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この章のまとめ

2026年10月17日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第8部 第4章 熱平衡と相転移:KMS 条件

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第8部 第4章 §8.4.7 ★★ 熱平衡は状態と時間発展の関係(KMS 条件)で定義でき、有限系では Gibbs 状態と同値、無限系では唯一の定義になる。KMS 状態が複数ある温度が相転移

この章では、熱平衡を密度行列 e−βH^/Z\mathrm{e}^{-\beta\hat H}/Z でなく、状態 ω\omega と時間発展 αt\alpha_t の関係で書き直した。有限次元の Gibbs 状態はトレースの巡回性から ω(Aαiβℏ(B))=ω(BA)\omega(A\alpha_{\mathrm{i}\beta\hbar}(B))=\omega(BA) を満たし、逆にこの関係を満たす状態は Gibbs 状態しかない。証明の要は Mn(C)M_n(\mathbb{C}) の中心がスカラーだけであることだった。一般の C*代数では、時間相関 ω(Aαt(B))\omega(A\alpha_t(B)) と ω(αt(B)A)\omega(\alpha_t(B)A) を幅 βℏ\beta\hbar の帯の上の正則な関数でつなぐことを KMS 条件として定義に採り、そこから時間不変性(Liouville の定理)と振動数の詳細つり合い G~<(ν)=eβℏνG~>(ν)\tilde G^<(\nu)=\mathrm{e}^{\beta\hbar\nu}\tilde G^>(\nu)、揺動散逸の比 tanh⁡(βℏν/2)\tanh(\beta\hbar\nu/2) が出た。共通例題①では、時間で変わらない Gauss 型の状態の族 c≥1c\ge1 の中から KMS 条件が c=coth⁡(βℏω/2)c=\coth(\beta\hbar\omega/2) を1つ選び、占有数 1/(eβℏω−1)1/(\mathrm{e}^{\beta\hbar\omega}-1)・エネルギー・分配関数 Z=1/(2sinh⁡(βℏω/2))Z=1/(2\sinh(\beta\hbar\omega/2)) が出た。

無限系では Tr⁡e−βH^\operatorname{Tr}\mathrm{e}^{-\beta\hat H} が発散するが、有限系の Gibbs 状態の極限が KMS 状態になり、KMS 条件が熱平衡の唯一の定義として残る。温度の違う熱平衡は巨視的な平均の極限が違うので別の表現に住む。同じ温度の KMS 状態が複数あるのが相転移で、端点 KMS 状態が純粋な相、その表現の中心はスカラーだけである。Curie–Weiss 模型では、低温の Gibbs 状態の極限が上向きと下向きの相の半分ずつの混合になり、スピンを裏返す対称性は純粋な相の表現の中でユニタリで実装できない。自発的対称性の破れは、どの相の表現を選ぶかという選択として書ける。橋の節では、KMS の帯の幅 βℏ\beta\hbar が虚時間の経路積分の周期にあたること、Bose 分布と Fermi 分布が交換子と反交換子の違いだけから KMS 条件の2行で出ることを見た。

残した問題は、物性で実際に現れる「別の表現」の例である。強磁性の基底状態と BCS 状態が Fock 真空と別の表現にいること、この構成が具体的な計算には向かないことを、次の章(第8部第5章)で扱う。総合問題では、量子ビットを並べた鎖について、この章の道具を順に当てる。

総合問題 量子ビットの鎖の熱平衡と相 ★★★

オリジナル共通例題②の量子ビット(Ω:Δ=3:4\Omega:\Delta=3:4、h^=−(ℏΩ′/2) n⋅σ\hat h=-(\hbar\Omega'/2)\,\bm{n}\cdot\bm{\sigma}、n=(0.6,0,0.8)\bm{n}=(0.6,0,0.8))を1つ、あるいは無限個並べた系を考える。

  1. (1) 量子ビット1つの βℏΩ′/2=ln⁡3\beta\hbar\Omega'/2=\ln3 の熱平衡を、KMS の関係だけから求め、密度行列 ρ^β\hat\rho_\beta と Bloch ベクトルを書け。(使う道具:定理 8.4.1、第8部第1章の総合問題の値)
  2. (2) (1) の状態で A=B=σzA=B=\sigma_z の時間相関について、振動数 ν=±Ω′\nu=\pm\Omega' の成分の比と、ν=−Ω′\nu=-\Omega' での揺動散逸の比 C~/S~\tilde C/\tilde S を求めよ。第8部第2章の振動子の FβF_\beta で ±ω\pm\omega の重みの比が e−βℏω\mathrm{e}^{-\beta\hbar\omega} だったことと対応させよ。(使う道具:第8.4.2節、第8部第2章)
  3. (3) 同じ量子ビットを相互作用なしに無限個並べ、βℏΩ′/2=ln⁡3\beta\hbar\Omega'/2=\ln3 と ln⁡2\ln2 の熱平衡の積状態を比べる。2つの GNS 表現がユニタリ同値でないことを、n⋅σ\bm{n}\cdot\bm{\sigma} の平均 MNM_N を使って示せ。(使う道具:第8.4.4節、第8部第3章の補題と定理)
  4. (4) 次に σz\sigma_z どうしの平均場の相互作用 (8.4.15) に替え、βJ=54ln⁡3\beta J=\tfrac54\ln3 とする。純粋な相の磁化 m∗m^* を求め、低温の Gibbs 状態の極限が端点 KMS 状態でないことをMNM_N の分散で示せ。スピンを裏返す対称性が純粋な相 ω+\omega_+ の表現でユニタリで書けない理由を、(3) と同じ道具で述べよ。(使う道具:第8.4.5節、命題 8.4.5)
  5. (5) (1) の量子ビットの虚時間の相関 Kσ(τ)=ω(σz αiτ(σz))K_\sigma(\tau)=\omega(\sigma_z\,\alpha_{\mathrm{i}\tau}(\sigma_z)) が τ=βℏ/2\tau=\beta\hbar/2 について対称であることを示し、それが第3部の虚時間の経路積分の周期境界条件と同じ内容であることを説明せよ。(使う道具:第8.4.6節、第3部第6章)
解答

(1) 例題 8.4.1 のとおり、A=∣g′⟩⟨e′∣A=| g' \rangle \langle e' |、B=∣e′⟩⟨g′∣B=| e' \rangle \langle g' | を入れると pe′/pg′=e−βℏΩ′=1/9p_{e'}/p_{g'}=\mathrm{e}^{-\beta\hbar\Omega'}=1/9、非対角の組を入れるとコヒーレンスが 00 になる。したがって ρ^β=0.9∣g′⟩⟨g′∣+0.1∣e′⟩⟨e′∣=12(1+0.8 n⋅σ)\hat\rho_\beta=0.9| g' \rangle \langle g' |+0.1| e' \rangle \langle e' |=\tfrac12(1+0.8\,\bm{n}\cdot\bm{\sigma})、Bloch ベクトルは r=(0.48,0,0.64)\bm{r}=(0.48,0,0.64)。定理 8.4.1 により、KMS の関係を満たす状態はこれ1つしかない。

(2) 例題 8.4.2 から G>(t)=0.64+0.36(0.9eiΩ′t+0.1e−iΩ′t)G^>(t)=0.64+0.36(0.9\mathrm{e}^{\mathrm{i}\Omega't}+0.1\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\Omega't})、G<G^< は重みを入れ替えたもの。ν=−Ω′\nu=-\Omega' で G~</G~>=1/9\tilde G^</\tilde G^>=1/9、ν=+Ω′\nu=+\Omega' で 99。揺動散逸の比は C~/S~=0.288/0.18=1.6=2tanh⁡(ln⁡3)\tilde C/\tilde S=0.288/0.18=1.6=2\tanh(\ln3)。振動子の FβF_\beta は「エネルギー ℏω\hbar\omega を渡す向きと受け取る向き」の重みが nˉ+1\bar n+1 と nˉ\bar n で比 e−βℏω\mathrm{e}^{-\beta\hbar\omega} だったが、ここでは pg′p_{g'} と pe′p_{e'} が同じ役をして比 e−βℏΩ′\mathrm{e}^{-\beta\hbar\Omega'} になる。どちらも (8.4.7) の例である。

(3) 相互作用が無いので、どちらの温度でも KMS 状態は1点の Gibbs 状態の積状態ただ1つである(第8.4.4節)。1点の期待値は tanh⁡(ln⁡3)=0.8\tanh(\ln3)=0.8 と tanh⁡(ln⁡2)=0.6\tanh(\ln2)=0.6。前の章の補題により、それぞれの GNS 表現で MN→0.8⋅1M_N\to0.8\cdot1、MN→0.6⋅1M_N\to0.6\cdot1 に強収束する。値が違うので前の章の定理によりユニタリ同値でない。N=100N=100 でのゆらぎは 0.36/100=0.06\sqrt{0.36/100}=0.06 と 0.64/100=0.08\sqrt{0.64/100}=0.08 で、差 0.20.2 より小さい。

(4) tanh⁡(54ln⁡3⋅0.8)=tanh⁡(ln⁡3)=0.8\tanh(\tfrac54\ln3\cdot0.8)=\tanh(\ln3)=0.8 なので m∗=0.8m^*=0.8(例題 8.4.5)。Gibbs 状態の極限は 12ω++12ω−\tfrac12\omega_++\tfrac12\omega_- で、MNM_N の分散は 0.640.64 に収束して消えない。端点 KMS 状態の表現では中心がスカラーで巨視的な平均は数に収束するはずなので、分散が残るこの状態は端点でない(混合相)。裏返す操作 γ\gamma がユニタリ UU で π+\pi_+ の中に実装できたとすると、ω−=ω+∘γ\omega_-=\omega_+\circ\gamma が π+\pi_+ のベクトル状態になる。しかし ω±\omega_\pm は1点の σz\sigma_z の期待値が ±0.8\pm0.8 と違う積状態なので、(3) と同じく MNM_N(今度は A=σzA=\sigma_z)の極限が +0.8+0.8 と −0.8-0.8 に分かれ、ω−\omega_- は π+\pi_+ の正規状態になりえない(命題 8.4.5)。

(5) (2) の G>G^> に t=iτt=\mathrm{i}\tau を入れて Kσ(τ)=0.64+0.36(0.9e−Ω′τ+0.1eΩ′τ)K_\sigma(\tau)=0.64+0.36(0.9\mathrm{e}^{-\Omega'\tau}+0.1\mathrm{e}^{\Omega'\tau})。τ→βℏ−τ\tau\to\beta\hbar-\tau とすると eΩ′βℏ=9\mathrm{e}^{\Omega'\beta\hbar}=9 から0.9e−Ω′(βℏ−τ)=0.1eΩ′τ0.9\mathrm{e}^{-\Omega'(\beta\hbar-\tau)}=0.1\mathrm{e}^{\Omega'\tau}、0.1eΩ′(βℏ−τ)=0.9e−Ω′τ0.1\mathrm{e}^{\Omega'(\beta\hbar-\tau)}=0.9\mathrm{e}^{-\Omega'\tau} で2つの項が入れ替わるだけなので、Kσ(βℏ−τ)=Kσ(τ)K_\sigma(\beta\hbar-\tau)=K_\sigma(\tau)。とくに Kσ(0)=Kσ(βℏ)=1K_\sigma(0)=K_\sigma(\beta\hbar)=1、Kσ(βℏ/2)=0.856K_\sigma(\beta\hbar/2)=0.856。Kσ(βℏ)=ω(σzσz)=Kσ(0)K_\sigma(\beta\hbar)=\omega(\sigma_z\sigma_z)=K_\sigma(0) は KMS 条件そのもので、虚時間の端と端が同じ値をとり、周期 βℏ\beta\hbar の関数として延ばせる。経路積分では Tr⁡e−βH^\operatorname{Tr}\mathrm{e}^{-\beta\hat H} の始めと終わりを同じ配位でつなぐ周期境界条件が同じ周期性を与えるので、2つの構成は同じ熱平衡を、一方はトレースの形で、他方は状態の性質として書いている。

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