解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第2章 §4.2.7 ★★★ Schrödinger 方程式は「時間をずらす生成子は H^」の微分形。定常状態・Ehrenfest・波束の広がりは、時間の分離・Hamilton 方程式・相空間の集団の量子版
この章で選んだのは、第1部と同じ Hamiltonian H(q,p)=p2/(2m)+V(q) である。量子力学はこれを [q^,p^]=iℏ を満たす演算子の関数 H^ にし、時間発展の演算子 U^(t)=e−iH^t/ℏ の生成子として使う。Schrödinger 方程式 iℏdtd∣ψ⟩=H^∣ψ⟩ はその微分形である。時間発展を線形・ユニタリ・合成できる変換と要請すると、生成子がエルミートな演算子1つで決まり、古典の δA=dt{A,H} を [⋅,⋅]/(iℏ) に移す規則によって、その演算子は H^ に決まる。生成子はある時刻の状態に掛けるものなので、速度を含む L でなく、Legendre 変換で作った H が入る。
出てきたものは古典の道具と1対1に並ぶ。H が時刻を含まないことから定常状態 φ(q)e−iEt/ℏ が出て、これは Hamilton–Jacobi 方程式の分離 S=W(q)−Et にあたる。期待値の振動数は準位の差 (En−En′)/ℏ で決まり、量子数が大きいと古典の dJdH に近づく。期待値の運動は dtdA={A,H} を写した式に従い、⟨q^⟩, ⟨p^⟩ は⟨V′(q^)⟩ と V′(⟨q^⟩) の差を除いて Hamilton 方程式に従う。H が2次式なら差はなく、波束の2次のモーメントまで古典の相空間の集団と一致し、波束の広がりは運動量のばらつきを持つ集団の広がりとして読むことができる。授業の置き換え規則 p→−iℏ∂q は並進の生成子の位置表示で、直交座標の正準運動量に対してだけ使うことができる。
次の章(第4部第3章)では、状態を動かさず観測量の方を U^†A^U^ で動かす Heisenberg 描像を取り、式 (4.2.15) を演算子そのものの運動方程式として書く。ψ≈AeiS/ℏ の近似を転回点まで含めて整えるのが WKB(第4部第7章)、L を主役に戻すのが経路積分(第4部第8章)である。
総合問題 調和振動子で H の使い方を5通りに確かめる ★★★
オリジナル質量 m、角振動数 ω の調和振動子 H=p2/(2m)+mω2q2/2 を考える。ξ=qmω/ℏ、N0=(mω/(πℏ))1/4 とおく。
- (1) (使う道具:4.2.3節)φ0=N0e−ξ2/2, φ1=2N0ξe−ξ2/2 が H^ の固有関数であることを確かめ、固有値 E0, E1 を求めよ。
- (2) (使う道具:第1部第14章の作用変数)古典の作用変数 J=2π1∮pdq を E で表し、Bohr–Sommerfeld の条件 J=(n+21)ℏ から得られる準位が (1) の E0, E1 と一致することを確かめよ。
- (3) (使う道具:4.2.3節の式 (4.2.13))時刻 0 の状態を ψ=(φ0+φ1)/2 とする。⟨φ0∣q^∣φ1⟩ を計算し、⟨q^⟩(t) を求めよ。振動の角振動数を古典の運動と比べよ。
- (4) (使う道具:4.2.4節と第1部第8章の Hamilton 方程式)(3) の状態で ⟨p^⟩(t) を Ehrenfest の定理から求め、dtd⟨p^⟩=−mω2⟨q^⟩ を確かめよ。⟨H^⟩ の値も求めよ。
- (5) (使う道具:4.2.5節と第1部第12章の時間発展の流れ)初めの位置の分散 σ02、運動量の分散 σp2=ℏ2/(4σ02) の Gauss 波束の幅が時間で変わらない条件を求めよ。87Rb 原子(m=1.443×10−25kg)を ω=2π×100kHz の光の罠に入れたときの σ0 を求めよ(ℏ=1.055×10−34Js)。
解答
(1) H^=2ℏω(−∂ξ2+ξ2) と書ける(∂q=mω/ℏ∂ξ を使った)。φ0∝e−ξ2/2 では ∂ξ2e−ξ2/2=(ξ2−1)e−ξ2/2 なので H^φ0=2ℏωφ0、E0=21ℏω。φ1∝ξe−ξ2/2 では ∂ξ2(ξe−ξ2/2)=(ξ3−3ξ)e−ξ2/2 なので H^φ1=23ℏωφ1、E1=23ℏω。N0 は ∫∣φ0∣2dq=1 から決めたもので、φ1 も規格化され、φ0 と直交する(被積分関数が奇関数)。
(2) エネルギー E の軌道は相空間の楕円 p2/(2m)+mω2q2/2=E で、半軸は 2mE と 2E/(mω2)。面積は π2mE2E/(mω2)=2πE/ω なので J=E/ω。J=(n+21)ℏ から En=(n+21)ℏω で、n=0,1 は (1) の 21ℏω, 23ℏω と一致する。調和振動子では、Bohr–Sommerfeld の条件から厳密な準位が得られる。
(3) ⟨φ0∣q^∣φ1⟩=2N02mωℏ∫ξ2e−ξ2dq=2mωℏ(dq=ℏ/(mω)dξ、∫ξ2e−ξ2dξ=π/2)。⟨φn∣q^∣φn⟩=0(奇関数)なので、式 (4.2.13) で残るのは n=n′ の2項で
⟨q^⟩(t)=21⋅2Re(⟨φ0∣q^∣φ1⟩e−i(E1−E0)t/ℏ)=2mωℏcosωt.
角振動数は (E1−E0)/ℏ=ω で、古典の振動子の角振動数(エネルギーに依らない)と一致する。H=ωJ が J の1次式なので、式 (4.2.14) の差分と微分が等しい。
(4) 式 (4.2.16) の1本目から ⟨p^⟩=mdtd⟨q^⟩=−2mℏωsinωt。これを微分すると dtd⟨p^⟩=−ω2mℏωcosωt=−mω22mωℏcosωt=−mω2⟨q^⟩ で、2本目 dtd⟨p^⟩=−⟨V′(q^)⟩=−mω2⟨q^⟩ と合う。V′ が1次式なので ⟨V′(q^)⟩=V′(⟨q^⟩) で、期待値は古典の Hamilton 方程式に厳密に従う。⟨p^⟩ を ⟨φ0∣p^∣φ1⟩=imℏω/2 から直接計算しても同じ値になる。⟨H^⟩=21(E0+E1)=ℏω で、時間に依らない。
(5) 4.2.5節の式から σ(t)2=σ02cos2ωt+(σp/(mω))2sin2ωt で、幅が一定である条件は σp=mωσ0。σp=ℏ/(2σ0) と合わせると σ02=2mωℏ で、このとき σ0σp=ℏ/2。これは (1) の φ0 の幅(∣φ0∣2∝e−mωq2/ℏ の分散 ℏ/(2mω))と同じである。相空間で見ると、分布の楕円が等エネルギー線と同じ形の円(q と p/(mω) の尺度で)になり、回転しても形が変わらない。数値は σ0=1.055×10−34/(2×1.443×10−25×2π×105)m=2.41×10−8m=24.1nm である。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com