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この章のまとめ

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第3章 熱電効果と Wiedemann–Franz

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部 第3章 §4.3.7 ★★★ 輸送関数 σ(ε)\sigma(\varepsilon ) の3つの積分で4つの係数が決まる。Π=TS\Pi=TS は時間反転の対称性、L0L_0 は弾性散乱、Mott 公式は σ(ε)\sigma(\varepsilon ) の傾き、半導体の大きな SS は打ち消しの無さから出る

この章では、前の章と同じ H^\hat H に局所平衡の温度勾配を入れ、線形化した Boltzmann 方程式を解いた。結果は1つの関数、輸送関数 σ(ε)\sigma(\varepsilon ) にまとまる。σ(ε)\sigma(\varepsilon ) を Fermi 準位のまわりで (ε−μ)n(\varepsilon -\mu)^n の重みで平均した3つの積分 K0,K1,K2\mathcal K_0,\mathcal K_1,\mathcal K_2 から、電気伝導度 σ=K0\sigma=\mathcal K_0、Seebeck 係数 S=−K1/(eTK0)S=-\mathcal K_1/(eT\mathcal K_0)、熱伝導率 κ=(K2−K12/K0)/(e2T)\kappa=(\mathcal K_2-\mathcal K_1^2/\mathcal K_0)/(e^2T)、Peltier 係数 Π=TS\Pi=TS の4つが決まる。

4つの係数の関係は、それぞれ別の理由から出る。Π=TS\Pi=TS は、電流と熱流の行列の非対角の2成分が等しいこと、つまり時間反転の対称性(Onsager の相反定理)から出る。Wiedemann–Franz 則 κ/(σT)=L0\kappa/(\sigma T)=L_0 は、電荷を運ぶ電子と熱を運ぶ電子が同じで、弾性散乱がその両方を同じ時間で緩和させることから出る。Mott 公式は、熱電能が σ(ε)\sigma(\varepsilon ) の上下の非対称さで決まることを表し、金属では打ち消しのために kBT/εFk_{\mathrm B} T/\varepsilon _{\mathrm F} だけ小さく、半導体では打ち消しが無いので大きい。熱電変換の効率は ZT=S2σT/κZT=S^2\sigma T/\kappa だけで決まり、Wiedemann–Franz 則のために電子の熱伝導を σ\sigma と切り離して下げることはできない。

削ったものは、非弾性散乱(Wiedemann–Franz 則の破れ)、フォノンの熱伝導と引きずり、τ(ε)\tau(\varepsilon ) の微視的な中身(貴金属の熱電能の符号)である。磁場を加えると、同じ行列に Hall 効果と Nernst 効果の成分が加わり、Onsager の関係は Lab(B)=Lba(−B)L_{ab}(\bm{B})=L_{ba}(-\bm{B}) の形になる(第4部第4章)。

図

図 4.3.3 1次元の tight-binding の鎖(th=0.5 eVt_{\mathrm h}=0.5\,\mathrm{eV}、緩和時間一定、T=300 KT=300\,\mathrm K)の Seebeck 係数を電子の詰まり方 ν\nu の関数として描いたもの(総合問題)。半分詰まり ν=1\nu=1 で符号が変わる。ν=0.1\nu=0.1 と 1.91.9 では Mott 公式は ∓296 μV K−1\mp296\,\mu\mathrm{V\,K^{-1}} で、枠の外にある(数値積分の ∓139 μV K−1\mp139\,\mu\mathrm{V\,K^{-1}} の2倍以上)。

総合問題 1次元の鎖の熱電能:詰まり方で符号が変わる ★★★

オリジナル格子定数 aa の1次元の鎖に、隣どうしのホッピング th>0t_{\mathrm h}>0 だけを持つ tight-binding のバンド ε(k)=−2thcos⁡ka\varepsilon (k)=-2t_{\mathrm h}\cos ka がある(この問題では時間 tt と区別するためにホッピングを tht_{\mathrm h} と書く)。緩和時間 τ\tau はエネルギーによらないとし、1サイトあたりの電子数(両スピン)を ν\nu(0<ν<20<\nu<2)とする。

  1. (1) 速さ ∣v∣\lvert v\rvert を ε\varepsilon で表し、輸送関数が σ(ε)∝4th2−ε2\sigma(\varepsilon )\propto\sqrt{4t_{\mathrm h}^2-\varepsilon ^2} になることを示せ。(使う道具:4.3.1節/第2部第3章のバンド)
  2. (2) Mott 公式で SS を ν\nu の関数として求めよ。絶対零度の Fermi エネルギー εF=−2thcos⁡(πν/2)\varepsilon _{\mathrm F}=-2t_{\mathrm h}\cos(\pi\nu/2) を μ\mu に使ってよい。ν=1\nu=1 と、ν\nu と 2−ν2-\nu の関係を述べよ。(使う道具:4.3.3節/第2部第7章の詰まり方)
  3. (3) th=0.5 eVt_{\mathrm h}=0.5\,\mathrm{eV}、T=300 KT=300\,\mathrm K で、ν=0.5\nu=0.5 の鎖 A と ν=1.5\nu=1.5 の鎖 B の SS を求めよ。A と B で熱電対を作り、接合の温度差を 10 K10\,\mathrm K にしたときの起電力を求めよ。(使う道具:4.3.2節)
  4. (4) 同じ条件で鎖 A の Peltier 係数、A と B の接合で 1 A1\,\mathrm A あたりに出入りする熱、熱伝導がすべて電子によるとしたときの ZTZT を求めよ。(使う道具:4.3.2節・4.3.4節/解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部第9章の Onsager の相反定理)
  5. (5) ν=0.05\nu=0.05 では Mott 公式はどうなるか。μ\mu とバンドの底の距離を kBTk_{\mathrm B} T と比べて論じよ。(使う道具:4.3.5節の札・4.3.4節の非縮退の式)
解答

(1) v=1ℏdεdk=2thaℏsin⁡kav=\frac1\hbar\frac{\mathrm{d} \varepsilon }{\mathrm{d} k}=\frac{2t_{\mathrm h}a}{\hbar}\sin ka で、cos⁡ka=−ε/(2th)\cos ka=-\varepsilon /(2t_{\mathrm h}) から ∣v∣=aℏ4th2−ε2\lvert v\rvert =\frac{a}{\hbar}\sqrt{4t_{\mathrm h}^2-\varepsilon ^2}。1次元で長さあたり・両スピンの状態密度は D(ε)=2πℏ∣v∣D(\varepsilon )=\frac{2}{\pi\hbar\lvert v\rvert }(±k\pm k の2つの枝を含む)なので、(4.3.7) の1次元版はσ(ε)=e2τv2D(ε)=2e2τπℏ∣v∣=2e2τaπℏ24th2−ε2\sigma(\varepsilon )=e^2\tau v^2D(\varepsilon )=\frac{2e^2\tau}{\pi\hbar}\lvert v\rvert =\frac{2e^2\tau a}{\pi\hbar^2}\sqrt{4t_{\mathrm h}^2-\varepsilon ^2} である。バンドの中央で最大、両端で 00 になる半円の形である。ε=εF\varepsilon =\varepsilon _{\mathrm F} と置けば前の章の σ=2e2τvF/(πℏ)\sigma=2e^2\tau v_{\mathrm F}/(\pi\hbar) に一致する。

(2) dln⁡σ/dε=−ε/(4th2−ε2)\mathrm{d}\ln\sigma/\mathrm{d}\varepsilon =-\varepsilon /(4t_{\mathrm h}^2-\varepsilon ^2)。μ=−2thcos⁡(πν/2)\mu=-2t_{\mathrm h}\cos(\pi\nu/2) を入れ、4th2−μ2=4th2sin⁡2(πν/2)4t_{\mathrm h}^2-\mu^2=4t_{\mathrm h}^2\sin^2(\pi\nu/2) を使うと、(4.3.16) から

S=−π23kBe kBT cos⁡(πν/2)2thsin⁡2(πν/2).S=-\frac{\pi^2}{3}\frac{ k_{\mathrm B}}{e}\, k_{\mathrm B} T\,\frac{\cos(\pi\nu/2)}{2t_{\mathrm h}\sin^2(\pi\nu/2)} .

ν<1\nu<1 では μ<0\mu<0 で σ(ε)\sigma(\varepsilon ) は上り坂なので S<0S<0(電子のように振る舞う)、ν>1\nu>1 では下り坂で S>0S>0(正孔のように振る舞う)。ν=1\nu=1 では σ(ε)\sigma(\varepsilon ) の頂上にいて S=0S=0 である。ν→2−ν\nu\to2-\nu で cos⁡(πν/2)\cos(\pi\nu/2) の符号が変わり sin⁡2\sin^2 は変わらないので、S(2−ν)=−S(ν)S(2-\nu)=-S(\nu)。これはバンドの粒子正孔対称 σ(−ε)=σ(ε)\sigma(-\varepsilon )=\sigma(\varepsilon ) の表れである。

(3) kBT=25.85 meVk_{\mathrm B} T=25.85\,\mathrm{meV}。ν=0.5\nu=0.5 で cos⁡(π/4)/sin⁡2(π/4)=2\cos(\pi/4)/\sin^2(\pi/4)=\sqrt2 なのでSA=−3.290×86.17 μV K−1×0.02585×1.4141.0=−10.4 μV K−1S_A=-3.290\times86.17\,\mu\mathrm{V\,K^{-1}}\times\frac{0.02585\times1.414}{1.0}=-10.4\,\mu\mathrm{V\,K^{-1}}、SB=+10.4 μV K−1S_B=+10.4\,\mu\mathrm{V\,K^{-1}}。熱電対の起電力は (SB−SA)ΔT=20.7 μV K−1×10 K=0.207 mV(S_B-S_A)\Delta T=20.7\,\mu\mathrm{V\,K^{-1}}\times10\,\mathrm K=0.207\,\mathrm{mV}。符号の逆な2つを組むと、同じ物質の鎖でも起電力が2倍になる。

(4) ΠA=TSA=300×(−10.4 μV/K)=−3.11 mV\Pi_A=TS_A=300\times(-10.4\,\mu\mathrm V/\mathrm K)=-3.11\,\mathrm{mV}、ΠB=+3.11 mV\Pi_B=+3.11\,\mathrm{mV}。電流 1 A1\,\mathrm A を A から B へ流すと、接合へ流れ込む熱流 ΠAI\Pi_AI と出ていく熱流 ΠBI\Pi_BI の差(ΠB−ΠA)I=6.22 mW(\Pi_B-\Pi_A)I=6.22\,\mathrm{mW} だけ接合から熱が奪われ、接合が冷える(逆向きの電流なら温まる)。Π=TS\Pi=TS を使えたのは Onsager の相反定理による。ZT=S2/L0=(10.4×10−6)2/(2.443×10−8)=4.4×10−3ZT=S^2/L_0=(10.4\times10^{-6})^2/(2.443\times10^{-8})=4.4\times10^{-3}。自由電子の Cu(10−410^{-4})より大きいが、バンドの中央付近を使う限り SS は kB/ek_{\mathrm B}/e の kBT/thk_{\mathrm B} T/t_{\mathrm h} 倍の大きさにとどまる。

(5) ν=0.05\nu=0.05 では εF+2th=2th(1−cos⁡(πν/2))=3.08 meV\varepsilon _{\mathrm F}+2t_{\mathrm h}=2t_{\mathrm h}(1-\cos(\pi\nu/2))=3.08\,\mathrm{meV} で、Fermi 準位とバンドの底の距離が kBT=25.9 meVk_{\mathrm B} T=25.9\,\mathrm{meV} より小さい。Mott 公式は σ(ε)\sigma(\varepsilon ) が μ\mu のまわり kBTk_{\mathrm B} T の幅で滑らかなことを前提にしているが、ここではその幅の中にバンドの底(σ\sigma が ε+2th\sqrt{\varepsilon +2t_{\mathrm h}} で 00 になる点)がある。Mott 公式を使うと S=−1.19 mV K−1S=-1.19\,\mathrm{mV\,K^{-1}} だが、(4.3.8) を数値で積分した値(電子数一定から決めた μ=−2.033th\mu=-2.033t_{\mathrm h} を使う)は −0.204 mV K−1-0.204\,\mathrm{mV\,K^{-1}} で、Mott 公式は 5.8 倍も大きすぎる。有限温度では μ\mu はバンドの底より 0.64kBT0.64 k_{\mathrm B} T 下に下がっていて、電子は非縮退の気体に近い。底の近くで σ∝(ε+2th)1/2\sigma\propto(\varepsilon +2t_{\mathrm h})^{1/2} なので、(4.3.19) の 3/2+r3/2+r を 1/21/2 に置き換えた非縮退の式 S=−kBe[−2th−μkBT+32]=−2.14 kB/eS=-\frac{ k_{\mathrm B}}{e}[\frac{-2t_{\mathrm h}-\mu}{ k_{\mathrm B} T}+\frac32]=-2.14\, k_{\mathrm B}/e が、厳密な −2.37 kB/e-2.37\, k_{\mathrm B}/e に1割の差で近い。図 4.3.3 のとおり、Mott 公式は Fermi 準位がバンドの端から数 kBTk_{\mathrm B} T 以上離れているとき(ここでは 0.2≲ν≲1.80.2\lesssim\nu\lesssim1.8)に限って使うことができる。これが 4.3.5節の Sommerfeld 展開の札の「条件付き」の中身である。

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