解答
(1) 共鳴では ω02−ω2=0 なので α(ω0)=ife2/(mγω0) で純虚数である。
∣χ∣=ε0mγω0Nfe2=8.854×10−12×9.109×10−31×3.77×107×2.415×10151015×0.730×(1.602×10−19)2=2.55×10−5
で、∣χ∣≪1 なので平方根を1次で展開してよい。離調があると ∣χ∣ はさらに小さくなるので、全周波数で希薄な近似が使える。
(2) 式 (10.25) に共鳴の Imα=fe2/(mγω0) を入れて
σ0=ε0cω0⋅mγω0fe2=ε0mcγfe2=2.06×10−13m2.
κ0=∣χ∣/2=1.28×10−5、吸収係数は Nσ0=206m−1(2κ0ω0/c でも同じ)、光学的厚さは Nσ0L=2.06、透過率は e−2.06=0.128 である。屈折率の変化 κ0∼10−5 はごく小さいが、セルの長さ 1cm は 1.3×104 波長に当たるので、光の9割近くが吸収される。
(3) 式 (10.26) の g(x)=−2x/(1+4x2)(x=Δ/γ)を微分すると g′(x)=−2(1−4x2)/(1+4x2)2 で、x=±21 で極値を取る。x=−21(Δ=−γ/2)で最大 g=+21、x=+21 で最小 g=−21。したがって n−1 の最大は Δ=−γ/2=−2π×3.0MHz で +κ0/2=+6.38×10−6、最小は Δ=+γ/2 で −6.38×10−6 である。赤い離調(Δ<0)では n>1 になる。
(4) 近共鳴の近似で σabs(ω)=σ0/(1+4Δ2/γ2) なので、Δ についての積分(共鳴から遠い所の寄与は小さいので −∞ から ∞ まで積分してよい)は
∫σabsdω≈σ0∫−∞∞1+4Δ2/γ2dΔ=σ02πγ=2ε0mcπfe2=1.22×10−5m2s−1
で、σ0∝1/γ と幅 ∝γ が打ち消し合い、γ によらない。この値は近似を使わずに Lorentz 振動子の式を 0 から ∞ まで積分しても同じになる(検算で γ を変えて確かめた)。積分した吸収の強さは振動子強度 f だけで決まり、線幅は吸収をどの周波数に配るかを決めるだけである。線幅が10倍になれば共鳴の σ0 は 1/10 になり、光学的厚さは 0.206、透過率は 0.81 になる。
(5) 1原子の双極子 d=Re[αE0e−iωt] が受け取る仕事率は、式 (10.9) の ε0χ を α に置き換えて ⟨E⋅d˙⟩=21ω0Imα∣E0∣2 である。光の強度は n≈1 で I=21cε0∣E0∣2 なので、比は ω0Imα/(ε0c)=σ0。N 個の原子の分を足すと Nσ0I=αabsI で、強度の減り方 −dzdI と一致する。原子の大きさの円の面積は πa02=8.8×10−21m2 で、σ0 はその 2.3×107 倍である。共鳴の光を吸収する原子は、自分の大きさよりはるかに大きな的として振る舞う。共鳴から離れると σabs は Δ−2 で小さくなるので、この大きな断面積は共鳴の幅 γ の中でだけ現れる。