何を削ったか・何の実験の量で確かめるか
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部 第3章 §5.3.5 ★★ Heisenberg 模型は軌道・遍歴性・異方性を、平均場は隣どうしの相関を、線形スピン波はマグノンどうしの相互作用を削った。高温の帯磁率・中性子の回折と非弾性散乱・低温の磁化と比熱で確かめる
削ったもの
1つめは、模型そのものが削ったものである。式 (5.3.1) は、電子が原子に局在して大きさ のスピンだけを持ち、結合が等方であるとした。軌道の角運動量は、3d の遷移金属の化合物では結晶場で消える(第5部第2章)が、4f の希土類では残るので、 の代わりに全角運動量 の多重項を使う必要がある(5.3.6節の例題)。スピン軌道相互作用は結晶の軸を選ぶ異方性と Dzyaloshinskii–Moriya の項を作り、磁気双極子の相互作用は磁区を作る。これらを入れるとマグノンの にギャップが開き、2次元でも有限温度の秩序が可能になる。鉄やニッケルのように伝導電子そのものが磁化を担う金属(遍歴電子の磁性)では、1原子あたりの磁気モーメントが の整数倍にならず、局在したスピンの模型は出発点として適さない。
2つめは、平均場が捨てた隣どうしの相関 である。相関は の近くで最も大きく、平均場はそれを捨てるので、転移温度を高めに出し、臨界指数を などの値に固定し、2次元の等方な模型でも有限の転移温度を予言する。到達距離が長く が大きいほど1つのスピンの分子場は多くの隣の平均になり、揺らぎは目立たなくなる。
3つめは、線形スピン波が捨てたマグノンどうしの相互作用(式 (5.3.19) の根号の展開の次の項と の4次の項)と の制限である。Dyson は相互作用の補正を調べ、Bloch 則に対する補正が分散の の項による の項などとは別に から始まることを示した(Dyson(1956)、Physical Review 102、1217 および 1230)。低温で磁化がわずかしか減らない限り、線形スピン波は主要項を正しく与える。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの 1つのスピンが感じる隣の数を無限大に送る(相互作用の到達距離 、) | 証明 条件付き(古典の格子気体・Ising 型では、到達距離無限大の Kac 極限で平均場が厳密になることが証明されている〔Lebowitz, Penrose(1966)、Journal of Mathematical Physics 7、98〕。量子の Heisenberg 模型での同じ極限の形は要確認。短距離の2次元では Mermin–Wagner の定理のとおり定性的に誤る) | 行き先 近似の数理 第6章・近似の数理 第13章
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの (低温でマグノンが少ない) | 証明 条件付き(3次元の強磁性 Heisenberg 模型の自由エネルギーの低温の主要項が線形スピン波で正しいことが証明されている〔Correggi, Giuliani, Seiringer(2015)、Communications in Mathematical Physics 339、279〕。自発磁化の存在そのものは、量子の3次元強磁性体では証明されていない) | 行き先 近似の数理 第13章
反強磁性については、3次元の量子の Heisenberg 模型で のとき低温で Néel の秩序が存在することが、スピン波を使わずに鏡映正値性で証明されている(Dyson, Lieb, Simon(1978)、Journal of Statistical Physics 18、335)。強磁性の基底状態が厳密に分かり反強磁性の基底状態が分からないのと逆に、有限温度の秩序の証明は反強磁性の方が進んでいる。
何の実験の量で確かめるか
高温の帯磁率は、平均場の2つの数を直接読ませる量である。 を に対して描くと直線になり(図 5.3.4)、傾きから Curie 定数 、つまり有効磁子数 が、切片から (強磁性で正、反強磁性で負の側)、つまり交換の和が出る。強磁性体の実際の は、直線の切片から読んだ より少し低く、その差が平均場の捨てた揺らぎの大きさを示す。
中性子の回折は、反強磁性の秩序を直接見る方法である。中性子は磁気モーメントを持つので原子のスピンでも散乱され、反強磁性では磁気の単位胞が結晶の単位胞の2倍になるので、結晶の Bragg 反射の間に磁気だけの反射が現れる(第1部第3章の回折の条件を、2倍の周期に当てたもの)。MnO でこれを初めて観測し反強磁性を直接示したのが Shull と Smart である(Shull, Smart(1949)、Physical Review 76、1256)。中性子の非弾性散乱では、フォノンを測るのと同じ方法(第3部第3章)でマグノンの分散 が測れ、式 (5.3.20) の形と から が出る。
低温の磁化と比熱は、スピン波の数え方を確かめる量である。強磁性体の磁化の減りが に比例すれば、マグノンの分散が であることの証拠になる。比熱では、マグノンの を、フォノンの や伝導電子の と温度の冪で分けて取り出す。
図 5.3.4 高温の帯磁率の逆数(式 (5.3.9)・(5.3.14))。どれも傾き の直線で、横軸の切片が強磁性では 、相互作用のない常磁性では 0、反強磁性では に来る。反強磁性の直線は より上だけが実際の帯磁率で、細い破線は切片を読むための外挿である。
例題 5.3.6 帯磁率から S と J を読み、スピン波のこわさを予言する ★★
オリジナル単純立方格子()の強磁性の絶縁体で、高温の帯磁率から有効磁子数 と が読めたとする(数値は仮のもの)。 とする。
- (1) を求めよ。
- (2) 平均場で を求めよ。
- (3) 中性子の非弾性散乱で測れるはずのスピン波のこわさ を予言せよ。
- (4) この物質 1 mol の Curie 定数(SI のモルあたりの磁化率に掛かるもの)を求めよ。
解答
(1) から 。
(2) 。
(3) ()。平均場の は揺らぎを捨てたぶん小さめに出る(例題 5.3.2)ので、実測の はこの予言より大きく出るはずである。帯磁率と中性子で別々に を測って比べると、平均場の誤差の大きさが分かる。
(4) 。
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