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何を近似したか・何の実験の量で確かめるか

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第20章 Einstein の A・B 係数
目次
  1. 置いた近似
  2. 何の実験の量で確かめるか
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第20章 §20.5 ★★ 速さの言葉はコヒーレンスが占有数より速く失われる極限(T2/T1→0T_2/T_1\to0)の近似で、定常の値は光 Bloch 方程式と一致する。A は寿命で、B は積分した吸収で測り、比が式 (20.6) を満たすかで確かめる

置いた近似

この章で近似を置いたのは2か所である。

1つ目は、遷移を速さで書いたことである。式 (20.10) は、時間 tt が光のスペクトルの広がり δω\delta\omega の逆数より十分長く、しかも遷移の確率が 11 よりずっと小さい(Wt≪1Wt\ll1)時間の窓で成り立つ。窓が存在する条件は W≪δωW\ll\delta\omega で、広がった光の場合、これは「Rabi 周波数の2乗を光の幅で割ったもの」が光の幅より小さいことに当たる。原子の側に緩和があれば条件はゆるむ。自然幅 Γ\Gamma の原子を単色の光で照らす場合は、第19章の光 Bloch 方程式でコヒーレンス ρeg\rho_{eg} が占有数より速く減る(T2≪T_2\ll 占有数の変わる時間)とき、ρeg\rho_{eg} をその瞬間の占有数で決まる値に置き換えることができる。この置き換えをコヒーレンスの断熱消去と呼び、置き換えた結果が速さの方程式 (20.2) で、速さは W=Ω2/Γ⋅1/(1+4Δ2/Γ2)W=\Omega^2/\Gamma\cdot1/(1+4\Delta^2/\Gamma^2) になる(第19章の式 (19.24) で T2=2/ΓT_2=2/\Gamma としたもの)(式 (20.19) と式 (20.17) から出る値と同じ。総合問題で確かめる)。小さいパラメータは T2/T1T_2/T_1(コヒーレンスの寿命と占有数の寿命の比)で、さらに ΩT2≪1\Omega T_2\ll1 のとき Rabi 振動が起きない。

自然放出だけで緩和する原子では T2=2T1T_2=2T_1 で、T2/T1T_2/T_1 は小さくない。図 20.4 は、共鳴で Ω=Γ/2\Omega=\Gamma/2 と Ω=3Γ\Omega=3\Gamma の2つの場合に、光 Bloch 方程式の解と速さの方程式の解を比べたものである。Ω=Γ/2\Omega=\Gamma/2 では Rabi 振動は起きないが、光 Bloch 方程式の解はコヒーレンスが育つまで t2t^2 で立ち上がる分だけ遅れ、Γt≈5\Gamma t\approx5 を過ぎてから速さの方程式の解に重なる。Ω=3Γ\Omega=3\Gamma では光 Bloch 方程式の解が Rabi 振動で振れる。どちらの場合も、十分時間が経ったあとの値は一致する。つまり自然幅だけの原子で、速さの方程式から正しく求まるのは定常の値と長い時間の振る舞いだけである。衝突や光のスペクトルの広がりでコヒーレンスが T1T_1 よりはるかに速く失われる場合には、過渡の振る舞いまで速さの方程式で書くことができる。

図

図 20.4 共鳴の単色の光で照らした2準位の原子(自然幅 Γ\Gamma、T2=2T1T_2=2T_1)。点線が光 Bloch 方程式の解(厳密)、実線が速さの方程式の解(コヒーレンスを断熱消去した近似、W=Ω2/ΓW=\Omega^2/\Gamma)。Ω=Γ/2\Omega=\Gamma/2 では Bloch 方程式の解が立ち上がりで遅れ、Γt≈5\Gamma t\approx5 で追いつく。Ω=3Γ\Omega=3\Gamma では Bloch 方程式の解が Rabi 振動で振れるが、行き着く値 Ω2/(Γ2+2Ω2)=0.474\Omega^2/(\Gamma^2+2\Omega^2)=0.474 は両者で同じである。

2つ目は、自然放出を一定の速さ A21A_{21} の指数関数的な減衰としたことである。原子は連続無限個の真空のモードに弱く結合していて、その結合が光の周期よりはるかに長い時間 1/A211/A_{21} をかけて原子を減衰させる。原子が放った光が原子の位置へ戻ってくる効果はすぐに消えるとして(Markov 近似)、減衰を一定の速さで書いた。小さいパラメータは A21/ω0A_{21}/\omega_0 で、Lyman α\alpha 線で 4×10−84\times10^{-8} の桁である。指数関数からのずれはごく短い時間(光の周期の桁)とごく長い時間に現れるが、ふつうの測定では見えない。この近似の中身は第34章の Wigner–Weisskopf の計算で扱う(第34章)。

熱平衡の議論(20.2節)そのものは近似を含まない。詳細つり合い・Boltzmann 分布・Planck の式は統計力学の厳密な結果で、そこから出る係数の比も厳密である。ただし、係数を「温度によらない原子の定数」とした仮定は、原子が放射によって変形しない弱い光でだけ成り立つ。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの T2/T1→0T_2/T_1\to0 または W/δω→0W/\delta\omega\to0(コヒーレンスが占有数より速く減る) | 証明 条件付き(定常の値は光 Bloch 方程式とすべての Ω\Omega, Δ\Delta で一致することを本章の総合問題で確かめた。過渡の誤差を T2/T1T_2/T_1 の冪で押さえる特異摂動の評価の形は要確認) | 行き先 近似の数理 第7章

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの A21/ω0→0A_{21}/\omega_0\to0(原子と真空のモードの結合が弱く、放った光が戻ってこない Markov 近似) | 証明 条件付き(弱結合の van Hove 極限で Markov の方程式に収束することは Davies (1974) が浴の相関関数が時間について可積分であることを前提に証明した。自由空間の ω3\omega^3 のモードでは、双極子近似の破れる高い周波数での切断を入れたときに前提が満たされる。第34章、第34章) | 行き先 近似の数理 第14章

何の実験の量で確かめるか

自然放出の速さ A21A_{21} は、上の準位の寿命として測る。短いパルスの光で原子を一斉に上の準位へ上げ、出てくる蛍光の強さが時間とともに e−A21t\mathrm{e}^{-A_{21}t} で減るのを測れば、減衰の時定数が 1/A211/A_{21} である(下の準位が基底状態で、上の準位からほかの準位への遷移が無い場合)。

B12B_{12} は積分した吸収で測る。式 (20.21) の αabs(ω)\alpha_{\mathrm{abs}}(\omega) を周波数で積分すると、線形関数の面積が 11 なので、上の準位の占有が無視できる(N2≈0N_2\approx0)とき

∫αabs(ω) dω=N1∫σ12 dω=N1ℏω0cB12=N1g2g1λ24A21(20.23)\int\alpha_{\mathrm{abs}}(\omega)\,\mathrm{d}\omega=N_1\int\sigma_{12}\,\mathrm{d}\omega=N_1\frac{\hbar\omega_0}{c}B_{12}=N_1\frac{g_2}{g_1}\frac{\lambda^2}{4}A_{21}\tag{20.23}

になる。積分すると線形が消えるので、Doppler 幅や圧力による広がりがどうであっても、結果は線の強さだけで決まる。数密度 N1N_1 が分かれば、吸収の測定から A21A_{21} を予言することができ、それを寿命の測定と比べることができる。2つの値が一致することが、式 (20.6) の実験による確認になる。反対に、吸収と寿命の値が一致しなければ、上の準位から別の準位へ落ちる道がある(分岐がある)か、数密度の見積もりが違っている。

速さの言葉が使えなくなるのは、光 Bloch 方程式でコヒーレンスが残る場合である。強いレーザー光で短い時間だけ照らすと Rabi 振動が見え(第19章)、そのとき吸収を「速さ×時間」で書くことはできない。

例題 20.5 積分した吸収から寿命を予言する ★★

オリジナル波長 589 nm589\,\mathrm{nm}、g1=2g_1=2, g2=4g_2=4 の遷移を持つ原子の蒸気を長さ L=1.0 cmL=1.0\,\mathrm{cm} のセルに入れ、下の準位の数密度を N1=1.0×1015 m−3N_1=1.0\times10^{15}\,\mathrm{m^{-3}} にした。吸収係数を周波数で積分したら ∫αabs dω=1.08×1010 m−1 s−1\int\alpha_{\mathrm{abs}}\,\mathrm{d}\omega=1.08\times10^{10}\,\mathrm{m^{-1}\,s^{-1}} だった。

  1. (1) 式 (20.23) から A21A_{21} と上の準位の寿命を予言せよ。
  2. (2) 同じ原子を短いパルスで励起し蛍光の減衰を測ったら、寿命が 16 ns16\,\mathrm{ns} だった。(1) の予言と比べ、上の準位から下の準位以外へ落ちる道が大きいかどうかを判断せよ。
  3. (3) 線形が Doppler 幅の Gauss 型で、全幅が周波数で δνD=1.3 GHz\delta\nu_{\mathrm D}=1.3\,\mathrm{GHz} のとき、線の中心でのセルの透過率 e−αabs(ω0)L\mathrm{e}^{-\alpha_{\mathrm{abs}}(\omega_0)L} を求めよ。
解答

(1) A21=4g1g2λ2N1∫αabs dω=4×2×1.08×10104×(5.89×10−7)2×1015=6.23×107 s−1A_{21}=\frac{4g_1}{g_2\lambda^2N_1}\int\alpha_{\mathrm{abs}}\,\mathrm{d}\omega=\frac{4\times2\times1.08\times10^{10}}{4\times(5.89\times10^{-7})^2\times10^{15}}=6.23\times10^{7}\,\mathrm{s^{-1}}、寿命は 16.1 ns16.1\,\mathrm{ns} である。

(2) 測った寿命 16 ns16\,\mathrm{ns} は予言 16.1 ns16.1\,\mathrm{ns} と1パーセント以内で一致する。寿命は上の準位から出るすべての道の速さの和の逆数で、積分した吸収はこの遷移1本の A21A_{21} だけを測る。両者が一致するので、上の準位はほぼこの1本の遷移だけで減衰している。

(3) SG(ω0)=22π×1.3×109 s−1ln⁡2/π=1.15×10−10 s\mathcal S_{\mathrm G}(\omega_0)=\frac{2}{2\pi\times1.3\times10^9\,\mathrm{s^{-1}}}\sqrt{\ln2/\pi}=1.15\times10^{-10}\,\mathrm s。αabs(ω0)=SG(ω0)∫αabs dω=1.24 m−1\alpha_{\mathrm{abs}}(\omega_0)=\mathcal S_{\mathrm G}(\omega_0)\int\alpha_{\mathrm{abs}}\,\mathrm{d}\omega=1.24\,\mathrm{m^{-1}}(N2≈0N_2\approx0 なので αabs\alpha_{\mathrm{abs}} は S\mathcal S に比例する)、αabsL=0.0124\alpha_{\mathrm{abs}} L=0.0124 で透過率は 0.9880.988 である。数密度 1015 m−310^{15}\,\mathrm{m^{-3}} の蒸気は、この線の中心でも光をほとんど通す。

木下の勉強ステータス

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