解答
(1) {q,qp}=∂p∂(qp)=q、{p,qp}=−∂q∂(qp)=−p。Lie 級数 q(ϵ)=q+ϵ{q,D}+2!ϵ2{{q,D},D}+⋯=q∑nϵn/n!=eϵq、同様に p(ϵ)=e−ϵp。位置を eϵ 倍に伸ばし運動量を e−ϵ 倍に縮める変換で、相空間の面積 qp を保つ(第1部第11章の図の伸縮)。
(2) 式 (4.1.13) から (q^p^)†=q^p^−iℏ=q^p^。位置表示では
D^ψ=21(−iℏxψ′−iℏ(xψ)′)=−iℏ(xdxdψ+21ψ).
実数値の ψ では ⟨ψ∣D^ψ⟩=−iℏ∫(xψψ′+21ψ2)dx で、部分積分 ∫xψψ′dx=∫x21(ψ2)′dx=−21∫ψ2dx=−21 を使うと 0 になる。D^ はエルミートなので期待値は実数になるはずで、実の ψ では期待値が −iℏ×(実数) の形になるから、両者が両立する値は 0 に限られる。したがって ⟨ψ∣q^p^ψ⟩=⟨ψ∣(D^+iℏ/2)ψ⟩=iℏ/2 で、古典では実数のはずの「qp の平均」が純虚数になる。
(3) [q^,q^p^]=q^[q^,p^]=iℏq^、[q^,p^q^]=[q^,p^]q^=iℏq^ なので [q^,D^]=iℏq^。同様に [p^,q^p^]=−iℏp^、[p^,p^q^]=−iℏp^ から [p^,D^]=−iℏp^。iℏ で割ると q^, −p^ で、(1) の {q,D}=q, {p,D}=−p と補正なしで一致する。D=qp は2次式なので、命題 4.1.4 により規則が厳密に成り立つ。
(4) Ψ(ϵ,x)=e−ϵ/2ψ(e−ϵx) を ϵ で微分すると∂ϵΨ=−21Ψ−x∂xΨ=−ℏiD^Ψ((2) の D^ の形を使った)で、Ψ(0,x)=ψ(x)。これは Ψ=e−iϵD^/ℏψ が満たす微分方程式と初期条件そのものなので、両者は一致する。ノルムは y=e−ϵx と置き換えて ∫e−ϵ∣ψ(e−ϵx)∣2dx=∫∣ψ(y)∣2dy で保たれる。同じ置き換えで ∫xe−ϵ∣ψ(e−ϵx)∣2dx=eϵ∫y∣ψ(y)∣2dy=eϵ⟨q^⟩。これは 4.1.2節の U^†q^U^=q^+ϵ[q^,D^]/(iℏ)+⋯=eϵq^ と同じ内容で、古典の正準変換 (q,p)↦(eϵq,e−ϵp)(第1部第12章)が量子力学ではユニタリ変換になっている。因子 e−ϵ/2 は、波動関数の引数を伸ばしたときに確率の合計を 1 に保つためのもので、(2) の 21ψ の項に対応する。
(5) (3) と Leibniz 則から [D^,p^2]=[D^,p^]p^+p^[D^,p^]=2iℏp^2。また位置表示で[D^,V]ψ=−iℏ(x(Vψ)′−xVψ′)=−iℏxV′ψ。よって
iℏ1[D^,H^]=mp^2−q^V′(q^),
古典の {qp,H}=p⋅mp−qV′(q) と同じ形で、補正は無い(D が2次式なので命題 4.1.4 が使える)。H^ の固有状態 ∣E⟩ では ⟨E∣[D^,H^]∣E⟩=(E−E)⟨E∣D^∣E⟩=0 なので、⟨p^2/m⟩=⟨q^V′(q^)⟩、すなわち 2⟨T^⟩=⟨q^V′(q^)⟩(量子力学のビリアル定理)。古典力学では、有界な運動について dtd(qp)=2T−qV′ を長時間平均して同じ式を得る。量子力学では時間平均の代わりに、固有状態での期待値が時間に依らないことを使っている。
(6) V=λq4 では qV′=4λq4=4V なので 2⟨T^⟩=4⟨V⟩、⟨T^⟩=2⟨V⟩。E=⟨T^⟩+⟨V⟩=3⟨V⟩ より
⟨V⟩=E0/3=0.223,⟨T^⟩=2E0/3=0.445.
調和振動子 V=21mω2q2 なら qV′=2V で ⟨T^⟩=⟨V⟩=E/2 となり、基底状態では ℏω/4 ずつに分かれる。ビリアル定理は V の形によらず成り立つが、それは D^ が2次式で、括弧から交換子への規則が厳密に成り立つ生成子だからである。