tecktom.com

橋:開いた系は大きな閉じた系の一部分

2026年10月17日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第5章 開放系:CPTP 写像・Kraus 表示・Lindblad 方程式
目次
  1. 基準 ↔ 開放系の密度行列(両向き)
  2. Heisenberg 描像:写像は演算子に乗る
  3. 位相空間:Lindblad 方程式は Fokker–Planck 方程式になる
  4. 学部の授業での書き方
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第4部 第5章 §4.5.6 ★★★ 開放系の CPTP 写像は、基準の言葉では「環境と合わせたユニタリ発展+部分トレース」で、両向きが定理 4.5.2 で示された。Heisenberg 描像では写像が演算子に乗り、位相空間では Lindblad 方程式が Fokker–Planck 方程式になる

基準 ↔ 開放系の密度行列(両向き)

同値性の地図(第1部第1章)の「状態ベクトル ↔ 密度行列」の橋は、第4部第1章(基準 → 密度行列)と第4部第2章(浄化による逆向き)で状態について架けられた。この章はその橋を時間発展へ延ばした。両向きを定理 4.5.2 の言葉で並べると次のとおりである。

基準 → 開放系:系と環境の全体に基準の公理(状態ベクトル・ユニタリ発展)を当て、系だけを (D5) で見ると、系の状態の写像は Kraus 表示を持つ CPTP 写像になる((d) ⇒ (c) ⇒ (a))。開放系 → 基準:逆にどの CPTP 写像も、適当な環境とユニタリを用意すれば全体の純粋状態のユニタリ発展から得られる((a) ⇒ (b) ⇒ (c) ⇒ (d))。初めの ρ^\hat\rho が混合でも、第4部第2章の浄化で参照系を足せば全体は純粋になるので、開放系の予言はすべて「状態ベクトル1本+ユニタリ発展+最後に一部を見る」で再現できる。POVM についても命題 4.5.3 が同じ両向きを与える。

基準(状態ベクトル)密度行列の構成(この章)
状態全体の ∣Ψ⟩| \Psi \rangle(系・環境・参照系)系の ρ^\hat\rho
時間発展全体のユニタリ U^\hat UCPTP 写像 N\mathcal N、∑kK^kρ^K^k†\sum_k\hat K_k\hat\rho\hat K_k^\dagger
連続の時間全体の iℏ∂t∣Ψ⟩=H^tot∣Ψ⟩\mathrm{i}\hbar\partial_t| \Psi \rangle =\hat H_{\mathrm{tot}}| \Psi \rangleLindblad 方程式 (4.5.7)(Markov のとき)
測定全体の射影測定(環境まで)POVM E^k=K^k†K^k\hat E_k=\hat K_k^\dagger\hat K_k
不定性環境の基底の選び方Kraus 演算子のユニタリ混合

この対応には非対称な所が1つある。基準の側では環境の状態まで計算に入れるので計算の次元が環境の分だけ大きく、Lindblad 方程式の側では系の次元の2乗の変数だけで済む。その代わり、環境の相関時間が長い場合(Markov でない場合)は Lindblad 方程式を立てられず、記憶の核つきの方程式か、環境の一部を系に取り込むかが要る。その書き方の1つが第4部第6章(第4部第6章)の Feynman–Vernon の影響汎関数で、環境の自由度を経路積分の中で積分して消す。

Heisenberg 描像:写像は演算子に乗る

第4部第1章では期待値の巡回性で Schrödinger 描像と Heisenberg 描像を結んだ。開放系でも同じことができる。Tr⁡[A^ N(ρ^)]=Tr⁡[N†(A^)ρ^]\operatorname{Tr}[\hat A\,\mathcal N(\hat\rho)]=\operatorname{Tr}[\mathcal N^\dagger(\hat A)\hat\rho] で定まる随伴写像は

N†(A^)=∑kK^k†A^K^k,N†(1)=1\mathcal N^\dagger(\hat A)=\sum_k\hat K_k^\dagger\hat A\hat K_k,\qquad \mathcal N^\dagger(\mathbf 1)=\mathbf 1

で、トレースの保存は Heisenberg 描像では恒等演算子を保つこと(単位的であること)になる。Lindblad 方程式の随伴は

dA^Hdt=iℏ[H^, A^H]+∑k(L^k†A^HL^k−12{L^k†L^k,A^H}+)(4.5.13)\frac{\mathrm{d} \hat A_{\mathrm H}}{\mathrm{d} t}=\frac{\mathrm{i}}\hbar\left[\hat H,\,\hat A_{\mathrm H}\right]+\sum_k\Big(\hat L_k^\dagger\hat A_{\mathrm H}\hat L_k-\frac12\big\{\hat L_k^\dagger\hat L_k,\hat A_{\mathrm H}\big\}_{+}\Big)\tag{4.5.13}

で、第1項は第2部第3章(第2部第3章)の Heisenberg 方程式である。(4.5.9) はこの式を A^=n^\hat A=\hat n に当てたものだった。閉じた系の Heisenberg 描像と違い、N†(A^B^)≠N†(A^)N†(B^)\mathcal N^\dagger(\hat A\hat B)\ne\mathcal N^\dagger(\hat A)\mathcal N^\dagger(\hat B) で、演算子の積が保たれない。たとえば振動子の a^\hat a に当てると da^Hdt=−(iω+Γ/2)a^H\frac{\mathrm{d} \hat a_{\mathrm H}}{\mathrm{d} t}=-(\mathrm{i}\omega+\Gamma/2)\hat a_{\mathrm H} だが、この a^H(t)=a^ e−(iω+Γ/2)t\hat a_{\mathrm H}(t)=\hat a\,\mathrm{e}^{-(\mathrm{i}\omega+\Gamma/2)t} は [a^H, a^H†]=e−Γt\left[\hat a_{\mathrm H},\,\hat a_{\mathrm H}^\dagger\right]=\mathrm{e}^{-\Gamma t} で交換関係を満たさない。演算子のまま交換関係を保つには、環境から流れ込む雑音の演算子を足した量子 Langevin 方程式が要り、それは系の演算子だけで閉じた (4.5.13) よりも基準(環境まで含めた Heisenberg 描像)に近い書き方である。

位相空間:Lindblad 方程式は Fokker–Planck 方程式になる

振動子の熱浴の Lindblad 方程式 (4.5.8) を、第5部(第5部第2章)の Wigner 関数 W(α)W(\alpha) の式に直すと、回転座標で

∂W∂t=Γ2(∂∂αα+∂∂α∗α∗)W+Γ(nˉ+12)∂2W∂α ∂α∗(4.5.14)\frac{\partial W}{\partial t}=\frac\Gamma2\Big(\frac{\partial }{\partial \alpha}\alpha+\frac{\partial }{\partial \alpha^*}\alpha^*\Big)W+\Gamma\Big(\bar n+\frac12\Big)\frac{\partial^2W}{\partial\alpha\,\partial\alpha^*}\tag{4.5.14}

になる(a^ρ^\hat a\hat\rho などを Wigner 関数の上の微分演算子に直す対応は第5部第6章で扱う)。第1項は位相空間の原点へ向かう摩擦、第2項は拡散で、拡散の強さが nˉ+12\bar n+\tfrac12 と、温度 00 でも零点の 12\tfrac12 が残る。α=x+iy\alpha=x+\mathrm{i} y と書くと ∂α∂α∗=14∇2\partial_\alpha\partial_{\alpha^*}=\tfrac14\nabla^2 で、定常解は

Wss(α)=2π(2nˉ+1)exp⁡(−2∣α∣22nˉ+1)W_{\mathrm{ss}}(\alpha)=\frac{2}{\pi(2\bar n+1)}\exp\Big(-\frac{2\lvert \alpha\rvert ^2}{2\bar n+1}\Big)

になる(代入すると摩擦の流れ −Γ2xW-\tfrac\Gamma2\bm{x} W と拡散の流れ −Γ4(nˉ+12)∇W-\tfrac\Gamma4(\bar n+\tfrac12)\nabla W が打ち消し合う)。これはこの巻の共通例題①の熱状態の Wigner 関数の正答と同じ形で、共通例題①の熱平衡が位相空間の方程式の定常解としても出た。古典の Brown 運動をする振動子の Fokker–Planck 方程式と同じ形をしていて、違いは拡散の係数に零点の 12\tfrac12 が入ることだけである。例題 4.5.5 の猫状態の干渉は、Wigner 関数では2つの山の間の縞として現れ、拡散の項が縞の細かい構造を山の構造より速くならすことが、干渉が速く消えることの位相空間での姿である(第5部第4章)。

学部の授業での書き方

学部の授業では、緩和は2通りの書き方で現れることが多い。1つは NMR の Bloch 方程式(Bloch (1946), Phys. Rev. 70, 460)で、T1T_1 と T2T_2 を現象論の定数として磁化の運動方程式に書き足す。もう1つは Fermi の黄金律で遷移の速さ Γ\Gamma を出し、占有の確率だけの速さの式(レート方程式)を立てる書き方である。

学部の書き方この章
現象論の Bloch 方程式(T1T_1、T2T_2 は独立な定数)Lindblad 方程式から (4.5.11)、T2≤2T1T_2\le2T_1 が出る
黄金律の Γ\Gamma とレート方程式(入る流れ − 出る流れ)Lindblad 方程式の対角成分(第4.5.4節の pnp_n の式)
コヒーレンスは書かない非対角成分が T2T_2 で減る(レート方程式は T2→0T_2\to0 の極限)
測定は射影の公理POVM と Kraus 演算子(命題 4.5.3)

現象論の Bloch 方程式は T1T_1 と T2T_2 を独立に選べるが、密度行列の構成では完全正値性がその組に制限をかける。レート方程式はコヒーレンスを捨てた書き方で、Lindblad 方程式の対角成分に当たり、T2T_2 が他のどの時間より短いときにコヒーレンスを断熱的に消去して得られる。

例題 4.5.8 コヒーレント状態の減衰を3つの言葉で ★★

オリジナル温度 00 の振幅減衰(L^=Γa^\hat L=\sqrt\Gamma\hat a、H^=ℏωa^†a^\hat H=\hbar\omega\hat a^\dagger\hat a)を受ける振動子が初めに ∣α⟩| \alpha \rangle にある。⟨a^⟩(t)\langle \hat a \rangle (t) と ⟨n^⟩(t)\langle \hat n \rangle (t) を、(i) Heisenberg 描像 (4.5.13)、(ii) Stinespring 表示(半透明の鏡)、(iii) Wigner 関数の Fokker–Planck 方程式 (4.5.14) の3通りで求めよ。

解答

(i) A^=a^\hat A=\hat a:[H^, a^]=−ℏωa^\left[\hat H,\,\hat a\right]=-\hbar\omega\hat a から第1項は −iωa^-\mathrm{i}\omega\hat a。散逸の項は Γ(a^†a^a^−12a^†a^a^−12a^a^†a^)=Γ⋅12[a^†, a^]a^=−Γ2a^\Gamma(\hat a^\dagger\hat a\hat a-\tfrac12\hat a^\dagger\hat a\hat a-\tfrac12\hat a\hat a^\dagger\hat a)=\Gamma\cdot\tfrac12\left[\hat a^\dagger,\,\hat a\right]\hat a=-\tfrac\Gamma2\hat a。よって ⟨a^⟩(t)=α e−(iω+Γ/2)t\langle \hat a \rangle (t)=\alpha\,\mathrm{e}^{-(\mathrm{i}\omega+\Gamma/2)t}。A^=n^\hat A=\hat n は (4.5.9) で nˉ=0\bar n=0 として ⟨n^⟩(t)=∣α∣2e−Γt\langle \hat n \rangle (t)=\lvert \alpha\rvert ^2\mathrm{e}^{-\Gamma t}。

(ii) 透過率 η=e−Γt\eta=\mathrm{e}^{-\Gamma t} の鏡で系は ∣η α e−iωt⟩| \sqrt\eta\,\alpha\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t} \rangle の純粋状態。⟨a^⟩=η α e−iωt\langle \hat a \rangle =\sqrt\eta\,\alpha\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}、⟨n^⟩=η∣α∣2\langle \hat n \rangle =\eta\lvert \alpha\rvert ^2 で (i) と一致する。

(iii) 回転座標で W(α′,0)=2πe−2∣α′−α∣2W(\alpha',0)=\tfrac2\pi\mathrm{e}^{-2\lvert \alpha'-\alpha\rvert ^2} から出発する。Gauss 関数の中心 μ(t)\mu(t) と分散の式を (4.5.14) から作ると、摩擦の項で μ˙=−Γ2μ\dot\mu=-\tfrac\Gamma2\mu、拡散の項は nˉ=0\bar n=0 で定常の幅 12\tfrac12(WssW_{\mathrm{ss}} の ∣α∣2\lvert \alpha\rvert ^2 の係数 22)を保つので、幅は変わらず中心だけが μ(t)=αe−Γt/2\mu(t)=\alpha\mathrm{e}^{-\Gamma t/2} へ動く。⟨a^⟩=μ\langle \hat a \rangle =\mu、⟨n^⟩=∫∣α′∣2W d2α′−12=∣μ∣2\langle \hat n \rangle =\int\lvert \alpha'\rvert ^2W\,\mathrm{d}^2\alpha'-\tfrac12=\lvert \mu\rvert ^2(WW は対称順序の期待値を与えるので ⟨a^†a^⟩=⟨∣α′∣2⟩W−12\langle \hat a^\dagger\hat a \rangle =\langle \lvert \alpha'\rvert ^2 \rangle _W-\tfrac12)で、実験室の座標へ戻すと (i)(ii) と一致する。3つの方法の違いは何を変数にとるかで、(i) は演算子、(ii) は環境まで含めた状態ベクトル、(iii) は位相空間の分布である。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ