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この章で選ぶ H^\hat H:バンドの端の電子と不純物のポテンシャル

2026年10月15日16分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第5章 半導体
目次
  1. ドナーとアクセプター
  2. 選ぶ
  3. 有効質量近似:包絡線の方程式
  4. 摂動:ギャップが小さいほど有効質量が小さい
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部 第5章 §4.5.1 ★★★ 結晶の H^\hat H に不純物の Coulomb ポテンシャルを足し、バンドの端の近くだけを残すと、包絡線が有効質量 m∗m^* と誘電率 εr\varepsilon_{\mathrm r} で縮尺を変えた水素原子の方程式に従う。浅い準位の結合エネルギーは Ry (m∗/m)/εr2\mathrm{Ry}\,(m^*/m)/\varepsilon_{\mathrm r}^2

第2部第7章では、ギャップのある結晶に熱で励起される電子と正孔の数が n=p=ni=NcNv e−Eg/(2kBT)n=p=n_{\mathrm i}=\sqrt{N_{\mathrm c}N_{\mathrm v}}\,\mathrm{e}^{-E_{\mathrm g}/(2 k_{\mathrm B} T)} になることを見た。Si(Eg=1.12 eVE_{\mathrm g}=1.12\,\mathrm{eV})では室温で ni≈1010 cm−3n_{\mathrm i}\approx10^{10}\,\mathrm{cm^{-3}} で、原子の数 5×1022 cm−35\times10^{22}\,\mathrm{cm^{-3}} と比べると 101210^{12} 個に1個しかない。このままでは電流をほとんど運べず、しかもキャリアの数は温度で指数関数的に変わる。半導体を電子部品の材料にしているのは、真性の nin_{\mathrm i} ではなく、ごく微量の不純物で加えたキャリアである。Si の原子を 5×1065\times10^{6} 個に1個だけ P に置き換えると、電子の密度は室温で 1016 cm−310^{16}\,\mathrm{cm^{-3}} ほどになり、nin_{\mathrm i} の 10610^6 倍になる。

この章で選ぶ H^\hat H は、第2部で作ったバンドの H^\hat H に、不純物1個が作る Coulomb ポテンシャルを足したものである。不純物のポテンシャルは格子間隔に比べてゆっくり変わるので、バンドの端の電子は有効質量 m∗m^* を持つ自由な粒子として振る舞い、不純物のまわりでは水素原子と同じ形の束縛状態を作る。その結合エネルギーは水素の 13.6 eV13.6\,\mathrm{eV} に (m∗/m)/εr2(m^*/m)/\varepsilon_{\mathrm r}^2 を掛けた数 meV〜数十 meV で、室温の kBT=26 meVk_{\mathrm B} T=26\,\mathrm{meV} と同じ大きさである。室温で不純物の電子がほとんどバンドに出ていくのはこのためである。

この H^\hat H に当てる道具は2つある。1つは不純物の準位の占有の統計で、1つの準位にスピンの上下2つの状態があるのに電子は1個しか入れないことから、Fermi 分布と違う因子 2 が出る。もう1つは電荷中性の条件と Poisson 方程式である。均一な結晶では電荷中性が化学ポテンシャル μ\mu を決め、n 型と p 型をつないだ接合では Poisson 方程式からバンドの曲がりが決まる。出てくるものは、キャリア密度の温度変化の3つの領域(凍結・飽和・真性)と、pn 接合の内蔵電位・空乏層・整流の式(Shockley の式)・光起電力である。

4.5.1節で H^\hat H を選んで浅い不純物準位を出し、あわせて k⋅p^\bm{k}\cdot\hat{\bm{p}} 摂動で「ギャップが小さいほど有効質量が小さい」ことを示す。4.5.2節で占有の統計と電荷中性を道具として用意し、4.5.3節でドープした半導体のキャリア密度を、4.5.4節で pn 接合を扱う。4.5.5節で何を削ったかを近似の裏付けの札とともに述べ、4.5.6節で実験の量と授業の形に結びつけ、4.5.7節でまとめる。この章では演算子の帽子を付けたまま書く。第2部第7章と同じく電子の密度を nn、正孔の密度を pp と書き、運動量は p^\hat{\bm{p}}(太字・帽子つき)にだけ使う。4.5.4節以降の VV は体積でなく電圧である(この章に体積は出ない)。

ドナーとアクセプター

Si は14族で、4個の価電子で隣の4原子と共有結合を作る。ここで1つの Si を15族の P に置き換えると、P の5個の価電子のうち4個は共有結合に使われ、1個が余る。P の原子核と内殻の電荷は Si より +e+e だけ多いので、余った電子はこの +e+e に引かれて P のまわりにとどまろうとする。ただし、この電子は結合に使われていないので、価電子帯に入ることはできない。入れるのは伝導帯である。そこで「伝導帯の電子が、正の点電荷 +e+e に引かれる」問題になる。電子を1個結晶に与える不純物をドナーと呼び、ドナーで電子が多数のキャリアになった半導体を n 型と呼ぶ。

逆に13族の B に置き換えると、結合の電子が1個足りなくなり、価電子帯に正孔が1個できる。B のイオン芯の電荷は Si より ee だけ少ないので、正孔は負の点電荷に引かれる。電子を1個受け取る不純物をアクセプター、正孔が多数のキャリアになった半導体を p 型と呼ぶ。アクセプターの話はドナーの話の電子と正孔を入れ換えたものなので、この章の式は主にドナーについて書く。

選ぶ H^\hat H

不純物を原点に置き、電子1個の H^\hat H を

H^=H^cr+U(r^),U(r)=−e24πε0εr∣r∣(4.5.1)\hat H=\hat H_{\mathrm{cr}}+U(\hat{\bm{r}}),\qquad U(\bm{r})=-\frac{e^2}{4\pi\varepsilon_0\varepsilon_{\mathrm r}\lvert \bm{r}\rvert }\tag{4.5.1}

とする。H^cr=p^ 2/(2m)+Vcr(r^)\hat H_{\mathrm{cr}}=\hat{\bm{p}}^{\,2}/(2m)+V_{\mathrm{cr}}(\hat{\bm{r}}) は周期ポテンシャルを持つ完全な結晶の1電子の H^\hat H で、その固有状態が第2部のバンド εn(k)\varepsilon _n(\bm{k}) と Bloch 関数 ψnk\psi_{n\bm{k}} である。εr\varepsilon_{\mathrm r} は結晶の比誘電率(Si で 11.711.7、GaAs で 12.912.9。この章ではこれらを与えられた値として使う)である。

UU に εr\varepsilon_{\mathrm r} が入る理由は次のとおりである。不純物の電荷 +e+e は、まわりの価電子帯の電子を少しずつ引き寄せて分極させる。結晶を連続な誘電体とみなせる距離、すなわち格子間隔 aa より十分遠くでは、この分極の電荷のために、不純物の電荷は実効的に 1/εr1/\varepsilon_{\mathrm r} 倍に弱められる。束縛された電子の広がりが aa よりずっと大きければ(あとで見るように GaAs では aa の 18 倍)、電子が感じるのはほとんど遠方の弱められたポテンシャルである。不純物の近く(∣r∣≲a\lvert \bm{r}\rvert \lesssim a)では連続体の描像は成り立たず、実際のポテンシャルは UU からずれる。このずれは4.5.5節で扱う。

有効質量近似:包絡線の方程式

伝導帯の底が k=0\bm{k}=0 にあり、そこで等方的に εc(k)=εc+ℏ2k2/(2m∗)\varepsilon _{\mathrm c}(\bm{k})=\varepsilon _{\mathrm c}+\hbar^2k^2/(2m^*) と書けるとする(GaAs がこの形である)。H^\hat H の固有関数を伝導帯の Bloch 関数で展開して

ψ(r)=∑kF~(k) ψck(r)=∑kF~(k) eik⋅ruck(r)\psi(\bm{r})=\sum_{\bm{k}}\tilde F(\bm{k})\,\psi_{\mathrm c\bm{k}}(\bm{r})=\sum_{\bm{k}}\tilde F(\bm{k})\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{k}\cdot\bm{r}}u_{\mathrm c\bm{k}}(\bm{r})

と書く。UU が aa に比べてゆっくり変わるなら、UU がつなぐのは波数の差が 1/a1/a より十分小さい状態どうしだけで、ほかのバンドへの混ざりも小さい。そこで、寄与する k\bm{k} がバンドの底の近くに限られることを使い、uck≈uc0u_{\mathrm c\bm{k}}\approx u_{\mathrm c0} と置く。すると ψ(r)≈F(r) uc0(r)\psi(\bm{r})\approx F(\bm{r})\,u_{\mathrm c0}(\bm{r})、F(r)=∑kF~(k)eik⋅rF(\bm{r})=\sum_{\bm{k}}\tilde F(\bm{k})\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{k}\cdot\bm{r}} となり、H^cr\hat H_{\mathrm{cr}} は Bloch 関数に εc(k)\varepsilon _{\mathrm c}(\bm{k}) を掛けるだけなので、FF に対しては k→−i∇\bm{k}\to-\mathrm{i}\nabla と置き換えた演算子として働く。こうして

[−ℏ22m∗∇2+U(r)]F(r)=(ε−εc)F(r)(4.5.2)\Bigl[-\frac{\hbar^2}{2m^*}\nabla^2+U(\bm{r})\Bigr]F(\bm{r})=(\varepsilon -\varepsilon _{\mathrm c})F(\bm{r})\tag{4.5.2}

を得る。FF を包絡線と呼ぶ。周期ポテンシャルの効果は、質量 m→m∗m\to m^* の置き換えとエネルギーの原点 εc\varepsilon _{\mathrm c} の中に入り、格子の周期の細かな変化は uc0u_{\mathrm c0} に含まれる。この置き換えを有効質量近似と呼ぶ(W. Kohn and J. M. Luttinger (1955), Phys. Rev. 98, 915 が不純物準位の理論として定式化した)。

式 (4.5.2) は、水素原子の Schrödinger 方程式で m→m∗m\to m^*、e2/(4πε0)→e2/(4πε0εr)e^2/(4\pi\varepsilon_0)\to e^2/(4\pi\varepsilon_0\varepsilon_{\mathrm r}) と置き換えたものである。水素の結合エネルギー Ry=me4/(2(4πε0)2ℏ2)=13.606 eV\mathrm{Ry}=me^4/(2(4\pi\varepsilon_0)^2\hbar^2)=13.606\,\mathrm{eV} と Bohr 半径 a0=4πε0ℏ2/(me2)=0.0529 nma_0=4\pi\varepsilon_0\hbar^2/(me^2)=0.0529\,\mathrm{nm} がe4/ε02e^4/\varepsilon_0^2 と mm にどう依存するかを見れば、そのまま

εc−εD≡ED=m∗/mεr2 Ry,aD=εrmm∗ a0,F1s(r)∝e−∣r∣/aD(4.5.3)\varepsilon _{\mathrm c}-\varepsilon _{\mathrm D}\equiv E_{\mathrm D}=\frac{m^*/m}{\varepsilon_{\mathrm r}^2}\,\mathrm{Ry},\qquad a_{\mathrm D}=\varepsilon_{\mathrm r}\frac{m}{m^*}\,a_0,\qquad F_{1s}(\bm{r})\propto\mathrm{e}^{-\lvert \bm{r}\rvert /a_{\mathrm D}}\tag{4.5.3}

が出る。εD\varepsilon _{\mathrm D} はドナーの準位、EDE_{\mathrm D} はその伝導帯の底から測った結合エネルギー、aDa_{\mathrm D} は有効 Bohr 半径である。励起状態も水素と同じく εc−ED/np2\varepsilon _{\mathrm c}-E_{\mathrm D}/n_{\mathrm p}^2(npn_{\mathrm p} は主量子数)に並び、伝導帯の底の下に詰まる。アクセプターでは同じ議論を価電子帯の上端について行い、準位 εA\varepsilon _{\mathrm A} は価電子帯の上端 εv\varepsilon _{\mathrm v} の少し上に、結合エネルギー EA=εA−εvE_{\mathrm A}=\varepsilon _{\mathrm A}-\varepsilon _{\mathrm v} で現れる。

m∗/mm^*/m が 0.10.1 程度、εr\varepsilon_{\mathrm r} が 1010 程度なので、EDE_{\mathrm D} は水素の 10−310^{-3} 倍、aDa_{\mathrm D} は 10210^2 倍になる。結合エネルギーが小さいのは、質量が軽いと狭い領域に閉じ込めたときの運動エネルギーが大きくなるので束縛状態は広がり、誘電率が大きいと引力が弱まるからである。この2つの理由で、準位はバンドの端のすぐ近くに来る。バンドの端から kBTk_{\mathrm B} T の大きさしか離れていない準位を浅い準位と呼ぶ。

例題 4.5.1 GaAs のドナーの大きさ ★★★

オリジナルGaAs の伝導帯の有効質量を m∗=0.067mm^*=0.067m、比誘電率を εr=12.9\varepsilon_{\mathrm r}=12.9、格子定数(立方体の単位胞の一辺、原子 8 個を含む)を a=0.565 nma=0.565\,\mathrm{nm} とする(与えられた値として使う)。

  1. (1) 有効質量近似のドナーの結合エネルギー EDE_{\mathrm D} と有効 Bohr 半径 aDa_{\mathrm D} を求めよ。
  2. (2) 半径 aDa_{\mathrm D} の球の中に原子はいくつあるか。有効質量近似の前提(ポテンシャルが格子間隔に比べてゆっくり変わる)が成り立っているか判断せよ。
解答

(1) 式 (4.5.3) から ED=13.606×0.067/12.92 eV=5.48 meVE_{\mathrm D}=13.606\times0.067/12.9^2\,\mathrm{eV}=5.48\,\mathrm{meV}、aD=12.9/0.067×0.0529 nm=10.2 nma_{\mathrm D}=12.9/0.067\times0.0529\,\mathrm{nm}=10.2\,\mathrm{nm} である。室温の kBT=25.9 meVk_{\mathrm B} T=25.9\,\mathrm{meV} の約 1/51/5 しかない。

(2) 原子の数密度は 8/a3=4.43×1022 cm−38/a^3=4.43\times10^{22}\,\mathrm{cm^{-3}} なので、半径 aDa_{\mathrm D} の球の中には 4π3aD3×8/a3=1.97×105\frac{4\pi}{3}a_{\mathrm D}^3\times8/a^3=1.97\times10^{5} 個の原子がある。aD/a=18a_{\mathrm D}/a=18 で、包絡線は格子の 18 周期にわたってゆっくり変わる。束縛された電子は約 2×1052\times10^5 個の原子の上に広がった状態で、その上で平均した誘電率と有効質量を使うことは正当である。逆に言えば、電子が不純物の原子の上にいる確率は 10−510^{-5} ほどしかなく、不純物の原子の個性は準位にほとんど現れない。

k⋅p^\bm{k}\cdot\hat{\bm{p}} 摂動:ギャップが小さいほど有効質量が小さい

有効質量 m∗m^* がどう決まるかを、バンドの端の近くの摂動で見ておく(第2部第5章で、ゾーン境界のギャップが小さいほどその端の曲率が大きいことを見た。ここではその一般形を作る)。Bloch 関数 eik⋅runk\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{k}\cdot\bm{r}}u_{n\bm{k}} を H^cr\hat H_{\mathrm{cr}} に入れると、周期関数 unku_{n\bm{k}} は

[H^cr+ℏmk⋅p^+ℏ2k22m]unk=εn(k) unk(4.5.4)\Bigl[\hat H_{\mathrm{cr}}+\frac{\hbar}{m}\bm{k}\cdot\hat{\bm{p}}+\frac{\hbar^2k^2}{2m}\Bigr]u_{n\bm{k}}=\varepsilon _n(\bm{k})\,u_{n\bm{k}}\tag{4.5.4}

を満たす。k=0\bm{k}=0 の固有関数 un0u_{n0} を基底にとり、ℏmk⋅p^\frac{\hbar}{m}\bm{k}\cdot\hat{\bm{p}} を摂動とみなすのが k⋅p^\bm{k}\cdot\hat{\bm{p}} 摂動である。伝導帯の底 uc0u_{\mathrm c0} と価電子帯の上端 uv0u_{\mathrm v0} の2つだけを残すと、式 (4.5.4) は 2×22\times2 の行列

(εc+ℏ2k22mℏmk pcvℏmk pcv∗εv+ℏ2k22m),pcv=⟨uc0∣p^x∣uv0⟩\begin{pmatrix}\varepsilon _{\mathrm c}+\dfrac{\hbar^2k^2}{2m}&\dfrac{\hbar}{m}k\,p_{\mathrm{cv}}\\[2mm]\dfrac{\hbar}{m}k\,p_{\mathrm{cv}}^*&\varepsilon _{\mathrm v}+\dfrac{\hbar^2k^2}{2m}\end{pmatrix},\qquad p_{\mathrm{cv}}=\langle u_{\mathrm c0} | \hat p_x | u_{\mathrm v0} \rangle

になる(k\bm{k} を xx 方向にとった。対角の ⟨un0∣p^∣un0⟩\langle u_{n0} | \hat{\bm{p}} | u_{n0} \rangle は反転対称のある結晶で 00)。上の固有値を kk の2次まで展開すると、

εc(k)≈εc+ℏ2k22m+ℏ2k2m2∣pcv∣2Eg\varepsilon _{\mathrm c}(k)\approx\varepsilon _{\mathrm c}+\frac{\hbar^2k^2}{2m}+\frac{\hbar^2k^2}{m^2}\frac{\lvert p_{\mathrm{cv}}\rvert ^2}{E_{\mathrm g}}

となるので、

mm∗=1+EPEg,EP=2∣pcv∣2m(4.5.5)\frac{m}{m^*}=1+\frac{E_{\mathrm P}}{E_{\mathrm g}},\qquad E_{\mathrm P}=\frac{2\lvert p_{\mathrm{cv}}\rvert ^2}{m}\tag{4.5.5}

を得る。同じ計算で価電子帯の上端には m/mh∗≈EP/Eg−1m/m^*_{\mathrm h}\approx E_{\mathrm P}/E_{\mathrm g}-1 の軽い正孔が現れる。2つのバンドは摂動で互いに反発し合い、ギャップが小さいほど反発が強い。そのため伝導帯の底はより強く上へずらされ、曲率が大きく、すなわち質量が軽くなる。EPE_{\mathrm P} は原子の ss 軌道と pp 軌道の間の運動量の行列要素で決まり、III–V 族の化合物ではどれも 2020〜30 eV30\,\mathrm{eV} の大きさである(I. Vurgaftman, J. R. Meyer and L. R. Ram-Mohan (2001), J. Appl. Phys. 89, 5815 の表)。EPE_{\mathrm P} がほぼ共通なので、m∗m^* は主に EgE_{\mathrm g} で決まり、狭いギャップの半導体ほど電子が軽い。この関係は E. O. Kane (1957), J. Phys. Chem. Solids 1, 249 が InSb について示した。

例題 4.5.2 2バンドの k⋅p^\bm{k}\cdot\hat{\bm{p}} で有効質量を見積もる ★★

オリジナル次の値を与えられた値として使い、式 (4.5.5) で m∗/mm^*/m を求めよ。GaAs:Eg=1.519 eVE_{\mathrm g}=1.519\,\mathrm{eV}、EP=28.8 eVE_{\mathrm P}=28.8\,\mathrm{eV}。InAs:0.417 eV0.417\,\mathrm{eV}、21.5 eV21.5\,\mathrm{eV}。InSb:0.235 eV0.235\,\mathrm{eV}、23.3 eV23.3\,\mathrm{eV}。測られた有効質量(それぞれ 0.0670.067、0.0260.026、0.01350.0135。上の文献の表の値)と比べ、2バンドの模型で落としたものが何かを述べよ。

解答

m∗/m=1/(1+EP/Eg)m^*/m=1/(1+E_{\mathrm P}/E_{\mathrm g}) に入れると、GaAs で 1/(1+18.96)=0.05011/(1+18.96)=0.0501、InAs で 1/(1+51.6)=0.01901/(1+51.6)=0.0190、InSb で 1/(1+99.1)=0.01001/(1+99.1)=0.0100 である。ギャップが 1.5 eV1.5\,\mathrm{eV} から 0.24 eV0.24\,\mathrm{eV} まで6分の1になると、質量も約5分の1になり、測られた値の並び(0.067→0.01350.067\to0.0135)をよく再現する。

どれも測られた値より 25〜30% 軽く出る。2バンドの模型では、価電子帯の上端を1本のバンドとして扱った。実際の価電子帯の上端は、スピン軌道相互作用で Δso\Delta_{\mathrm{so}} だけ下に分かれたバンドを含めて3本あり、分かれたバンドとの距離は Eg+ΔsoE_{\mathrm g}+\Delta_{\mathrm{so}} なので、その分だけ伝導帯の底を上へずらす寄与が小さい。さらに、伝導帯より上にあるバンドは逆に伝導帯の底を下へずらし、質量を重くする。この2つを落としたので、2バンドの模型は反発を強めに見積もり、質量を軽く出す。

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