解答
(1) dSz=−Ssinϑdϑ なので dφ∧dSz=−Ssinϑdφ∧dϑ=Ssinϑdϑ∧dφ=ωS(式 (10.2.9))。全体の積分は ∫02πdφ∫0πSsinϑdϑ=2π⋅2S=4πS。帯は Darboux 座標 (φ,Sz) で長方形 0≤φ<2π, Sz1≤Sz≤Sz2 なので、積分は 2πS(z2−z1)。帯の位置によらず高さの差だけで決まる(Archimedes、図 10.2.1)。
(2) (q,p)=(φ,Sz) で f=Sz=p なので、式 (10.2.11) から XSz=∂φ(z 軸のまわりの回転)。Sx=S2−p2cosq, Sy=S2−p2sinq で、例題 10.2.6(3) と同じ計算から {Sx,Sy}=Sz。{Sy,Sz}=∂qSy⋅1−∂pSy⋅0=S2−p2cosq=Sx、{Sz,Sx}=0⋅∂pSx−1⋅∂qSx=S2−p2sinq=Sy。H=ω0Sz では XH=ω0∂φ で、流れは φ(t)=φ(0)+ω0t、Sz は一定である。S が z 軸のまわりを角速度 ω0 で回る歳差運動で、量子の H^=ω0S^z の Heisenberg 方程式 dtdS^x=[S^x,H^]/(iℏ)=−ω0S^y と、古典の dtdSx={Sx,H}=ω0{Sx,Sz}=−ω0Sy は同じ形である(解析力学の巻の「生成子 Lz が回転を生む」と同じ構造)。XSx=∂pSx∂q−∂qSx∂p=−S2−p2pcosq∂q+S2−p2sinq∂p の発散は∂q(−S2−p2pcosq)+∂p(S2−p2sinq)=S2−p2psinq−S2−p2psinq=0 で、2次元では発散0が LXωS=0 と同値なので ωS を保つ(定理 10.2.9 の例)。XSx は x 軸のまわりの回転である。
(3) dθN=∂ϑ(S(1−cosϑ))dϑ∧dφ=Ssinϑdϑ∧dφ、dθS=∂ϑ(−S(1+cosϑ))dϑ∧dφ=Ssinϑdϑ∧dφ。dφ は極で定義されないので、係数が極で0になるかどうかで正則性が決まる。θN の係数 S(1−cosϑ)≈Sϑ2/2 は北極 ϑ→0 で0になり、北極を含む領域で正則(南極では係数が 2S で特異)。θS は南極 ϑ→π で係数が0になり、南極を含む領域で正則である。差は θN−θS=2Sdφ。dφ は1節の角の形式と同じく閉じているが、赤道を1周した積分が 2π=0 なので完全でない。両方の極を除いた所では θN と θS はどちらも ωS のポテンシャルで、その差が完全形式でない(θ→θ+dλ の形に書けない)ことが、球面全体で1つの θ が取れないことの局所的な表れである。2πℏ1∫S2ωS=2πℏ4πS=ℏ2S。第10部第3章の整数条件はこれが整数であることを求め、S は ℏ/2 の整数倍に限られる(第10部第5章)。
(4) 緯線は1次元なので、接ベクトル u について ωS(u,u)=0 で Lagrange である。H=ω0Sz の流れは Sz を一定に保って φ だけを進めるので、緯線はその軌道(H の等高線)であり、命題 10.2.11 とも合う。帽子の面積分は ∫02πdφ∫0ϑ0Ssinϑdϑ=2πS(1−cosϑ0)。θN は帽子の上(北極を含む)で正則なので Stokes の定理が使え、境界の緯線を φ の増す向きに回って ∮θN=2πS(1−cosϑ0) で一致する。θS は北極で特異なので Stokes の定理は使えず、∮θS=−2πS(1+cosϑ0) は帽子の積分から 4πS(球面全体の積分)だけずれる。このずれは ∮(θN−θS)=2S⋅2π と同じである。S=ℏ/2 では帽子の積分は πℏ(1−cosϑ0) で、ℏ で割ると π(1−cosϑ0)=21⋅2π(1−cosϑ0)、つまり緯線が張る立体角の半分になる。解析力学の巻では、磁場の向きに沿うスピン½の Berry 位相が立体角 A の半分(符号つきで −A/2。立体角の記号は第6部第6章と同じ)になることを示した(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第9章)。大きさは帽子の ∫ωS/ℏ と一致し、Berry 位相がスピンの相空間(例題 10.2.6 の Bloch 球)の ω の面積で測られることを示している。符号は回る向きと、どちらの帽子を取るか(θN と θS のどちらを使うか)で変わり、2つの値の差 2π⋅2S/ℏ=2π は位相としては見分けられない。