解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第6章 §2.6.5 ★★ S粒子+S相互作用+S場 を粒子で変分すると Lorentz 力、場で変分すると Maxwell 方程式。真空では波動方程式で速さ 1/ε0μ0
点電荷の4元電流
JμAμ の項は、第2部第2章の荷電粒子の Lagrangian と同じものである。電荷 q の点電荷が軌道 r(t) を動くとき、電荷密度と電流密度は
ρ(x,t)=qδ(3)(x−r(t)),J(x,t)=qr˙(t)δ(3)(x−r(t))(2.6.20)
である。この Jμ は式 (2.6.16) を満たす(∂tρ=−qr˙⋅∇δ(3)=−∇⋅J)。相互作用の項を空間で積分すると
∫(−ρϕ+J⋅A)d3x=−qϕ(r(t),t)+qr˙⋅A(r(t),t)=−qAμdtdxμ
で、第2部第2章の L=21mr˙2−qϕ+qr˙⋅A の相互作用の部分そのものになる。
全体の作用
粒子と場を合わせた作用を
S=S粒子−mc2∫1−c2r˙2dtS相互作用−∫JμAμdtd3xS場−4μ01∫FμνFμνdtd3x(2.6.21)
と書く。S粒子 は第2部第3章の自由粒子の作用、S相互作用 は上で見たとおり −q∫Aμdxμ に等しい。この1つの作用を、2種類の変数で別々に停留させる。
粒子の軌道 r(t) をずらすと、S場 は r を含まないので寄与しない。残りは第2部第2章・第3章の荷電粒子の作用で、Euler–Lagrange 方程式は
dtd1−r˙2/c2mr˙=q(E+r˙×B)
(Lorentz 力の運動方程式)である。
場 Aμ をずらすと、S粒子 は A を含まないので寄与せず、残りは式 (2.6.6) の作用だから、式 (2.6.13) で Jμ を点電荷の式 (2.6.20) に置いたものが出る。
1つの作用から「場が電荷を動かす式」と「電荷が場を作る式」が両方出る。どちらの式でも、電荷と場の結びつきの強さを表す定数 q は同じ1つの項 S相互作用 に由来する。電荷が場から受ける力の強さと、電荷が場を作る強さを、別々の定数として与える必要はない。この釣り合いが全運動量・全エネルギーの保存として現れることは、第2部第7章の場の Noether の定理で確かめる。
点電荷の自己場
点電荷の作る場を、同じ点電荷の運動方程式に戻すと、Coulomb 場が電荷の位置で発散するので自己力が無限大になる。上の変分は「粒子の方程式には外から与えた場を入れ、場の方程式には与えた軌道を入れる」という読み方までは問題なく成り立つが、両方を同時に解こうとすると、点電荷の自己エネルギーの発散を扱う必要が生じる。この発散は古典電磁気学の範囲では取り除けず、質量のくりこみという考え方は第5部第10章で扱う。
真空中の電磁波
式 (2.6.13) の左辺を A で書くと、∂μFμν=∂μ∂μAν−∂ν(∂μAμ) なので
□Aν−∂ν(∂μAμ)=μ0Jν,□:=∂μ∂μ=c21∂t2∂2−∇2(2.6.22)
である。ゲージ変換 Aμ→Aμ−∂μΛ で ∂μAμ は ∂μAμ−□Λ に変わるので、□Λ=∂μAμ を満たす Λ を選べば ∂μAμ=0(Lorenz 条件)にすることができる。この条件のもとで式 (2.6.22) は
□Aν=μ0Jν(2.6.23)
の4本の独立な波動方程式になる。真空(Jμ=0)では、Aν の各成分が速さ c で伝わる波動方程式を満たす。ここで c は計量に入れた光速そのものだが、SI 単位系で書いた式の中では μ0c2=1/ε0 を通して c=1/ε0μ0 と表される。
例題 2.6.5 平面波のポテンシャル ★★
オリジナルϕ=0、A=A0cos(kx−ωt)ey(A0,k,ω>0)とする。
- (1) Lorenz 条件 ∂μAμ=0 が成り立つことを確かめ、真空の式 (2.6.23) から ω と k の関係を求めよ。
- (2) E と B を求め、Ey/Bz と、電場と磁場のエネルギー密度 ε0E2/2、B2/(2μ0) を比べよ。
- (3) μ0 を 4π×10−7NA−2 と近似し、c=299792458ms−1 から ε0 を求めよ。電場の振幅が 1Vm−1 のとき磁場の振幅はいくらか。
解答
(1) ∂μAμ=c1∂t(ϕ/c)+∇⋅A=∂yAy=0(Ay は y によらない)。□Ay=(c21∂t2−∂x2)A0cos(kx−ωt)=(−c2ω2+k2)A0cos(kx−ωt) が 0 になる条件は ω=ck。
(2) E=−∂tA=−A0ωsin(kx−ωt)ey、B=∇×A=∂xAyez=−A0ksin(kx−ωt)ez。Ey/Bz=ω/k=c。エネルギー密度の比は ε0E2/(B2/μ0)=ε0μ0c2=1 で、電場と磁場のエネルギー密度は各点・各時刻で等しい。L=ε0E2/2−B2/(2μ0) は平面波の上で 0 になる。
(3) ε0=1/(μ0c2)=8.854×10−12Fm−1。磁場の振幅は E0/c=1/(3.00×108)=3.34×10−9T である。
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