この章のまとめ
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第2部 第3章 §2.3.7 ★★★ 全体では遠い2つの状態が部分系では見分けられないことを、典型性と平衡化の2つの形でまとめ、総合問題で通して使う
この章で比べたのは、全体の状態を部分系 に制限したものと、ミクロカノニカル状態を同じ に制限したものである。古典の場合、エネルギー殻の上の一様分布と、平均エネルギーをそろえたカノニカル分布の相対エントロピーは、熱力学エントロピーの差 に等しく(式 (2.3.3))、全体では の程度で増えるが、 個の粒子に制限すると まで小さくなった(命題 2.3.1)。ずれの源は、励起の総数が決まっていることによる粒子の組の負の相関である。
量子の場合、全体を1つの純粋状態 にしても部分系の縮約 は混合状態で、全体どうしの とは別に、部分系どうしの を問える。 を2次の量 で上から押さえる不等式(命題 2.3.2)と Haar 測度の2次のモーメント(補題 2.3.3)を組み合わせると、ランダムな では が の程度に小さい(定理 2.3.4、正準典型性)。制約の無い場合は Page の式と比べて、上界が厳密な平均のちょうど2倍になることを確かめた。Pinsker の不等式から、 で測れるすべての物理量がミクロカノニカル状態と同じ値をとる。
決まった初期状態からの時間発展では、全体の は一定で、全体が平衡に近づくことはない(式 (2.3.25)・(2.3.26))。それでも部分系は、エネルギー差に縮退が無く が大きければ、ほとんどすべての時刻で時間平均の状態の近くにいる(定理 2.3.5)。時間平均の状態がミクロカノニカル状態に一致するかは固有状態熱化仮説(ETH)に依存し、これは証明されていない。
この章では、部分系の が小さいことを「全体の は減らないのに、見る範囲を狭めると減って見える」という形で使った。同じ構図で第二法則を読むのが次の章(第2部第4章)で、そこでは部分系への制限の代わりに粗視化を使い、Liouville の定理と の単調減少を両立させる。
総合問題 2準位の粒子 20 個の典型性 ★★★
オリジナル 個の2準位の粒子(励起エネルギー )で励起を 個に固定し()、最初の2個を部分系 、残りの 18 個を とする。古典の分布は 2.3.1 節、量子の状態は 2.3.2 節の約束に従う。
- (1) (使う道具:2.3.1 節/第1部第3章の の定義) を求め、 を計算して主要項 と比べよ。
- (2) (使う道具:2.3.6 節/第1部第2章の2準位系の温度)カノニカル分布の を求めよ。また の2個がともに励起している確率とともに基底状態にある確率の比を、ミクロカノニカル分布とカノニカル分布で比べよ。
- (3) (使う道具:2.3.4 節)、、、 を求め、 と の上界を計算せよ。 の上界を Pinsker の不等式で に直した値とも比べよ。
- (4) (使う道具:2.3.3 節の式 (2.3.15)) を粒子 が基底状態なら 、励起していれば を返す物理量とする。 の期待値をミクロカノニカル状態とカノニカル状態で求め、ランダムな での期待値とカノニカル状態の値との差の平均に上界を与えよ。
- (5) (使う道具:2.3.5 節) の中で縮退の無いハミルトニアンを考え、初期状態が のすべての固有状態に均等に広がっているとする。部分系の平衡化の上界 (2.3.28) と、全体の を求めよ。
解答
(1) 、、、 から、2個とも基底状態の配置が 、片方だけ励起した2つの配置がそれぞれ 、2個とも励起した配置が である。カノニカル分布の周辺は 、、 なので
主要項は で、値の 88% を占める( の例題 2.3.1 の 85% より主要項に近い)。
(2) から 、。第1部第2章の例題で を状態数から導いたのと同じ関係である。比はミクロカノニカル分布で 、カノニカル分布で である。ミクロカノニカル分布の比はカノニカル分布の 倍で、例題 2.3.6 の近似 とおよそ合う。
(3) 。 の配置で励起が 個のものは、 に励起を 個置く場合の数 通りと組になるので、 の対角成分は の 個が 、 の 個が 、 の 個が である。よって
の配置の総数 より少し小さい。(2個とも励起)。定理 2.3.4 から
Pinsker の不等式と を使うと で、直接の評価 の約3倍ゆるい。 の上界は で割った分だけ不利になり、Pinsker の不等式でさらに平方根を取るからである。
(4) は2個が同じ状態なら 、異なれば なので、ミクロカノニカル状態で 、カノニカル状態で である。差 は、 と の ()と一致する。 なので、式 (2.3.15) と三角不等式から
この大きさの系では、カノニカル状態からのずれの大部分は、 を1つに選んだことによるゆらぎよりも、ミクロカノニカル分布とカノニカル分布の違い(有限の の補正)による。
(5) なので、上界は 。全体の nat で、時間によらない。部分系 は長い時間のほとんどで時間平均の状態から で平均 以内にいるが、全体の状態は時間平均の状態から nat 離れたまま動かない。
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