varepsilon _1 を求めよ(いちばん下のサブバンドだけに電子がいるとする)。
  2. (2) B=10 TB=10\,\mathrm T での充填率 ν\nu と、ν\nu を1だけ変えるのに要るゲートの電圧の変化 ΔVG\Delta V_{\mathrm G} を求めよ。
解答

(1) ns=Cox(VG−Vth)/e=3.45×10−3/1.602×10−19=2.16×1016 m−2n_{\mathrm s}=C_{\mathrm{ox}}(V_{\mathrm G}-V_{\mathrm{th}})/e=3.45\times10^{-3}/1.602\times10^{-19}=2.16\times10^{16}\,\mathrm{m^{-2}} である。D2=2×0.190m/(πℏ2)=1.59×1018 eV−1 m−2D_2=2\times0.190m/(\pi\hbar^2)=1.59\times10^{18}\,\mathrm{eV^{-1}\,m^{-2}} なので、μ−ε1=ns/D2=13.6 meV\mu-\varepsilon _1=n_{\mathrm s}/D_2=13.6\,\mathrm{meV} である。これは ε2−ε1\varepsilon _2-\varepsilon _1 より小さいので、いちばん下のサブバンドだけという仮定と矛盾しない(ただし電子が増えると EsE_{\mathrm s} も大きくなり、サブバンドの間隔も広がる)。

(2) eB/h=1.602×10−19×10/6.626×10−34=2.42×1015 m−2eB/h=1.602\times10^{-19}\times10/6.626\times10^{-34}=2.42\times10^{15}\,\mathrm{m^{-2}} なので ν=2.16×1016/2.42×1015=8.91\nu=2.16\times10^{16}/2.42\times10^{15}=8.91 である。ΔVG=e⋅(eB/h)/Cox=1.602×10−19×2.42×1015/3.45×10−3=0.112 V\Delta V_{\mathrm G}=e\cdot(eB/h)/C_{\mathrm{ox}}=1.602\times10^{-19}\times2.42\times10^{15}/3.45\times10^{-3}=0.112\,\mathrm V になる。ゲートの電圧を 0.1 V0.1\,\mathrm V ずつ動かすたびに Landau 準位が1つずつ埋まるので、ゲートの電圧の軸の上で、Hall 抵抗の平らな部分が等間隔に並ぶ。

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