この章のまとめ
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部 第2章 §5.2.7 ★★★ スピンを含まない Coulomb 相互作用と Pauli の排他律から、原子の中では Hund 則(交換積分の正値性)、隣の原子との間では直接交換・運動交換・超交換、スピン軌道相互作用を戻すと DM 相互作用が出る。すべて1重項と3重項の差 として計算した
この章では、スピンを含まない多電子の (5.2.1) を選び、それを数個の軌道に限った模型(式 (5.2.2)・(5.2.4)・(5.2.15))を作った。当てた道具は2つで、1重項と3重項の差を に書き直す Dirac の恒等式(命題 5.2.1)と、電荷を動かした高い準位を消す縮退摂動 (5.2.8) である。
出てきたものは4つある。第一に、交換積分 は Coulomb の核が正定値なので必ず正で(命題 5.2.2)、同じ原子の直交する軌道の電子はスピンをそろえる。これが Hund の第1の規則で、第3の規則と合わせてイオンの基底の準位 と有効磁子数 が決まる。第二に、2つのサイトでは で、直接交換は強磁性、仮想的な飛び移りによる運動交換は反強磁性の向きに働く。第三に、酸素を挟むと4次の超交換になり、180° の結合では反強磁性、90° では酸素の中の Hund の交換による弱い強磁性になる(Goodenough–Kanamori 則)。金属の中の局在したスピンの間では、伝導電子を仲立ちにした RKKY 相互作用が距離とともに符号を変える。第四に、スピン軌道相互作用を1次で戻すと、反転の中心を持たない結合に DM 相互作用 が加わり、反強磁性のスピンが傾いて弱い強磁性が現れる。
削ったものは、1つの配置への射影・スピン軌道相互作用の1次の扱い・結晶場・1サイト1軌道と最低次の摂動・動き回る電子の磁性の5つで、配置への射影は A 型、残りの摂動は B 型の極限として、有限の系では条件付きで裏付けがある。次の第5部第3章では、この章で出した を格子に並べた Heisenberg 模型を選び、Weiss の平均場で相転移と Curie–Weiss 則を、スピン波で低温の励起を求める。
総合問題 銅の酸化物の磁性:Hund 則から超交換・2量体の磁化率まで ★★★
オリジナル銅のイオン Cu が酸素を挟んで並ぶ酸化物を考える。正孔の言葉で、模型 (5.2.15) のパラメータを 、、、 とする。
- (1) 孤立した Cu の基底の準位を Hund 則で決め、 を求めよ。結晶の中で正孔が 軌道に入ると はいくらになるか。(使う道具:5.2.3節・5.2.5節)
- (2) Cu–O–Cu が一直線のとき、式 (5.2.16) で を求めよ。同じ模型を厳密に対角化すると になる。4次の式との比を求め、 の値から差の大きさを説明せよ。(使う道具:5.2.4節・5.2.2節)
- (3) 酸素を消去した銅どうしの実効的な飛び移り を求め、第1部第1章の で 、 としたものと (2) を比べよ。差はどの過程を落としたためか。(使う道具:第1部第1章・5.2.4節)
- (4) 銅を間隔 で1次元の鎖に並べ、 の tight-binding のバンドを作ると、銅1個あたり正孔1個で半分詰まりになる。バンドの幅を求め、1電子の描像の予言と、・ を入れたときの予言を比べよ。(使う道具:第2部第3章・第2部第7章・5.2.4節)
- (5) (2) の厳密な を持つ銅の2量体の磁化率の山の温度を求め、室温での磁化率が高温の Curie 則の何倍かを求めよ。(使う道具:5.2.6節)
- (6) Cu–O–Cu の角度を 90° に曲げ、酸素の中の交換積分を とすると、式 (5.2.17) の はいくらか。厳密な対角化では になる。符号の意味を述べよ。(使う道具:5.2.4節・5.2.3節)
解答
(1) 例題 5.2.3 の (2) と同じで、、、。 は縮退していない実数の軌道なので、例題 5.2.7 から軌道角運動量は 0 で、磁気モーメントはスピン だけの になる。以下の小問では、銅のイオンを のスピン とみなす。
(2) 、括弧の中は で、。厳密な値との比は である。 は図 5.2.2 で比が 0.6 程度まで下がる範囲にあり、展開の小さいパラメータ に高次の係数が掛かって 40 % のずれになる。符号(反強磁性)は4次の式でも厳密でも同じである。
(3) 、。これは式 (5.2.16) の第1項そのもので、(2) の 0.259 eV との差 0.155 eV は第2項、すなわち両方の正孔が酸素へ出る過程(酸素に正孔2個)の分である。酸素を消去して銅だけの Hubbard 模型にすると、この過程が抜け落ちる。
(4) 1次元の tight-binding のバンド の幅は 。半分詰まったバンドは、1電子の描像では Fermi 準位がバンドの中にあり金属になる(第2部第7章)。ところが、電荷を動かすのに要るエネルギーは銅に正孔を2個詰める か、酸素へ移す で、どちらもバンドの幅より大きい。小さいほうの がギャップの大きさを決めるので、この物質は電荷移動型の絶縁体である。電荷が動けない代わりにスピンが残り、そのスピンの間に (2) の が働く。
(5) で、室温よりずっと高い。室温()では で、式 (5.2.21) と Curie 則 の比は である。銅のスピンは室温でもほぼ1重項に組んでいて、磁化率は独立なスピンの約 1 % しかない。
(6) 、 で、。厳密な とは (2) と同じ向きにずれるが、符号は同じで、90° の結合は強磁性になる。大きさは厳密な値どうしで 180° の約 25 分の1で、酸素の中の Hund の交換 が無ければ 0 である。同じ銅と酸素でも、結合の角度だけで相互作用の符号が変わる。第5部第3章で格子に並べるとき、この符号によって、強磁性と反強磁性のどちらの秩序が現れるかが決まる。(検算 scripts/verify_ch5-02.py)
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