解答
(1) 電磁場の中の荷電粒子では運動学的な運動量が mv=p−eA なので
H=2m∣p−eA(r)∣2+21mω02∣r∣2.
(2) r を止めて運動量の積分の変数を p′=p−eA(r) にずらす。平行移動なので d3p′=d3p で、積分範囲は全空間のまま変わらない。
Z=h31∫d3re−βmω02∣r∣2/2∫d3p′e−β∣p′∣2/(2m)=h31(βmω022π)3/2(β2πm)3/2=(ℏω0kBT)3.
B は A を通じてしか H に入らず、ずらした積分から消えるので、Z は B によらない。ここで、測度が正準運動量 p で一様であることを使った。Liouville の定理で保たれるのは正準変数の体積なので、この測度は磁場があっても正しい。
(3) lnZ=−3lnβ+定数 から U=3kBT、熱容量は 3kB で、どちらも B によらない。v=(p−eA)/m と ∂A/∂B=21(−y,x,0) から
∂B∂H=−me(p−eA)⋅∂B∂A=−2e(−yvx+xvy)=−μz.
3.3.4節の外場の式から ⟨μz⟩=−⟨∂H/∂B⟩=kBT∂lnZ/∂B=−∂F/∂B=0。古典統計力学では、磁場の中の荷電粒子の集まりに熱平衡の磁化は現れない(Bohr–van Leeuwen の定理)。直接見ても、(r,v) で書いた分布は Maxwell 分布と位置の Gauss 分布の積で、⟨xvy⟩=⟨x⟩⟨vy⟩=0 である。
(4) px=mvx−2eBy、py=mvy+2eBx を入れると
Lz=xpy−ypx=m(xvy−yvx)+2eB(x2+y2).
第1項の平均は (3) と同じく 0。x2 の平均は kBT/(mω02) なので
⟨Lz⟩=2eB⋅mω022kBT=mω02eBkBT=0.
運動学的な角運動量の平均は 0 だが、正準角運動量の平均は 0 でない。ポテンシャルと A が z 軸のまわりの回転で不変なので Lz は Noether の保存量だが(第1部第10章)、正準運動量は mv と違い、ゲージの選び方に依存する eA を含んでいる。
(5) 準位が2つの独立な等間隔の列(と定数 ℏΩ)に分かれているので、等比級数の積になる。
Zxy=e−βℏΩn+∑e−βℏω+n+n−∑e−βℏω−n−=4sinh(βℏω+/2)sinh(βℏω−/2)1
(ℏΩ=21ℏω++21ℏω− を使った)。高温の極限 sinh(u)≈u ではZxy≈1/(β2ℏ2ω+ω−) で、ω+ω−=Ω2−ωc2/4=ω02 なのでZxy≈(kBT/ℏω0)2。これは (2) の古典の Z の xy の部分で、B によらない。
(6) 3.3.6節の展開 ln(2sinh(u/2))=lnu+u2/24+O(u4) を2つの因子に使うと
lnZxy=−ln(β2ℏ2ω02)−24(βℏ)2(ω+2+ω−2)+⋯,ω+2+ω−2=2Ω2+2ωc2=2ω02+ωc2.
B によるのは −(βℏωc)2/24 の項だけで、ωc2=e2B2/m2 から
⟨μz⟩=kBT∂B∂lnZxy=−12m2kBTℏ2e2B=−μB6kBTℏωc.
符号は負で、磁気モーメントは B と逆向き、すなわち反磁性である。古典の積分では消えた磁性が、量子の和では ℏ2 の補正として現れる。電子で B=1T では ℏωc=0.116meV、T=300K では kBT=25.9meV なので
⟨μz⟩=−μB×6×25.850.1158=−7.5×10−4μB.
(βℏωc)2/24≈8×10−7 で、古典の結果からのずれはわずかである。