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この章のまとめ

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第7章 実験で見る情報熱力学

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第7章 §4.7.7 ★★★ 消去の下限は消去の前と後の分布の DD、取り出せる仕事の上限は測定の直後の結合分布と積分布の DD(相互情報量)。どちらも実験で数 % から十数 % の精度で確かめられた

この章では、第4部で導いた不等式と等式を、3つの系の実験で読んだ。比べる2つの分布は2組あった。消去の実験では、消去の前の記憶の分布 (1/2,1/2)(1/2,1/2) と後の分布 (Ps,1−Ps)(P_{\mathrm s},1-P_{\mathrm s}) で、その D=ln⁡2−hb(Ps)D=\ln2-h_{\mathrm b}(P_{\mathrm s}) が仕事と散逸の熱の下限になる。記憶を2状態として扱ってよいことは、DD の連鎖則で、井戸の中が局所平衡なら連続の DD が2状態の DD に等しいことから分かる。フィードバックの実験では、測定の直後の系と結果の結合分布と積分布で、その DD が相互情報量 I(X;M)I(X;M) になり、取り出せる仕事の上限になる。

当てた DD の性質は非負性と、2状態の主方程式での Σ˙≥0\dot\Sigma\ge0 である。有限の時間 τ\tau の消去には B/τB/\tau の余りが必ず付き、BB は傾け方で決まる。一定の速さで傾けると BB は傾けの大きさに比例して増えるが、平衡分布の Fisher 情報で測った長さが一定の速さで進むように傾けると、BB は π2/(4ν)\pi^2/(4\nu) を超えない。

出てきたものは3つの実験の数値である。コロイド粒子の消去では、散逸の熱を A+B/τA+B/\tau に当てはめて A=0.72 kBTA=0.72\, k_{\mathrm B} T(Bérut ら)、帰還トラップで 0.71±0.03 kBT0.71\pm0.03\, k_{\mathrm B} T と、消去しない対照で 0.05±0.03 kBT0.05\pm0.03\, k_{\mathrm B} T(Jun ら)を得た。単電子箱の Szilard エンジンでは、理想の 0.94 kBTln⁡20.94\, k_{\mathrm B} T\ln2 に対して正しく動いた周で 0.9 kBTln⁡20.9\, k_{\mathrm B} T\ln2 を取り出し、誤り率を変えて一般化 Jarzynski 等式 ⟨e−βW−I⟩=1\langle \mathrm{e}^{-\beta W-I} \rangle =1 を確かめた(Koski ら)。理想化した模型では、誤り率に合わせて ΔE\Delta E を選ぶと、取り出す仕事が kBT I(X;M)k_{\mathrm B} T\,I(X;M) にちょうど届く。回転するコロイド粒子では、情報 0.220.22 nat のうち 28% を自由エネルギーに変え、γ\gamma の形の等式を確かめた(Toyabe ら)。

ここまでの実験はすべて古典の系である。測定される系も記憶も量子力学的なとき、相互情報量と DD は第3部の量子版に置きかわり、測定が状態を乱すことがコストに加わる。それが次の 第4部第8章 の主題である。

要点

  • 連鎖則:D(p ∥ π)=D(井戸の重み)+∑ipiD(井戸の中)D(p\,\|\,\pi)=D(\text{井戸の重み})+\sum_ip_iD(\text{井戸の中})。局所平衡なら記憶は2状態。
  • 成功率 PsP_{\mathrm s} の消去:⟨W⟩=⟨−Q⟩≥kBT[ln⁡2−hb(Ps)]\langle W \rangle =\langle -Q \rangle \ge k_{\mathrm B} T[\ln2-h_{\mathrm b}(P_{\mathrm s})]。
  • 2状態:p˙1=−ν(p1−π1)\dot p_1=-\nu(p_1-\pi_1)、Σ˙=ν(π1−p1)ln⁡π1(1−p1)π0p1≥0\dot\Sigma=\nu(\pi_1-p_1)\ln\frac{\pi_1(1-p_1)}{\pi_0p_1}\ge0。余り B/τB/\tau、νBlin≈βEm/2\nu B_{\mathrm{lin}}\approx\beta E_{\mathrm m}/2、νBopt<π2/4\nu B_{\mathrm{opt}}<\pi^2/4。
  • 正規分布の仕事:⟨W⟩−ΔF=βσW2/2\langle W \rangle -\Delta F=\beta\sigma_W^2/2。
  • 単電子箱 En=EC(n−ng)2E_n=E_{\mathrm C}(n-n_{\mathrm g})^2。−Wok=kBTln⁡21+e−βΔE-W_{\mathrm{ok}}= k_{\mathrm B} T\ln\frac2{1+\mathrm{e}^{-\beta\Delta E}}、誤ると ΔE\Delta E を捨てる。最適 βΔE=ln⁡1−εε\beta\Delta E=\ln\frac{1-\varepsilon}{\varepsilon} で −β⟨W⟩=ln⁡2−hb(ε)-\beta\langle W \rangle =\ln2-h_{\mathrm b}(\varepsilon)。
  • 一般化 Jarzynski:⟨e−β(W−ΔF)−I⟩=1\langle \mathrm{e}^{-\beta(W-\Delta F)-I} \rangle =1、⟨eβ(ΔF−W)⟩=γ\langle \mathrm{e}^{\beta(\Delta F-W)} \rangle =\gamma。

総合問題 誤りのある Szilard エンジンと記憶の消去の帳尻 ★★★

オリジナル理想化した単電子箱のエンジン(命題 4.7.3 の仮定)を、誤り率 ε=0.1\varepsilon=0.1 の測定で動かす。測定結果 mm は1ビットの記憶(2状態の系)に書き込まれる。1周を閉じるには、次の周の前にこの記憶を消去して 0 に戻す必要がある。

  1. (1) 相互情報量 I(X;M)I(X;M) と、記憶の条件付きエントロピー H(M ∣ X)H(M\,|\,X) を求めよ。(使う道具:4.7.4 節、第1部第3章 の相互情報量)
  2. (2) 取り出す仕事を最大にする βΔE\beta\Delta E と、そのときの −β⟨W⟩-\beta\langle W \rangle を求めよ。(使う道具:4.7.4 節、第4部第4章)
  3. (3) (2) の ΔE\Delta E のときの γ\gamma を求め、⟨e−βW⟩=γ\langle \mathrm{e}^{-\beta W} \rangle =\gamma と −β⟨W⟩≤ln⁡γ-\beta\langle W \rangle \le\ln\gamma を確かめよ。(使う道具:4.7.5 節)
  4. (4) 記憶 MM の分布は (1/2,1/2)(1/2,1/2) である。これを 4.7.2 節の4段の手順で、βEm=10\beta E_{\mathrm m}=10、ντ=50\nu\tau=50、一定の速さで消去すると、仕事は β⟨W⟩=0.793\beta\langle W \rangle =0.793(主方程式の数値解)になる。1周(エンジン+消去)の正味の仕事が kBT H(M ∣ X)k_{\mathrm B} T\,H(M\,|\,X) 以上であることを確かめ、残りの差が何によるかを述べよ。(使う道具:4.7.1 節・4.7.2 節、第4部第5章)
  5. (5) 消去をコロイド粒子で行い、余りが Bérut らの B=8.15 kBT sB=8.15\, k_{\mathrm B} T\,\mathrm s の B/τB/\tau だとする。消去の余りを kBT H(M ∣ X)k_{\mathrm B} T\,H(M\,|\,X) 以下にするには、消去時間を何秒以上にすればよいか。(使う道具:4.7.3 節)
解答

(1) 縮退点で P(n)=1/2P(n)=1/2、2値対称通信路なので I(X;M)=ln⁡2−hb(0.1)=0.693−0.325=0.368I(X;M)=\ln2-h_{\mathrm b}(0.1)=0.693-0.325=0.368 nat である。H(M)=ln⁡2H(M)=\ln2 で、H(M ∣ X)=H(M)−I(X;M)=hb(0.1)=0.325H(M\,|\,X)=H(M)-I(X;M)=h_{\mathrm b}(0.1)=0.325 nat である。記憶には系の状態と相関した分 0.3680.368 と、測定の雑音による分 0.3250.325 が書き込まれている。

(2) 命題 4.7.3 (b) から βΔE=ln⁡0.90.1=ln⁡9=2.20\beta\Delta E=\ln\frac{0.9}{0.1}=\ln9=2.20 で、−β⟨W⟩=I(X;M)=0.368-\beta\langle W \rangle =I(X;M)=0.368 である。確かめると x=1/9x=1/9、ln⁡21+1/9=ln⁡1.8=0.588\ln\frac{2}{1+1/9}=\ln1.8=0.588、εln⁡x=−0.1×2.197=−0.220\varepsilon\ln x=-0.1\times2.197=-0.220 で、和は 0.3680.368 である。

(3) 式 (4.7.16) に x=1/9x=1/9 を入れると γ=2(0.9+0.1/9)10/9=1.8×0.911=1.64\gamma=\frac{2(0.9+0.1/9)}{10/9}=1.8\times0.911=1.64 で、ln⁡γ=0.495\ln\gamma=0.495 である。⟨e−βW⟩=0.9×21+x+0.1×2x1+x=0.9×1.8+0.1×0.2=1.64\langle \mathrm{e}^{-\beta W} \rangle =0.9\times\frac{2}{1+x}+0.1\times\frac{2x}{1+x}=0.9\times1.8+0.1\times0.2=1.64 で γ\gamma に一致する。0.368≤0.4950.368\le0.495 で −β⟨W⟩≤ln⁡γ-\beta\langle W \rangle \le\ln\gamma も成り立つ。最適な ΔE\Delta E で等号になるのは II の形のほうで、γ\gamma の形の上限には届かない。

(4) 1周の正味の仕事は、消去でされる仕事からエンジンで取り出した仕事を引いて β⟨W正味⟩=0.793−0.368=0.424\beta\langle W_{\text{正味}} \rangle =0.793-0.368=0.424 で、H(M ∣ X)=0.325H(M\,|\,X)=0.325 以上である。この下限は、消去の下限 kBT H(M)=kBTln⁡2k_{\mathrm B} T\,H(M)= k_{\mathrm B} T\ln2(4.7.1 節の Ps=1P_{\mathrm s}=1)と取り出しの上限 kBT I(X;M)k_{\mathrm B} T\,I(X;M) の差 kBT[H(M)−I(X;M)]k_{\mathrm B} T[H(M)-I(X;M)] である。誤りの無い測定(ε=0\varepsilon=0)なら下限は0で、エンジンと消去を合わせて熱力学の第二法則の等号 ⟨W⟩≥0\langle W \rangle \ge0 に戻る。測定に雑音があると、記憶には系と関係のない分 H(M ∣ X)H(M\,|\,X) が書き込まれ、それを消す代価は回収できない。残りの差 0.424−0.325=0.0990.424-0.325=0.099 は、有限の時間の消去の余り Blin/τ=5.00/50=0.100B_{\mathrm{lin}}/\tau=5.00/50=0.100 から、消去が完全でない分(ゆっくりした極限が ln⁡2\ln2 より 0.00050.0005 小さい分)を引いたものである。エンジンの側は準静的と仮定したので余りを持たない。

(5) 8.15/τ≤0.3258.15/\tau\le0.325 から τ≥25.1 s\tau\ge25.1\,\mathrm s である。Bérut らの最長の 40 s40\,\mathrm s ならこの条件を満たすが、そのときも消去の余り 0.20 kBT0.20\, k_{\mathrm B} T は H(M ∣ X)H(M\,|\,X) と同じ程度の大きさで、実験の装置では、雑音による損と有限の時間による損が同じ程度に並ぶことになる。

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